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1Q84
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1Q84の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.66pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全986件 61~80 4/50ページ
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騎士団長殺しの販売キャンペーンで1Q84の紹介もあって、BOOK3があることを知りました。安く買えましたが、汚れが少し気になりました。すぐに読んで、少しすっきりしました。 | ||||
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初めて読んだ村上氏の作品。 皆さんの言う通り、不必要な性描写と気取った言葉ばかりで、本当に時間とお金の無駄だった。 何故こんな作品にあれほど騒いでいたのか…只々つまらない作品。これを面白いっていう人は周りに流されやすい性格の人だと思う。 今後、この方の作品はとても読む気になれない。 | ||||
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わけのわからない世界にどんどん引き込まれています。ありとあらゆるものが謎に包まれていて、どんどん読み進められました。 | ||||
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前半、中盤と話に引き込まれていたので、最終的にスッキリしたかったのですが、 いろんなものが謎のままで、腑に落ちない、というのが正直な感想です。 4が出て欲しいと願ってしまいました。 | ||||
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たくさんの物語が絡まっており、もう一度1巻から読み返してみるとさらにこの物語の深さを知ることができます。 | ||||
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主語が変わる章構成の物語は、どちらかにばかり興味(感情移入)が移りがちだけど、 偏ることないバランスで、退屈せずに一気に読んでしまいました。 さきがけリーダーと青豆が遭遇するシーンが印象的でした。 リーダーが会話の中で2つの世界の説明として引用するスタンダードナンバー、『イッツ・オンリー・ペーパー・ムーン』は個人的に好きで、 歌詞を知っていたので、物語のどこへ向かっていくのかがなんとなくわかりました。 信じることで、見える世界が”リアルに”変わるのだというメッセージだと受け取ったからです。 (導入のタクシー運ちゃんとの会話も主題かな) 自分的にこれらは読み進めていく上で重要でした また、二人に感情移入した状態、つまり主観的に読み進めていくことができたので、他の登場人物のその後なんて、 瑣末なこととして、この物語ではまったく気になりませんでした。 何かと批判の多い性描写はどうでも良いですが、村上氏は不倫がよく出てきますね。 作家が不倫を推奨してるわけではないとは思います。 しかし、自然な形でつきあい、ストーリーの都合に合わせるかのように自然に消滅しますので、 たまには、刺した刺されたみたいなドロドロな展開も見てみたいものです。 あと、牛河君ですが、何とはなく、ディケンズの『ディヴィッド・コパフィールド』のユライア・ヒープを連想しました。 章の主役に抜擢されるほど、重要な役割をうまく務めてくれましたね(合掌)。 | ||||
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なぜ、たとえば切人(きりと)やら、未来(みく)みたいに不自然にひねりたがる。 これがなきゃもっと読めただろう。完読すらしてないから評価は盛って5です。 | ||||
