敵前の森で



※タグの編集はログイン後行えます

【この小説が収録されている参考書籍】
敵前の森で
(違う表紙に投票したい場合もこちらから)

オスダメ平均点

0.00pt (10max) / 0件

7.00pt (10max) / 1件

Amazon平均点

3.00pt ( 5max) / 1件

楽天平均点

4.17pt ( 5max) / 6件

みんなの オススメpt
  自由に投票してください!!
0pt
サイト内ランク []-
ミステリ成分 []
  この作品はミステリ?
  自由に投票してください!!

0.00pt

0.00pt

0.00pt

0.00pt

←非ミステリ

ミステリ→

↑現実的

↓幻想的

初公開日(参考)2023年04月
分類

長編小説

閲覧回数597回
お気に入りにされた回数0
読書済みに登録された回数2

■このページのURL

■報告関係
※気になる点がありましたらお知らせください。

敵前の森で

2023年04月19日 敵前の森で

「あなたには、捕虜の処刑および民間人に対する虐待の容疑がかけられています」戦後まもなく、インパール作戦の日本人指揮官にかけられた嫌疑。 偽りを述べたら殺すと言い放ち、腹を探るような問いを続ける英人大尉。北原はしだいに違和感を覚える。 この尋問には別の目的があるのではないか? 戦場の「真実」を炙り出してゆく傑作長編。(「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点0.00pt

敵前の森での総合評価:6.00/10点レビュー 1件。-ランク


■スポンサードリンク


サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

現在レビューがありません


※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.1:
(3pt)

「中尉」にも似た藪の中的な状況で一人の兵士の人物像を明かす作品。腹の探り合いばかりでまどろっこしい。

最近著作に手を出す機会が増えた作家・古処誠二の新作は毎度おなじみビルマ戦線を舞台にした作品。自分の祖父が戦った戦争について触れる為とはいえ、よくまあここまで一つの戦争を題材に著作を積み重ねられるものだと変な具合に感心しながら拝読。

物語の舞台はインパール作戦崩壊後のアラカン山地近く、荷駄も通れないような厳しいスルサーラ道をボロボロの状態で撤退している状況で輜重を担当する土屋舞台の下士官であった北原は五の川と呼ばれる川で殿を務めていた歩兵部隊の収容を命じられる。

爆撃機の接近にいち早く気付く耳の良さを買われたモンテーウィンという名のビルマ人の少年を連れて部下の兵士たちと山に分け入っていく北原たちだったが、件の歩兵部隊を収容しようとした矢先に英軍の先鋒を務めるインド兵たちと交戦する羽目に。

なんとか撃退に成功した北原部隊だったが、弾を食らって瀕死のインド兵が止めを求めてきたのに応じて部下の佐々塚兵長が射殺する事に。歩兵部隊の撤退後に代わって五の川で殿についた北原たちの部隊だったが、その後川の向こうからやってきたイギリス軍の軍使というビルマ人ラングカンが持参した手紙には北原たちの行為を「現地人の虐待、捕虜の殺害」と一方的に非難する物であった。

その後モンテーウィンが逃亡し不穏な空気が流れる中、再び軍使としてやってきたラングカンを佐々塚っ兵長は北原の意思に背いて一方的に拘束し銃を抜いて抗命すると激しく主張するが……

うーん……一言で申し上げれば「まだろっこしい」という読後感が残った一冊だった。ある意味作者の過去作である「中尉」にも似た「藪の中」的な状況を描いた作品という事になるんだろうけど、とにかく終始主人公が誰かと腹の探り合いばかりしている事もあって状況の進展みたいなものが感じられず「この状況がいつまで続くの?」というある種のイライラ感を覚えながら読み進めた次第。

構成的にはインパール作戦崩壊後に北原たちが就いた友軍の収容と殿を務めた終戦間際の状況と、日本軍の降伏後、イギリスの収容所で北原が戦時中に自分が見聞した状況を語学将校から問い質される(要するに尋問)状況が交互に描かれている。

上で本作の印象を「まどろっこしい」と語らせて頂いたけれどもイベントが起こらないという訳では無い。むしろ前半から中盤にかけては結構な頻度でイベントが起きる。インド兵との交戦、ビルマ人軍使ラングカンの持ってきたイギリス軍からの非難の手紙、モンテーウィンの逃亡、ラングカンの拘束を主張する佐々塚兵長の抗命と立て続けに事件は起きる。

ただ、肝心の主人公である見習い士官の北原がさっぱり動かないのである。作者である古処誠二の作風として主人公にあまり劇的な行動を取らせない部分はあるにせよ本作の主人公である北原はその象徴というか積極的な行動を殆ど取らない流されるだけの主人公なのである。

それは終戦間際のパートでも捕虜収容所でのパートでも大して変わらず状況を自ら動かそうとする動きは殆ど見られない。軍隊という組織にあって、あるいは捕虜の身で勝手に動いたらアカンだろと言われてしまえばその通りなのだけど、それにしても主人公が徹底的に受け身だとここまで小説というのはまどろっこしい印象を与える物になるのだと思い知らされた感がある。

むしろ北原は主人公というよりも狂言回しといった方が良いのかもしれない。本作において積極的に行動するのは北原の部下の佐々塚兵長の方であり、彼が犯したインド兵の殺害やモンテーウィンに対する逃亡教唆、軍使ラングカンの拘束と北原の抗命みたいな形で次々と主体的行動というものを見せてくれるので劇中の役回りから言えばよほどこの登場人物の方が主役に相応しい。

それじゃ北原は何の役なのかといえば、この部下である佐々塚兵長の真意を思索し、推察するための存在である、としか言いようがない。モンテーウィンの突然の逃亡やラングカンの拘束と自分に対する抗命といった行動を積み重ねる佐々塚の真意はどこにあったのかと語学将校の尋問を受け乍ら北原自身が思い悩む姿を描きとった小説であると言えば本作がどんな作品かお分かり頂けるだろうか?

北原の思索や推測には使う側である日本人と大人しく使われるビルマ人、かつてのビルマの支配者であり日本軍を撃退後に再びビルマを植民地化しようとするイギリス人の三者の関係が絡んでくる辺りも「中尉」と重なる部分がある。本作に新鮮味を感じなかったのは直前に「中尉」を読んでしまった事に拠る所があるのかも。

一応、佐々塚兵長の真意は彼が主役となるエピローグで読者が察せられる様になっているのだけど、この「回答編」を読む為に200頁はあったのかなと思えて「それなら最初から佐々塚を主人公にした方が良くないか?」という想いすら湧いてくる。

藪の中的に一人の人物が取った不可解な行動の真意を探っていこうとする構成自体が悪いとは言わないが主人公の存在感があまりにも微か過ぎ、語学将校とのやり取りで進められる話の展開がまどろっこし過ぎてどうにも消化不良感みたいな物が残った一冊であった。
敵前の森でAmazon書評・レビュー:敵前の森でより
4575246204



その他、Amazon書評・レビューが 1件あります。
Amazon書評・レビューを見る     


スポンサードリンク