亡国のハントレス
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点8.00pt |
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「戦場のアリス」がヒットしたクインの第二次大戦ミステリーの第2弾。ポーランドにいた冷酷な女殺人者を追うナチス・ハンター物語。主要な登場人物は「ザ・ハントレス」と呼ばれた女、彼女に弟を殺害されたジャーナリスト、戦場カメラマンを夢見る女子学生、戦時中は爆撃機に乗っていたロシア人女性の4人で、時代はロシア革命後の1920年代から50年代まで、舞台はシベリアからヨーロッパ、さらにボストンにまで広がっていく壮大な歴史ミステリーである。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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長編なので前半はなんとなくゆっくりと過去の伏線を張って、ギリギリ退屈するかしないか、という印象でしたが、後半になって前半の話が繋がって行きながらドンドン決着の方向に話が進んでる感覚になり、最後スッキリと読み終えました。読むのにだいぶ時間がかかりましたが、その甲斐あったと思います。 | ||||
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英・露・米国人がナチの戦犯を追い詰めるお話です。 冒頭で、主人公が事後法で戦犯を裁くことを肯定しているので、 作者の社会的思考は残泊だと思いました。 また、しばしば米国人が真珠湾攻撃を契機に軍隊に志願した旨の発言をしているのは不快でした。 フランスはソ連・ロシアでなくドイツに占領されて良かったという評価が一般的なのに、 この物語ではソ連・ロシアを過大に評価していると感じられました。 | ||||
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最初は分厚さにびっくりしたものの、読み進めるうちに先が気になってあっという間に読んでしまいました。 前半をぐいぐい牽引してくれたニーナの魅力はもちろんのこと、後半に愛着が湧いていったキャラクターの痛快な最後に胸熱。 読後、まだまだ余韻に浸っていたくて、作品に関連する実在の人物が気になり調べたところ非常に興味深いエピソードに遭遇し、色んな意味でこの作品に出会えてよかったと言える一冊でした。 | ||||
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750頁以上の大著ながら読み終わるまで止まらなかった。 時代は第二次大戦前から1951年、飛んで1959年まで。舞台はシベリアからドイツ、オーストリア、米国ボストンまで広がる 主人公は三人。各々キャラが立っていて魅力的。 一人目、ジョーダン。1946年の初登場時は高校卒業間近の18歳。ボストン在住で、母亡き後アンティークショップを経営する父と二人三脚頑張ってきたが、ある日父親から交際相手を紹介される。 二人目はイアン。プロローグに付随する形で彼の1946年の著名記事があるが、初登場は1950年で38歳。イギリス人で、対戦中は従軍記者として活躍したが、戦後ナチハンターに転身。26歳の元アメリカ軍元兵士トニーを相棒にウイーンに小さな事務所を構えている。 彼の本望は11歳違いのイギリス軍兵士の弟を殺した“ディー・イェーガリン(ザ・ハントレス、女狩人)”を捉えること。彼女はナチ高官の愛人で、他にもポーランド人の子供6人を保護すると見せかけて殺していた。 三人目はニーナ。“ディー・イェーガリン”による殺戮から逃れ彼女の顔を知る生き証人でイアンと関わりあり。初登場時は推定32歳だが、彼女の話は戦争前から始まる。 違う年代から始まった三人の主人公のストーリーが、最終的に話の中の現在である1951年に集結する。 そこに至るまでが見事だ。 三者の中ではニーナの存在感が抜きん出ているが、個人的にはジョーダンが気になった。 唯一、注文をつけさせて頂くと後半における彼女の心の動きをもう少し丁寧に描いて欲しかった。 同様に“ディー・イェーガリン”の心情がはっきり書かれているのはポロローグのモノローグのみなので、逃亡中の心境の変化や、自分の“罪”をどう思っているか、想像する他ない。 イアンに関しては、トニーと共にもはや伝説と化したナチハンターの描写がリアルに感じた。 尚、第二次対戦中のソ連女性兵士の活躍を描いた「同志少女よ、敵を撃て」とリンクするような実在の女性飛行連隊も登場。 映像化が期待される。 | ||||
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今年の後半は、第一次・第二次世界大戦の時代に展開した作品を、いつになく多く読んだ気がしている。しかも現在を描くものより、むしろ戦争を描く作品に良作が多いようにも思う。P・ルメートル、S・ハンターと続き、このケイト・クインがダメ押しであった。 ケイト・クインは、前作も『戦場のアリス』で印象的な世界大戦の裏話を繰り広げてくれたが、本書はそれを上回るスケールで描かれている。簡単に言うといわゆるナチ・ハンターものである。実在のナチ・ハンターに材を取り、そこから派生した作者造形による三人の主人公の三種の異なる時代の物語が、章毎に綴られる。一瞬、躊躇われるほど分厚い、重量級の国際ミステリー。大丈夫。作品は読者の努力にしっかり応えてくれるから。 惜しむらくは、ベストミステリーの締切にぎりぎり過ぎて、宣伝広告的には不遇をかこってしまったのではないだろうか。ぼく自身、この作品に一票を投じることができなかった悔しさに後から歯噛みする想いなのだ。 ハンターは狩人。しかし女性名詞のハントレスとなると、日本では少し馴染みが薄い。ましてや本書でのハントレスは、戦後現在にまで及ぶというナチ・ハンターの側ではなく、戦時中ポーランドで子どもたちを殺すという残忍な行為を行ったナチ側の女殺人者を指している。 本書の主人公の一人である英国人ナチハンター・イアン・グレアムは、相棒のアントン・ロドモフスキーとともに、一般社会に紛れ込んでのうのうと生きているハントレスに弟を殺されたことから、彼女への復讐に執念を燃やしている。 最初は、関係がわかりにくい三つの物語で、三人の主人公がそれぞれの異なる時代を生きてゆく。女流写真家としての独立を夢見るジョーダン・マクブライドは、父と再婚したアンネリーゼとの間にある種の緊張が生まれる中、ナチハンターと知らずイアンやアントンと出会い、そして義母との愛憎や緊張を高めてゆく。物語の主人くというより、最も謎めいた揺らぎを与える役割と言うべきだろうか。 一方で、父の暴力から逃れ、夜間攻撃のパイロットとして成長したニーナ・ボリソヴナ・マルコワという少女の存在が、本書では何よりも際立つ。このキャラクターの個性的、かつワイルドで強靭な性質が、本書に強い緊張をもたらし、何よりもバイタリティを与えてくれる。 三人の主人公たちの物語は、時代を異としつつ展開するのだが、最後には一つの時間に収束してゆく。異なる磁極が出くわすときにはじける火花の如きクライマックスは、激しい緊張と暴力を誘発する。本書自体は並々ならぬ大作でありながら、常に張りつめた緊張感によってページを繰る手が止まらない優れもののエンターテインメント小説であると言えよう。 人物の配置、構成、マルチな関係が、徐々に一点に収束して、最後に溜め込んだエネルギーの爆発を喚起するラストに至る。そのストーリーテリングは、『戦場のアリス』のスケールをさらに上回る出色の作品と言えよう。 キャラクターたちの個性はいずれも素晴らしいし、読後胸に残るのは、何といってもニーナの成長の物語だ。夜間女子飛行隊の面々、個性、英雄的女性パイロットの存在感などなど、やはりニーナの章に窺われるのが過酷な戦場世界の地獄絵図であるからこそ、そこを生き抜く彼女の生命力は本書最強の魅力である。この作品によって、作家は稀に見るヒロイン像を作り出したと思う。ニーナに逢うためだけでも十分に読むべき価値のある一作と言うべきであろう。 | ||||
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