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発売から8年以上経過して、つまり最近初めて読んだ。そしてAmazonのカスタマーレビューのいくつかもみた。酷評しているものや、絶賛しているもの、これだけ評価が分散しているのにある意味では納得した。この小説はもちろんリアリティはないし、ファンタジー性も感じられない。話題性はあるかもしれないが、内容は感心しない。登場人物の設定や使われているエピソードはまるでB級映画か時代劇からパクったのかと思われるものが多い。例を挙げれば、スパイダーマン、必殺仕事人。性的なエピソードも倫理や戒律にこだわらない開放的で安直なものーーこれはこの作者が好かれる一つのファクターだと私は以前から感じているのだけれどーーが変節して、登場人物の心的背景を描こうとしたにもかかわらず、安直な薄っぺらい、人によっては醜悪と感じさせる表現になっている。ということではっきり言ってエンターテーメントとでもない。ただ感じることは、作者が描いたのはイドラの世界で、さらに「市場のイドラ、劇場のイドラ」にとらわれて評価している読者が少なからずいるのではないか、そしてそれが開き直った村上春樹の狙いだったのではないかということだ。 | ||||
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「ねじまき鳥」と「カフカ」が分かりづらく、これも長いし読もうか否か迷ったのですが、とても楽しむことができました。 まずは、キャラたちが実に魅力的です。 シニカルな編集者の小松、不思議な少女ふかえり、さらには「ねじまき鳥」から再登場の牛河、ハードボイルドな謎男タマル、NHKの集金モンスター(強烈!)などなどの戯画化された人物たちが続々と登場して飽きさせません。 また、「その世界」のリーダーがリトル・ピープルのくだりで語る、「善でも悪でもなく、そのバランスが重要なのだ」という世界観は陰陽道を想起させ、個人的にたいへん興味をひかれました。 それでも約2000ページというのはやや骨が折れましたが、物語のラストスパートでは歩幅の広いレトリックによる春樹節が全開、残りのページ数が惜しいほどでした。 フィニッシュもスタイリッシュで、実に満足のいく作品でした。 | ||||
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保護者が宗教にどっぷり浸かってる家庭の子供はツライ。 毎日の多くの時間を宗教に費やす事を強いられてツライ。 クリスマスも初詣も行けなくてツライ。 たとえ引っ越して自分の給料で暮らし始めても宗教はどこまでと着いてくる。新しく引っ越した先の宗教の人達が家までやってきて逃がしてくれなくてツライ 選挙のために、学生時代の名簿を勝手に持ちだされ、勝手に元同級生の自宅に訪問され訪問に着いていかない事に親不孝だとなじられてツライ。 こんなツライ思いをする子供達がいなくなりますように。 | ||||
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最初は黄色いところがミカンの食べかすでも付いたのかと思いましたが元々の模様だとわかり思ったよりも見た目がきれいなのでヤケが目立たず 新品同様でした。あと話の内容も村上先生の個性が際立つ作品だなと思います。青豆さん親友の環さんの敵とりましたね。さすがすごいです。 | ||||
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包装配送速やかでよかったです。 古本を購入は初めてでしたがこれからは活用したいと思いました。 | ||||
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sakigake 気づいた人は気づいたと思うけど、 母音を省くと skgk これ何のことかわかるよね? 村上春樹が海外在住なわけも。 そして彼の作品に込めたメッセージも。 | ||||
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本の価格が安く購入しやすかったです。たくさん購入すると割引もあるようなので、まとめて購入する方がお得だと思います。 | ||||
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本の価格が非常に安く心配でしたが、きれいな商品でした。2冊購入すると50円値引きがあったので、とても助かりました。 | ||||
