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騎士団長殺し



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騎士団長殺しの評価: 3.46/5点 レビュー 721件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.46pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全721件 681~700 35/37ページ
No.41:
(5pt)

目の前には別の世界が広がっています

物語は第1部から肉を蓄えて、一気に収束に向かっています。
散らばったカケラが拾われていく様がいつもながら心地よいです。
いつもの村上春樹的な物語で安心して読めます。

村上春樹氏のファンであればもうすでに読み終えている方ばかりと思いますので、イマイチファンではないというような方にオススメできる点をいくつか挙げたいと思います。
まずは、いかにもな比喩が減っています。
もちろん必要最低限の比喩はあります。しかし、これが好みでないという人でも読める程度にシンプルになっています。
そして、物語は完結しています。
第3部が出たらもちろん大喜びで、大急ぎで読みますけれども、とりあえず、ぶった切りで終わるようなことはありません。
主人公の目の前が丁寧に表現されていて、どこの場面でも目を瞑ればその空間が浮かんできます。
どこの場面でも、手に取るように質感までも分かるのです。

私のまわりにまだ読み終えた人が居ないので、誰とも語り合えません。
読み終えて、改めて第1部のプロローグを読みました。
プロローグは一体どこの時点の話なのでしょう。
やはり第3部が出るのでしょうかね?
あー!誰かと語りたい!
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編より
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No.40:
(2pt)

読まずにすませたい方のために(笑)

「今回も」、この思わせぶりっこの題名と、目次のせいで、買ってしまいました(爆)。というか、も〜べつの楽しみがあるんですね。いかに「偉大でないか」を探るために。まず、本作、「このミステリーがすごい!」みたいなエンタメ系の賞に応募したら、1次落ちかと思われます。だいたい、「広義の」ミステリーにすらなっていません。まず、この「騎士団長」というのは、十字軍関係かな〜と思ったけど、「歴史」は、この人のレパートリーにはなくて、これは、モーツァルトのオペラ『ドン・ジョンバンニ』からの借用です。そして、ある老画家が、こういう題名の絵を描き、それが、たまたま、主人公が借りたアトリエの屋根裏にあるんです。そして、この騎士団長(身長六〇センチほど)が絵の中から登場し、「自分はイデアが形を取ったものである」なんてぬかす。
 副題の「顕れるイデア編」というのは、なんのことはない、そういうことです。

 第二部、「遷ろうメタファー編」は、そうお察しのとおり、絵の中から出てきた、「顔なが」と呼ばれる人物(身長七〇センチ)が、自分は、「ただのメタファーが形を取ったものである」と主張。そんだけのこと。

 あと、女がいろいろ出てきて、毎度のように、すぐにセックスしたりします。まさか、13歳の少女とはやらないだろうな、と、祈りのような気持ちをもって読み進むと、これは、ご安心ください、手は出してません(爆)。でも精神的にはやってると思う。でも、「ロリータ」書くほどの才も度胸もなし(笑)。

 この小説は、おそらく、「第三部」「第四部」ノノと、いくらでも続いていく可能性はすでにはらんでいます。というか、こういう書き方だと、どんどん続けていけるんです。

 ドストエフスキーもカフカも、生存ぎりぎりの人間を描いています。しかし、村上春樹の登場人物は、今回だと、肖像画家ですが、いとも簡単に仕事はやってきて(キャンバスの大きさを1メートルラ1.5メートルとか、数字で言うかな? F50とかのサイズが自然に出てくるんじゃないかな? 画家なら。っていうリアリティの問題は、「ないものねだり」なので、棚上げ)、あまり生活に困っているふうでもなく、だから、つまらん妄想に肝を冷やしたり、できるんです(笑)。車の種類と登場人物の服装は、やけに詳しく書かれている。ヘンリー・ジェームズは、人物の名前、職業、など、すべて省いても、リアルで怖い小説を書いているのであるが。

