塗られた本
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後半 最後のあたりで 胸がスカッとはするけど そこまでの物語が細かく 惰性で読んだかな。 | ||||
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零細出版社を営む美也子は、美貌を餌に流行作家の原稿を入手しようとする。彼女には売れない詩人の夫がいた。夫の詩集を出版するため、少しでも会社を有名にしたいのだ。 綱渡りのような営業戦略は、果たして成功するのか。 推理小説ではない。恋愛絡みの謀略サスペンスとでもいうのか。 ヒロインの美也子は狙う作家には打算しかないが、無能な夫を心から愛している。 それとは別に資金提供者の銀行家と愛人関係にある。 で、銀行家にも愛情を持っているのだ。設定がユニークこの上ない。 確かに派手な水商売上がりの女=カネだけが目当て、というのは偏見だ。金をもらっていても、文無しの無能者でも、愛することはあるだろう。 ストーリー上は作家の青沼は悪役なのだろうが、哀れな気もする。 立場を利用したパワハラなら論外だが、小説の原稿は才能の賜物だからねえ。 チラつかせるだけで先に進めなかったら、そりゃ切れますわ。 異色のテーマと哀愁の漂う結末は、けっこう気に入った。 内容と解説を読むと、80年代は本がバンバン売れていたことがよくわかる。有名作家は引っ張りだこだったのだ。出版不況久しい現代では、夢のようだ。 | ||||
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最初、紺野美也子はしたたかな悪女かと思ったら、さにあらず。夫への愛にひたむきな女性でした。 その夫というのが無名の詩人で、人を疑うことを知らない神様みたいなお人よし。わるく言えば平凡な詩を書く以外に何の能力もない生活無能力者なんだけど、美也子はこの夫・卓一の詩集を出版したいばっかりに、小さな出版社まで立ち上げて、出版事業に奔走する。 美也子にはもうひとり、大手銀行頭取の井村という58歳の男性がいる。 30代前半の美也子との年の差から、とうぜん、愛情も何もない金銭だけの愛人関係と思いきや、これがすこぶる純情な関係。しかも、美也子が卓一と結婚する以前からの関係というから驚きである。美也子にはファザコンの一面があるのである。 この作品を読んで、出版業という商売がいかに水物であるかがよく分かりました。清張さんは作家だけあって、出版社や出版取次会社の内部事情と取引関係にはすごく詳しい! けっきょく、日販やトーハンのような出版取次会社が、出版流通・販売を牛耳っているんですね。大手出版社だと取次会社との力関係は互角だけど、小さな出版社だと取次会社の敷居がいかに高いかがよく分かって興味深かったです。 零細出版社の社長である美也子は、取次会社にまったく相手にしてもらえない (つまり本を出版しても販売してもらえない) ので、女を武器にした奇策に出る。 つまり、ベストセラー作家に書き下ろし長編を書いてもらい、それを出版しようと画策するのである。売れることが分っている本ならば、どんな小さな出版社が持ち込んでも取次会社は販売を引き受けるのだ。 ベストセラー作家の青沼に拝み倒すようにして原稿依頼したのだが、この青沼という男、とんでもないスケベ親爺で、引き受けた代償として、当然のように美也子の体を求めてくる。もっとも、美也子のほうも最初の段階で、そんな枕営業を匂わせるようなことを口にしたことは確かなんだけど。 でも、土壇場になって、青沼のケダモノじみた情欲からあの手この手で身をかわす美也子。そもそも青沼オヤジは女性にモテるプレイボーイで、それをたいそう鼻にかけているフシがある。 青沼と、もうひとり彼の創作上のライバルでこれも好色漢の谷尾、この二大肉欲作家との対比で、生活無能力者で夫の卓一が、美也子には天使のように見えて仕方がない。 年がら年中、家の中で詩を書いたり、近所をブラブラして、近所に住む若い女優の卵 (劇団・研究生) の野見山房子と立ち話をしたり、妻・美也子が留守中の家に、房子を招き入れて話し込んだりしているんだけど、房子のほうもあくまで品行方正な卓一に警戒心を抱くことはない。事実、卓一と房子は最後まで友人の間柄です。風貌といい言動といい、卓一はどこか中性的な感じさえします。 なお、小さな出版社がいつ売れるかも分からない本を出し続けるためには当然運転資金が必要で、その方面は銀行頭取の井村が無担保で引き受けてくれるのだが、彼はとても紳士的で、美也子に「お金と引き換えに抱かせろ」などとは絶対に言わない。 そんな井村だったが、娘の結婚を機に、美也子と別れる決意をする。そして美也子との最後のデートで神戸界隈の見物をして回り、二人とも別れを惜しんで涙を流す。が、その帰りに乗ったタクシーが運転手の無謀な運転で事故を起こし、井村が重傷 (美也子は奇跡的に無傷) を負ったところから、物語は俄然カタストロフへと突き進む。・・・ ミステリー仕立てでも何でもない本作が、読者の心を先へ先へと駆り立てる要素は2つあると思われる。 1つめは、ケダモノじみた肉欲作家、青沼に純真な美也子が汚されるのではないか、そしてそのことが天使のような夫・卓一の耳に入るのではないか、という不安。 2つめは、本作のトリックスターである21歳の女優の卵、野見山房子の、いかにも若い女性らしい気紛れな行動である。 房子にかんしては、「いったいこの子はどっちの味方なの?」と、読み進む途中で、何度もハラハラさせられました。 結末まで読めば分るけど、この房子がどっちの味方であるかは、ストーリー展開上きわめて重要。 彼女の乙女心が揺れ動くことで、美也子や青沼の運命が大きく左右されるという展開が、読者のハラハラ度を高めています。 | ||||
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松本清張の作品の中でも最高です。女性の愛の生き方、女性の心理が凄く良く描かれていて良かった。 | ||||
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松本清張を読み返して、ずいぶん私の中の価値観が、変わっていたことに気がついた。 松本清張を社会派と呼ばれていたことの意味が、やっと分かったような気がした。 ピュアーな気持ち、純粋な気持ちを大切にするものを、主人公に据えることで、 社会の汚濁、人物の低俗さを、浮かび上がらせることに、主題をおいた。 多分、若かりし頃の社会と大人というものに対する 私の見方もそんな風だったのだろう。 松本清張は、ピュアーで、ロマンチストだった。 今読むと、松本清張の手法であり、何となく、胡散臭さを感じるのである。 小さな出版会社を立ち上げた 美也子。 水商売から、純粋な気持ちで、詩人を好きになり、詩集を出したいばかりに、出版社をつくる。 その資金は、どこから出ているのか?という疑惑があるが、エロティックな本をだす、 流行作家に、色仕掛けで、原稿依頼する。露骨すぎても、美貌のために、流行作家も心が動く。 据え膳 食わぬは、男の恥ということだ。 流行作家は、人参ぶら下げられて、原稿を書き上げる。 房子は、新劇の女優で、バーで働く。美也子の旦那、伸一をよく知っていた。 美也子のやり方に、反発しながら、伸一に同情する。流行作家の狙いも、房子にわかる。 そして、房子は、流行作家の作品の主役となる。劇は、そこから始まるのであるが。 頭取のワンマンさ。そして、事故によって、没落。 寂しい人生がはじまる。美也子の支援者だった。 ピュアーないきかたをしている伸一は、生活無能者として、自覚する。 その結末は? | ||||
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