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業火の市
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業火の市の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.30pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全20件 1~20 1/1ページ
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ドン・ウィンズロウが引退すると知り、遺作となった『終の市』を、敬意を表して読むことにした。 が、第三作を読み終え、主人公のダニー・ライアンがどうして東海岸のドックタウンのアイルランド系マフィア・ファミリーの一員として西海岸へ逃亡することになったかを知りたくなり、とにかく三部作の一作目『業火の市』を入手して読むことにした。 巻末の解説で千街昌之が、この物語は、ギリシャ神話をなぞっていると述べて、ホメーロスの『イーリアス』と『オデュッセイア』や、古代ローマの詩人『アエネーイス』といった叙事詩であり、本書の筋立はそれらで語られたトロイヤ戦争を踏まえている。 この件を読み、ストーリーの記憶を辿ってみたが「なるほど」と思ってしまったのです。 これほど見事にマフィアの対立闘争劇にアレンジする才能に、ドン・ウィンズロウならではの才能の豊かさに感じ入りながら第一作『業火の市』を読み終えた。 本書を読み終え、連続ものとしてストーリーの真中が抜けている中途半端な感じになってしまったので第二作の『陽炎の市』もAmazonへ注文してしまいました。 | ||||
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アメリカ東海岸の街、アイルランド系マフィアとイタリア系マフィアの抗争。目には目を、血には血を、連鎖していく報復の鎖。 発端は些細なことで、1人の若者の愚かな行動が小さなさざ波となり、やがて大きく渦をなしてすべてを飲み込んでいく。 血が流れるほどに命の重さが麻痺していく感覚が恐ろしい。 冒頭のアイルランド系もイタリア系も関係なく皆で夏を過ごしていたシーンが夢のように思えます。 解説にホメロスのイーリアスが下敷きになっていると書いてあり、納得しました。 ウィンズロウはこの3部作をもって作家引退を宣言しているそうですが、まだまだ読みたかった。 | ||||
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この作品の評価は分かれますが 私は最後まで楽しめました | ||||
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前シリーズと比べるとスケールは小さくなった感じはあるけど、作者独特のヘビーなストーリーは変わらず面白い。 全3部作ということで、来年の夏が楽しみ。 | ||||
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位置関係がわかる地図と登場人物の説明がわかりやすいように大きな文字で | ||||
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「ゴッドファーザー」や「グッドフェローズ」に心掴まれた私にとって、マフィアを描いた作品を避けて通ることは考えられない。 ましてや著者があのドン・ウィンズロウとなれば尚更のこと。 ドン・ウィンズロウ×マフィアとなれば否応なしに期待値は高まってしまうものだが、そんなハードルなど軽々と超えるほど本作は素晴らしい作品となっている。 マフィア作品お馴染みの、ファミリー同士の絆、陰謀と裏切り、血で血を洗う凄惨な暴力の連鎖はもちろんのこと、 個人的にマフィア作品で最も重視している要素である、暴力への虚無感が本作ではしっかりと描かれている。 暴力を生業としている彼らが暴力の虚しさに気付いていく様は、人間の愚かさを映し出すと同時に己の運命を受け入れた者だけが持つ強さをもまた映し出す。 日常や平和が如何に脆弱で儚いものか痛感させられるだろう。 また各人の思惑・私利私欲が絡まり、ほんの些細なことが火種と化し、引き返せない状況になっていく物語の展開は全く予想がつかない。 