 ま〜、渡辺淳一が書いたラノベというかノノ。★はひとつでもいいんですが、(Amazonで)二つがなかったので、二つにしました(笑)。

 件の老画家のオーストリア留学時代の恋人がナチに殺されたとか、弟が南京で、中国人を「殺させられて」心に傷を受け自殺(村上春樹のキーワードのひとつですが)したり、いろいろ、あたかも「歴史に抵触したかのような」エピソードは出てきますが、それは、あくまで、「ファッション」ね〜(笑)。

 毎度、こんな作品しか書けないのは、本人、まったく勉強していなくて、人の小説も読んでなくて、しかも、外部と接触を断っている、まつり上げられて特別の場所にいるからではないかと思われます(合掌)。いくら億万長者でも、ビル・ゲイツなどは、こんなことはまったくないのですが。
 一般読者のシュミにはなんとも言えないけど、こんな小説を絶賛「しなければならない」評論家諸氏には、心底ご同情申し上げます。
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編より
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No.39:
(4pt)

面白かった

面白かった。最後がスカッとしないけど…。
読みやすいし、騎士団長と顔ながの喋り方も好きだ。

ただ受けを狙ったレビューが嫌な感じ。
だいたい村上春樹の書く物語に何を求めてるんでしょう?
非正規雇用の若者?貧困にあえぐ介護士?そんなの出てくるわけないじゃないですか。
そういう物語を読みたいならそういうのをテーマにしてる作家の本を読めばいいのに。ちょっと調べればわかるでしょ。
シャレオツ過ぎ?sexばっかしてる?その通りだけど、なんだか読むのが止まらないということは、やっぱり面白いんだと思います。私にとっては。
でもそういうこというとハルキストと呼ばれちゃうんでしょう。それも嫌。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.38:
(5pt)

ノーベル賞?そんなことはあらない。by騎士団長

春樹さん大好きです。
ほんとにこの30年間はほぼ春樹さんしか読めないほど好きです。
今回の新作も面白かった!
一気に読ませるし、世界観に引き込まれ、こんな風に強く生きられたらいいなと主人公を見て思う。女性はいつも魅力的で、神秘的。
僕ではなく、私という一人称もなんか新鮮。騎士団長も最高!
でも、でも、
何故にいつも同じお話なの?
騎士団長のようなイデア、ワタヤノボルのような巨悪、少女も老人も穴も酒も音楽も高級車も大衆車も性描写も。パラレルワールド、失踪も、夫婦の再生も。
これって、ほんとにハードボイルドワンダーランドからなにも変わってない。
僕はファンだから、ほんとに嬉しいし、楽しく読んだ(騎士団長登場には歓声をあげました)けど、若い子がこの本を初めて読んで、遡って旧作を読んだ場合、昔の方がクオリティが高いという話にならない?
春樹さんは、昔の自作を読まないといい、筆に、キーボードに話の展開を任せ、語らせるという。
それって本気でそうだったの?だから同じ話になるってこと?
そんなオチ?
今まで僕らファンが甘やかし過ぎたのかな、何年も。

春樹さんファンにとっては、時間をかけた書下ろしの最新作をリアルタイムで読めるだけでも星は5つ、でも、
とても残念だけど、同じ話を何度も設定を変えて繰り返す春樹さんにノーベル賞が与えられたなら、それは、この人の生き方とか、考え方、思想に対してであって、この騎士団長殺しの内容によるものではないと思う。
春樹さん、今回は少し、海外読者が喜びそうな小ネタ、すなわち、刺身、富士山、プリウス、日本画、カセット、80'sとかを意図的に配置されたように感じてしまいました。ごめんなさい。あと、少女の胸の大きさへの執着やら、女性器の描写(そんな動き方ありえへんやろと思う、いつも)はしつこく感じ、ギャツビーとアイラモルトに至っては春樹さんの持ち駒をそのままストレートに出し過ぎちゃうか?と思ってしまいました。
それでも、やっぱり既視感があるとはいえ、大好きなおとぎ話だし、最後は癒されたから星は5つつけさせてもらいます。
ファンは、絶対満足できます。必読!
けと、この内容なら、ノーベル賞はないなあ。
残念だけど、それが春樹さんの意思なのかな。
ボウイじゃなくて、ストーンズやスプリングスティーン、変化よりも反復を選ばれたのかなあと。やれやれ。
なんか自分が、やっぱサティスファクションでしょ、といってるストーンズファンのような気持ちになってることに気づかされました。