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BOOK2で終わりにしたら良かったのに…。 3はどうしても無理やりな感じが否めませんでした。 | ||||
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とにかくやたら長く感じます。 前に読み進めて行きたい気持ちにはなりますが、面白さと時間を秤にかけると自分の時間を優先してしまうぐらいだから、結局はつまらないんだと感じました。 細部にこだわった修飾的な語句の連続は実生活での豆知識的な意味で役に立ちそうな気がしますが。。。 | ||||
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青豆が引き金を引くことはなかった。彼女は声を聞いた。彼女の名前を呼ぶ声を。天吾にもう一度会えるかもしれない。死ぬ決心が失われていった。 青豆の隠れ家にも、ふかえりが留守をあずかっている天吾の部屋にもNHKの集金人があらわれ、とても長い時間、ドアの外で金を払えとありとあらゆる角度から罵るようになった。「でもそんなことをしても,最後まで逃げおおせることはできません。必ず誰かがやってきてこのドアを開けます。本当ですよ」 天吾は千倉の施設で父親に語りかける。この集金人は実はあなたではないのかと。 牛河は青豆の調査を進める。そして川奈天吾も市川の出身であったことを思い出し、彼の通った公立小学校の教諭に面会を求め、青豆が彼とかつて同級生だったことをつきとめる。そして牛河は天吾の高円寺のアパートを調べ上げ、そこに部屋を借り、出入りする人間を写真に収めるべく張り込みを開始する。牛河は25歳で司法試験に合格し弁護士となった。一族の中で彼だけが彼のような醜い容姿をしていた。やがて中央林間に庭付きの一軒家を購入し、そこに妻と、彼の容姿を受け継がなかった二人の娘と暮らしていた。妻は彼に対して何でも誤魔化すことが趣味で、というよりなんでも噓しかしゃべらず、一緒に暮らすようになってから実は4歳も年齢をサバ読みし7歳年上だったとわかった。とあることで彼は階段を転げ落ちた。刑事罰は逃れたものの、その結果、東京弁護士会を除名された。今は一人で生きているのだ。真っ暗な部屋で寝袋の中で寒さに震えながら、これが振り出しに戻るということなのか?と思う。たぶんそうなのだろう、これ以上失うべきものはなにもない。自分の命の他には。暗闇の中で牛河は薄い刃物のような笑みを浮かべた。 天吾は看護婦たちと共に食事をし、酒を飲み楽しく話した。年配の看護婦たちの配慮もあり。天吾は最も若く次の日が非番の安達クミの部屋に招き入れられた。彼女の出したハシッシを一緒にすう。脳がとろんと波打つ。クミは一度死んで再生したという。自分のためではなく誰かのために。天吾はこの町を出て行かなくてはいけないという。森のフクロウが鳴く前に。 父親はその後しばらくして死んだ。弁護士の手続きや葬式の段取りを含め、父親は一切を死ぬ前に手配していた。弁護士は天吾に母親は天吾を産んだ一年半後亡くなったと告げる。 青豆は妊娠していた。日を数える。あの夜だ。彼女がホテル・オークラに出向いた、嵐のような夜。あの夜に妊娠したのだ。こう考えてみてはどうだろう?何もかもが立て続けに起こったあの混乱の夜、この世界に何らかの作用が働き、天吾は私の子宮の中に彼の精液を送り込むことができた。雷や大雨や、暗闇や殺人の隙間を縫うようにして。理屈はわからないが特別な通路がそこに生じた。 彼女はまた中野あゆみのことを思い出す。もう一度会いたいと思う。そのとき、首都高の非常階段を逆に上るという考えが突然浮かぶ。なぜ今まで思いつかなかったのだろう。もしかしたらそれでもとの世界に戻れるかもしれない。さきがけのリーダーは最後にこう口にした。「君は思い試練をくぐり抜けなければならない。それをくぐり抜けたとき、ものごとのあるべき姿を目にするはずだ」さきがけの連中が、彼女の子供を手に入れようとしている。偽のNHKの集金人が手を尽くしてこの部屋のドアを開けさせようとしているのも、おそらくは同じ目的なのだ。 二時半に野球帽をかぶった少女が高円寺の天吾のアパートから出てきた。牛河はあわてて手の中のモータードライブのスイッチを押し、シャッターを三度切った。