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バラカ



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【この小説が収録されている参考書籍】
バラカ
バラカ 上 (集英社文庫)
バラカ 下 (集英社文庫)

バラカの評価: 3.71/5点 レビュー 82件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.71pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全82件 41~60 3/5ページ
No.42:
(2pt)

起承転結の「転」「結」が弱い

3.11の現実と、原発事故はより深刻さを増した仮想を描き、震災小説を世に出された勇断は高く評価したい。
主人公バラカを取り巻く展開は面白く、次のページを早くめくりたくなったのは事実。
しかし、終盤、あと数ページを残すのみになっても、父娘が再会する流れは期待できず、もしかしたら続編へ続く・・・ってこと?と心配した程で、でも、エピローグにその後の説明(描写というより敢えて)があり、物語は完結した。
震災、原発事故の物語も重要ならば、父娘の再会もそうであって欲しかった。なのに、終盤たった2、3行で父娘のその後を説明したのみで終わる。とうとう再会は叶わなかったどころか、電話で話しもせず、SNSでちょっと交わしただけの、ほんの知人程度の扱いである。これには驚いた。その後の薔薇香にはおじいちゃんが、まさしく父親代わりの存在であり、実父パウロは薔薇香が生きていく上で必要はないのかもしれない。でも父親の方の想いはどうなる?また、冒頭からのパウロのこれまでの人生描写は何だったのか。あまりにも放り投げた感が否めない。さらに、その後のパウロの行動も理解しがたい。いくら日本で指名手配されているからといって、死んだと思っていた娘が生きていて見つかったとなれば、第三国でもどこでも会おうとするはずだし、再婚して音信不通って・・・、最後の最後でキャラが変わってしまったようで残念だった。これなら、続編でもいいから薔薇香が40代になるまでを丁寧に描いてもらった方がよかった。
川島が数年間で富を得たというのは、資産2億円という遺産相続からか、と想像したのだが、屋敷は売らずにそこに住んでいるという、ならば葬儀屋から転職し、広告代理店の社長になったことと関係があるにしても、その経緯はほとんど語られることはなかった。
川島が自殺した動機も今ひとつ説得力に欠けるし、それまでの悪魔的な存在が、なんともあっけなく、やすらかにとも言える最期で死んでしまった。まったく盛り上がりもなく終わった感じである。
もし、川島が自殺ではなく、パウロと交戦して死んだとかなら、まだ起承転結の「転」が描けたのではないだろうか?
薔薇香を苦しめる敵が、何で誰でだったのか、姿が見えなさ過ぎでイライラし、結局何も描かれ仕舞いだった。
サクラやムラタ、そして川島が「悪」なら、読者がスカッとするそれなりの結末を期待する。(少なくとも「水戸黄門」や「必殺」で育った私は)しかし、それらは全然解消することなく消化不良のまま残っている。そして、この物語は善人も悪人もいとも簡単に死ぬ。
それから、原発事故の描写があまりにもあっけなくて期待外れだった。いや、なにも世紀末的な惨劇を期待していたのではない、もっと科学的かつ、その後の被災地の様子を詳しく描いた作品を期待していたのは私だけだろうか。
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.41:
(3pt)

個人的な感想ですが…

バラカの行く末が気になって、一気に読ませる力量は素晴らしいと思いましたが、読後の満足感はあまり得られませんでした。
登場人物が多く、それぞれのエピソードも若干とっ散らかって、いずれも無駄に死を迎えるという、シュールでありながら、小説としてもう少し読み応えのある展開に進めなかったものか、少々残念な読後感です。
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.40:
(3pt)

ファンだけど・・

後半のあまりにもおおざっぱで投げやりな締め方にがっかりした。
「顔に降りかかる雨」以来の読者だが、今回は残念。
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.39:
(5pt)

桐野節全開、「Out」を彷彿とさせるポスト311時代の傑作

桐野さんが足かけ4年で書いた大作。
原発事故と放射能汚染をそのままテーマにした、渾身の一作。
既に名誉も作家としての地位も全て手に入れた桐野さんが、原発事故をテーマにしたということに、大きな意思と使命感を感じる。
作品は確かに設定の都合良さや粗い展開もあるが、そういうのものが一切気にならないレベルの勢いのある小説。
物語自体は、1ページ目からジェットコースターのように走るので、寝ずに一気に読めます。
プロットの展開や構成は、「Out」や「メタボラ」を彷彿とさせます。
桐野さんの代表作の一つになるのではないでしょうか。
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.38:
(5pt)

始まった原発事故小説の傑作

「福島原発事故独立検証委員会調査検証報告書」にはこんな記述がある。「官邸中枢スタッフは我々のインタビューの中で「この国にはやっぱり神様がついていると心から思った」と思わず漏らしたものである」。言うまでもなく、小説の中の話ではない。いま日本国民は既に忘れてオリンピックに浮かれているのかもしれないが、あの福島原発はすんでの処で四基とも爆発するところだったし、爆発の時にたまたま風向きが海に向かっていたので最悪の事態を免れたのである。