関係ないけど、免色さんは、僕にはずっと片岡愛之助さんに思えてました。
あと、他の方も言われているが、
確かに13歳の子とヤってしまったらどうしよう、それはないよね、春樹さん、と思って読みました。それはなくてよかったけど、第3部があったらマズイ予感が笑。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.37:
(4pt)

春樹作品の既視感…

読み通せる力がある作家だと思う
しかしデビューからオンタイムでその作品を読んできた僕にはやはり既視感が否めない。つまりこれまで春樹作品を読んできた人間にはふむ、あちらとこちら、結界、穴の底、古典からの引用、クラシック音楽、地震…何もかも過去の作品で体験してきたことばかりである。だから驚きの展開というものはない。
しかし初めて村上春樹を読むのならこの作品は意外とオススメかもしれない。主人公はかなり他人とコミットする。その感じは新しい。
今となってはこうした作品よりもむしろノルウェイの森のようなタッチで現在の日本を描いて欲しいと思うのは読者の勝手な希望なのだろうか。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.36:
(5pt)

「シロちゃんじゃなくて、クロちゃん。色違い」

さすが村上さん!登場人物の一挙手一投足がシャレてます。いや瀟洒です。
特に気に入ったのが、主人公と妻=柚とのベッドシーン。
二人の仲むつまじい会話が、こそばゆくなるほどシャレオツでした。

──妻の名前は柚といった。料理に使うゆずだ。ベッドで抱き合っているとき、私は冗談でときどき彼女のことを「すだち」と呼んだ。耳元でこっそりそう囁くのだ。彼女はそのたびに笑い、でも半分本気で腹を立てた。
「すだちじゃなかて、ゆず。似ているけど違う」と。

僕がもし同じことを書いたら、親父くさいと言われるんだろうな。さすが村上さん!かっこいい!いや、瀟洒です!
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.35:
(5pt)

なるべく前情報無しで読んでもらいたい一作

1Q84のときもそうでしたが
せっかく前情報無しで読んでもらいたいと
村上さんや出版社が作品内容を発売日まで
極秘にして流出させなかったわけですから
アマレビューなど見ずに先入観なしで
読んでもらいたいなと思います。

ここから少しネタバレありです。
私は発売日に買ったんですが
何か昔ほど村上作品を読みたいという欲求がわかず、
1日ほど積んだあとで読み始めたんですが
最初は内容的に主人公の離婚話や画家としての
仕事の話がメインで
文体がカフカや1Q84に比べると堅苦しいというのも相まって
少し読んでいて退屈だったんですが
四分の一ほど読み進めて免色という
本作品のキーキャラクターが
現れたあたりから一気にスリリングで
ミステリアスで面白くなり
時間が経つのを忘れるほど夢中になりまして
イデア編の最後まで読み終えてしまいました。

これだけ読んでいて続きが気になってしょうがなくなる作品は久しぶりでした。
さすがは村上春樹といったところでしょうね。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.34:
(5pt)

読み手の理解力や想像力次第かな

騎士団長殺しを読み終えました。
村上春樹さんの語りを借りて、読み手である自分の心の中に潜り込み、見たいものを見、よくわからない塊を見つけ、程よく落ち着くところで蓋をして、今のところはおしまい。
物語りに何かを求めても、何を見つけるかは読み手の理解や想像の範囲のものだけだと思います。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.33:
(5pt)

コーヒーを飲みながら

前作『1Q84』は、難解な内容だったと感じてましたが、この新作、おもしろい!分かりやすい、という表現は適さないかもしれませんが、とにかくどんどん読み進めたくなってしまいます。
まだ100ページちょっとしか読んでませんが、読み終わるのがもったいないと思うくらいです。コーヒーを飲みながら、読書したくなる、久しぶりに感じる本です。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.32:
(3pt)

