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OUT
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【この小説が収録されている参考書籍】
OUTの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.10pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全291件 81~100 5/15ページ
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日本で貧困家庭の生活を実感を持って書く人は純文学の世界ではあまりみず、多分それは純文学作家どもが「いい家に生まれた坊ちゃん」「高学歴のエリート」であることが多いからだろう。 こういう悲惨な生活・心情をシャアシャアとかけるのは松本清張の名を出すまでもなく推理作家と相場は決まっている。 貧乏人のことは貧乏人にしかわからない。 そして、そんな下層階級の主婦たちの転落過程を書くのが本作である。 ストーリーテラーとしてはなかなかのもの。 しかし、貧乏人の生活や心情を書いているところは光っているのだが、後半のクライマックス?は火曜サスペンス劇場じみていて、やはり通俗小説だな、と思わせる。テレビ向けと言ってはそれまでだが、実につまらないのである。 この作者の文章で今や純文学の新人賞の選考委員に成果せているのはちょっと違うのではないかと思わずにはいられない。 | ||||
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読了後、言いたいことは山ほどあるが、まずはひと言。 「雅子さん、危ない男にもてすぎ!」である。 ああ、まるで誘蛾灯のように危険な香りのする男を惹きつけること、惹きつけること。 媚びへつらったり、着飾ったりしない主人公のスタンスには憧れるものがあるが、 それ故に集団社会から強制的に排除されてしまうという悲しい性を持った女性でもある。 話の方は、ラストの展開を除けば、非常にスリリングで楽しめた。 諦観、過剰欲求、現実逃避、裏切りへの憤りなど、様々な闇を抱えた4人の主婦が、 日常から非日常に足を踏み入れて、自分だけの出口=「OUT」を求めるストーリー。 てっきり犯罪に手を染めてしまった主婦達とそれを追求しようとする警察との攻防になるのかと思いきや、 まさか死体処理をビジネスとして請け負う話になろうとは…。 それだけに、そのビジネスがたった一回でおじゃんになってしまったのは、物語的に勿体ない。 あと、深夜の弁当工場でのパートという我々が普段知ろうともしない舞台にスポットライトを当てることで 利便性重視と既婚女性に対する労働差別といった現代社会の闇も垣間見えて、実に興味深い。 ラストの展開は「そこでどうしてそうなる!?」とツッコミどころ満載だったが、 ミステリー、鬱展開好きなら一度読んでおいて損はない一冊。 | ||||
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最後の方に書かれている、雅子と佐竹のシーンがなければ最高だと思いました。 雅子と佐竹が、一緒に海外へ逃亡し、幸せに暮らす…というラストだったらいいのに。 でも、そんなラストだと、ここまでヒットする作品にならなかったかな。 個人的には、あんな家捨てて当然だと思うので、 雅子には、警察から逃げ切って、外国で幸せになってほしいです。 それから、師匠の「火事」のところ。スカッとしました。 私の母が、介護に苦労した経験があるんです。 こんなことを書いたら、「お前は人間か?」と言われそうですが、 介護経験者にしかわからないでしょう。 母は20年寝たきりの血がつながっていない人(お舅さんです)を 最後まで家でつきっきりで介護したんです。 ご気分を悪くされた方、申し訳ありません。 本当に、介護経験者(しかも、長期の)にしかわからないことです。 放火は犯罪です。それはよくわかっていますし、もちろん母も私もしませんよ。 | ||||
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バラバラ事件をテーマにしたミステリー小説です。 現実と虚構が折り重なり、大変面白いと思いました。 著者の次の一作を読みたくなる一冊です。 | ||||
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下層階級の女性達が今の生活環境や、精神的ストレス、そして何よりも情けない自分自身から脱出(OUT)したいと願っている。でも、ある出来事がきっかけで事態はまるで予想だにしない方向へと向かって行く。 特に弁当工場で働く主婦や、外国人労働者など、描写の繊細さには脱帽する ストーリーも極めて優れている読み応え抜群のサスペンス作品。 | ||||
