帰らざる故郷



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    初公開日(参考)2021年04月
    分類

    長編小説

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    帰らざる故郷 (ハヤカワ・ミステリ)

    2021年04月28日 帰らざる故郷 (ハヤカワ・ミステリ)

    1972年、アメリカ。ベトナム戦争中に海兵隊を不名誉除隊させられ刑務所にいた兄と、数年ぶりに再会した弟。しかし、町で起こるある惨殺事件が、彼らを引き離す――戦争が人々の心に残した傷跡、そして兄弟の絆を描くクライム・フィクション。解説/吉野仁(「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.50pt

    帰らざる故郷の総合評価:9.40/10点レビュー 5件。Bランク


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    全2件 1~2 1/1ページ
    No.2:
    (9pt)

    ジョンハートは兄弟ものが上手い!

    「キングの死」もそうですが、ジョンハート氏の描く兄弟愛はホント群を抜いています。
    どうしてここまで書けるのか不思議なくらいです。

    スタンドバイミー的な場面もあり、どこか懐かしささえ感じます(アメリカのことは何も知らないのに)
    こういった郷愁や青春の甘酸っぱさや育った場所への郷愁。
    どこを切り取っても満点だと思います。

    記憶に残る一冊になりました。


    ももか
    3UKDKR1P
    No.1:
    (8pt)

    悪役の圧倒的な存在感に注目!

    アメリカ・ミステリー界の巨匠の長編第7作。ベトナム戦争時の南部の町を舞台にした社会派であり、家族小説でもあるサスペンス・ミステリーである。
    1972年のノース・カロライナ州シャーロットの街に、ジェイソン・フレンチが帰ってきた。ベトナムに従軍し不名誉除隊になったあと、麻薬で服役していたのが出所したのだった。出来の悪い息子の帰還は、警官である父・ビル、母・ガブリエル、弟・ギビーの一家に不吉な影を及ぼした。さらに、若い女性の凄惨な殺害事件が起き、ジェイソンが容疑者と目されたことから一家崩壊の危機にさらされる。警官の立場と父親の立場で板挟みになるビル、兄の無実を信じるギビー、二人はそれぞれの信念で事件の真相を追い求めるのだが、事件の裏には想像を絶する悪の存在があった…。
    物語の通奏低音にはジェイソンがベトナム戦争で壊れてしまった理由があり、父、兄、弟の三者三様にそこに絡めとられているのが悲劇的。当時のアメリカの泥沼化したベトナム戦争による閉そく感と絶望がひしひしと伝わってくる。しかし、何といっても本作で最も強いインパクトを与えるのは刑務所に収容されている大量殺人犯・Xである。冷酷非情、頭脳明晰、肉体強健のみならず大富豪でもあり、地下二階の特別室から刑務所を支配しているという、いわばレクター博士とメキシコ麻薬カルテルのボスを合わせた悪役と言える。このXとジェイソンの関わりが物語のキーポイントになるのだが、その部分の理由付けが弱いのが全体の評価を下げる要因になっているのが惜しい。
    家族小説的ミステリー、社会派サスペンス・ドラマのファンにおススメする。

    iisan
    927253Y1
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    ※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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    No.3:
    (5pt)

    ヴェトナムという暴風に晒されて壊れかけた国の物語

    1972年。舞台はノース・カロライナ。ヴェトナム帰還兵とその一家の物語。作者のジョン・ハートは1965年生まれだから、本書の背景の時代は、実は作家7歳の幼年期ということになる。翻って、読者のぼくはこの年、16歳。反戦のフォークソング、悲劇的で衝撃的なアメリカン・ニュー・シネマのショッキングなエンディングに、もろに曝されて育ったあの多感な時代。

     だからこそ、というだけではないにせよ、この物語の時代背景を記憶に蘇らせながら、そこを通り抜けたアメリカの青春群像を生き生きと、現代に読み返し、想い出してゆくという読書行為は、何とも心にうずくものを抱えているような、妙に懐かしくも心の痛む、不安と緊張に満ちたものであった。

     本書の主人公であるギビー(18歳)もまた、多感この上ない青年である。殺人課刑事の父の息子である彼のもとに、戦死した兄ロバートの双子の弟・ジェイソンが帰郷した。戦地で29人殺したという伝説を携えて。収容所での不審な収容期を終えて。

     ジェイソンが帰還後、現地民虐殺の疑いで放り込まれていた州立刑務所には、一方でXという途方もない怪物がいて、事実上刑務所を支配しているという構図である。劇画的誇張が過ぎるようにも見受けられるが、刑務所幹部たち含め、彼の走狗である猟奇殺人者リースともども、物語の現代を横軸として綴る緊張が張り巡らされる。

     ノースカロライナの田舎町に起こる凄惨な女性殺人事件と帰還兵、反社会組織のバイカー集団、血に飢えた殺人者と、彼を刑務所から操るX。そうした幾重にも絡み合った暴力の嵐が、青年ギビーの家族や周囲に吹き荒れる。まさしく凄まじいまでに。

     読者だけが知らされる危険この上ない状況の中、巻き込まれ翻弄されるギビーの青春とと、その家族たち。兄、警察官である父、以上とも言える母、恋人、親友。一見、平和に見えていた家族やその周囲の人々を、ヴェトナムから持ち込まれた暴力の風が巻き込んでゆく。

     ヴェトナムに起こった村民虐殺事件の真相を背景に、徐々に見えてくる構図、散乱した事実への落とし前の付け方が、なんともスリリングな読みどころである。この作家は骨太でしかも確かな書き手との印象がやはり強い。七作目の長編ということであるが、これだけで食べて行けるアメリカの出版環境に改めて驚かされる。じっくりゆっくり作品を作ることが許される環境なのだ。それこそがこうした力のこもった大作を生み出せる要因であるように思う。