ハルキストにまだ出会えない。

大好きなヘイゼルナッツアイスクリームのコアントロかけをしこたま買い込みいざ読書。

結果…
いつもの作品とほとんど一緒
気どった主人公
都合よくセックスさせてくれる女
ウィスキーとラムチョップ

非正規雇用の若者も
介護離職も
保育士不足も
彼の作品には登場してこない。
選ばれた人間が、知的そうな会話を繰り広げ、無機質な孤独を感じている。

世間一般に心からこの世界観に共感できる人はどれほどいるのだろう。
新宿アルタ前を5分ほど観察するだけでホストもキャバ嬢も酔っ払いもくたびれたサラリーマンも山ほどいるのに
そんな人は彼の作品の中ではどこへ行ってしまったんだろう。

村上春樹が一部のインテリっぽい人にだけ圧倒的に支持されている作家だとすればまだ理解はしやすいのだけれど
国民的作家だというのがちょっと合点がいかない。
本当に100万人が共感できる?
少なくとも彼の作品の登場人物は私の人生の中では出会ったことのない手合いばかりなのだが。
だって平均的な人はそんなオシャレじゃないもの。

いや、ちょっと待て
もしかして自分がダサいだけなのか 。
加えてモテないだけなのか。
だから理解できないのか。


んなことない。
電車で向かいの座席を確認してみたけど、それほど自分と変わらない身なりの人ばかり。

間違いなく同じ車両にはストラスブルグソーセージのトマトソース煮込みを今日の夕食にする人は乗っていなかった。

やれやれ
言い過ぎたか。

完璧なレビューなどといったものは存在しない。完璧な孤独が存在しないようにね。

追伸
なんだかんだ読破してしまうところに村上春樹の恐ろしさがある。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.31:
(5pt)

「色」というモチーフ

色彩をもたない・・・という作品と本作で共通した箇所で、
登場人物に「色」が出てくるという部分があるなぁ・・・と思いました。
あとは、
・小説家が画業について書く面白さ
・胸の膨らみについての描写がただただしつこい
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.30:
(5pt)

セックスのハードルが異常に低い世界、再び!

今作は17ページ目にてセックスとハイペース!村上春樹さん、肩をブンブン回して性描写に励んでます。

主人公は人見知りだが、"肉対関係を持つことは、道路でたまたますれ違った人に時刻を尋ねるのと同じくらい普通のことに思えたのだ" だそうです!しかも、いきなりのダブルスコアという追いセックス!

毎度おなじみの主人公が"混乱"する前に、こちらが混乱するという事態に。やれやれ。

作品自体は読ませます。比喩は相変わらずリッチ。読後のカタルシス。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.29:
(5pt)

セックスに異常な拒絶感を抱く日本人

エロ漫画の規制やテレビのエロへの規制にはPTAがどうだ、クレーマーがどうだ言って異常な規制への拒絶感を示し、性的表現を促進させる癖に村上春樹のセックスには拒絶感を抱く日本人。

結局のところ村上春樹のセックスにはリアル感があるからなのだ。
実際にインテリがスカした顔でセックスをしているという現実を突きつけてくるからその現実味に対して拒絶感を抱く。
エロ漫画やテレビなどのエロには現実味はない。企画モノのAVのような非現実性を持っていて、外国の犯罪になにも感じないような無関心さをある種維持できるのだろう。

いずれにせよ、この作品のようなリアリティのある性描写に反感を覚えるのであれば、そもそも読まなければ良いのだ。

自分の子供に悪影響を及ぼす可能性のあるテレビ番組などへの性描写にクレームを入れるならまだしも、小学生くらいの子供なら読むわけはないこのような小説においてセックスがどうの幼稚な部分で批判するのは滑稽にもほどがある。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.28:
(1pt)

少子化担当大臣

やれやれ
この人はセックスに余程コンプレックスがあるんでしょうか?
しかも、女性は今回も物扱いです。
こいつ女性を見下してる(バカにしてる)だろ。
これがノーベル賞とったら世も末ですね。
ってか、少子化だからセックスのハードル下げるためのキャンペーンしてるのかな?
だったらネームバリューを生かして日本に貢献してるかもしれませんね。
少子化担当大臣に推薦します。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.27:
(3pt)

