■スポンサードリンク


ゼロの焦点



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

ゼロの焦点の評価: 3.99/5点 レビュー 107件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.99pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全107件 61~80 4/6ページ
No.47:
(2pt)

ちぐはぐな設定

有名な作品だからというので、20年以上前に買った本で
積読になっていたのを最近になってやっと読んだ。

主人公の考えを描写しているところでは、主人公の考えとい
うよりは第三者が考えているかのような記述になっている
ことに違和感を感じた。

また、犯人がどうして脅迫もされていないのに、自分の過去を
隠すためだけに三人も人を殺さなければならなかったのかも
理解できなかった。

時代設定が今とは全然違う。移動手段が「汽車」だし、能登半島の
ローカル線は廃止された区間もある。今なら金沢までは北陸新幹
線で日帰りできる。

読む前に思っていたほどには傑作ではなかったというのが正直な
感想だ。
ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.46:
(5pt)

謎解き目的で読まないほうがいいかも

はっきりいってしまいましょう。
勘の鋭いミステリーマニアの方は
もう人物がそろったところで犯人が大体わかります。
疑える、におう人は正直一人しか出てきません。
(てか展開的に疑える人が…)

それよりもこれら一連の失踪事件から広がる
ある種の悲しい歴史がメインでしょう。
うそだと思いたいでしょうが実際にあった出来事なのです。
今でも、昔でも残念なことに弱者が手っ取り早く
恵みを得られるのは…なのです。

もちろんそれを手放しにしているわけではなかったのです。
風紀を「乱す」、それゆえに許すわけにはいかなかったのです。

この物語の核心には、
そんな悲しき歴史に身を投じなくてはいけなかった
当事者の悲しみがあります。
たとい、それなりのものを持ったとしても
そこに刻まれた傷は消えないし、癒えないのです。
それが「やむを得ぬ社会事情」だとしても。

かんぐるよりも、文章の波に
飲まれたほうが面白いかもしれません。
ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.45:
(2pt)

単調な推理小説

松本清張といえば、ミステリーの王様。若い頃は何冊か読んだが、久々に一冊手にとってみた。
眠たくなるほどの単調さに戦後という時代を感じた。
昨今はテンポの速いミステリーやサスペンスが次から次へと出るので、そういう新しい時代のものと比べると、全くもってドキドキはらはら感がない。そういう落ち着いたミステリーをお探しの方には向いているかもしれない。
ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.44:
(4pt)

物悲しいね

戦後まもない時代の『負』の部分をテーマにした推理小説です。
犯人探しやアラ探しに拘らなければ、時代背景と犯人の心理が素直に心に残ると思います。
事実、このような境遇の犯人が当時に居たら、実際おなじような衝動に駆られた者もいたかもしれない。そう思うほどドラマティックでした。推理小説としては主人公が「賢すぎ」な気もしますが、英語にも通じた教養の高い人物なのでそれほど違和感はありませんでした。まあ、愚かな主人公が右往左往する話でひっぱられる小説よりずっと楽しめます。

ところで自分は昭和後期の生まれですが、時代的な暗鬱さ、人々の能天気な無警戒さ、バカ丁寧さに懐かしくなります。

生活圏が狭く相互互助が当たり前であったゆえの『プライバシー』に対する意識の低さと過剰なほどの礼儀、こんな時代があったとは今では信じられないですね。ウチの爺さまは、姉の里帰りに正座して「お帰りなさいませ」と頭を下げた時代ですけど・・・、もはや時代小説になりつつあるかもしれないほどの文化差です。(もちろん、そんな点も面白く読めます)
ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.43:
(4pt)

戦争の傷跡

「ゼロの焦点」は1959年刊行だから、今から50年以上前の作品だ。
過去に6度のドラマ化、2度の映画化を果たしている。

物語は、ヒロイン板根禎子が縁談により、鵜原憲一と結婚するところから始まる。
相手の事をそれほど知らずに夫婦になるわけだが、新鮮でもあり不安もあるだろう。
いわゆる見合い結婚だが、デキ婚の割合が25%以上もある現代とは違い、
当時としては、極めて普通の事だったのだろう。

