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玉蘭
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玉蘭の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全66件 21~40 2/4ページ
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主軸は時代を隔てた二組の男女の時空を越えた交感、あるいは数奇な物語。打算的にして孤独な男女が、慰め傷つけ合う激しい愛の物語。男女の複雑な心理描写や駆け引き、夢も希望もない性交の描写、そこから浮かび上がる女性と男性の性の違い。男の狡さ、女の弱さと強さ。これらの描出は桐野氏ならではの鋭さだと読みながら唸ってしまう。 自分の今いるところは世界の果てなのか。新しい世界なのか。そこから逃げ出そう(解放されよう)とするならば、それにはもう一人の主人公である有子(あるいは「グロテスク」の和恵)のように自らが「毀れる」しかないというのでしょうか。自分を引きずる以上、新しい世界などないのだとしたら何と残酷な結論だろう。ですから最終章の質の物語は、私には蛇足、桐野氏の読者への良心と思えてしまう。 | ||||
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桐野夏生氏という方は、何故、ロマンティックで夢や希望に溢れた性を描くことがないのだろうか・・。打算や堕落や衝動に塗れた性描写は、読んでいて辛くなってしまいます。辛いのは、自分が打算や堕落や衝動に塗れた行動をしてきたことを思い出すからです。 しかしながら、心を辛くさせる登場人物にも惹かれます。キャリアも性もコントロールできなくて翻弄されていく人物たち。医師という専門職の松村、大学教授の道が拓けている萱島、その他現状に鬱屈している男性たち。そして、キャリアを何となく棄てて性に鈍感になる有子。自分も、このように堕ちる可能性を自覚しているので、彼らの心情に興味が湧きます。 ただ、終盤に描かれる質の性と愛は、他の人物とは違うように思いました。「人として相手を愛する」ことが伝わってくるというか。少しほのぼのします。とはいえ、上海時代を引きずっているところが因果だなあと思うわけですが。 | ||||
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桐野夏生氏という方は、何故、ロマンティックで夢や希望に溢れた性を描くことがないのだろうか・・。打算や堕落や衝動に塗れた性描写は、読んでいて辛くなってしまいます。辛いのは、自分が打算や堕落や衝動に塗れた行動をしてきたことを思い出すからです。 しかしながら、心を辛くさせる登場人物にも惹かれます。キャリアも性もコントロールできなくて翻弄されていく人物たち。医師という専門職の松村、大学教授の道が拓けている萱島、その他現状に鬱屈している男性たち。そして、キャリアを何となく棄てて性に鈍感になる有子。自分も、このように堕ちる可能性を自覚しているので、彼らの心情に興味が湧きます。 ただ、終盤に描かれる質の性と愛は、他の人物とは違うように思いました。「人として相手を愛する」ことが伝わってくるというか。少しほのぼのします。とはいえ、上海時代を引きずっているところが因果だなあと思うわけですが。 | ||||
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桐野夏生さんは、女性を描くのがほんとにうまい人だな〜と思った。主人公有子の優等生ならではの生きにくさ、かたくなさ・・・浪子の奔放でいてしたたかないやらしさ。そして何より私が感動(?)したのは上海の寮を取り仕切っている光代(だったかな名前は)に対する浪子の嫌悪感!男の人にはきっとこの光代の嫌さはいまいちわからないかもしれないが、女の私には「そうそう!こういうおばさんいるいる!」とうなってしまった。 このあまりにうますぎる人物描写のため一人一人の人生をもっと深く読んでみたくなってしまい、オムニバス形式のように4人の視点で話が進んでいくのがちょっと散漫な感じがしてなじめなかった。 とはいえ、だれか一人を深く掘り下げて書かれるとすごく濃くなりすぎて読みにくくなったかも。時代や国境を越えて人々がシンクロしてる感じがこの小説の醍醐味だったのかな。 | ||||
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桐野夏生さんは、女性を描くのがほんとにうまい人だな〜と思った。主人公有子の優等生ならではの生きにくさ、かたくなさ・・・浪子の奔放でいてしたたかないやらしさ。そして何より私が感動(?)したのは上海の寮を取り仕切っている光代(だったかな名前は)に対する浪子の嫌悪感!男の人にはきっとこの光代の嫌さはいまいちわからないかもしれないが、女の私には「そうそう!こういうおばさんいるいる!」とうなってしまった。 このあまりにうますぎる人物描写のため一人一人の人生をもっと深く読んでみたくなってしまい、オムニバス形式のように4人の視点で話が進んでいくのがちょっと散漫な感じがしてなじめなかった。 とはいえ、だれか一人を深く掘り下げて書かれるとすごく濃くなりすぎて読みにくくなったかも。時代や国境を越えて人々がシンクロしてる感じがこの小説の醍醐味だったのかな。 | ||||