深田絵里子だった。彼女の眼はレンズの向こう側にいる牛河の顔をのぞき込んでいた。あの少女は知っている、自分が牛河に密かに見つめられていることを。カメラで隠し撮りされていることも知っている。なぜかは知らないがふかえりにはそれがわかるのだ。 次の日になっても牛河は不快な無力感に包まれて過ごした。目を閉じるとふかえりの視線が残していった疼きを肋骨の内側に感じた。疼きは海岸に次々に寄せる穏やかな波のように、やってきては去っていった。またやってきては去っていった。 気を取り直した牛河は、天吾が出向いた公園に来た。天吾がしたように滑り台の上に立つ。なんと、そこには二つの月が出ていた。俺はどのような仕組みの世界に入ってしまったのだ?これはもともと俺がいた世界ではない。その牛河の扁平な福助頭を青豆は窓の外に発見する。田丸から聞いていた麻布の柳屋敷を偵察しにきた鰐足の醜い男と同じ姿形をしている。なぜこの男がここに現れたのか。もしかしたら、この男は天吾の居場所を知っているのではないのか。青豆は牛河を追跡する。牛河の入ったアパートに川奈天吾の名札を見つけた。 牛河は黒いダウン・ジャケットを着た女が玄関から出てくるのを見た。黒縁の眼鏡をかけ、野球帽を被っている。まったくの手ぶらで足取りは速い。歩幅も大きい。牛河は反射的にスイッチを押し、モータードライブでカメラのシャッターを三度切った。翌日、天吾の予備校に電話をかけ天吾は父親の葬儀のため千倉にいったことを知る。天吾はこれで天涯孤独になったわけだと牛河は思う。まったくの一人だ。母親は彼が二歳になる前に長野県の温泉で絞殺された。殺した男はとうとう捕まらなかった。彼女は夫を捨て、赤ん坊の天吾をつれてその若い男と蓄電していた。 ふかえりの美しい目は牛河を赦していた。いや、赦しているというのではないな、むしろ憐れんでいるように見える。牛河の行いが不浄なものであると知った上で、彼に憐憫を与えているのだ。彼女の目を見ていると肋骨の間に畳針を差し込まれたような鋭い痛みを感じた。自分という人間がひどく歪んだ醜いものに思えた。 目を覚ましたときにあたりは真っ暗だった。暗闇の中でも見えるように置いてある時計が、あるべき場所になかった。牛河は一瞬混乱した。その暗闇の中に黒い影が浮かび上がり、叫び声を上げる暇さえ与えられず、首に腕を回された。牛河は死んでいく自分を感じた。 意識が戻ったとき,牛河は寝袋から出されたいた。目隠しをされて両手は背中の後ろに回され柔らかい布のようなもので縛られている。「それほど簡単には死なない」と男の声が言った。まるで牛河の気持ちを読み取ったように。 父親の遺体はきれいにアイロンのかかったNHKの集金人の制服に晴れがましく包まれ、簡素な棺に収められた。カステラの木箱をいくぶん丈夫にした程度の、いかにも愛想のない代物だった。火葬場までつきあってくれた安達クミは、自分は前に一度死んだ、冷たい雨の降る寂しい夜に、という。昔からそのときのことをよく夢で見る。誰かが私の首を絞めていた。私の知らない見たこともない男。あなたのお父さんは、なにか秘密を抱えてあっち側に行っちゃったのかもしれない。天吾くんは暗い入り口をこれ以上のぞき込まない方がいい。そういうのは猫たちに任せておいた方がいい。フクロウくんもそういっている。フクロウくんは森の守護神で、物知りだから、夜の智慧を私たちに与えてくれる。 田丸の拳が牛河の左の腎臓にめり込む。正直にしゃべれと忠告を受けて正直に喋っているのだが、「さきがけ」とこの男がお互いに掴んでいる情報と、どうすればこの絶対的危機を脱することができるかが飲み込めてない牛河には、腎臓のくらった衝撃のせいだけではなく、うまく言えない事柄もある。すると牛河の頭にはビニール袋がかぶせられ、首に大きな輪ゴムでとめられる。「海の底」を経験させられた。脳が頭の中いっぱいに広がり口はビニールを吸い込み、多少の失禁をした。 ユングが建てたチューリッヒ湖畔の「塔」の入り口には、ユング自身によって文字を刻まれた石が、今でもはめ込まれていると田丸が言う。『冷たくても、冷たくなくても、神はここにいる』。ちょっと声に出して言ってみてくれないか?牛河は言われたとおりその言葉を繰り返す。田丸は目を閉じ、しばらくその言葉の余韻を味わっていた。「悪いな」タマルは静かに言った。再びビニール袋が牛河の頭にかぶせられた。