そんななか新婚ひと月足らずで憲一が失踪し、禎子自身が失踪事件に深く関わっていく。
安否を気遣いながら、禎子がほとんど知らない夫の過去を知ることになる。

通常の推理小説であれば、刑事なり探偵なりが主人公として事件を解決していくものだ。
しかし、この小説はヒロイン禎子が女性の勘を頼りに、事件の真相を探っていくところが面白い。
失踪した夫を探し出すのが目的であるが、出しゃばりすぎず、その時代らしい慎ましい態度の中にも、
確固たる信念をもって夫の行方・過去を調べあげる。
推測の過程では、次々と事件が起こるのだが、その都度仮定を立て、真実をさぐる。
その行動力には、女の執念を感じる。

北陸地方の、もの寂しげな冬の情景もとても印象深い。
冬の日本海の荒波も、読みながら寒さが身に染みる思いだ。
そこがまた「失踪」という事件にぴったりとマッチするように思える。

この物語の焦点は、戦後に心に傷を負った女性の心の葛藤であるが、
平和になった昨今では到底理解できかねる苦しみがあったのだろう。

話の進行上、警察や役所、登場人物の会社などへ出向いて他人の素性を聞き出すのだが、
現代では全く不可能であることも、いとも簡単に行なえることも興味をひかれる。
ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.42:
(4pt)

面白かった。言葉づかいが美しかった。

少しレビューを読むと、平凡な女性が推理できてしまうのは
おかしいと書いてるものがあるようですが、
私はこの程度?の推理なら女性ならできるだろうと
思います。閃いたり、カンに頼るというのも女性的で
とてもリアルだと思う。
推理の推移が克明に描かれていますが、それも
素人が考えつきそうな推理で、無理がないと思った。
人物描写がとてもよく、昭和三十年代の男女はこんな感じだったのか、
と思わせられる。
主人公の禎子だけでなく、前半探偵役を務める本多も素人なのに
田舎の役所の人が情報を明かしてくれたりするところは、
これもあり得そうな話で、面白い。簡単に他人になりすますことも
できたんだろうなあと思わせられる。
金沢から東京に行くのに、朝十時に発って、夜八時に着くなんて、
だから地方はもっと今より地方色があったのだなと思った。
しかし、三十年代の話を書かれていても、まったく何の違和感もない。
電話もテレビもラジオもあるし、現代生活となんら遜色ない時代
の話だと思った。
ただ一つ、緊急の場合には電報を打つわけですね!
アガサ・クリスティの小説なんかにも電報が出てくるので
私はむしろ、わくわくしました。ウイスキーの小瓶とか、あるある!な気がした。
おじいちゃんが昔、持っていたような?
最後の座談会の場面で、戦後、女が急に力を付けた理由とか、
洋装のファッションは戦後まもなくはお仕着せだったけど
三十年代は違うとか、女性に対して威張っていた日本人男性に比べて米兵が優しくて
日本女性は驚いたとか、何だか今でも通用する話のような気がして
とても興味深かった。
推理の部分は、私は犯人は途中でわかったけど、それは容疑者が全然少ないのと、
読者にわからせるように作者が書いたからかなあと思う。
最後のところ、抑制が効いていて昔の人の美学を感じた。
現代に生きる私はつい、愛する人が許してくれればいいじゃないかと
思ってしまうけれど、この時代の日本人は、名誉とか矜持が大切だったのかと。
犯人は、愛する人に知られたくなかったのではなくて、
自分の名誉と地位を守りたかったんだろうなあと、
あー、なんて犯人はバカなんだ、とやるせない気持ちになりました。
最後に、禎子に本多が思いを寄せるところは読んでいて面白かった。これですぐくっつくのが
現代小説風、しかし見合い結婚といっても本多を迷惑と感じる貞淑な妻の禎子は
非常にリアルで、好感が持てた。
ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.41:
(5pt)

さすが名作だけはある

松本清張氏の「点と線」、「砂の器」と並ぶ代表作に数えられる作品。
同時期に発表された鮎川哲也氏の代表作の「黒い白鳥」と事件の真相や犯人像が同じなことで知られているが、先に黒い白鳥を読んでからの本書となってしまったのだが、「点と線」に見られるような緻密なアリバイトリックなどの趣向はないが、一種の戦後史悲劇としての物語としての面白さはいまだに健在で、ラストの余韻のある幕切れなど、やはり氏の代表傑作として残っているだけのことはあり、今読んでも非常に引き込まれる一級の作品であると言える。
ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.40:
(4pt)