儲けることしか頭にない者、血を家族を何よりも大切にする者、血や家族に懐疑的になる者などそれぞれの価値観が異なるが故に、いつそれが衝突するか読者は気が気でないはずだ。 いつ誰に何が起こるか分からない緊張感と、誰が何を目的として裏で動いているのかという疑心がページを繰る手を止めさせない。 予想がつかない展開でありながらも、いざそれが起きてしまうとそうなることが必然だったかのような見事な物語の構成。 マフィアという遠い世界で生きる人々でありながらも彼らの心情をリアルに描く巧みな人物描写。 巨匠ドン・ウィンズロウの筆力にただただ身を委ね、彼の紡いだ物語を読めるその幸福を是非とも噛み締めてほしい。 | ||||
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ゆえにさかのぼりがものすごいです。主人公の父母のみならず、ほぼすべての登場人物の生い立ちが語られる550ページになります。物語の展開はなぜか巻末についている第2部の「予告編(おまけ)」20ページでじゅうぶんに伝わってしまうという不思議な小説でした。 ギリシャ神話にはまったく無知ですので、なぜこんなに饒舌で長台詞を現在形で話すのか、ちょっと苦しかったです。いわゆる「日本の時代小説」のような独特の「間合い」「独白」「独りよがり」にお付き合いできるのであればオススメしますが時間の流れが遅すぎて、自分としては続編に進むかどうかかなり微妙です。 | ||||
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80年代を時代背景として描いているから当然と言えば当然なのだけど、女性描写も男性描写も時代錯誤的・表面的で奥深さが感じられない。 | ||||
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大好きな著者です。 読み終えるのが勿体なく思える。 続編が大変楽しみ! | ||||
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『犬の力』シリーズは夢中で読んだ。 「そろそろ切り上げて寝ないと明日ヤバい」 と思いつつ、やめられずにグイグイ読んだ。 そして『ダ・フォース』の新聞広告みて 「やったー!ウィンズロウの新作だ!」と はしゃいで買ったら 「うーん、なんか平凡…」という感想だった。 それでもまた この『業火の市』の新聞広告をみて 「今度こそは!」と期待して買った。 しかしまたもや 「うーん、なんか平凡…」という感想である。 一生懸命練ったプロットに 一生懸命設定を練った登場人物を あてはめてるだけの展開。 よくまとまってる?が、 『犬の力』のような疾走感はないです。 考えてみると『犬の力』シリーズも 最後の『ボーダー』あたりは こんな感じだった。 きっと作者は『犬の力』シリーズで 全てを出し切ったのだろう。 『犬の力』に匹敵する新作は もう書けないのかもしれない。 でもいいじゃないか。 『犬の力』シリーズは何度読んでも面白い。 だからいいのだ。 『ダ・フォース』や『業火の市』は たまに暇つぶしに読めばいい。 そうすればあらためて『犬の力』の凄さを 再確認できる。 だからいいのだ。 | ||||
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デニス・ルヘインの暗黒街シリーズに似た感じの背景でした。おもしろかったです。続編期待しています。 | ||||
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読後の興奮冷めやらず、すぐにレビューが書けないほど、この本のカオスにやられた。そしていつもながら、ウィンズロウの文章にやられた。ともかくキックの強い作品なのだ。いつも。キャラクターたちの運命が神の視点で書かれてゆく悲喜こもごもの人間絵図。愚かで、強欲で、弱くて、それでも必死に生きてゆき、時に美しく、明るく、悲しく、それぞれの生を楽しんでいながら、運命の残酷に翻弄されざるを得ない男たち、女たち。 この初夏、この本の出る少し前の頃、大画面TVに新調した我が家で、ぼくはコーエン兄弟のTVドラマ『ファーゴ/FARGO』シリーズ4作に、遅まきながらはまっていた。