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いくさの底
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いくさの底の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.21pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全14件 1~14 1/1ページ
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真相は海外の某古典的名作短編を連想した。抑えに抑えた文章で今どき潔い200頁という分量。好感の持てるスリムさだけど、物足りなさも感じでしまう。特に主人公に魅力がとぼしい。性別と前職だけで、はっきりした年齢すらわからないのだ。 | ||||
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ビルマ戡定後、重慶軍の遊撃隊から村を守るため、日本軍の警備隊がヤムオイ村に入るところから物語が始まる。 警備隊の隊長は学帽を被っていてもおかしくない若さの下級将校、賀川少尉である。 その隊長が、村に到着したその日の夜に、駐屯宿舎の厠で惨殺死体となって見つかる。 だれが、どんな理由で少尉を殺したのか。 シナ兵か、味方か、村人か。 シナ兵が村人に扮して紛れ込んでいるのか。 隊長の死は隠匿され、若い青年将校である切れ者の連隊副官が派遣されてくる。 彼と、軍属の民間人で通訳である依井の2人は、関係者一人ひとりを理詰めで追い詰め、 徐々に事実関係を明らかにしていく。 カメラやあだ名という仕掛けが効いている。 最終的に殺人犯と彼の動機を突き止めた2人は、やむを得ない理由によって、その男を罰することができない。 最後には重く苦い読後感が残る。 戦時中という特殊な状況の中で、止むをやまれぬ切実な理由から、登場人物たちはみんな何かを誤魔化している 日本軍は兵の死亡理由を誤魔化し 部隊幹部は賀川少尉が死んだことを誤魔化し 死んだ賀川少尉は自分の過ちで部下を死なせたことを誤魔化し 捕虜になった日本兵は身分を誤魔化し 村人は村長と助役の身分を誤魔化している 小さな欺瞞が積み重なった上の大きな欺瞞、それが戦争なのかもしれない 内部に欺瞞を孕んだ理詰めの組織、それが軍隊なのかもしれない 殺人犯の独白には、著者の苦い思いが滲んでいるように感じた。 「死者をおとしめまいと貴重な教訓に蓋をする。まったく愚かな行為です。」 「二名もの友を理不尽に殺した仇です。まったく迷いはありませんでした」 「人でなしは殺さねばなりません。殺さねばまた誰かが泣きを見るのです」 「軍隊は何より恥を恐れます。恥をさらすまいと常に努めます。」 「あなた方の想像をはるかに超えて重慶軍は辛抱強い。確かに戦意や装備の面では劣る。負けると思えばすぐに逃げる。これは文化や倫理の違いのためでしょうが、大陸の歴史に負うところがやはり大きいのです。 撤退も退却も重慶軍にとっては戦における一手段に過ぎません。ようは最後に勝てばいいのです。国を挙げての戦とはそういうものであって個人や部隊の名誉など些事です。戦乱に明け暮れたあげく今なお共産軍と国民党軍が戦いを続けるシナをあなた方はもう少し深く吟味する必要があります。 日本との戦いが始まってなお完全な共闘ができないのはなぜか。もちろん日本との戦いに勝利をおさめた後を双方が考えているからです。 シナ人は百年先を考える。目先の勝ち負けに一喜一憂し、個人の名誉不名誉にこだわる日本人とはものの考え方がまったく異なります。この村での両軍の動きはいわばその縮図です。ヤムオイ村を押さえられたからといって重慶軍は焦る必要がありません。いずれ取り返せばいいのであって、そのための布石を打っておけばいいのです。 では、いずれとはいつでしょうか。 十年先かも知れません。 二十年先かも知れません。 この戦争はまだ続きます。あなた方は相当に覚悟しておかねばなりません。」 | ||||
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必ずベスト5には入れる佳品。 もっと戦争について内容が濃いドロドロした話だと思ってました。 でも謎解きだったんですね。 それはそれで良しです。 他の作品も読んでみたいと思わせる作品です。 | ||||
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ミャンマーが舞台という珍しい作品。それもシャン州。懐かしい! 小説の評判を聞いて読んでみたが、うーん・・・。わかったようなわからないような。 最後に犯人がわかって一番に思ったのは、ええーっ、そんなの言葉でわかっちゃうと思うけどなあ、ということ。ネタバレになるから詳しくは言えないけど、謎解きには余り説得力なかったなあ。 あと、ストーリーテリングが時系列の一直線で、ちと単純過ぎか。そもそも、もっと分かりやすい説明がいると思うけど。ミステリーとしても戦争小説としても、私の評価はイマイチです。 | ||||
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戦争文学としてもミステリとしてもそれぞれが高い次元で完成されていて、しかもその両者が不可分であり、互いの要素が止揚して独自の世界を繰り広げています。とんでもない傑作で、古処先生の現時点での最高傑作と言えるでしょう。 | ||||
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物語の鍵になるのは「日本人としての気質」。 これが最後、物語の謎とぴったり噛み合って作品に深みを持たせています。 無駄のない読みやすい文章、熱帯の空気まで伝わってくる描写、混沌とした時代背景、どれもすばらしく上手く引き込まれます。 後半、(おそらく意図的に)一瞬わかりにくくなり困惑しますが大丈夫、そのまま読みましょう。納得の展開です。 所謂「ザ・大作」ではありませんが、印象に残る作品だと思います。 | ||||
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「ルール」と比べると少し薄味かなと感じますが,これは推理がメインなのでそこは良いのかなと思います. (始めて読んだ古処さんの作品が「ルール」だったので,ついついその雰囲気を求めてしまいます) 当時の戦について,細々と・生き生きと・リアルに(少なくとも読者がそのように受け止められるように)描くのは,大変な苦労を伴うものではないでしょうか. 「研ぎ澄まされた」というレビューを投稿されている方がいらっしゃいましたが本当にその通りだと思います. 著者はあまり量産される方ではないので,いつも新しい作品を待ちわびています. 多くの方々に読んでいただきたい作家だと思っています. | ||||
