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悼む人
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悼む人の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.03pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全147件 141~147 8/8ページ
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読み進むうちに1人のミュージシャンの楽曲と一本の映画の台詞、そして1人の人物を想起した。『永久欠番』(中島みゆき)、“多勢を殺すことが英雄で1人を殺すことは何故罪なのか”(C.チャプリン−殺人狂時代)、そして筑紫哲也さん。 主人公は自らとは直接に関係のない“他人(この場合はヒトと読むべきである)”の死の場面に自らの足を向け、その姿は周囲から奇行として映り反発を呼ぶ。新聞に例えるなら小さなベタ記事、或いは扱われないかもしれない小さな事実。けれども主人公が向き合うのは物語としての“生と死”であり、死者とその人に関係のある人との間の物語である。“命に軽重はない”とはいうものの、大きな事故や著名な人物の死は大きく扱われる。けれど一方で日常どこかで起き続けているはずの、語弊があるかもしれないが、普通の死との扱いには大きな隔たりがある。それほどに命の重さには違いがあるのか、著者の問いかけに応える術があると私には自信をもってはいえない。少なくとも当事者にとっては“かけがえのない人物”が目の前から姿を消してしまっても、世間は普通に時を刻んでいく。自らの中では時が止まったままで周囲の時は動いていく。こんな理不尽で残酷な物語も他にはない。最初に掲げた2つの作品と1人の人物は、最後までこの『小さな物語』の累積から眼を離していない。むしろ小さな物語の累積=人間の物語としてとらえることで『生』があることを語っている。スピリチュアルが時代の雰囲気として耳目を集める中、何もそうした流れは精神世界論の専売特許でもない。キリスト教や仏教、西洋哲学史の中に脈々として受け継がれてきたDNAでもある。『死』という事実に向き合うことの意味、そして言葉では言い尽くすことの困難な状況に向けられる著者の眼差しからは『物語としての命』を素直に感じ取ることができた。 | ||||
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凶悪事件の報道を見るたびに、心が千々に乱れていた。 自分の中で処理しきれずに、泣き崩れ、寝込んでしまうこともあった。 だから、この本は、他人事のようには読めないのです。 私も、『悼む人』として生きたい。 それが偽善であるか、どうかは別として。 また、主人公の静人のような徹底した『悼み』を行えるわけではなく、 巡礼の旅にでるわけにもいかないけれど。 人の死を悼む心を持ち続けたい。 毎日、祈りたい。 私にとっては「小説」というより、「生き方」の本でした。 一人でも多くの方に読んでいただいて、何かを感じ、何かを考えてほしい本です。 | ||||
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主人公の母親坂築巡子の性格が、どうにもこうにも気色悪く感じてしまい、 読んでいてイライラした。 私は文芸評論家じゃないから、本作の文芸的な価値はわからないけど、 至極個人的な感想としては、「ああつまらなかった」である。 | ||||
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天童荒太氏の8年ぶりの長編だ。本書の主人公静人は、ある出来事から心理的な葛藤を起こし、全国津々浦々をまわりあらゆる死を悼む旅をするようになる。そしていつしか悼む人と呼ばれる。本書の中には数十の死を悼む主人公の行いが描かれる。とにかく死が連続する。 その悼みの中で、賛同者として新聞記者、心を痛めた女性が共感をする。静人の家族も辛い思いの中で静人を思い出す。400ページを悠に超える大長編の死と生、そして愛についての物語を読み進める中で、いつしか自分の家族、仲間などを思い浮かべていた。 物語は死の連続が、いつしか凝縮した愛に変わっていく。 当たり前ですが、天童さんが8年間想いを込めてつくった作品、笑ったり、ホロリとする中で一気に読み終えます。 | ||||
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あまりに大きく重いいテーマである「死」、著者は7年という歳月を掛け向き合った渾身の作品だ。読み終わった後には、虚無感ともいえる思いが沸き起こったのは、決して私だけではあるまい。恵まれた人間ほど、己がどれほどに幸福かを知らない。「死」という誰もがいつかは直面することを、私たちは向き合うことなく、いや向き合いたくないがために目をそむけ生活している。著者は、「死」という決して避けて通ることのできないテーマを眼前に壁の如く建立させているかのようだ。猟奇殺人、事故、自殺身近で起こるさまざまな「死」を、あたかも遠い世界で起きた事のように歯牙にもかけない己たちの愚かさを痛感せずにはいられない。著者は、改めて「人の命の尊さ」「死後」を作品を通じて問うているのではと考える。読後に虚無感と同時に胸にこみ上げてきた何か。改めて、「人の命の重さとは」を問う日々はしばらく続きそうである。 | ||||
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何らかの理由でこの世を去らなくなってしまった人々を訪ね悼む事を続けるひとりの青年。成仏出来るよう供養する訳でも、自身の宗教的修行と言う訳でもない。その人が他の誰とも違うたったひとりの人物だったとして、その存在を自らの心に刻み込みながら全国を回る。 あの傑作「永遠の仔」から7年の月日を経て、天童荒太待望の新作である。早速購入、一読した。 心の奥底で決して消す事の出来ない傷とそれを引きずり続ける後遺症。 今までの天童文学の延長上にあるのが、今作の蒔野や倖世。彼らはその過酷な過去にもがき苦しみ、その影響で露悪的になったり、ねじくれた感性しか持ち合わせられなくなってしまった人物たちだ。 これでもかと続く亡くなった者とその遺族たちの事例。物語は、悼む人・静人の行動を追いながら、読む者に予断を与えぬまま、登場人物たちの辛苦で沈鬱な世界観が語られる。 果たして救済されるのは誰なのか、そして、静人の旅に終わりが来るのか、終盤になっての心理ドラマは読み応えあるが、光明、愛重、安寧、ポジティブなキー・ワードが頭に思い浮かぶものの、このスピリチュアルとも言える感覚に付いていけるかどうかで、好き嫌いは分かれるんじゃないか。 「永遠の仔」や「家族狩り」と言ったミステリー仕立てではないこの壮絶、純化された天童ワールドに個人的には逃げ出したくなる部分もあるが、一読の価値はある。 | ||||
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事件、事故、病気、亡くなった人を訪ねて故人を知る人に「その人は、誰に愛 されたのでしょうか。誰を愛していたのでしょう。どんなことをして、人に感謝 されたことがあったでしょうか」と聞いて回っては、故人を忘れないよう胸に刻 み込み、死者を「悼む人」の旅路を縦糸に、彼の帰りを待つ母親のがん闘病を 横糸に物語は彼と関わる人の視点で淡々と進んでいきます。死者を悼みながら旅 を続ける主人公の奇妙な言動は人々を戸惑わせ、いらだたせ、また癒します。 なぜ彼は死者を悼む旅を続けるのか?その原因は読み進むうちに徐々に明らかに なっていきます。しかし、その行為は何を意味するのかは明確に語られません。 彼の対極として描かれる雑誌記者、愛する人を殺した女性を通して語られるその 意味もひとつの解釈であり、解答ではない気がします。 本作品は生と死といった非常に難解なテーマをシンプルに語っているので、 読者がどの段階にあってもよく分かるようにやさしく書かれています。それゆえ 誰でも、彼をどうとらえるか、死とは何か、生きる意味、死者を悼む意味について 考えることができます。誰でも読めて、読む人によって、読む時期によっても 解釈が異なる。これは漫画というやさしいメディアを使って難解なテーマを表現 した手塚治虫に通ずるものがあるように感じました。 読者の数だけ「悼む人」はいるのだと思います。 | ||||
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