「シェイクスピアが書いているように、今日死んでしまえば、明日は死ななくてすむ。お互いなるたけよい面を見るようにしようじゃないか」 牛河は知りすぎていたのだ。寝袋から出された彼の体は再び動くことはない。その禿げかけた扁平な福助頭の横側に、黒い髪の毛が陰毛のようにへばりついていた。 タマルから青豆に電話が入る。牛河は強く説得されたと。 「つまりあんたのお腹のなかにいる子供がその<声を聞くもの>ということになるのか」。どこかではやし役のリトル・ピープルが「ほうほう」と声を上げる。月たちが耳を澄ませている。リトル・ピープルが耳を澄ましている。部屋が耳を澄ましている。リーダーは死に際して私の胎内にこの小さなものをセットしていった。それが私の推測だ。あるいは直感だ。とすれば結局のところ、私はあの死んだ男の遺していった意思に操られ、彼の設定した目的地に向けて導かれているということなのか。 青豆の依頼を受けたタマルから天吾に電話が入る。彼女は今晩、あの滑り台の上であなたを待つと。持っていきたい大事なものがあったら、そのまま遠くに移動できるように両手を自由に使えるようなものにして欲しいと言われる。天吾は約束の時間に滑り台の上に座って目を閉じて待つ。気がつくと誰かが横にいて彼の右手を握っていた。革ジャンパーのポケットの中の天吾の大きな手を握りしめていた。 「天吾くん」と青豆が耳元で囁いた。低くも高くもない声、彼に何かを約束する声だ。「目を開けて」。天吾は目を開ける。世界にもう一度時間が流れ始める。「月がみえる」と青豆は言った。 急がなくては、と青豆は小声で囁く。そして二人は滑り台の上に立ち上がる。私たちはこの世界をそれぞれに違う言葉で呼んでいたのだ。私はそれを1Q84年という名前で呼び、彼はそれを「猫の町」という名で呼んだ。私たちはお互いに出会うためにこの世界にやってきた。私たち自身にもわからなかったのだけれど、それが私たちがここに入り込んだ目的だった。私はドウタを生もうとしている。そして彼らは私たち三人をそっくり手に入れようとしている。新たな<声を聴く>システムとして。 公園を出ると二人は大きな通りに出てタクシーを拾った。青豆は運転手に国道246号線沿いに三軒茶屋まで行って欲しいと言った。非常階段は見つかった。梯子に近い代物だ。何があってもこの世界から抜け出さなくてはならない。信じるんだ。リーダーが死ぬ前に口にしたことを青豆は思い出す。 ここは見世物の世界 何から何までつくりもの でも私を信じてくれたなら すべてが本物になる 「ねえ、私は一度あなたのために命を捨てようとしたの。あと少しで本当に死ぬところだった。あと数ミリのところで。それを信じてくれる?」 「もちろん」と天吾は言う。 「こころから信じるって言ってくれる?」 「心から信じる」と天吾は心から言う。 階段を上りきる。エッソのタイガーが前と違って顔の左側をこちらに向けている。月はひとつしかない。私たちは1984年に戻ってきたのだ。 二人はその夜、赤坂にある高級ホテルに部屋を取る。二人は口をきくこともなく、暗闇の中で時間をかけてお互いの体を調べ合う。 天吾は言う。「僕らがどれぐらい孤独だったかを知るには、それぞれこのくらいの時間が必要だったんだ」 「動かして」と青豆は彼の耳元で言う。「ゆっくりと時間をかけて」 私たちはここからもうどこにも行かない。どんなことがあろうと私たちには、この一つきりの月を持った世界に踏みとどまるのだ。天吾と私とこの小さなものの三人で。 タイガーをあなたの車に、とエッソの虎は笑う。 | ||||
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天吾の予備校に「新日本学術芸術振興会」を名乗る牛河という男が訪ねてきた。年間三百万の援助を申し出る。気味の悪い男だった。「空気さなぎ」を書いたのが天吾だと知っている気がする。青豆は麻布のマダムにさきがけのリーダーの暗殺を命じられる。彼女は自決用にタマルこと田丸健一に依頼して、ドイツ製の拳銃ヘックラー&コッホを手に入れる。いつものスポーツクラブの仕事から帰宅して夕刊を眺めた彼女の目に、あゆみの顔写真が飛び込んできた。彼女は渋谷のホテルの一室で、バスローブの紐で首を絞められて殺されていた。全裸で、両手は手錠でベッドヘッドに固定され、口の中には着衣が突っ込まれていた。 