ユーモアと残酷を取り混ぜながらの人間の愚かさ、可笑しさ、運命の皮肉などを抽き出してゆく脚本と演出は、昔から変わらぬコーエン兄弟の元気っぷりを見せてくれるが、中でも家族対家族というやくざ一家同士の対立を描くシーズン2と、人種の違いによる長年の二大やくざ組織の平和と対立を描くシーズン4は、それぞれが、ミネソタ州ファーゴ、ミズーリ州カンザスシティが舞台である。 アメリカの中心とは決して言えない田舎町での殺し合いや絶滅を描くプロットが、実はロードアイランド州プロビデンスという田舎町を舞台にした本書とイメージで重なる。多くの共通点や違いを比べながら本書を『ファーゴ』ともども楽しむことができたのは幸運だったように思う。 さて本書に集中しよう。手に汗握る展開、個性あふれる語り口、展開の妙、全体の構成、人間喜劇のような皮肉極まる展開、そして終わってみれば愚かな一握りのキャラクターによって引き起こされる大きな悲劇。累々と転がる屍のトレール。どちらも運命の皮肉を痛感させながら、かくも愚かなる闘争に巻き込まれてゆかざるを得ない業と欲にまみれた人間たちの悲劇。 本書は、ウィンズロウがこれまで数限りなく描いてきた、愚かでありながら精いっぱい人生の海を漕いでゆこうと足掻いてゆく若者たちの姿を、再度、舞台を変え、時代を変え、生き生きと描く三部作の第一篇である。この一作だけでも一端完結しているが、巻末には次作のエピローグというサービス・ページが寄せられている。ここでやめられなくなる次なる地獄への手引きのようだ。 これまでに巨大麻薬カルテルと執念の保安官の対決や、メキシコからの密入国者たちの運命などを大掛かりに取り混ぜて書いてきた感の強いウィンズロウだが、本書では一端既存の作品をリセットして、人生最後の作品と作者自ら豪語して書き始めた、いわゆる魂の三部作なのである。これまでの他シリーズを読んでいなくても、本書で改めてウィンズロウの作品の魅力、読みやすさ、不思議なその文章の引力、などを体験されることを望みたい。 長年に渡って全作を読んできたこの天才作家の超愛読者のぼくとしては、最後の作品が、ロードアイランド州プロビデンスという、大都会でもメキシコ国境地帯でもない海の町を舞台にしているところが、一時書いていたブーン・ダニエルズ・シリーズや映画化もされている『野蛮な奴ら』みたいで新鮮であった。のっけからビーチで仲良く遊ぶアイルランド系とイタリア系の二大ファミリーの姿が登場。この辺りの描写がとても書きなれていて上手いのだ。しかしここで登場する二大ファミリーが運命の決裂によって如何に愚かな争いに巻き込まれてゆくかという、例によって時間軸でのスケールが大な物語である。 人物たちの個性と、運命の歯車が回ってゆく様子を、巨大な人間絵図として見て頂きたい。ウィンズロウのラスト三部作は、何とギリシア神話を基にした人間悲喜劇の現代版=ウィンズロウ版だそうである。壮大な構想。本書だけでも満腹になる内容だが、これは三部作のまだアペリティフに過ぎない。嘘だろう、とそんな風に思わず呟きたくなるけれど、大いなる序章として、まずは十分に満足である。 | ||||
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「物語の力」がいちばん発揮されるのは、普遍/不変の物語においてである、と思う。それを、本作を読んで感じさせられた。 ギリシャ悲劇をマフィアものの枠組みに当て込んだという本作は、ドン・ウィンズロウのこれまでの作品──『ダ・フォース』や、もちろん『犬の力』三部作のような──に比して、格段にわかりやすい構造だ。 ひとつの街にふたつの対立するファミリーがあり、ふたつの世代──血の抗争を経て宥和をもたらした老人世代と、そのありがたみを理解できない若者世代──の対立があり、人種の対立もあり、そして男と女の物語がある。 だからこそ、読者は共感する。マフィアのように血で血を洗わなくても、セクションの争い、世代間の対立、男と女の情のもつれはどこにでもある。これは、普遍である。だからこそ、読者は自分のこととしてひきよせて、共感できる。シンプルにされた物語の構造がそうさせるのだ。 登場人物の造形もおなじである。正当に評価されていないと思いながら、妻子を守るために行動することで、だんだんと地位を昇るダニー。幼なじみ三人組「パットダニージミーー」の友情。向こう見ずな両ファミリーのナンバー2たち……。