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題材は強烈だが家族がいても出口の見えない主婦の現状がリアル。それは、この国で家庭と職を持つ男性や、そこに育つ子どもたちの問題も絡むからだ。生産ラインといっても深夜の弁当工場で働く4人の主婦は今の日本の現状を背負いながら生きるが、わたしたち?同様さほど幸せに生きてはいない。 マイホームを持った雅子の家族でさえ壊れそうだし、いつかこの家族から逃れ自由を望む雅子に対しては多少なら自分自身のように思う。仕事から帰る夫は毎晩夕食が出来ているのを当然の如く、という表現には納得。そんな夫もけっして暴君ではない、優しさがある。しかし、夫も子どもも、それぞれの砦で自分を癒すばかり。そこで雅子は誰かと付き合いたいなどの次元でない自由を望む。 偶然死体や金銭が絡むのだが、それらにさばさばした処置が出来る雅子に感心。映画も観ましたが結末は違います。結局、映画でも観たからと思い、下巻から読みました。やはり映画以上に心理は深い。死体をバラにすることが映画では強調されていたが4人の主婦の心が壊れることが主題になっている様に思う。若くない主婦たちだから余計にリアル。壊れるのは主婦だけでなく、その子どもたちも同様。奇抜な内容だが日本という現状を、主婦たちを通して描いている。 相変わらず、職場で自分の主張が通らない現状。教育界も行政に従う者が横行。このミステリーの中だけでも、ボーンフリー・自由を掴む雅子をいつの間にか応援した。 家族がいても孤独というテーマはこの頃から多くの作家が取り上げるようになった。この物語を読んだ後、「森に眠る魚」を読んでいる。自称家族に尽くすわたしー拙い感想。 こんなミステリーがあれば、孤独が少し和らぐ気持ちになった。 | ||||
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他のレビューでも書かれていますが本当に好みの分かれる終わり方です。 下巻にも上巻並みの書き込みが欲しいですね。余りにもファンタジーで突っ込みどころ満載でした(笑)集中力が切れたような内容の下巻だったのでなぜこれがこんなにも評価されているのか… 終わり方が余りにも残念だったので☆1です | ||||
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桐野夏代『東京島』の映画版に、フォークナーの『八月の光』と『サンクチュアリ』の文庫本の表紙が写る短いショットがある。原作には載っておらず、何のことか判らなかったが、本書を読んでその謎が解けた。桐野こそ日本のフォークナーと呼ぶに相応しいと言っているのだった。このことを示唆した映画制作者の見識に脱帽する。 桐野作品がフォークナーに似ているのは、抜け出しようのない閉鎖社会の中で、登場人物たちが本人も理解できないグロテスクな行動を取りながら、そこに確かな人間の息づかいが感じられるという点である。桐野に足りないのは「おとぼけ」であるが、そこは空想の南部社会で人を動かすフォークナーと、現実社会に足を置く桐野の違いだろう。フォークナーのように Go slow と言ってうそぶいているわけにはゆかないのである。 周囲から仲良しグループとされている四人組だが、それぞれの性格も違うし、普通なら付き合える相手ではない。深夜の弁当工場でのチームワークが辛うじて仲間関係を維持しているに過ぎない。偶発的な事件が、四人に抜き差しならぬ共犯関係を作り上げながら、互いを疑いつつ、金で釣ったり脅したりして、おぞましい仕事を遂行して行く。彼女たちには自分がしている仕事の意味が判っていない。しかしやっと自分たちだけでなし得る「創造的」な仕事を得たという使命感に支えられているのだと読める。 このことは彼女等の私生活から来ている。四家庭ともこれ以上壊れようもないほどの破壊ぶりである。これが彼女等が主婦として献身してきたことの結果である。主婦の献身で守れる家庭などない。これを現代社会の象徴としてみる時、「絆が結ぶ明るい家庭」と、どちらが現実を表象しているだろうか。しかし彼女等の年齢とキャリアでは、主婦を越える自己実現の場など望むべきもないという現実がのしかかる。 この事件で、風評被害にあう佐竹もあがきようがない。関わりのないところで起こったことが一挙に自分を破滅させる。これも現代社会の特徴だ。佐竹にとって、四人組を懲罰したところで戻ってくるものは何もないのだが、そこに長らく封印していた快楽の追求という「創造的な仕事」を見つけ、狂気に取り憑かれたように進んで行くところはまさにフォークナー的世界である。 後半は佐竹光義と香取雅子の一騎打ちになってゆく。そこでは先に「狂気という正気」を失った方が負けである。その瞬間を性交の「絶頂」に賭ける仕掛けが卓越している。この瞬間を佐竹側と雅子側から繰り返し語るのもフォークナー的である。 最後にぎりぎりの和解がある。雅子は言う。「あんたが死んだら自分が死んだと同じだから......」「今あんたがわかったから。あんたと同類だもの......」。社会に背を向ける同士の遅すぎる理解。ここもフォークナー的世界観を見る者としてただ感心するばかりである。 | ||||