推理としては星3。文学作品としては、星4つ。

結婚一週間で失踪した夫の行方を求めて、北陸の地えと探し求めるヒロインを中心としたドラマチックな推理もの。終戦直後の混乱期が尾を引いて生じた悲劇を描いた、時代色の強い作品。文学作品としては、優れたものですが、推理本で観た場合は,読者に肝心の処を隠して文を進めてしまっているので、いまいち納得しかねるのです。ただ、日本の推理界に新風を齎した作品には、間違いごさいません。
ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.39:
(3pt)

抜群の推理力。警察はいらないね。

主人公、禎子。前半は、ややあっさりとした表現で、進んでいくが、この人物の推理力は、尋常ではないだろう。結婚前、周囲から美人と誉めそやされながらも、何故か、やや、縁談や恋愛とは縁遠いごく、平凡な(OL)。結婚は、当時としては、やや遅いと言う表現であった。後半、この平凡な、女が、俄然能力を発揮するわけだ。あまりにも鋭すぎるという違和感を強く持った。これならば、警察も、探偵も廃業だろうね、と皮肉な感想を持った。テレビでも、松本清張は「社会派」と言う扱いで、いわゆる、2サス系モノとは別枠。(最も、火サスなども無くなったが)生誕○周年云々で、スペシャルとして、別に企画される事が多い。清張の作品をメディアでは、手放しに良く評価する事が多く見受けられるようであるが、清張=全てが社会派と呼べるものではないし、当作品については、前述の通り、違和感を拭う事は出来ない。
ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.38:
(4pt)

素人に推理させ最後まで謎を残した作品に仕上げたのは意図的ではないか。

松本清張の最高傑作という呼び声もある作品を大きな期待をもって読み進めた。
私の感想を一言で言えば、「点と線」で得た精緻な推理小説の完成度や、「霧の旗」で感じたストーリーの面白さや強烈な印象と比べ、どこか物足りない不完全な感じを受けた。
禎子が結婚後1ヶ月も経ずして夫が失踪する。失踪先の金沢に行ってあらゆる人と出会い推理を働かせていくのだが、素人の設定なだけにその推理の鋭さに、どこか違和感を覚えた。また、ありとあらゆる伏線が最後の結論に必要な要素として過不足なくちりばめられているわけではなく、読後もなぜといった疑問が若干残る仕上がりになっている。
比較的清張初期の作品であるが、「点と線」の方がもっと早く上梓されていることからわかるように、清張は意図的にあいまいさを残す作品を作ったのではないか。完成度が低いというのは簡単だが、清張は素人に推理をさせて、最後まで逡巡する様子を小説にまとめ、それを読者に読ませきろうとした。やはり、並大抵の筆力では為せない技と言える。
ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.37:
(2pt)

腑に落ちない点が

表現力豊かな文章や、戦後の時代背景の描写には魅了されました。
ただ、前半はあっさりとした内容でなかなか盛り上がってこない。後半部分や結末にかけては読み応えがある展開である程度面白い。
しかし、いくつかの殺人事件が少し強引な理由付けであると感じた。
ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.36:
(3pt)

超人離れした推理力を持つ主人公に違和感

作者の代表作だそうだが、やや拍子抜け。解説にもあるが、推理小説とし
て読むよりも、一個の文学作品として読むべきかもしれない。(それにし
ても、この解説は鋭い。一読の価値あり。)

もし、文学作品として読むならば、その時代をよく知っておくことが条件。
私はその条件に当てはまらなかったようだ..

