閉じ込められた女
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「闇という名の娘」、「喪われた少女」に続くアイスランドの女性刑事・フルダシリーズ三部作の完結編。猛吹雪に襲われたクリスマス直前の時期にアイランド高原地帯の孤立した農場で起きた悲劇の事件を巡る、謎解きミステリーである。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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終わったところから始まる物語。時間を逆行して発表されてきた女刑事フルダのシリーズ三部作、早くもその完結編である。 これを読んだのは、北海道までをも巻き込んだ猛暑のさなかだったのだが、作品世界は雪に閉じ込められたアイスランドの一軒家である。とりわけ、三人だけの登場人物による恐ろしい駆け引きの第一部は、大雪で閉じ込められ、血も凍る恐い心理小説なのである。まさに猛暑対策にはこの上ない一冊なのだった。 アイスランドという国、その特色を生かした寂しさと孤独と、辺縁の土地を襲う暴風雪。それらが重なるだけでも、いわゆるヒッチコック的スリラーの完成度が極めて上がる。そこに加え、前二作によるヒロインの運命と、娘についての叙述を読者は知っているという困った事実である。 本書は、恐ろしく少ない登場人物による300ページ強の小説でありながら、いやな汗をかきそうな第一部の怖さ、そして一気にその世界をひっくり返してしまうかのような第二部への驚愕の展開が、何といっても読みどころである。 その他にも、フルダが担当することになる行方不明の少女はどこへ消えたのか? という付きまとう謎がある。これは本ストーリーとの関係性はどうなのか? 読者は何もつかまされぬままに、本書の恐怖と不思議に立ち会ってゆくことになる。この恐怖の館の驚くべき仕掛けとは? 物語の主たる装置はどこにあり、どう動いているのか? 近年、登場人物や舞台装置の目まぐるしい展開が多くページ数も費やして説明に終始した小説の多いなか、この作品のシンプルさはどうか? それでも作られてしまう驚愕の展開とストーリーテリングは、何なのか? この作者の作品は、おしなべてそう厚くない長編でありながら、しかし、外れがない。アイスランドという国の人口の少なさと犯罪の希少さ、そこに生きる人間の寂しさのような風土まで含めてミステリーの素材としてしまう作者の力技が素晴らしい。 本シリーズは三作を時間的に逆順で書かれることにより、読者側はヒロインの未来を知りながら読むことになる。また、未来において語られていた事実をも知っているからこその不思議も感じることになる。だからこそ過去の時系列にヒロインとともに遡行することで、怖さが高まる、という経験を珍しくさせて頂いた。 おそらく逆に時系列で三作を読んでみても良いのかもしれない。そうしたチャレンジ体験者のレビューについても改めて伺ってみたいものである。 | ||||
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よく知られているように、この三部作は逆時系列になっていて、本書のフルダが一番若く、四十歳。 私は第一作は読んでいない。第二作『喪われた少女』はフルダ五十歳の時の事件で、なかなか面白かった。 本書は 第一部 クリスマスの雪の農場で起きた事件と、同じ頃にフルダの家に起きた事件がおおむね交互に描かれる。 第二部 フルダは農場の事件を捜査し、1年前の事件に辿り着く。 私的感想 〇シンプルなストーリーで、登場人物も少ない。 〇本格ミステリー要素は少なく、サスペンス+異常心理ミステリー。サスペンスはなかなかのもので、読んでいる間は面白かった。傑作とも、秀作とも書きづらいが、翻訳される価値は十分あると思う。 〇或いは、本書の主人公は、アイスランド東部のハイランドの厳寒期の「雪」かもしれない。雪には圧倒されてしまう。 | ||||
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「フルダの涙で足元の雪が溶けた。フルダの心の悲鳴に応えるように風が吠え猛っていた。」(本書258頁) 主人公、フルダ・ヘルマンスドッティル。これほどまでに過酷な人生を背負わされた“探偵”役がかつていただろうか? 「ヒドゥン・アイスランド」と言われるこの三部作全編を通してテーマとなっているのが“闇”。もがけばもがくほど、叫べば叫ぶほど、その圧倒的な闇は支配力を強める。完結編である本作を一気に読み終え、その感覚は頂点に達した。衝撃度なら一作目、トータル的な完成度なら二作目、そして、凍り付くようなサスペンス性の高さなら本作、そんな印象だ。 職務としての事件、そしてプライベートとしての事件。二つの“事件”が同時進行し、やがてそれらはフルダ自身の心の中で・・・・という展開は秀逸だ。作者の意図する「逆年代記」の順に読んできた方であれば、彼女の身に起こった(起こる)ことを大方知っている。知りながらも、まだ語られていない闇の心臓部へ到達すべく、時間を遡って行く。何とも不思議な感覚だ。初めて読むのに、すでにフルダの哀しき人生の顛末を知っているのだから。 もし、果てしなき闇への滑走路とも言えるあの日の夜に、この先彼女の身に何が起きるのかを本人に伝えることができたなら、そして、もう一度そこから「年代記」を書き換えられるとしたら・・・。また違った未来が彼女を迎え入れてくれるのではないか? ついそんなことを想像してしまう。 いや、その闇は、すでにそれ以前から彼女の心を侵食し始めていたのかもしれない。いつからか闇、どこまでも闇・・・。にもかかわらず、著者ラグナル・ヨナソンが紡ぎ出すこの天涯孤独な女性の魂の旋律に、不思議と共鳴してしまうのである。 | ||||
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