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ヨシエをはじめとする深夜パートの女性たちの閉塞感がすごい。その息苦しさに飲み込まれ、死体の解体でも何でも応援してしまう。「何とかして幸せになってくれ。閉塞感の出口(OUT)を見つけてくれ。」と。 特にヨシエを応援していた私は、放火という犯罪に対しても「やったね!」とねぎらいたい気持ちだ。 | ||||
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とんでもない小説だ。「このミステリーがすごい」で年間トップになったり、その後日本推理作家協会賞を受賞したりしてだいぶ話題を集めたから、ある程度面白いとは予想していたが、これほどとは。これに比べると宮部みゆきや真保祐一が子供に見えてしまう気さえする。この一昨で、高村薫も超えてしまったように見えた。大物である。 弁当工場の夜勤という辛い仕事を共有する女たちが、その一人の殺してしまった夫の死体をばらばらに解体するというショッキングな設定。これに、犯人と見なされたために築き上げたものを失った男の復讐が絡む。死体の解体だけではなく、この男が抱える猟奇的な犯罪の過去が物語の倒錯した危険度を高める。 つまり桐野は、人間の心の闇にどうしようもなく惹かれてそれを書きつづける作家に属するのだ。だから暗い。死体解体よりも、その後の猟奇性にドロップアウトする読者もあろう。 しかしそうした生々しさが好きな読者はもとより、苦手な読者にとっても、それを補って余りある魅力がある。まず人間心理に食い込んだ描き方。特に主人公雅子がいい。これは映画で演じる原田美枝子のイメージがぴったりなのだが(映画はしかし、だいぶ趣が違うらしい)、この渋くて強い人物の孤独感は強烈で、読者は彼女の犯罪にもかかわらず、共感し感情移入してしまうのではないか。だから最後の悲惨を恐れながらもどこかで救いを期待するのではないか。 そして半端ではない物語自体の面白さ。過去の謎とサスペンスと対決と。プロットだけでも十分勝負できるだろう。暗い素材にもかかわらず、私などはある種の奇妙な明るさを感じたのだが、それはあまりに面白い筋立てのせいだと思う。話の面白さの痛快さが暗さを吹き飛ばしてしまうのである。これが作家にとって幸か不幸かはわからない。もっと人間の暗部に食い込みたいなら、この娯楽性は邪魔かもしれないからだ。だが、とりあえず楽しみたい読者にはホッとする部分でもある。 いつも思うが、面白い展開を持つ作品ほど、ラストの締めが難しい。幾通りもの展開が考えられる中、結局無難なものになった。これで決して悪くはないとは思うが、作者自身がインタビューで3つほどあった可能性から選択する格好になったのが自分では不満だったと述べている。もっと自然な無意識のものにしたかったと。結末は十分優れているが、強いて弱さを見出せば、作者のそうした選択の迷いのようなものがかすかに感じられるところだろうか。絶対この結末、というほどの迫力ではないからだ。それと最後の凄絶な対決に、それまで耐えていた読者がさすがに辟易する危険もあるだろう。もちろん作者はそれを承知でああいうテーマを選んだのだろうとは思うが。夜3時までかかって一気に読み、その後しばらく眠れなくなった。 | ||||
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ありふれた家庭の不幸を抱えた4人の女性が巻き込まれる事件. 仲間を守るために行った死体処理はビジネスになり, やがて闇社会と関わることになって・・・. 職場での浅い付き合いの仲間をかばうために, 死体をバラバラにして処分するという猟奇性のギャップがすさまじい. たったこれだけのつながりと,少しの報酬でやってのけるにはあまりにも重い行動であるが, それをさして不自然に感じさせない筆力はすごい. ありふれた日常的な不幸の深さを共感させる表現力はさすがである. 後半は,濡れ衣を着せられた殺人の前科者と, 死体処理をビジネスにしようと持ちかけるチンピラの出現で, ストーリーの軸足が,平凡な日常の破滅から,闇社会への関わりに移っていく. 日常から闇へのギャップと,それを超えることがあまりにもあっさりと描かれていることの 薄ら寒い恐怖を感じる. 最終的には,主題となる対象が,日常的な不幸から, 殺人でしか心と身体の一体感を得られない異常者の精神世界がメインテーマとなっていく. それを描ききる筆力はさすがではあるが,やや感情移入しにくい展開ではある. 終盤部分の描きこみを読むと,作者が書きたかったのはどうやらこの異常な精神世界だったようだが, むしろ上巻のありふれた不幸の深さをもっと掘り下げた方がよかったのではないか. 日常と闇とのボーダーのあいまいさという桐野作品に共通したテーマがもっとも強く描かれた作品だけに そこは少し惜しいが,それでもまぎれもない桐野氏の代表作として推せる作品. | ||||