平凡だったはずの主人公が、途中から超人離れした推理力を持つ主人公に
変身する。違和感を感じた。感情移入ができなかった。

ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.35:
(3pt)

まあまあの作品

当時としては、女性問題や、パンパン、労働組合、広告代理店、等新鮮な話題を中心としたテーマだったろうが、今読んでみるとあまり面白くない作品とも言える。もちろん当時の特有の事情が現在から見ても興味をそそるものであれば別だが、どちらかといえば人間の証明におけるパンパンの背景のほうが面白い。全体として、警察にたよらず私的な推理を女性が行うのには新鮮さがないわけでもないが、特段大きなトリックや人間模様があるわけでもなく、また当人らからの自白もなく、基本的に禎子の推理に終始するこの作品には一種の迫力が欠けている。点と線のほうが出来が良いのではないかと思ってしまう。
ゼロの焦点―長編推理小説 (カッパ・ノベルス (11-1))Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点―長編推理小説 (カッパ・ノベルス (11-1))より
4334030017
No.34:
(4pt)

流石と不完全

流石,松本清張と思わせる部分も多いが,トータルの完成度でいえば不完全.

微妙な女性心理を描きつつストーリーを展開していく部分は,流石松本といったところ.
先日別のレビューも書かせてもらったが,この点に関しては東野圭吾なる流行作家など足下にも及ばない.

残念なのは後半部分.
女性主人公の心理描写から,ただ事件の謎解きをするだけの人物に成り下がっている.
「女性探偵」と書かれた方もいるが当を得ている.

さらに残念なのは,事件の謎解きが主人公の直感,想像によってなされている点である.
お決まりの二転三転はあるが,真犯人に至るまで「直感で◯◯が犯人と思った」のスタンスは反則である.
作者が推理する「日本の黒い霧」を読んでいるような錯覚にすら陥った.

しかし,読み終わって満足感はある.
それは松本得意の時代背景描写にあるのだろう.
パンパン娘の切なさは今も余韻として残っている.
ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.33:
(5pt)

松本清張入門

初めて読んだ松本清張の小説。

心の底から面白いと感じた。

ほかの作品も読破したい。

ミステリー一気読みにはお勧めの一冊
ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.32:
(4pt)

推理小説の体裁で戦後の社会を描いた作品

この小説を推理小説という観点からだけ見た場合には、それほど高い評価を付け難いと思う。何故ならば話の中盤あたりの、禎子が立川に行って夫が警察官時代にパンパンの取り締まりをしていたことが判明した時点で、犯人の目星がついてしまったからである。その後もいくつか事件は起こるが、大きなどんでん返しはなく、ほぼ予想通りの筋書きで終わる。ただ、この小説は単なる推理小説ではないと思う。終戦後10年以上が過ぎた昭和30年前半が舞台であるが、戦後に生じた混乱を生きた女性が社会的にどのような影響を受けたかが描かれており、そのような時代を全く知らない自分にとってはこんなことがあったのかと新鮮な驚きがあった。著者の狙いも時代の中で翻弄された女性の運命を描きたいという点にあったのではないかと思う。また、本書の舞台は僅か50年程前にも拘らず、その間の日本の変わりようにはびっくりする。携帯電話やコンピュータがないのは当然なのだが、話し言葉が全然違うことに驚かされた。主人公の禎子と母親の会話がしばしば出てくるが、当時は親に対してこのような丁寧な言葉使いをしていたとは。戦前教育と戦後教育の差によるものだろうか。
ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.31:
(2pt)