犠牲になるのはいつも女たち(3/6 追記あり)

発売日の夜のこと、ふと、「今この瞬間、何十万人って人がこのわけのわからん作品を読んでるんだよなあ」って思うと、なんか怖いような・・・そのことがすでに異界の物語って感じですよね? たぶん最終的には100万部とか売れるんでしょうね。100万っていえば、日本の人口のほぼ100人に一人が読むってことでしょ? 少なからぬ影響力、ありますよね、アンチがどう言おうと。もはや日本人の集合的無意識の一部を形成しつつあるといってもいいかもしれないですね、ぶっちゃけ。 

それはともかく、数年ぶりの新作です。奥さんがいなくなって、不思議なことが起こって、主人公が新たな人生のステージを迎えるという村上春樹の「王道」パターンです。例によって。全編が暗喩みたいなもので、この作品を「理解」するっていうのはどんな小説読みでも不可能ではないでしょうか? おそらく、村上自身ももはやそんなの期待していないんでしょうね。その投げっぷりというか、説明しなさぶりってのはある種の極北に達していると言えるかもしれない、よかれあしかれ。

今回も「父」もしくは「父性」が大きなモチーフとして出てきます。父の不在ってのが村上春樹作品を解くひとつのキーワードとして語られてきましたが、もしかするとそうじゃなくて、「母性」の欠如、母なる存在の不在のほうが、彼の根源的なテーマといか、「問題」なんじゃないかなって思いました。父なるものとの格闘において、母なるものの存在がないんですよね。すごく薄い。
村上作品って、女性がいっぱい出てきますが、そのほとんどは「処女」か「娼婦」、もしくは「魔女」ですよね。あとは、「姉」ね。リアルワールドに引き留める存在としての「姉」。
お母さんはどこに行ったんだろう?

個人的には、「1Q84」にでてきた「ふかえり」みたいなキャラが出てきた時点で、「またかよ」って感じでさすがに読むのをやめたくなりました。処女=聖なるものに近接できる純粋さをもったアイコン=巫女、みたいな構図はもううんざりです。傷ついた男性の自我の回復ツールとして、女性のスピリチュアリティを利用するって構造はすでに「ピンボール」からありました(そう、双子ですね。「羊」の耳だし女の子もそうでした)。
そろそろもう、そういうの捨ててもいいんじゃないか? 他に解決方法、ないのか?

「肖像」、「日本画」、「平安時代」などこれまでになかったモチーフが出てきて、「こりゃあいつもとは違うな!」って期待して読んでいたのに、最後は「いつものお店で」って感じで終わっちゃいました。「木野」で新しい地平を開いたように感じていたのですが・・・残念です。

しかし、意地になってるみたいに、居酒屋行きませんよね、登場人物たちが(笑)。普通、男同士がまとまった話をするのに、イタリアンレストランの個室行くか? 居酒屋ですよね? そのあたりのリアリティの在り方のずれみたいなもんが、アンチ春樹の人たちの憎悪をかきたてるんだろうなあ。どうでもいいけど。

(3/6 追記)
ふと思ったのですが、この作品って「小説(物語)を書くこと(作ること)」についての小説(物語)でもありますよね。主人公が肖像画を立ち上げていくときの描写が、ちょっと前に出た「職業としての小説家」における村上春樹の小説の書き方と激しくだぶりますね。
で、「騎士団長殺し」に近いことが、村上自身にも実際に起こっていると考えるべきなのかもしれません。
村上春樹は処女作から一貫して、「小説(物語)を書くこと(作ること)」とはどういうことなのか?ってことを追及してきました。とくに長編小説において。それが最もはっきりと表れたのが「世界の終りとハードボイルドワンダーランド」でした。

その後も左右のぶれはありますけれど、一貫して村上は「現代において、小説(物語)を書くこと」の意味というか、可能性と不可能性について自らの身体を通じてパラフレーズしてきたのかもしれないなと思いました。
そういう意味において、村上春樹という作家を研究するためには、この「騎士団長殺し」は絶好というか、よくあからさまにここまで書いたよなあって印象です。