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本書の結末は読む人を考えさせる。 有子は上海で生まれ変わったのか(再生)、それとも堕落したのか。 男性である私は女性の強さを最後に強く感じた。どんどん壊れていく有子の最後は、こういうことかと唸らせる。 作者は毎度のことだが、男性の内面、作為を見抜くのにたけていて、学生寮での人間関係の描写は面白い。 二つのストーリーをつなぐために霊魂を登場させているので、ホラー小説ではない。 | ||||
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本書の結末は読む人を考えさせる。 有子は上海で生まれ変わったのか(再生)、それとも堕落したのか。 男性である私は女性の強さを最後に強く感じた。どんどん壊れていく有子の最後は、こういうことかと唸らせる。 作者は毎度のことだが、男性の内面、作為を見抜くのにたけていて、学生寮での人間関係の描写は面白い。 二つのストーリーをつなぐために霊魂を登場させているので、ホラー小説ではない。 | ||||
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やはり、いつもながらに読み応えがありました。複雑な、人の心の機微の描写において、桐野さん以上の作家さんを私は知りません。 | ||||
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やはり、いつもながらに読み応えがありました。複雑な、人の心の機微の描写において、桐野さん以上の作家さんを私は知りません。 | ||||
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舞台は中国、広大な土地に咲いた華やかな上海に集まってきた日本人留学生達の閉塞的な関係に辟易する一方、自分の内面の矛盾に自暴自棄になっていく主人公の有子。そんな彼女の暗い部屋に唐突にあらわれた大叔父の広野質の幽霊が有子をさらに狂わせていく。物語は有子から質(ただし)とその妻、浪子の切なく、日中戦争前夜の混沌とした時代を描く。あまりの描写の素晴らしさに驚くが、実はこの質という人物は桐野夏生の大叔父で、実在の人物だそうだ。この女性達の心の機微の緻密な動きは女性作家ならではのもの。 | ||||
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舞台は中国、広大な土地に咲いた華やかな上海に集まってきた日本人留学生達の閉塞的な関係に辟易する一方、自分の内面の矛盾に自暴自棄になっていく主人公の有子。 そんな彼女の暗い部屋に唐突にあらわれた大叔父の広野質の幽霊が有子をさらに狂わせていく。 物語は有子から質(ただし)とその妻、浪子の切なく、日中戦争前夜の混沌とした時代を描く。あまりの描写の素晴らしさに驚くが、実はこの質という人物は桐野夏生の大叔父で、実在の人物だそうだ。 この女性達の心の機微の緻密な動きは女性作家ならではのもの。 | ||||
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東京で仕事も恋も上手くいかずに上海へ留学する有子、有子の元恋人の松村、有子の大伯父の質、その内縁の妻の浪子、と4人の視点で物語がすすんでゆく。現代に生きる有子の物語と、70年前の広東と上海を舞台にした質と浪子の物語が時を越えて交錯するという、複雑な構成を取っている。スケールの大きい大河ロマンである上、人物の設定や描写がリアルで、読み始めたら止まらなくなった。 現代に生きる有子は自己との「神経戦」で敗れ、「壊れていく」が、その壊れ方が非常に痛々しい。それとは対照的に、日中戦争を目前にした内戦の中、結核と戦う浪子の生と死が描かれる。浪子に頼まれ安楽死をその手で実行した質は、その後も苦しみ続け、現代に生きる呼吸器科の医師である松村と不思議な邂逅をし、対話する。そして、上海へ有子を追ってきた松村の前へ現れた有子は、現実だったのか夢だったのか、読者の想像次第で色んな解釈が出来るように作られている。 最後は、質の予想外の後半生が描かれる。最後まで展開が読めず、意表をつかれたり、期待を裏切られたりしながら、物語に引き込まれていく。玉蘭のモチーフが幻想的に用いられ、異国情緒にあふれる。男女の心理描写は1級品。 | ||||
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東京で仕事も恋も上手くいかずに上海へ留学する有子、有子の元恋人の松村、有子の大伯父の質、その内縁の妻の浪子、と4人の視点で物語がすすんでゆく。現代に生きる有子の物語と、70年前の広東と上海を舞台にした質と浪子の物語が時を越えて交錯するという、複雑な構成を取っている。スケールの大きい大河ロマンである上、人物の設定や描写がリアルで、読み始めたら止まらなくなった。現代に生きる有子は自己との「神経戦」で敗れ、「壊れていく」が、その壊れ方が非常に痛々しい。それとは対照的に、日中戦争を目前にした内戦の中、結核と戦う浪子の生と死が描かれる。浪子に頼まれ安楽死をその手で実行した質は、その後も苦しみ続け、現代に生きる呼吸器科の医師である松村と不思議な邂逅をし、対話する。そして、上海へ有子を追ってきた松村の前へ現れた有子は、現実だったのか夢だったのか、読者の想像次第で色んな解釈が出来るように作られている。最後は、質の予想外の後半生が描かれる。最後まで展開が読めず、意表をつかれたり、期待を裏切られたりしながら、物語に引き込まれていく。玉蘭のモチーフが幻想的に用いられ、異国情緒にあふれる。男女の心理描写は1級品。 | ||||