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傑作だと思った。 それにしても桐野さんは女なのに、よく男の心情の描写もできているように感じる。 恐るべき、取材力、想像力。 基本的には女性が持つ本然的な負の感情に焦点を絞って描かれている。 男性が読むのと、女性が読むのとでは感じ方がかなり違うのだろう。 この作品がバラバラ殺人という猟奇的な内容をテーマにしているのに 人生に示唆を与える内容になっているのは、作者の構成力のおかげだと思う。 何より、主な登場人物のキャラクターの設定が、はっきりしている。 どこにも楽観的な、明るい人が出てこないというのが、桐野作品らしいが いろんな負の側面をもつ人間が出てくる。その一人ひとりのキャラが明確な分、 読む方に分かりやすいメッセ―ジが届くようになっている。 人間はお気楽な人なんて実際はいなくて 声に出せない悩みや苦労をたくさんしている。 でも、映像作品ではそうした暗い部分ばかり焦点をあてることはできない。 文字作品だからこそ、描けるのがこのOUTの世界であるし、 そしてこのOUTの世界観は決して現実離れしているわけではなく きわめて、現実生活に密着した内容だと思った。 | ||||
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一生懸命生きているのに、陰鬱とした生活から抜け出せない主婦達。そんな彼女たちが一つの事件をきっかけに、坂道を転げるように転落していく、泥濘にはまっていく。彼女たちはその狂気から抜け出せるのか。出口にあるのは破滅なのか、それとも自由なのか。 本書が描く登場人物達の生活は暗く重い。その重く縛られていた生活が軽々しく転げ落ちて行く様が印象的だった。自分自身が同じような重い境遇にいないため共感するには至らなかったが、人生とはいとも簡単にこれまでの軌道を外れていくのかもしれないと思うと少し怖くなる。 終盤は意外だったどころか、理解できなかったというのが正直なところ。真正面から受けても常軌を逸していると思ってしまうし、斜めに見ればむしろ少しチープにさえ感じてしまう展開だった。結局のところ、私自身が雅子の世界に全く共感できなかったという一点につきるのだろう。 | ||||
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一生懸命生きているのに、陰鬱とした生活から抜け出せない主婦達。そんな彼女たちが一つの事件をきっかけに、坂道を転げるように転落していく、泥濘にはまっていく。彼女たちはその狂気から抜け出せるのか。出口にあるのは破滅なのか、それとも自由なのか。 本書が描く登場人物達の生活は暗く重い。その重く縛られていた生活が軽々しく転げ落ちて行く様が印象的だった。自分自身が同じような重い境遇にいないため共感するには至らなかったが、人生とはいとも簡単にこれまでの軌道を外れていくのかもしれないと思うと少し怖くなる。 終盤は意外だったどころか、理解できなかったというのが正直なところ。真正面から受けても常軌を逸していると思ってしまうし、斜めに見ればむしろ少しチープにさえ感じてしまう展開だった。結局のところ、私自身が雅子の世界に全く共感できなかったという一点につきるのだろう。 | ||||
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人間、追い込まれると 何でもやるのでしょうね・・ つい最近も、同じような事件がありました。 その事件の幼稚さに比べると、数段上のしたたかさと生きる強さを感じます。 桐野さんは、女を描かせると 凄いですね・・ 特に、疲れた中年は・・・・・ | ||||