私は裏表紙の文章を読んでからこの小説を読んでいるので、全然驚かない。

このミステリーにも探偵はいる。松本清張は本格探偵ものを推理小説として嫌ったと聞いているが、探偵のいない推理小説はないのである。 それより、(新潮文庫版)裏表紙の簡単なこの作品の特徴を含めた紹介文のなかで、失踪する主人公の夫が2つの名前を持つ2重生活者だったことが書かれてしまっている。これは明らかなネタバレなのではないの?文庫本半分以上(!)読み進んでから、その謎は紆余曲折した後、ようやく話の展開として衝撃的に明かされるのである。しかし、私は裏表紙の文章を読んでからこの小説を読んでいるので、全然驚かない。読む前に知っている「謎」だから(笑)。読者に対しておかしいですよ。 この小説の探偵役だが、それはもちろん主人公の禎子である。それと、彼女に恋慕の気持ちを持つ彼女の主人の同僚の本多である。このふたりは警察そっちのけで、とにかく良く動き回り、つかんだネタも警察には一切話さない。なぜそこまでこの事件の真相を自分で追うのか、理解に苦しむ。この理解に苦しむところが「いわゆる探偵」役なのである。探偵ってそういうとところがある。特に禎子は、主人を最愛の伴侶として愛していたから何としても自分でという執念のようなものも感じない。見合いで結婚して愛するようになる前に裏切られるように失踪してしまうのだから。しかし憑かれたように事件の真相を追い続ける。ここにも探偵の特徴が表れている。 この小説は禎子を中心にして、そのきわめて狭い社会的空間を舞台にしているだけなので、報道や警察や夫の会社など当然描かれるべき社会的要素がまったくと言っていいほど欠落している。冬の東北の暗うつな閉塞空間では、都会のように開かれた社会描写はできなかったのだろうか。 解決章「ゼロの焦点」でも、ほとんど禎子の想像による犯人像、犯行動機、犯行過程である。読んでいて、そのあまりの犯罪の機微に通じた精緻さに感心し、やがてゲンナリした。これが、刑事の推測なら納得できるのだが。 社会の非情な現実に押しつぶされる人間を冷徹に描破する松本清張の短編をこよなく愛するものだが、どうもこの長編は感心しなかった。 追伸。北陸の岬の海を観てある外国詩を案暗唱するのだが、この詩の内容が理解できなかった。自分は詩が嫌い、ミステリーもあまり読まない。なぞは解かれないことに意義がある。
ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.30:
(1pt)

リアリティーの欠如

自分はなぜか推理小説、探偵小説が好きになれないのだが、本著を読んでいてはじめてその理由が氷解した。被害者は夫。探偵役は新妻。本業の刑事でなくても、配偶者がその役回りを担うのは、モチベーションの点から何らおかしくない。お金と時間をかけて謎解きに精を出すのは不自然なことではない。だが、そこから先が問題。組織力に頼らず個人よる犯人捜しには限界がある。ということで夫の兄や夫の会社の同僚が探偵役の一翼を担う。つまり、有給を取り、自腹を切って被害者の足取りを追ったりする。嘘でしょう。絶対無理。そんな奇特な奴はいないし、そんな懐の深い営利企業はない。普通なら「そのへんは我々では無理ですね。もう、警察に任せましょう」の世界ではないか。やっぱり。そこでシラけてしまった。だが、ミステリーファンは違うのだろう。そんなことを言い出すと野暮と言われるのだろう。なぜなら、彼らにとって犯人捜しと殺人事件はすべてに優先される最重要事項なのだろうから。「それを言っちゃあ、おしまいよ」てか。(違ってたらすみません)。清張自身の言葉に「探偵役を誰にするかが悩みの種。いつもいつも警視庁の刑事でもあるまい」というのがある。『点と線』や『砂の器』は探偵が刑事だから嘘臭くはなかった。『砂の器』のプロトタイプともいえる本作は、残念ながら以上の点でリアリティーが感じられず、私にはしんどかった。
ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.29:
(4pt)

作者が自分でハードルを上げまくっているのが、とても印象に残った

新婚一週間で、夫が失踪した。
ゆくえを求めて調べていくうちに、夫にはある「秘密」があることを突き止める。
しかし、夫の陰の生活がわかるにつれ、関係者がつぎつぎに殺されてゆく。
そこまでして隠さなければならない「秘密」とは、いったいなんなのか。
作者が自分でハードルを上げまくっているのが、とても印象に残った。
失踪してまで、守らねければならない秘密とはなんなのか。
殺人を犯してまで、守らねければならない秘密とはなんなのか。
本文の中で、繰り返し繰り返し、書かれている。
そこまでこの「秘密」に自信があるのだなと感じたほどだ。
その結末は、納得はできるけども、リアリティはないかな というのが正直な感想。
全体を通じて、きちんと筋は通っている。
しかし、人はそう論理的には、というか、そう簡単には動かないと思う。
ミステリー小説単体としてはやはり弱いが、きちんと最後には驚きがあった。
昭和30年代当時の雰囲気も感じることができ、そういった点も総合すると、読んでよかったです。
ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168
No.28:
(5pt)

リアルな描写

ドラマで見て購入。
松本清張といえば大御所で読みにくいという印象がありましたが読みやすく引き込まれて一気に引き込まれた。
ドラマでは見えなかったキャラクターのリアルな描写が良かった。
ゼロの焦点 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:ゼロの焦点 (新潮文庫)より
4101109168

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!