帝国の亡霊、そして殺人
- 歴史ミステリ (189)
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英国がインドとパキスタンを分離して独立させ、手放したとき、インドにいたイスラム教徒はパキスタンへ、パ岸痰という地域にいたHindu教徒とシク教徒はインヘと移動、この時の対立で200万人死んだと言われる悲惨な出来事があったが、日本ではあまりしられていない。この時代の犯罪を調査する英国外交官が殺されるという話だが、著者の狙いはミステリよりもあの時代を忘れさせまいとしているように見える。私もパキスタンに駐在していた時に、分離独立時代に23人殺したという男にあったことがあり、そんな殺人犯が今なぜ平然と暮らしているのか、殺人罪を問われることはなかったのかと不思議に思ったが、本書を読むと殺人犯でも逃げ切っていたかも知れない時代背景が説明されているように見える。著者は謎解きの形で、あのあの国時代の歴史を描きたかったのだと思う。面白いのは、パキスタン系の作家なのに、インドを舞台にし、パキスタンの建国の父と呼ばれるモハメド・アリ・ジンナーについてはだいぶ批判的らしいこと。また主役の刑事にHinduどもイスラム教徒でもない、中立的な存在のゾロアスター教徒を据えた着眼もいい。文中では一貫して「分離独立」という言葉が使われているが、原文では、どうなっているのかなと思う。パキスタン人は「独立」とは言わず、みんなThe Partition (分離)といっていた。 | ||||
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印パ戦争とか最近聞かないのですっかり忘れていたけれど、イギリスから独立したあともパキスタンとの分裂もあり、インドの歴史はややこしい。というわけで、魅力的な主人公のはず、アビールムカジーではまったインドミステリーのはずなのに、前半なかなか入り込めなかった。とはいえ既に三作目まであるようで、期待大!登場人物の名前も地名も難しいけれど、「インドを知りたい!」の気持ちでいっぱいになる小説。 | ||||
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「帝国の亡霊、そして殺人 "Midnight at Malabar House"」(ヴァシーム・カーン 早川書房)を読み終えました。英国がインドを統治しようとしていた頃の物語「ボンベイのシャーロック」(2022/6月 ネヴ・マーチ)を或いはその後の時代を描いた「ボンベイ、マラバー・ヒルの未亡人たち」(2020/5月 スジャータ・マッシー)を思い出しながら読むことになりました。 舞台はボンベイ(ムンバイ)。時は1950年初頭。分離独立の亡霊たちが蔓延る時代。主役はインド初の年若い女性警部ペルシス。強い正義感を持ちながら警察官になったものの当時の(そして今も)根強く残る偏見に晒されながらの捜査を続ける彼女の姿が清々しい。 事件は"Malabar House"で開催されている恒例の年越しパーティで起こります。主催者、英国人のジェームズ卿が書斎で腰から下には何も身につけていないまま死体となって発見されます。また、彼のズボンは消えており、犯行に使われた凶器も見つかりません。書斎の暖炉には大量の紙が燃やされた跡があり、隠し金庫はからのまま残されていました。パーティの招待客は48人。加えて、当時20人近くの屋敷の使用人、楽団員が働いていました。有刺鉄線に囲まれた高い塀、警備員も常駐しています。殺人者がこっそり出ていくことはまずできません。 果たして、ジェームズ卿を殺害した犯人は誰なのか?その動機は?パズラーですからこれ以上の説明は省きたいと思いますが、前半は警察小説というより警部ペルシスによる「私立探偵小説」のように進行していきます。ワトソン役は、犯罪学者のブラックフィンチ。物語の骨格はアガサ・クリスティを読むようでした。 少しだけ物語をフラッシュすると(笑)、曲がり刃のナイフを持った殺人者、真夜中の秘めごと、友人とのいさかい、姿を消した宝石商、ヘリオット(ジェームズ卿)の最近の財政破綻、そして「分離独立」時の犯罪調査委員会とミステリらしい煌びやかなファクターが丁寧に置かれています。 「ヒンドゥー教徒が多数を占める西ベンガルと、イスラム教徒が多数を占める東パキスタンの分断によって、宗派間の大規模な武力衝突が起きた」(p.173)。歴史上横たわる事実がこのパズラーに膨らみを持たせ、その多くの人間たちの憎悪と宗教的な対立が未だに延々と継承され「帝国の亡霊」という邦題へと行き着くことになります。そのやりきれなさ。 戻りましょう。特筆すべきは、決して後ずさりしないペルシスの清冽なキャラクターとその熱意にあります。彼女の内部に輝く"Wisdom"に乾杯しましょう。これからもこのシリーズの翻訳が継続されますように、祈ってやみません。 | ||||
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