すべてが人間臭く、生き生きとしていると感じるのは、私だけではないだろう。 私がとくに好きなのは、両ファミリーのご隠居、ダニーの父親マーティ・ライアンと、イタリア系のパスコ・フェリだ。このふたりは定期的に思い出語りをする。それがあることで、ドッグタウンに時間の奥行きが生まれている。そして平和の努力をひたむきにしたのであろう老人へのリスペクト不足……これはいつの時代にもありそうな話だが、ポスト冷戦のいま、とくに考えざるをえない。 また、ラストでヘロインを海に投げ棄てるのは、『ダ・フォース』のラスト、マローンがハドソン川の岸に身を横たえる場面を彷彿とさせた。ウィンズロウの創出するヒーローは、たとえダーティな黒社会の構成員でも、人を狂わせるだけの存在である麻薬で得たカネは手にしない。その矜持はもはや説明不要のウィンズロウ印といえるだろう。 血腥い、いわばアメリカ東海岸版『仁義なき戦い』といわんばかりの世界のなかでも、登場人物にはそれぞれにどこか共感可能な部分がかならずあり、それが登場人物たちを生き生きとさせる。 ウィンズロウが本作を書くにあたり、ギリシャ悲劇をベースにしたいと思ったのなら、 それはギリシャ悲劇に「物語」のすべてがつまっていたからだろう。そして人類の営みが、ギリシャの時代から不変であることの証でもあるだろう。そしてそのベースが「いま・ここ」に接続されたとき……物語は力強く動きだす。三部作の一作めにふさわしい幕開けだ。 普遍/不変の物語が、ウィンズロウの手によってあらたに生まれ変わる。 そんな小説だ。 ああ、ダニーのその後、マーティのその後が気になって仕方がない。つづきが読みたくてたまらない。ウィンズロウよ、ありがとう。 | ||||
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ハードな世界観、テンポの良いストーリー展開、的確な描写はいつものレベルを維持。 ゴッドファーザーともソプラノスとも違うマフィア物で 一気に楽しんで読めました。 欲を言えば、もう少し"頭脳戦" やヒネりが見たかったかなぁ。 引退したドン・パスコが怒り狂って現役復帰する、でも良かったのにw | ||||
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新しい3部作の第1部に相応しい幕開けだ!! | ||||
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「犬の力」3部作に続くドン・ウィンズロウの3部作だが、アメリカの麻薬戦争という複数の国にまたがる大舞台で展開した前シリーズとは違って、プロヴィデンスという一地方の日本で言う地場ヤクザ、アイルランド系とイタリア系の限定された抗争を描いている。 その分前作のような度外れの暴力や人間性を捨て去ったようなキャラクターは出てこず、それぞれの私生活を持つ登場人物の誰一人として全面戦争は望んでいないのに破滅へと突き進んでいく運命的な群像劇になっている。 東映の実録ヤクザものやフィルムノワール映画に親しんできた方ならストーリーに入り込みやすいのではないかと思う。(私の場合キャラクターを組長・若頭・相談役のオジキなどと脳内変換しながら読んでいたが、全く違和感がなかった) 逆に言えば前作に顕著だった暴風のようなバイオレンスのドライブ感は少なく、そのあたりに不満を持つ方も多いかもしれない。 実は作者はギリシャ叙事詩、オデュッセイアやアエネーイスをマフィアの世界を舞台に描く構想だったそうで、時代設定を禁酒法時代や現代ではなく1980年代としたのも家族・組織・地元などのコミュニティにまだ古いカトリック的な倫理観が強く働いている時代、ということなのだろう。解説にもあるが、登場人物をアキレウス、オデュッセウス、ヘレネ、アフロディテ、ヘパイストスなどと置き換えてトロイア戦争との類似を探してみる楽しみ方もある。 本作でトロイア戦争が終結したとすると、第2作・3作ではオリジナル色が強くなっていくだろう。今後を楽しみに待ちたい。 | ||||