一人の肖像画を深化させていく過程は、まさに村上が小説を書くときに行っている、感じているプロセスなんでしょうね。
騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.26:
(5pt)

冥途の使者

本作の僕なりの感想は下巻のレビューに先ほど書いた。下巻を読み終えて再度
上巻の冒頭のプロローグを読んだところだ。多くの読者が同じようにプロローグに戻ってきているで
あろうことを僕は想像している。戻らざるを得ないと言って良い。

 プロローグを再度読んで、モーツァルトのレクイエムの挿話を思いだした。かの曲は素性不明な
依頼人によってモーツァルトに注文された。モーツァルトは、その使者を自身の冥途への案内人である
と信じた。モーツァルトは自身の鎮魂歌に取り掛かったが完成出来ずに亡くなった。小林秀雄の
「モーツァルト」にて紹介される美しいエピソードである。

 「顔の無い男」が注文する肖像画も同じではないか。語り手である「私」の自画像を描かなくては
ならないという話ではないのか。もっと言うと、村上が「村上春樹という男の肖像画」を書けと
冥途の使者から依頼されているような気がする。

 プロローグを読み返した際の感想だ。初めにプロローグを読んだ際に何を思ったのかはもう憶えていない。

騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第1部 顕れるイデア編より
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No.25:
(5pt)

村上さんの過去の作品が回想されている、そしてモーツアルトのオペラの最高傑作、

第1部から第2部に突入して、やはり感ずることは、村上さんの長編作品の中で最もすぐれているのではないだろうか、と言うことである。読み手を飽きさせることなく、新たなワザを惜しむことなく繰り出してくる。

それから感じることは、今回の村上さんが過去の自作を持ち込んでいることである。少しこじつけかもしれない……。まず、「免色」と言う主要登場人物の名前は、どうやら『色彩を持たない多崎つくる……』を想定しているのではないだろうか。「免色」、つまり色を持っていないのだ。それから免色、と言う名字が香川県、つまり『海辺のカフカ』の舞台となった場所であるのも興味深い。これは、単なる偶然だろうか?そして主人公が住む土地の不思議な大きな穴、これは言うまでもなく、『ねじまき鳥クロニクル』で重要な役割を持っていた仕掛けではないだろうか。それから『1Q84』で重要な役割を果たした主人公の男性の愛人女性についても、『1Q84』の例を踏襲したとは言えないだろうか。この他にも、初期3部作、『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』、『ノルウェーの森』……、きっとどこかで顔を覗かせているのではないだろうか。この作品のもう一つの魅力は、村上さんがこれまでの作品をどのように引用しているか、と言うことでもある。

それから『騎士団長殺し』と言う一見強烈な題名なのだが、読み進めていくうちにこの騎士団長がモーツアルトのオペラの、たぶんモーツアルトのオペラで最高の、傑作である『ドン・ジョヴァンニ』の登場人物であることが分かって、感心した。これまで多くの音楽、特にクラシック音楽に対して造詣の深い村上さんがどんな音楽を自作に持ち込んでくるか、楽しみにしていた。これまでどちらかと言うと、ややマニアックな作品も取り上げられていたのだけれども、今回取り上げられたのがモーツアルトの最高の作品のひとつであることに、注目したい。『ドン・ジョヴァンニ』と言う名前は、有名だ。そしてこの作品が書かれた18世紀末の時期の音楽としては、現代でもまったく古さを感じさせないほどの拍力を持ったクライマックスを持ったオペラである。このクライマックスを聴いて、退屈な音楽だ、と感じる人はほとんどいないだろう。そしてこの村上さんの小説がきっかけになって、多くの人に聴いていただきたいオペラである。私見ながら、古今のオペラの中で、5本の指に入る作品である。それからこの『ドン・ジョヴァンニ』のタイトル・ロールはバリトンによって歌わるのだが、非常に難しい役柄であると言うことにも触れておきたい。
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編より
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No.24:
(4pt)