天吾の愛人・安田恭子の夫から電話が入り、彼女はもうそこには行けなくなった、つまり、家内は既に失われてしまった、と伝えられる。数日後、アパートに牛河が現れる。彼は、我々はあなたに援助の手を伸ばそうとしているのだ、そして率直に言って我々はとても長い腕を持っていると語る。 指示されたとおり、青豆はホテルオークラのロビーでじっと待つ。坊主頭とポニーテイルのボディーガードとおぼしき男が現れ、スイートルームに彼女を連れて行く。真っ暗な部屋の中にいたのは、うつぶせになったままの巨大な肉体を持つ男だった。 天吾は列車に乗って、千葉の千倉に向かう。そこの療養所には認知症になった天吾の父親がいる。天吾は父親に自分の出生を質すが、彼は頑強な狭い魂と陰鬱な記憶を抱えて、海辺の土地で唐突と生き延びている一人の男で、やがて空白が残されている記憶を完全に飲み込んでしまうのだと覚る。それはおれが生まれてきた空白と同じなのだろうか。 行方不明だったふかえりが天吾のアパートにやってきた。ここで一緒にいるという。そしてまたしても予備校には牛河が現れる。天吾は予備校の公衆電話からふかえりに電話をかける。ふかえりは「リトル・ピープルがさわいでいる」「イヘンがあろうとしている」と天吾にいう。ビート・ゴーズ・オン。 巨大な肉体を持ち、大きな高い鼻と薄い唇、窪んだ小さな眼と白髪の交じった長い髪を持つ、その男は、青豆が彼を殺しに来たのを知っていた。男は病んでいる。全身をくまなく常に巨大な痛みが襲っている。彼は自身をリトル・ピープルのパッシヴァ、声を聞くものだという。痛みはその恩恵と交換に与えられたらしい。渋谷で死んだ中野あゆみの殺害に彼らが関与していることがほのめかされる。彼はまた、彼女と天吾のことも知っていた。1Q84は青豆がつくった言葉だが、青豆たちは入るべくしてこの世界に足を踏み入れたのだと男はいう、心から一歩も出ない言葉など存在しないのだ、と。月が二つ浮かんでいるのは、路線が切り替えられたしるしなのだ。青豆が死に天吾が生きるか、天吾が死に青豆が生きるかのどちらかだと男はいう。男と話す間に、奇妙にも共感をしてしまったこの男に、青豆は、あなたを殺さなくても住む世界があったかもしれないというが、その世界はもうないと男は否定する。青豆のとがった針先が男の首筋に当てられる。稲妻のない落雷がひときわ激しく轟いた。雨がぱらぱらと窓にあたった。すべては無音のうちに終わった。 ホテルを出ることに成功した青豆は、いわれたとおり新宿から田丸に電話する。高円寺のセーフハウスに身を隠せと指示を受ける。そこには外出しないで暮らせるようにすべてのものが整えられていた。 そこに落ち着いた彼女は思う。私は天吾くんを愛している。 セイリのない、したがってニンシンしないふかえりと交わり射精するという、オマジナイを受けた天吾はその儀式の最中に突如として、十歳の時に無言で手を固く握って去って行った青豆のことを思い出す。ふかえりは思慮深げに「そのひとはすぐちかくにいるかもしれない」という。 彼女は十歳のときに、父親である男に犯された。男が言ったことをそのまま受け入れるならば、彼らは多義的に交わった。そしてその行為をとおして、リトル・ピープルを彼の中へと導いた。 天吾は青豆のことを思い出そうとする。彼女に手を握られていた数十秒の間に天吾は多くのものを目にしたし、まるでカメラのようにそれらの像を網膜に焼き付けた。彼女の右手は、大丈夫、あなたには私がいる、と告げていた。あなたは孤独ではない。 そう、そこには月があった。 夕暮れ前の空に四分の三の大きさの月がぽっかりと浮かんでいた。月がおれを青豆のいる場所に導いてくれるというのか?高円寺のアパートの近くの空の一角に、もう一個の月が浮かんでいることに気がついた。錯覚ではない。月は二個ある。月は相変わらず寡黙だった。しかしもう孤独ではない。 リトル・ピープルは、十歳のふかえりをマザとして、空気さなぎからドウタをつくった。ふかえりはそのドウタを教団に残して、父親にかねてから言われていた彼の友人である、高尾山近くの山に住む日本画家の元に逃げたのだ。リトルピープルはマザであるふかえりに手を出すことはできないらしい。そのかわりにまわりにいる人間たちを滅ぼすことができる。複数のドウタがリトルピープルのためにパッシヴァ=知覚するものとなり、巫女の役割を果たすことになった。リーダーが性的な関係を結んだのは少女たちの実体ではなく、彼女たちの分身であると考えれば「多義的に交わった」というリーダーの表現も腑に落ちる。