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久留米で起きた、看護師と元看護師ら4人による保険金殺人を思い出しました。だいぶ動機や手口が違いますが、話題にされたメンバー内の人間関係(力関係?)などがかぶっているように感じました。 まるでリレーのように、主な登場人物それぞれの視点で順に語る手法は、なかなかおもしろいと思いました。しかしクライマックスでこれをやられると、いささか失速した感じは否めません。 失速といえば、主人公はじめ主な登場人物たちが、緊張感溢れるはずの場面でも頻繁に煙草に火をつけているのは、微妙な感じがしました。著者の中ではふつうのことなのかもしれませんが。 4人組の1人が惨殺され、雅子に2件目の「仕事」が舞い込んでから、物語は一気に、リーダー格の雅子と猟奇的殺人鬼とが全面対決するクライマックスを迎えます。 必然性や整合性は随所で破綻しているように思いますが、これを世に出した時点ではサスペンス小説の専門家ではないので許容範囲と考えました。入院中の病床で読み、退屈とは無縁の数日間を送ることができました。 ただ、サスペンスを書くなら、純文学への未練は捨てて、情景描写はほどほどにすべきだろうとも思いました。 | ||||
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直木賞作家、桐野夏生の名を一躍有名にした出世作の上巻。 言葉を発しない息子と疎遠になった夫に孤独感を感じる雅子。見栄っ張りでだらしない生活を送るうちに旦那に逃げられた邦子。寝たきりの義母の看病に疲れ果てているヨシエ。ギャンブルと女にはまり暴力まで振るうようになった夫を持つ弥生。深夜の工場で弁当詰めのアルバイトをする主婦四人はそれぞれの悩みを抱えていた。そんなある日、リーダー格でもある雅子のもとに一本の電話が入る。それは、弥生が夫を殺してしまったというものだった……。 三人称でありながら、それぞれの視線をほぼ一人称のように描いていく手法が秀逸。蛇足だが、この後、桐野夏生はこの手法で傑作を次々と生み出している。この作品は、そういう意味でその出発点とも言える小説だろう。 主婦が企てる完全犯罪。それに巻き込まれ、復讐を始めるヤクザ。裏で動く警察。仲間の裏切り。工場の人間関係。これでもかと詰め込められた要素も、すべてが話にあって絡み合っているのがすごい。 よくぞ、こんなものを書いたものだ、と素直に感心する。 やや、描写にくどいところがあるものの、ストーリーは面白いは、人間造形は魅力的だは、で最後まで飽きさせない。 一般の評価が高いと「けっ」となってしまう僕ですが、これは傑作だと思いました。 ※ほか、ちょっと。 ・主婦たちの口調が男勝りなのもリアル。こんな感じなんだろうなぁとついつい思わされる。 ・この人は格好いい女と、嫌な女を描くのが上手い。雅子は格好いいを極めているし、邦子はとことん嫌な女になっている。上手い。 | ||||
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桐野夏生の出世作の下巻。 図らずも佐竹というヤクザに罪を着せることに成功した雅子たち。彼女たちの日常は、一見すると落ち着いたように思えた。だが、金を欲しがる邦子が弥生を保証人に立てたことから事態は一変。事実を隠すために雅子とヨシエは今度は「仕事」として死体処理を請け負う。一方、警察を抜け出した佐竹は、極秘に復讐を企てはじめ……。 上巻同様、文句なしの堂々とした傑作です。 こういう作品は読んでいて心地よく、次が気になり自然とページをめくる手も早くなります。 まさに王道エンターテインメント。 未読の方はぜひ。 | ||||
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友人の薦めで読みました。 ストーリーやキャラクターには魅力を感じましたが、文章があまりに単純で心に響かないものだったので、何度も読むのを止めたくなりました。 何でもくっきりはっきり言えばいいものでは無いと思うのです。人によってその書かれている深意を想像し、それぞれの解釈で受け止められるのが文学の楽しさだと思うので。事ある毎に心情の解釈がうるさいので、NHKの朝ドラを見ているようだ、と思いました。それとも、サスペンスとはこういうものなのでしょうか。サスペンスは中学の時に読んだ赤川次郎以来なのでよくわかりません。 この文章力で賞をとったと聞いてさらに衝撃でした。残念ながら私の文学欲求を満たしてくれる作品ではありませんでした。映画化等されているようなので単純にエンターテイメントとして見るべきだと思います。 | ||||
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読んでいる途中から、作者がどっちの方向へ 持って行こうとしているのかが段々と見え始め、 登場人物たちが素直に作者の指示通りに動いて いるような気がした。出口へと駆り立てる悪魔 的な衝動を演出しようとしているが、表面的で、 肉迫してこない。単なる作り話の領域に留まって しまっている。 | ||||
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