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これほど劣化した作品も珍しい。 ウィンズロウは大好きで、「犬の力」「ザ・カルテル」「ザ・ボーダー」の三 部作は傑作だと思う。麻薬捜査を軸としたこれらの作品は、ウィンズロウの構成 力の非凡さを示している。しかしこの作品はあまりにも出来が悪い。ウィンズロ ウが書いたとは思えないほど質が低い。 アイルランド系の組織とイタリア系の組織との対立の物語=戦争の話だが、小 説としてはまるで面白くない。 この作品ではダラダラとした、まるで実感の伴わない会話が軸となっているが、 スピード感が削がれている。ウィンズロウは何か勘違いしたのだろうか、会話で 構成しようと試みて失敗したとしか思えない。会話そのものも、登場人物の描写 が上手くできていないため、何度も誰が誰にどう言っているのかが分からなくな る。ゆっくり読めばいいのだろうが、それでは疾走感がなくなる。まるで存在感 のない役者が台詞を棒読みしているようなもの。それほど人物がまともに描けて いない。「犬の力」三部作と比較すると、同じ著者とは思えないほどグダグダの 物語。大部の作で必須の、ストーリーのリアリティ、重厚さ、疾走感、がまる でない。情景描写が異常に少なく、そもそも散文的に過ぎる。場面転換でもいき なりの変化で、物語全体が非常に薄っぺらい。 150ページほどまで、どうでもいい話が続き、興を削ぐこと多々。ようやく 物語が膨らみを見せ始めるが、如何せん登場人物がお人形さんが口パクパクのよ うな状態。どうでもいい事件からから「戦争」が始まるが、それも型どおりの進 み方で皆が望んでもいないに関わらず、「総力戦」が開始される。この戦争の 原因もいささか説得力に欠ける。これほど単細胞な人間ばかりで、思わず大丈夫 かと心配さえしてしまう。ギャングで愚かだったら物語が成立しない。 途中で20ページを超す、主人公の母親のどうでもいい「サクセスストーリー」 がある。唐突で何かの伏線かと思わせるが、内容がひどい。「美しい人」を「美 しい」とだけ形容し、悦に入るのはやめてほしい。その母親の経歴たるや、素晴 らしくてなんともはや。主人公の養育を放棄した後、やることなすこと上手くい って、とんとん拍子に大金もち。なにかと近いような。そう、「ハーレクイン・ ロマンス」と同じ。女性がその身体や頭脳だけを武器にのし上がって行く様子は ご都合主義のかたまりでしかない。こうして大金持ちになったとさ。目が点にな った。おまけに20年以上息子を見捨てて連絡もとっていなかったのに、主人公 が大怪我をした、そのどんぴしゃのタイミングで、主人公の救出に駆けつけてく る。ありえない設定の連続。 この調子で最後まで物語はつまらなくひたすらつまらなく続く。200ページ以 降に組織対組織の戦争が始まるが、全員でくの坊。勝手な行動をとっては必ず失 敗し、自業自得の破滅を迎える。これじゃ面白さがどこにもない。 発売当日に購入し、あまりの面白くなさに途中で読むのを止め、なんとか二日 で読んだが、絶望的なつまらなさ。これがウィンズロウの「新三部作」ならこれ 以降の作品もさぞつまらないだろう。 購入するのは間違いでした。古本屋さんに売るのも嫌で(少なくとも好きな作 家(だった)ですから)、処分する予定です。 とにかく質の低下が酷すぎる。「コロナ」下の生活を思いやってか、ウィンズ ロウが何やら書いているが、その暇があったら質の高い本を書いて欲しい。 心底そう思う。 ☆ は どう考えても ☆ のみ。 | ||||
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アメリカ東海岸のある町において、アイルランド系とイタリア系ふたつのマフィア・ファミリーは、互いの縄張りを荒すことなく40年に渡って共存共栄していた。 ところがある美女を巡ってそれぞれの息子たちの間で諍いが起こり傷害事件となる。そこから均衡に亀裂が入り、次第に収束のつかない血で血を洗う凄惨な事態へと発展していく―――「女」は確かにきっかけなのだが、実はイタリア側の次世代頭目の野心が潜んでいたり、後先を考えないバカ息子たちの軽率な行動だったりと、どこの世界ででも耳にするような背景があるのだ。 主人公ダニーは、アイルランド系ファミリー側の娘婿。元々はアイルランド側のツートップの息子だったのだが、父親がアル中で落ちぶれたため、現在は控えめな一兵卒となっている。ところが事態が悪化の一途をたどっていくうちに、やむなく前面に押し出されて行き、とうとう…。 期待を裏切らないおもしろさで、全く退屈することがない。マフィアの世界の暗黒部分をリアルに描くとともに、登場人物それぞれの人間像も個性豊かに表現し、とても優れた人間ドラマとなっている。場面によっては女性作家に劣らぬ繊細さが見受けられた。 私は『犬の力(上・下)』でドン・ウィンズロウの大ファンになったのだが、やはりすごい作家だ。 本作品は三部作で、続刊は来年夏に発売予定とのこと。それまでこの作家の未読の著作に浸ろうと思う。 | ||||
