阿片窟の死
- 歴史ミステリ (189)
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第一次世界大戦後のイギリス占領下インドで繰り広げられる歴史小説。戦争のトラウマと妻の死で阿片中毒という病にとりつかれたイギリス人警察官とインド人部下との相棒モノであり、警察と軍の組織間圧力、そしてもちろん犯人捜しのミステリーという過去作の要素に加えて、本作はインド独立運動、近代殺人化学兵器、家族との軋轢、イギリス皇太子の来印など個人ではあらがいようのない大きなうねりが加わって読み応えがあります。 ただし帯のあおり「クリスティー、チャンドラーに並ぶ歴史ミステリーの傑作!」とまで言い切れるのかは読者おのおのの判断に委ねられると思います。 | ||||
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遅まきながら「マハラジャの葬列」(2021/3月)に続くウィンダム警部+バネルジー物の新しい翻訳「阿片窟の死 ウィンダム警部&バネルジー部長刑事 "Smoke And Ashes"」(アビール・ムカジー ハヤカワ・ミステリ)を読み終えました。 舞台は、いつものようにインド、カルカッタ。1921年、クリスマス。アヘン中毒者、ウィンダム警部が阿片によって朦朧としている場所に警察のガサ入れがあり、慌てて逃走中、彼は中国人とおぼしき凄惨な死体を見つけます。そして、別の場所でも同じような死体が発見されます。彼女は、カルカッタ近郊の陸軍病院に勤める看護師でした。偶然とは思えない二つの死。いったい誰が、どのような理由で?手がかりが見つからないまま第三の殺人事件が発生します。 背景には、多くの史実が描写されています。マハトマ・ガンジーによる「非暴力不服従運動」。労働争議。警察は、離職者が相次ぎ、治安維持が保てないほど疲弊しています。運動に対して武力弾圧も厭わない植民地政府。そして、その中、英国のエドワード皇太子がインドを親善訪問、カルカッタへも立ち寄ることになります。 このシリーズはパズラーと言うより、ウィンダムの一人称による<私立探偵小説>のように展開していきますが、そこにバディ・バネルジーというキャラクターが加わることにより、植民地政府の持つ光と闇が否応なく描写されることになります。或るクライマックスへと向かうストーリー・テリングを明かすことはできませんが、ウェルメイドなミステリとして申し分ありません。特筆すべきは、ウィンダムとアニーの大人としての関係性にあると思います。ためらいが、灯火を消すことはない。 妻・サラを失い、アニーに思いを寄せるウィンダムは、最後に或る決断へと至ります。それは、闇を認め、服従することで次なる新しい場所へと足を向けることになるのでしょう。マハトマは不服従という名の戦いに身をゆだね、ウィンダムは服従することで新しい自分を見出そうとします。認め、祈り、委ねる。次の新しいウィンダムに会いたい。 | ||||
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原著は2019年の刊行で、原題はSMOKE AND ASHES。 一、私的感想 ネタバレないように注意して、本作品の各要素について、ちょっと書いてみる。 ○時代ミステリー・・1921年のカルカッタを舞台とする。1921年は今から101年前で、日本では原敬首相が東京駅で暗殺された年である。2年後に関東大震災が起きている。この時代のインド、カルカッタの社会、風俗がどんなふうであったか、よく知らないが、こんなふうだったんだろう、と思わせる説得力はある。よくできていると思う。 ○歴史ミステリー・・主人公が歴史的事件(エドワード皇太子のインド訪問と、ダース等のガンジー派の反対運動)に関わってしまい、歴史的事件を真偽取り混ぜて描く歴史ミステリーである。よくできている。 ○本格ミステリー・・連続殺人事件の謎を論理的に解いていき、最後に完全な真相にたどり着く点で本格ミステリーであり、よくできていると思う。 ○植民地ミステリー・・インドという植民地を舞台にイギリス人警部が活躍する点で、植民地ミステリーである。 ○相棒ミステリー・・インド人としてのアイデンティティーと、好きな仕事である警察官の職務への忠誠に引き裂かれつつ、ウィンダムの片腕として戦うバネルジー部長刑事。 ○警察小説・・H機関という公安的機関との対立と協調を描く警察小説。 ○冒険小説・・後半は、テロリストによる惨事を防止しようとする冒険小説的色彩が強くなってくる。面白い。 ○ラブ小説・・イギリス人とインド人の混血であるサラとウィンダムのラブ小説。ラブになっていないラブ小説。 ○弱点ヒーロー小説・・阿片依存という弱点を持つヒーロー、ウィンダム。 私的結論 ○かなり残酷なテーマを比較的ソフトに処理して、読みやすい小説になっていると思う。たいへん面白かった。 蛇足 ○1921年の日本では、のちの昭和天皇の婚約を巡る宮中某重大事件が起き、原敬はこの事件に深く巻き込まれていた。この年インドを訪問したエドワード皇太子は、15年後に国王兼インド皇帝エドワード8世となったが、シンプソン夫人との恋を貫いて王位を捨てた。1921年の100年後の日本では、内親王が自らの恋を貫いて大きな話題となった。 | ||||
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