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有子は突然現れた叔父の幽霊に聞く。「あなたも共同体からつまはじきされたことがあるの?」「ある。個人として生き抜こうとすると、ぶつかるものは必ずある。」「話して」簡単な話じゃないよ。どこに行っても自分の世界を引きずって最果ての世界に到着する。新しい世界など存在しない、というのはそういう意味だ」「それはよく分からないけど、わたしは孤独だわ」『柔らかな頬』と同じように、この作品では現実とも夢とも分からない描写に満ちている。そして主人公はここでも最果てに心を持っていくのである。世界の中心に自分がいたという思い出だけを連れて。胸が潰れる。だけども、小説とはそういうものだ。謎は提示されるが、謎は必ずしも解決されうるものではないのだろう。 | ||||
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有子は突然現れた叔父の幽霊に聞く。「あなたも共同体からつまはじきされたことがあるの?」「ある。個人として生き抜こうとすると、ぶつかるものは必ずある。」「話して」簡単な話じゃないよ。どこに行っても自分の世界を引きずって最果ての世界に到着する。新しい世界など存在しない、というのはそういう意味だ」「それはよく分からないけど、わたしは孤独だわ」 『柔らかな頬』と同じように、この作品では現実とも夢とも分からない描写に満ちている。そして主人公はここでも最果てに心を持っていくのである。世界の中心に自分がいたという思い出だけを連れて。 胸が潰れる。だけども、小説とはそういうものだ。謎は提示されるが、謎は必ずしも解決されうるものではないのだろう。 | ||||
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上海の湿気と埃混じりの匂いが漂う描写に思わずひき込まれました。恋人と別れ上海に留学した主人公広野有子と、かつて上海で生きた有子の大伯父広野質(ただし)と、有子の恋人松村行生が、異性との近さをどう捉えようとしているのか、描き込んでいます。何度か使われている、どちらが相手としてより良い条件なのかと、相手との距離を「不等号」でしか捉えられないと思われる関係なのか、それらに囚われずに、相手との距離を少しでも縮めることに価値をおいた関係なのか、三者の生き方を、螺旋状にからませながら、書き尽くしています。そして、広野質が有子に伝えた、「新しい場所に足を踏み入れるってことは、良く知っている世界の、実は最果ての地に今いるっていうことなんだ」という言葉は、螺旋を新たに創らんとするメッセージであろうと思います。私は、この書は、ぎりぎりまで、悩み尽くし、落ちる所まで落ち込んだ時に、蘇生するために、まことに有用な書だと読みました。 | ||||
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上海の湿気と埃混じりの匂いが漂う描写に思わずひき込まれました。恋人と別れ上海に留学した主人公広野有子と、かつて上海で生きた有子の大伯父広野質(ただし)と、有子の恋人松村行生が、異性との近さをどう捉えようとしているのか、描き込んでいます。何度か使われている、どちらが相手としてより良い条件なのかと、相手との距離を「不等号」でしか捉えられないと思われる関係なのか、それらに囚われずに、相手との距離を少しでも縮めることに価値をおいた関係なのか、三者の生き方を、螺旋状にからませながら、書き尽くしています。そして、広野質が有子に伝えた、「新しい場所に足を踏み入れるってことは、良く知っている世界の、実は最果ての地に今いるっていうことなんだ」という言葉は、螺旋を新たに創らんとするメッセージであろうと思います。私は、この書は、ぎりぎりまで、悩み尽くし、落ちる所まで落ち込んだ時に、蘇生するために、まことに有用な書だと読みました。 | ||||
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現実の厳しさと幻想とがうまくミックスされています。心理的・肉体的な描写がリアルで大人でないと理解不能でしょう。 | ||||
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中国留学経験のあるものとしては、学生寮で有子が精神が荒んでいく様子や、寮特有の閉塞感・ずっと残り続ける人々の価値観・生活観が生々しすぎ(本当にそういう人がいっぱいいた)、筆者も留学経験があるのかと思わず感じさせた。又、”グロテスク”同様、優等生でずっと育ってきた女の人特有の挫折・屈折の描写がリアルすぎる。これも又筆者が経験無しに書けているとしたら”恐ろしい観察眼”と言わざるを得ない。ただ、作品そのものに関しては救われず、精神的に落ち込んでいる時にはお勧めしない。 | ||||
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中国留学経験のあるものとしては、学生寮で有子が精神が荒んでいく様子や、寮特有の閉塞感・ずっと残り続ける人々の価値観・生活観が生々しすぎ(本当にそういう人がいっぱいいた)、筆者も留学経験があるのかと思わず感じさせた。又、”グロテスク”同様、優等生でずっと育ってきた女の人特有の挫折・屈折の描写がリアルすぎる。これも又筆者が経験無しに書けているとしたら”恐ろしい観察眼”と言わざるを得ない。 ただ、作品そのものに関しては救われず、精神的に落ち込んでいる時にはお勧めしない。 | ||||
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