実体ではない彼女たちに生理はない。 私はたぶんふかえりと天吾がつくった「反リトルピープル的モーメント」の通路に引き込まれてしまったのだ。青豆は高円寺のセーフハウスに他の本と一緒に置かれていた「空気さなぎ」を読みながらそう覚る。本のページに鼻をつけ、そこにある匂いを吸い込む。紙の匂い、インクの匂い。底にある天吾の心臓の鼓動に耳を澄ませる。これが王国なのだ、と彼女は思う。私には死ぬ用意ができている、いつでも。 ふかえりになにかレコードをかけるようお願いされて、天吾はローリング・ストーンズの「リトル・レッド・ルースター」をかける。ミック・ジャガーがシカゴ・ブルースに一番傾倒していたときの曲だ。「しんぱいしなくていい」とふかえりはいう。「そのひとがあなたをみつける」「この世界のどこかで」 「わたしがチカクしてあなたがうけいれる」君は知覚し、僕が受け入れる、と天吾は人称を入れ替えて言い直した。ふかえりは肯いた。 青豆はタクシーを拾って用賀から首都高の三号線を池尻出口の手前まで行くようにいう。あの非常階段のところで降りた彼女は、ジュンコ・シマダのスーツにシャルル・ジョルダンのハイヒール。白いブラウス。ストッキングにワイヤの入った白いブラで、ファッションモデルのように、背筋を真っ直ぐ伸ばして大股で堂々と歩を運んだ。 しかし、そこに非常階段はなかった。 出口はふさがれてしまったのだ。 ホテルオークラのスイートルームで、リーダもはっきりとそういった。1Q84年から1984年に戻るための道はない。その世界に入るドアは一方にしか開かないのだ、と。彼女はその事実を確かめた。おしまい。証明は終わり。Q,E,D. 青豆はおもむろにヘックラー&コッホをバッグから取り出し、弾丸を装填した。銃把を上にして銃口を口の中に突っ込んだ。銃口は真っ直ぐ大脳に向けられていた。意識が宿る灰色の迷宮に。 真新しいメルセデス・ベンツのハンドルを握っている顔立ちのいい中年女性は、まだ青豆の顔をじっと見つめていた。アントン・チェーホフも言っているように、物語の中にいったん拳銃が登場したら、それはどこかで発射されなくてはいけないの。それが物語という意味なの。 タイガーをあなたの車に。 「ほうほう」とはやし役のリトル・ピープルが言った。 「ほうほう」と残りの六人が声を合わせた。 「天吾くん」と青豆は言った。そして引き金にあてた指に力を入れた。 東京駅を出る特急電車に乗って天吾は館山に向かった。館山で各駅停車に乗り換え、千倉まで行った。そこに控えた死を前に、眠り続ける父親に天吾は話しかける。「僕にとってもっとも切実な問題は、これまで誰かを真剣に愛せなかったということだと思う。生まれてこの方、僕は無条件でひとをすきになったことがないんだ。この相手になら自分を投げ出してもいいという気持ちになったことがない。ただの一度も」 父親はやがて検査室に連れて行かれた。看護婦のすすめに従って下の食堂で温かいお茶を飲んだ。二十分ばかり時間を潰して病室に戻ったとき、父親はまだそこに戻されていなかったが、そのベッドのくぼみの上には、1メートル40か50の見たことのない、白い物体が置かれていた。それは天吾が本で描写したとおりの形状をした「空気さなぎ」だった。 天吾はその裂け目に指を入れ、ゆっくりと左右に押し広げた。天吾がそこに見出したのは、美しい十歳の少女だった。青豆、と彼は口に出した。 淡い光の内側で眠っている少女の手には、紛れもない生命の温もりがあった。青豆はその温もりをここまで伝えに来てくれたのだ天吾はそう思った。それが彼女が二十年前に、あの教室で手渡してくれたパッケージの意味だった。彼はようやくその包みを開き、中身を目にすることができたのだ。 青豆、と天吾は言った。僕は必ず君を見つける。 何があろうと、そこがどのような世界であろうと、彼女がたとえ誰であろうと。 | ||||
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タイトルの通り。 主人公は自分の仕事を終えると、禿げたオッサンを逆ナンパしてHに没頭します。 主人公が好きになれないんじゃ物語としては話になりません。 何で売れたのか謎です。 | ||||
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