ブート・バザールの少年探偵
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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インドの女性作家のデビュー作であり、2021年度エドガー賞の最優秀長編賞受賞作。しかし、ミステリーというより少年冒険小説ととらえるべき作品である。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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インドのニュースや映画を見て女子供の過酷な生活実態を多少知っていたので もう少し明るいものがイイなと思ってタイトルとあらすじのみ(巻末は後読み派)で期待したのですがリアルすぎて…タイトルはもうちょっと暗め(笑)にしてほしかったかなw | ||||
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今とても評判のインド版少年探偵団の物語。インド小説というだけでも気になるけれど、ここ数年、子どもが主人公の翻訳作品が続出していること、そのどれもが、例外なく読んで後悔のない優れた作品であること、などの事情を考えるに、非英語圏諸国の小説も、英語版・日本語版翻訳へと推進力がついてきたのかもしれない。だとしたら読書の楽しみが隅々まで広がってくれて大変有難い。 それにしても、今のインドと言えばコロナ。インド株の急激な拡大に国家的危機が拡散しているのではないかと恐怖を覚える現在。本書はその少し前の時代なのだが、コロナがなかろうと、インドのカーストの底辺にはこんなにも深い闇が広がっているのか驚きあきれる一冊になっている。 一部の富裕層を支える多くの貧困層。その最底辺のスラムに生きる子どもたちの日々を、これほど具体的に描いた作品は、これまで読んだことがない。このスマホの時代におけるインドの貧困層のスラムの実態について、ぼくは読んだことも聴いたこともない。 この本では9歳の男の子の、ほぼ純粋かつ多感な眼を通して、ぼくらは知ることができる。大人の眼ではなく、純粋で何でも好奇心に変えてしまう子どもから見る世界だからこそ、貧困層の最底辺の街でさえまるでドリームランドみたいに見えてくる。何もかもが子どもの眼には、好奇心を掻き立てる材料となる。子どもの生命力やたくましさに代われるものなんてこの世にはないんだ、と言わんばかりに。そう、主題は残酷であれ、読んでいてどこか救いのある小説なのである。 とは言え、本書では「インドでは1日に180人の子どもが行方不明になる」という帯のキャッチフレーズが示す事実の怖さを含め、ぼくらは改めてインド・ノワールの現実にも踏み込むことになる。 実は日本でも年間1,200人の子どもが行方不明になっているそうである。子どもに限らなければ年間8万人が姿を消しているそうである。某プロ野球コーチが行方不明になって騒がれたような最近の事件は、ほんの8万分の1の例にしか過ぎないわけだ。 日本では毎日3~4人の子供が、インドでは毎日180人の子供が行方不明になっているのだそうだ。これだけでも驚愕の数字だ。こうなるとこの小説で描かれた、姿を消してしまう子どもたちというのは全然架空の話でも何でもなく、当たり前の現実なのだ。でもそのことをぼくたちは知っているだろうか? いや、知らない。そういう過酷なリアルな現象に向き合って、地球規模で人間の環ということを考えることも大切なのではないだろうか。 裏には当然犯罪組織の存在が考えられる。腎臓を取り出して売る? 性の奴隷として売る? 不要であれば殺し、ゴミ捨て場に投げ捨てる? それは眼をつぶりたくなるほど過酷な、しかし現実に想像可能な出来事だ。だから本書のような物語は必要なのだ。現実の投影。闘い究明すること。必要とされる魂を救済すること。 本書での我らが少年探偵団を構成するのは、主人公のジャイとムスリムのファイズ、リーダーシップを感じさせる出来の良い少女パリ、あまり役に立たないが鼻と食欲だけは一人前の野良犬サモサ。こんな楽しい子ども世界のフィルターを通したインドの過酷、それに対する力強い生命力。ムスリムのファイズは、ヒンズーとの軋轢に晒されても不思議はないのだが、大人たちが持つヘイトを彼らは持たない。彼らの前には、人間を区別したり争わせたりする宗教的対立はただのクエスチョンマークに過ぎない。子どもたちの別れはとても切ない。 読んでいるうちに悲しくも明るく、そして夢中になれた作品がまた一つ。子ども小説全盛の現在の世界的エンタメ・ブームは、何とも嬉しくたくましい。このまま子どもたちの感性でミステリも席捲してしまってほしいくらいである。 | ||||
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YA、ジュヴナイルとしても十二分に面白く読めるが、 子どもの誘拐が多発するインドの現状を鋭く切り込んでいて、 非常に読み応えのある一冊となっている。 インドの社会問題(日本も大なり小なり同じような問題を抱えているので共感できるだろう)も 内包している。 しかししかし、とにかく語り口がいい。軽妙で、明るく、 本当に「ジン」がいるんじゃないかとも思える。 この物語はあなたの命を救うかもしれない、本当に。 | ||||
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「ブート・バザールの少年探偵 "Djinn Patrol On The Purple Line"」(ディーパ・アーナパーラ ハヤカワ・ミステリ文庫)を読み終えました。読み始めて、間に2冊別の物語を読み、ここに戻りました。長尺であることよりも馴染みのない「言葉」の多くが、読書のスピードを遅くします。(私の読む能力の問題でもあります(笑)。)その点、翻訳者の労苦が忍ばれる力作だと思います。一方、2021年のエドガー賞候補作だそうですが、作者はミステリの形式を意図してこの作品を書き記したとも思えませんね。(賞の発表は、2021/4/29?) 舞台は、インド。スラム居住区(バスティ)。9歳の主人公・ジャイは、両親と12歳の姉・ルヌと共に暮らしています。そして、その平和な生活の中、クラスメートが、顔見知りが一人、また一人とその姿を消していきます。ジャイは、それらの事件を解決すべく二人の親友、パリとファイズを伴ってにわか<探偵団>を結成し、捜査に乗り出します。9歳の視点から描かれるインドの現実。何せ私はインドに対する予備知識が少なく、映画「スラムドッグ$ミリオネア」と「LION/ライオン 25年目のただいま」を呼び起こしながらの読書になりました。 ミステリとして、特筆すべきことはありません。むしろ、スラムとハイファイ(富裕者たち)、ヒンドゥーとムスリム、スモッグとカラフルな伝統衣装、それらの対立するものたちが一つの国家を覆い尽くすインドの現実に触れるいい機会をいただいたと思います。耳のいい、生き生きとした会話の中に伺える子供達の思い、夢、居場所についてのスピリチュアリティは凝視できない光と騒音、音楽、聞き取ることができない音、不快な臭いの中に立ち上る一瞬の匂いを感じさせてくれます。そのことが、この物語を読んだことで得られる「よきこと」だと思います。 ブート・バザール、子供達が乗り込むパープル・ライン、聳え立つハイタワー。そこかしこに現れる、大人たちには決して感じ取ることができないジン(幽霊)の守り人としてのオーラ。日本の子供たちもまた似て非なる場所で、同じように生き抜いています。 ストリートに、子供たちは必ず居場所を見つけることができると信じて。 | ||||
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