「バラカ」は福島原発事故の時に四基とも爆発して、首都が大阪に移転した日本の近未来を描いている。この小説はだから、空想物語ではない。(いま現在もいつ起きてもおかしくはない)原発事故の起こすさまざまなドラマの可能性を提示する小説である。

しかし、それだけではない。「OUT」や「東京島」の登場人物たちのダークサイドに堕ちてゆく描写が素晴らしかったように、桐野夏生らしく、震災前の東京在住の三人の都会派男女と、群馬に住んでいた南米系日本人三人の男女を描いて、バラカがいかにしてドバイの子供市場で売られてバラカとして日本の被災した子供として生まれ直したか、を丁寧に描く。そして人間の闇と可能性を浮き彫りにしようと努力している。

とんでもない状況で産まれたのにもかかわらず、甲状腺ガンで首の周りに手術跡がネックレスのようについているのにもかかわらず、震災8年後の10歳のバラカが、聡明で正義感溢れ、前向きな少女になったのは、ひとえに彼女を育てた人たちが素晴らしかったからだと思う。震災後の夏、警戒区域の放置犬を保護する目的で入った四人の「爺さん決死隊」の男たち。彼らの知恵と明るさと、良心がなければ、ネットや監視カメラや独裁政権の中で、密かに殺されて交通事故で処理されてしまう未来もあったかもしれない。「近未来」というSF的な表現でいいのか、という感想も持ちつつ、去年の北野慶「亡国記」に続いて、こういう「原発事故小説」が再び誕生したことを祝福したい。
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.37:
(4pt)

現実で起こりうる日本の姿

海外で捨てられた子供と、震災による原発事故がシンクロしづらい部分ではあるが、
原発事故によってもたらされる世界観は、現実でも起こりうる事だと感じることができる。

他のレビューでもある通り、登場人物に統一感が無い感は否めないが、
今の世の中に問題提起をするということでは非常に意味のある作品だと思います。
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.36:
(4pt)

こんな境遇の人、いると思います。

こんな境遇の人が本当にいるのかもしれない。

 東日本の大震災、そこで人生が狂ってしまった人は大勢いると思います。

 必死に復興しようと頑張っている方もいれば、バラカのように利用されようとして、逃げ惑っている人もいるはずです。

 世の中には価値観が違いますし、考え方の違う人もたくさんいます。

 人々が協調していくにはなかなか時間と労力必要ですね。

 640ページ余りの大作でしたが、ラストが意外な結末だったことを除けば、読み応えがあります。
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.35:
(4pt)

桐野夏生の渾身の一撃だね

桐野夏生の作品で、ここまで社会や時代に正面からモノを申した作品は過去にあっただろうか?
この作品は、本来はバラカに係わる市井の人々(おそらくは優子、沙羅、川島が中心)の群像劇だったのではないだろうか。
それが、連載直前からの3.11そしてその後の日本社会の変容に強い思いを抱いた著者が、大きく作品を変えていった。
そのため、本作は、桐野節ともいうべきドライで殺伐とした展開を強く押し出しながら、同時に著者らしからぬ社会へのコミットも色濃く感じられる、読者に(よくもわるくも)消耗を強いるつくりとなっている。

神の恩恵を意味するバラカの名を持ちながら受難の人生を歩むしかないバラカ。
そして、神を意識することなく冗漫で凡庸な日々を無意識に過ごしながら、3.11を契機に同じく受難の人生を強いられる被災者たち。
この大きく2つのグループに読者は共感とその受難の日々を現在に重ねることで憤りを感じるつくりが一つある。

一方で、バブル世代にして、中流崩壊の中でなおも恵まれた層にいる優子、沙羅、川島は、作品内のみならず読者からもおそらくは嫌悪を受けるばかりで、無意味で分かり辛いラストを迎えている。この消化不良な点を、私は☆マイナス1にしている。

本作は、原発事故や被災者への安易な同情を排することに成功しているが、では、陰謀論的な構造をチラ見せするだけで、現在の日本社会の変容や漫然と生きることでそうした劣化を止めようとしない私たち自身への問いかけにまでなっているかというと、そこは先達レビューを読む限りでは中々難しいようだ。著者のチャレンジは認めつつも、その志が十二分に達せられたとは思わないと敢えて言いたい(優子や沙羅のパートを文庫版なりで全面改稿するくらいのチャレンジが必要か)

ただ、著者の問いかけを私個人は強く感じられたし、批判を多く書いたが、ラストを含めとても良い作品だと思った。
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.34:
(2pt)

うーん、何だか

「バラカ探し」に「震災」を強引に詰め込んだ感じが否めない。
ひとつだけでも充分成り立つ物語なのに、なんだか散漫。
他のレビューにもあったので調べてみると、「ドバイという人工楽園を舞台にした父と娘の物語」という構想で小説すばるに連載予定だったが、その打ち合わせ最中に
東日本大震災が発生。 連載開始を延期して物語に大震災を盛り込んだとのこと。
別に盛り込むこと自体は悪くは無い。 しかし、それによって散漫になってしまっている上に、無理に詰め込んだ震災後のストーリーに難あり。
反原発派が投獄、抹殺されていくってそんな・・・