第2部終わり

私個人としては、これまで、それなりにモーツアルトを聞いてきたので、その最高傑作であるドン・ジョバンニについては、明確なイメージが出来上がってしまっている。だから、飛鳥時代の衣装の騎士団長やドンナ・アンナというのには、ちょっと、想像力がついて行かずにとまどってしまった。なんとなく、違和感が残ったまま、読み終えたというのが星四つにした理由。
 それを別にすれば、読後感は、物語には十分浸ることができるけれど、ちょっと使い古しの道具立てが多いかなというもの。井戸や壁抜けや妻との別離、美少女、料理や音楽、車やお酒。
 しかし、千ページ以上を一気に読んでしまったことは事実。その間ほかのことは手につかなかった。巻末には全巻の終わりではなく「第2部終わり」としか書いてないので第3部が書かれることを期待してしまう。
騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編より
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No.23:
(5pt)

スピンオフ希望

主人公はペンギンのお守りを返してもらうために、どうにかして再び異世界へ行ったのだろう。もしかしたら、白いフォレスターの男に立ち向かって新たなイデアを呼び出したのかもしれない。
とにかく、主人公のその後とプロローグへの繋がりが気になります!
第三部じゃなくて、スピンオフでいいので誰か書いてくれないものか…
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No.22:
(5pt)

そろそろペンギンの人形を返してほしがっているのは村上自身かもしれない

土曜日のお昼に地元の本屋で上巻を購入して読み始めた。夕方に、下巻も買って置いた方が良いと思った。
同じ本屋に出かけて下巻を買った。書店員の方から「もう上巻を読み終えたのですか」と訊かれた。
僕がお昼に上巻を買ったことを覚えてくれていたのかもしれないが、それは聞けなかった。聞くべきだったの
かもしれない。日曜日の朝4時から下巻に取り掛かり、7時に読了したところだ。

 村上春樹の昔からの世界が残らず登場している。

 井戸、闇、美少女、不思議な苗字、不思議な小人、不思議な妊娠、暴力、夢。

 加えて村上が翻訳してきた著作もくっきりと影を落としている。「華麗なるギャツビー」や、レイモンド・カーヴァ―を読み取る
場面を見つけることも可能だ。チャンドラーの語り口も、本作の物語のストーリーテリングに見え隠れする。そういえば
カーヴァ―とチャンドラーが同じ名前であったことに今初めて気が付いた。

 何が言いたいのか。端的に言うと、登場人物、設定から小道具に至るまで、非常に村上の集大成に近い作品のように思える。
これは確信犯的な想像だが、いままで村上は彼自身が、かかる「登場人物、設定、小道具」の意味を探りながら色々な
著作を書いてきた感がある。つまり村上自身も自分が何を書いているのか分からないままに書いてきた気がする。だからこそ
あれだけ多くの作品が結論と結末を出さずに終わってきたのではないかと僕は思う。村上の作品群は読者を謎の中に
宙づりにしてきている。そもそも「風の歌を聴け」から、結末はさっぱり不明だったではないか。

 では本作はどうか。

 謎は全て謎のままに投げ出されている点は、正しく「村上作品」である。特に上巻の冒頭の場面は
実に、全くに、謎のままだ。あの冒頭を読む限り、本作の続編がありそうである。というか、続編が
無いと困ると読者が思ってしまうのではないか。
 但し、下巻の最後に見られる妙な纏まりは割と新鮮だ。あの部分だけが、ある意味で本作から
浮き上がっている気がする。僕は、村上自身も「結論と結末」を欲しがっているような気すら
した。村上自身が「村上春樹を巡る冒険」という長くて大きな物語を書いて来ている。但し、村上の目からは
「残された時間」にも先が見えてきていてもおかしくない。どこかで結末を付けたいと思っていても
おかしくないのだ。その意味で、そろそろペンギンの人形を返してほしがっているのは村上自身かも
しれない。

騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編Amazon書評・レビュー:騎士団長殺し :第2部 遷ろうメタファー編より
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