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アート・ケラーの戦争、「ザ・ボーダー」(2019/7月)以来。中短編集、「壊れた世界の者たちよ」を間に挟み、待望の「業火の市 "City On Fire" (ドン・ウィンズロウ ハーパーBOOKS)を読み終えました。 ロードアイランド州。プロヴィデンス。アイルランド系マフィアとイタリア系マフィアがしのぎを削る街。戦争はひとりの女が海から女神のように砂浜に立った時にはじまりました。その時は、誰もその女・パムがイタリア系マフィア、ポーリーの女だとは知らなかった。知ってか知らずか、アイルランド系マフィア、マーフィー・ファミリーの次男、リアムはパムを手に入れようと目論見ます。自分が自分でいるためのトロフィーのような女を。 見つめる主人公、ダニー・ライアン。彼は、没落してしまったファミリー、マーティ・ライアンの息子ですが、マーフィー家の次女・テリと結婚することで辛うじてマーフィー家の一員として認められています。 パムが現れるまでは、アイルランド系とイタリア系は、共存共栄、自分たちのテリトリーを守り続けていましたが、そのことによってリアムがポーリーの面子を潰し、事態は決して終わることのない血で血を洗うマフィア同志の抗争へと発展していきます。それは誰も止めることができない。 「頭にちんぽがついてるからな。まあ、おれたちも昔は変わらなかったか?」(p.116) そう、ついていなければよかったのにと私も思います(笑)。 「ダ・フォース」、「ザ・ボーダー」を経て、稀代の犯罪小説作家、ドン・ウィンズロウは、裏切りと仲間割れによって反転を続ける「組織犯罪」という名の戦争の大いなるうねりを<トロイア戦争>を描写する「アエネーイス」になぞらえながら、描き切ろうと試みています。スナイパーの一撃が炸裂し、黒人ギャングたちが巻き込まれ、ラスヴェガスが呼び寄せられ、こすいFBIが策略を巡らす。何かが起きてしまえば、「ごめん」ではすまない(p.200)男たちの争いのSAGA。 現実世界でも<戦争>がはじまり、終着が見えない。この物語もまた、いかに侵攻し、どれほどの屍が横たわるのか想像することも叶わない。何故なら、<トロイア戦争>の昔から、はじまってしまったら「戦争」とはそういうものだから。 作品世界が、著者の南カリフォルニアを描く「キング・オブ・クール」的世界が、東海岸、ニューイングランドに舞台が移ることによって、よりドラスティックに男たちの欲望の発露が炎上し、「王国」の王になろうとする肥大化した「自我」が地獄への道行きへと繋がっていきます。果たして「煉獄」はあるのだろうか? 本書は三部作の第一部にあたるそうですが、次作「虚飾の市」を楽しみに待ちたいと思います。 | ||||
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アイルランド系マフィアの一員ダニー・ライアン。イタリア系マフィアと持ちつ持たれつでやってきたが自分の組織の中ではやや軽視されている。 しかし、とある女が発端となって、マフィア同士の血で血を洗う抗争に発展していく。 敵対組織同士の激しい抗争、組織内での裏切り、友情。 ダニーは果たして苛烈な戦いを生き延びることができるか、というストーリー。 カルテル三部作ほどグロく、激烈ではない反面、3部作の幕開けとしての濃厚な内容となっています。 登場人物もいつもの通り、多種多様な人材ばかりで、いつものウィンズロウの作風通りの風刺も交えながら、ドンドン読み進めることができます。 ボリュームは多いですが、最後まで一気の読み切れます。 「カルテル三部作」に次ぐ、大型シリーズの開幕で、非常に期待できる一作です。 次回作が今から待ち遠しいです。 アメリカでの刊行から1か月程度で日本でドン・ウィンズロウの最新作が読めるのは、本当に嬉しいことだと思います。 | ||||
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