     何とも頼もしい作家による、確かな傑作であり、家族小説であり、青年の成長小説でもある。アメリカでしか成し得ないプロットでも、本書は良く成功しているように思う。
    帰らざる故郷 (ハヤカワ・ミステリ)Amazon書評・レビュー:帰らざる故郷 (ハヤカワ・ミステリ)より
    4150019673
    No.2:
    (5pt)

    ヴェトナム戦争時のアメリカを舞台に壊れゆく家族の肖像を描いた傑作

    エドガー賞を2回受賞している大家の最新作で、舞台は1972年のノースカロライナ。ヴェトナム戦争中に海兵隊から除隊処分を受け、2年間服役し、「戦地で29人殺した」という噂のたつジェイソンが出獄したとき、故郷で受け入れたのは18歳の弟のギビーだけだった。ベトナム戦争で亡くなった兄弟の兄ロバート、父の殺人課刑事フレンチ、母のガブリエルからなる家族にヴェトナム戦争がどのような影響を与えたのかをサスペンス豊かに描き出した傑作である。ジェイソンとギビーの兄弟愛と父フレンチの苦悩が詩情豊かに描き出されている。
    帰らざる故郷 (ハヤカワ・ミステリ)Amazon書評・レビュー:帰らざる故郷 (ハヤカワ・ミステリ)より
    4150019673
    No.1:
    (5pt)

    この世界で徒花のように咲く兵士への深い感謝

    ジョン・ハートの新しい邦訳、待望の「帰らざる故郷 "The Unwilling"」(早川書房)を一気読みしました。前段の謝辞において著者は、7冊目の著作と言っていますが?"The Hush"は、未訳だったか?
     原題は、どう訳すのが適当なのでしょう?「反抗」なのか。様々な思いが滞留します。その点、その邦題は(理由は、理解できますが)醜悪だと思います。
     舞台は、"ゴッドファーザー”と"脱出"が公開された時とありますので、1972年頃のノース・キャロライナ、シャーロット。殺人課の刑事、ビル・フレンチは、その次男、元海兵隊員のジェイソンが戻ってくると聞き、家に駆けつけます。傷つき、保守的で、それであるがゆえに<共依存者>のように思えるビルの妻・ガブリエル。そして、18歳の三男・ギビー。長男のロバートは、ヴェトナム戦争で戦死してしまっています。
     ジェイソンは、同じようにヴェトナムで従軍し、不名誉除隊処分により帰還、ドラッグに溺れ、罪を犯し「レブンワース刑務所」に収監された後、故郷へと戻ってきます。何故、その帰還に家族は慌てふためくのか?
     ギビーは、町外れの石切場の崖の上に立ち、眼下を静かに流れる川に向かって、ダイブしようと思いあぐねています。何故、飛び込まなければならないのか?そして、そこに刑務所あがりのジェイソンが現れます。「理由なき反抗」の頃がひたすら懐かしいと思いながら、この時代の青春物語のように始まった物語は、4人がラジオ局から流れるクラプトンを聞きながら乗った車が「レブンワース刑務所」へと向かう囚人護送車と出会ったことで、まるで回り舞台のようにぐるりと反転することになります。クレージーで、過剰で、この世界への憎悪に満ちた、そして野に咲く花のように束の間だけハートフルな、ジョン・ハートの世界へと導かれて行く、見事な導入部だと思います。
     その後、凄惨な殺人事件が発生することによって多くの男女が巻き込まれ、予期せぬ事態へと発展していくことになります。よって、私が書いていいのは、ここまでだと思います(笑)。

     今尚消えぬ「ヴェトナム戦争」の影と影。帰還兵たちの思い。起こってはいけない「虐殺事件」の残像。米国に守られ、「徴兵」も、貧しきものたちの選択の余地のない「志願」も経験したことがない(私を含む)この国の男たちには語ることができない現実と深い病巣とその道のりの苦しさがここにあります。表向き、ヴェトナム戦争は1975年に終わっています。
     誇張されているとは言え、今ではアウトソーシングされてさえいる米国の「刑務所」の悪夢のような現実。トマス・ハリスにハンニバル・レクターが必要だったように、ジョン・ハートにはジェイソンが収監された場所にいる死刑囚・Xの存在が必要だったのでしょう。繰り返される"ファイト・クラブ"。良きものが、瞬間悪しきものに宿り、一方、悪しきものは悪しきもののまま「悪しき者」たちの中に留まり続けます。人の心にある「善悪」について、誰もがコントロールすることはできず、ましてや語ることなどできるものではありません。
     ジョン・ハートが描く物語は、市井の「家族」の物語でもあります。それを愛だと取り違え、それも愛だと自分を騙し続ける存在としての家族の有り様。それは、3人の男たちよりもビルの妻、ガブリエルの過剰な保守性に戸惑う自分の心の中に或る種の<気づき>を与えてくれています。
     まあ、勝手気ままな感想は控えることにして、この物語は、立ち去ることのない戦争の影、貧しきものたち、決してなくなることのない差別と憎悪、それらが唸りながらたどり着く先にあるエネルギッシュで、見事な「犯罪小説」として記憶されることになるでしょう。
     私は、名も無き兵士がジェイソンの名前を聞いて、すぐさま敬礼するシーンをいつまでも覚えていると思います。感謝が忘れられたこの世界で徒花のように咲く兵士への深い感謝。
    帰らざる故郷 (ハヤカワ・ミステリ)Amazon書評・レビュー:帰らざる故郷 (ハヤカワ・ミステリ)より
    4150019673



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