敵影
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沖縄三部作の中の一冊。 7月7日に出てくるカジハラがこちらにも出てくるので、7月7日のスピンオフだと解釈している。7月7日のカジハラとは大分キャラが変わってしまっているけれど。 古処作品の中では人気がありそうな作品とは思えないけれど、個人的には気に入っている作品。 主人公の内面が分かりにくい。 なぜあんなに高江洲に負い目を感じているのか良く分からないし、陸軍病院に対するトラウマも、トラウマになる程酷い体験だろうか?と疑問に思ったりする。 その辺がちょっとユルいかと。 好きな作品だから何度も読んでるけど、何度読んでも分からん。 俺が愚かだからだろうが。 後は、「接近」の白沢伍長が話題に上がる箇所がある。 些細な話だが、両足の無い負傷兵が泥道を泳いでいく箇所があるけど、実際にそういう負傷兵がいたようで、沖縄戦の本で読んだ。どの本かは忘れた。 | ||||
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あちこちに現れる箴言風の言い回しやセリフにハッとさせられる。例えば「見つからないための努力」と「見つけるための労力」は「身を隠したまま人を探す滑稽の前では羨望でしかない」(p.3)という最初のところから、「戦争を政治や思想で語り、その終わりを劇的にしたがるのは、商売人の特徴に違いなかった」(p.81)とか、「特攻など、どこの国の軍隊が正式化できる戦法だろう。これは(若者の)死を受け入れる心と、その心に甘える(年寄りの)卑しさがなければ成立しえない」(p.114括弧内レビュアー補足)とか、「敵前で人が結束するのは文字が誕生する以前からの真理だろう」(p.148)。あるいは「戦の渦中、自分の視界がすべてだった人間が交わることはこの世の終わりまでない」(p.169)。どれも一歩間違えればちんけな表現になりはてそうなものだが、それが堂々とした表現として、実におもしろく感じた。 さらに、人間心理の思いつきがうまい。終戦後も投降を拒む兵士の宣撫のために現場に来た主人公が、アメリカの将校に対して目礼に留めたのは「矜持のためでも卑屈のためでもない。降伏を拒む兵隊がきわめて近い場所にいる事実が、あるはずのない視線を意識させていた」(p.120)などという描写。あるいは投降を拒む兵士の、俘虜になったら自分の見た米軍の蛮行を「米軍ににらまれる恐怖となにもできなかった呵責に口を閉ざして生きることになる。あきらかに(。。。)そこまでを視野に入れていた」(p.134)。 そして形容する文言のおもしろさ。最初に引用した「努力」と「労力」もそうだが、「切ない根気」(p.117)とか、「丈夫な者から兵隊に取られ、誠実な者から死んでいく」(p.151)「人前では常に兵隊であらねばならない日本兵と、任務のときだけ兵隊になる米兵」(p.178)とか「勝利への願いがデマを生み、勝利への祈りがデマを信じさせた」(p.179)。 班長がホームズばりに推理力を発揮しすぎだし、ちょっと格好良すぎるきらいはある。あと、古処の基本的なところには、やはり人間は善良に生まれついていて、それが時代や条件によって悪事をなすものだという性善説的なものがあるのだろう。ドストエフスキーばりの悪魔めいた人物は出てこない。そしてそれが人生の実相というものだろう。 | ||||
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沖縄の捕虜収容所を舞台に、主人公のように玉音放 送前に投降した者とその後も壕に篭る者と、無謀な命令 を発令した将校とそのために仲間を失った捕虜と、そし て、自分を看護した女子師範の学生を死なせた主人公と その罪を問うために主人公を探す同級生との対立などが、 米兵と捕虜との、ボクシングと柔道という格闘技対決に 沿って展開します。それら、まるで生死の迷宮めぐるよう な出口のないせめぎあいには、途方もない虚しさだけが 漂っています。 ザラザラとしたぶつ切りのような文章の中に、突然「特 攻など、どこの国が正式化できる戦法だろう。これは死を 受け入れる心と、その心に甘える卑しさがなければ成立 し得ない戦法だよ」という米軍二世通訳の言葉が記述さ れていてギクリとします。玉音放送後に宇垣纏中将が、 部下達を道連れにして特攻出撃した行動などをみれば (松下竜一『私兵特攻』1985)、これは確かに肯ける話 しです。 無愛想な文体が反って書き手と読み手の想像力を刺 激し合い、行間に圧倒的な不毛世界が立ち上ります。無 限の自問と他者への転嫁の果てに構築された絶望的な その世界を経て、著者はどこに歩もうとしているのでし ょうか。 | ||||
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とても不思議です。自衛隊ものは体験談と理解できます。しかし、戦争と縁のない著者が、何をどのように取材したら、このような濃厚で臨場感のある戦下の描写が出来るのでしょう?設定の場所を現在取材しても到底かなわない表現です。もしかして著者は沖縄戦の兵隊の生まれ変わりでしょうか? 「ひめゆりの塔」は読んでませんが、この小説は裏「ひめゆりの塔」です。難しい解釈もあるでしょうが、イメージキャラクターである女学生さんは、調べてみるとひめゆり学徒なんだと気づきました。本編はとりわけ沖縄の人に読んで欲しいです。また、先のレビューにもありましたが、修学旅行でひめゆりの塔を見て、何かしら感じることがあった学生の方にもぜひ読んで欲しいです。七月七日、本編とも、後世に残る名作と信じています。 | ||||
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大好きな沖縄・ハワイ・グアムなど… シュノーケルだ観光だ買い物だと浮かれていたあの場所で、 たった数十年前にあった出来事。 知ってはいたけれど考えないようにしていたそれらのことを、 さまざまと思い知らされました。 どうしようもない話なのに救いがあり、そして強さと弱さがある。 大切な1冊になりました。 大人だけではなく、中学生から高校生ぐらいの、将来大人になる ひとたちにも読んでいただきたい。 | ||||
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