警部ヴィスティング 疑念
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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本国ノルウェーでは第17作まで刊行され、ドラマ化もされて大人気の「警部ヴィスティング」シリーズの邦訳第5弾。「カタリーナ・コード」に始まる未解決事件四部作の最終作である。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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良い | ||||
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前作「悪意」の上をゆく、窮地に陥る警部を期待したが、2つの事件を絡め、リーネもスティレルも脇に置いて、警部が淡々と事実を積み上げてゆく姿を捉えている。コールドケースの最終章は、静かにヴィスティング家族の庭で終わります。ホルスト様、次は「マーレン・ドッケン」シリーズをお願いします!! | ||||
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「カタリナコード」が面白かったので、こちらも購入。警察小説ですが、舞台が地方都市のせいか静かで落ち着いた運びが好感が持てます。北欧ミステリは時に引きずるほど暗かったり陰惨だったりするけれど、この作品はそんなことはなく、引退を控えた刑事の人生の節目に立ち会っているような読後感です。 | ||||
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『カタリーナ・コード』以降の未解決事件四部作の最後であるが、構成の緻密さとミステリーの推進力が最も充実した傑作だと感じた。 物語は休暇中のヴィスティング刑事に謎の手紙が次々届き、過去の確定事件の冤罪を示唆されるところから始まる。他地域の所轄事件だが、警察が確定事件の再捜査を自発的に開始することは普通はない。本書でも当時の担当刑事で現在の警察幹部からヴィスティングは圧力を受けるのだが、上層部の政治的思惑からか未解決事件担当のあのスティレル刑事が捜査を任され、ヴィスティングはその下で働く異例の展開となる。 同時に、ヴィスティング休暇中に起きた殺人事件の捜査が並行して描かれ、過去と現在の事件が対比されるように物語は進行していく。 このあたりの複雑な構成が実に巧みであり、多彩なモチーフを重奏的に絡めるマーラーの交響曲を連想する。 また、刑事捜査と裁判のディテールも相変わらずしっかりしていて、特に過去の事件の裁判で担当刑事が弁護人の反対尋問を受ける場面が素晴らしい。訳者あとがきによると、著者自身が捜査官で担当した同様のケースで無罪判決を受けた苦い経験があるそうだが、そうした体験や他の事件の法廷傍聴を踏まえたものだろう。 本書を貫くテーマは、見込み捜査とDNA鑑定である。 早い段階で被疑者が浮上したとき、警察は往々にして他の真犯人の存在を無視したり、被疑者が犯人でない証拠を軽視したりする。 また、DNA鑑定には技術的な精度や鑑定資料の紛れ込みといった問題がある。 これらは冤罪の原因となるのだが、著者は問題点をわかりやすく提示したうえ、単純な冤罪事件としてではなく、ひとひねりもふたひねりも加えてミステリーを展開している。 なお、ノルウェーの刑務所では凶悪事件の受刑者でも一時帰宅が制度化されているうえ、恋人との面会は個室で立ち会いなくでき、性交渉もあるのだとか。これが本書ではミステリーのネタとして利用されている。 | ||||
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前作はこのシリーズにしては、ダイナミックなアクションでスタートする動的な物語であったが、本書は静かな世界の中で終始する物語との印象が強い。本来、この作者はこうした静かな作品が得意なのではないか。文章の洗練に洗われるが如き心地の中で、美しい文章に魅かれるように読んでゆく小説。そう思える。 その大きな理由が、ヴィスティングが休暇中である中で進む物語だから、なのかもしれない。これはコールドケース四部作の最終作品であるそうである。ハヤカワ・ミステリ『猟犬』でこの作者とこの主人公に引き寄せられてしまったのをきっかけに、『カタリーナ・コード』『鍵穴』『悪意』と読んできたが、間に年単位の隔たりがあるせいで、ぼくの中ではうまく世界が繋がらない。 実は今年は札幌読書会で本シリーズを四作連続で毎月取り上げるというイベントが盛り上がっているようだったのだが、過去作品を順番に読み直すきっかけとしてこれを利用するのもありだったか、と痛い悔悟の念に囚われているのが本作読了直後の現状である。なので、本作品もぼくの中で連続性は失われ、朧な記憶のヴィスティングに再会する物語、それ以上でもそれ以下でもない一冊に終わる。 本書では休暇中の老警部の日常が取り上げられる。そして過去の未解決事件、誤認逮捕かもしれない疑念に彼は夢中になる。きっかけは郵便受けに投函される怪しげな手紙。差出人不明。筆跡を隠すためにおそらく定規を使った直線で描かれた文字は一枚の紙に、数字だけを書いたものだった。それは過去の事件が起きた年と、残された事件番号だけを示していたのだ。 休暇中のヴィスティングは、これをきっかけに事件を過去から蘇らせ、誤認逮捕であったかもしれない容疑者、あるいはその関係者たちの現在に対峙する。本作の元警察官でもあった作者が、実際に経験した未解決事件へのこだわりをペンで追想しているとも取れる、限りなく真実に近いリアリティが全編に感じ取れる作品である。 ヨルン・リーエル・ホルストという現実に事件に関わり合った経験を持つこの作家は、ヴィスティングに自分を投影し、当時の未解決事件を現代の科学捜査技術、現在なら辿ることのできるであろう情報取得の繊細な一面を強く感じつつ、作中でも過去に十分に捜査したとは言い切れない過去の実際にあった事件を、現在に蘇生させようとしてるかに見える。 そのデリカシーでいっぱいな作業が、今翻訳されてぼくらのもとに届けられている、そんなリアリズムたっぷりの印象が強い作品が本書である。過去に起きた事件の疑わしい真実。間違った人間を犯人にしてしまったかもしれないという疑惑や懊悩。今のデジタル疑術を基にした科学捜査、同じ技術を使った犯罪が、過去の事件を覆うように本書の暗い世界に踊る。照射される新たな真実。アクション・シーンですら、過去のものではなくデジタルなものに変容している今を、本書では、古い刑事が長く生きた捜査の世界の中で新たに体感し、見つめている。 時代の変遷を経た現在というフィルターで、過去の事件を見つめなおす<コールドケース>的シリーズが、現代のヒットメーカーとなるのは必然であろう。現実に書き手の情報もかように適応してゆくことが必要な時代なのだ。古い騎士(ナイト)の真実を求める誠意は一ミリたりとも変わらなくとも、世界の変化は止めようがない。 ミステリーの歴史を振り返りたくなるような一作である。 | ||||
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