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戡定(かんてい)作戦終了後のビルマの山間のヤムオイ村に、重慶軍の侵入を警戒して賀川少尉率いる日本の警備軍が駐屯することになる。しかしある夜、賀川少尉が何者かに殺害されてしまう。果たして犯人は誰なのか。それは日本軍に敵意を持つ村人なのか。それとも姿を見せない重慶軍兵士が闇夜に乗じて侵入したのか。そしてさらに中一日おいた夜、今度はヤムオイの村長が同じく他殺体となって発見される…。 -------------------------- 太平洋戦争の前線を舞台にしたミステリー小説です。10年以上前に古処氏の戦争小説は日系米兵が主人公の『』と沖縄戦を描いた『』を読んだことがあります。研ぎ澄まされた、乾いた筆致で戦争の実相を描き出して見せるその力量に感銘を受けたことを今も鮮明に憶えています。この『いくさの底』は朝日新聞と東京新聞の書評欄に取り上げられているのを目にしたもので、久しぶりに古処氏の小説を読んでみたいと思って手にしました。 物語はシャン語の通訳として警備隊と行動を共にする依井の眼を通して展開します。依井は民間企業・扶桑綿花の社員でありながら軍属扱いを受けています。つまり根っからの軍人というわけではなく、また年齢も日本軍兵士の平均を大きく上回っているため、よく言えば敬意をもって遇され、悪く言えばどこまでいっても兵士仲間の一人とはみなされない存在です。 その依井が目にする凶悪な二つの殺人事件の背景には、日本軍、重慶軍、そしてビルマの山村が存在しますが、彼はそのどれにも帰属感を持つことがない人物といえるかもしれません。 物語の最終段階で突如として立ち現れてくる犯人の正体と事件の真相は、読者である私の浅薄な予想など全く寄せ付けない、驚くべきものでした。読者を見事に欺く、かなり上質のミステリー小説といえるでしょう。であると同時に、事件を生むに至った<戦(いくさ)の底にあるもの>の悲しき実態を目にして、口の中がどうしようもなく乾く思いがしました。 シンガポール陥落後という記述が小説内にあることから、1942年あたりが舞台なのでしょう。そして1944年のあのインパール作戦まではもう少し時間があります。ビルマの山野で、依井や犯人たちが、メンツにとらわれた指揮官によってもたらされたこの愚かな作戦にやがて巻き込まれていくのでしょうか。そのことを想像してさらに暗澹たる思いにかられたのでした。 . | ||||
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ビルマ平定戦の最前線となったちゅう中国国境の雰囲気が満喫できる本です。本国に逃れようとする華僑、中国軍を追撃する尖兵隊を率いた被害者。駐屯地となったことで、国境の村となったビルマ人の集落。最前線となった土地で暮らす人々の日常がよく描かれています。 | ||||
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戦場ミステリー。最後まで、どういう展開になるのかドキドキさせられます。 | ||||
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毎日出版文化賞受賞作。第二次世界大戦下、平定したビルマの山間部のヤムオイ村に向けて、賀川少尉率いる警備隊が行軍していた。目的地付近は、相手方の重慶軍の侵入が見られる地帯にもかかわらず、治安維持のための人員も装備も最小限だ。しかし、指揮官の賀川少尉は7か月程前にヤムオイ村で駐屯していた経験もあることから村長とも面識があり、任務は比較的楽ではないかと思われたが事件が起きる。 警備隊に帯同する通訳の依井の目線での語りと時折挟まれる犯人の告白に本格ミステリーの雰囲気が漂います。この時代やこの組織ならではの設定ですが、実にミステリーと上手く結び付けており本格物好きの読者にお勧めです。戦争中の状況等の記述は少なめで、日本軍や村人たちが疑心暗鬼に陥る心理サスペンスの要素が多いこともファンとしては楽しめます。多少ややこしいですが、二転三転する真相は読み応えあり、切れ味鋭くも濃厚なミステリーを堪能できます。 | ||||
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一種の叙述型ミステリーというか、登場人物の一人の勘違いに引きずられて 最後に真相が明かされて「あっ!」という快感は確かにある。 アイディアは良いと思う。 しかし、プロットの見事さを除くと、物語に臨場感がない。 肉付けがなさ過ぎて、下書きじゃないかと思った。 いわば語り部としての通訳「依田」にしても年齢や人相風袋、履歴が分からない。 軍属のくせに、将校に対してため口なのに、将校の方からは敬語というのも 違和感がある。こんなものなの? ほかの登場人物も「副官」「准尉」「村長」「村長の女房」「オオマサ」「コマサ」 といった具合で、人となりが全く分からず、人物像が全然迫ってこなかった。 そもそも全員日本人にしか思えないかった。 これで戦争の悲劇と言われてもねえ。よくわからない。 200ページ弱の小品だが、もっと肉付けしてほしかった。 | ||||
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日本軍がビルマのとある村に駐屯中に殺人事件が起こる。果たして犯人は誰なのか?動機は? 他のレビュアーの方も書かれているが、臨場感は半端じゃないです。 そして戦争の恐ろしさをたった1つの村で起こった事件を通じて際立たせている。 もっと評価されて欲しい作家の1人。 | ||||
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前作もビルマ。今作もビルマ。 日本軍は、一体どこで何をしてきたのか。どういうことなのか。 著者の生年(1970年)から考えてあり得ないことだが、「見て来たのか? いや体験したのか? そうなのだろう?」といぶかしく思えるほどに冴える筆致は今回も変わらない。 装丁も素晴らしい。 | ||||
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