もちろん反原発派を抑え込みたい人達はどんな状況でも存在するはずだが、物語の設定は現実の数十倍規模の放射能漏れ。
関東には住めなくなって関西に遷都しているわけだから国民の数分の一は被災者の筈なのに、
それをないがしろにしてオリンピックにまい進する政権?
国会前で大規模な反原発集会が続いたのは記憶に新しいが、仮にその中の一人でも国家から暴力を受けようものなら途轍もない暴挙として歴史に残った筈。
物語では反原発派の都合の悪い人間は投獄、抹殺されていき、報道はプロパガンダで被害に蓋をしようとする。
いったいどこの国の話をしているのか。
そもそも物語の設定通りの被害なら、投獄、抹殺で黙らせることが出来るような数の被災者ではないでしょう。

もちろんフィクションなのだから仮想でいい。 
だが仮想の中での整合性は、ある程度成立していないと駄目でしょう。
オリジナリティに富んだ話であることは確かだし、好きな作家だけに残念。
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.33:
(4pt)

桐野夏生氏の震災後の世界

東日本大震災の年の夏から4年にわたり連載された作品の単行本化です。650ページの長編で、震災前・震災・震災後の3部作となってます。本作の構想が、震災前からあったものなのかそうでないのかは分かりませんが、震災以外の読みどころも数多くある中で、物語の中心は震災であり大きなテーマである事は間違いないと思います。

前半は主に作者お得意の男女の愛憎劇に赤ん坊の売買問題が絡めて書かれ、特に薄気味悪く悪意の塊のような男のキャラが際立ってます。その後は、若干の想像も交えた震災後の日本において、ドバイから連れてこられたバラカの過酷な人生を中心に、震災により大きく人生を狂わされた人々の苦悩や葛藤、そして生き抜いていく姿や思いもよらない行動や社会問題が書かれています。

登場人物も多いですが、全編を通じて読めば全て繋がっていき、その点は少しミステリー風の爽快感は味わえます。但し、作品の題材上決して後味が良いとは言えず遣り切れなさが残ります。震災から約5年を経た今、風化させてはならない戒めとしての小説の代表作になると思います。
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.32:
(3pt)

トッ散らかっています

トッ散らかってまとまりに欠ける印象がぬぐえなかった。
何がテーマで、どこに向かっている物語なのか焦点が今一つ定まらず、伏線と
言うより、まとまりの無いまま各エピソードが続いていく。
ただ、それもこれも読後に読んだ著者のインタヴューで合点がいった。

元々は父親が娘を探す物語だったが、執筆中に実際に起きた東日本大震災を
後づけで盛り込んだらしい。
また著者は現実と小説世界を行き来しながら、小説世界を太らせていく作業
だったと語っており、まとまりの無さも後づけで継ぎ足したものだとすると
腑に落ちる。

それから気になったのが、もちろん描かれてはいるのだが、震災後の
ディテールが淡泊過ぎ。
帯や装丁から本書を手に取りプロローグをサラッと読むと、原発4基が爆発
したあとの、終末的な世界を匂わせる。
少なくとも当方はそれで購入を決めた。
しかし実際はその辺りの描写が淡泊な上に、分量的にも多くは触れられて
いない。
反原発派と推進派が戦っている事、外国人が増えた事、それから各人の
「震災履歴」くらいしか描かれていないのだ。

政治の迷走、経済の破綻、国際的な立ち位置の失墜、日本の弱体化を機に
色めき立つ周辺諸国、風評、賠償問題、健康問題、そして最大の難題である
放射能を垂れ流す原発をどうやって処理していくのか。
すべては無理としても舞台設定としてその辺り、もっと緻密に描き込んで
あると思っていたのだが。
そういった話だと思って読むと、完全な肩透かし。

あと、カワシマが木下母子を垂らし込む下りは強引過ぎ。
片方ならまだしも、母と娘それぞれを個別に同時期に手なずけるなんて。
他にもカワシマの特別な悪魔的能力で片づけられている下りが散見されるが、
なんとも雑な印象。
そんなに毎度毎度、悪魔の都合のいいように事は運ばないでしょう。

序盤と中盤で2回くらい途中で放り出そうと思ったので、本来なら星2つ。
ただ聞いたような話ではなく、どれとも似ていないオリジナルなところに
敬意を表して星3つ。
人に勧めるかどうかで言うと「時間があったらどうぞ」とも言えず、
「よほど時間があって、且つオリジナルな話がいいのならどうぞ」かな。
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.31:
(5pt)

文句なし!

桐野さんの最高傑作に近い(?)作品。

いずれにせよ著者作品で読んだ中ではBest3に入ります。
(他は、柔らかな頬・ダーク)
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.30:
(3pt)

バラカは、サラ・コナーズか?

気になる小説ではあった。

震災前の第一部は、現代女性の恋愛、結婚願望などが、赤ちゃん売買市場(ベビー・スーク)などというセンセーショナルな
仕掛けで、それなりに読ませる。3.11との遭遇は、これらの虚構をリアルたらしめるアンカー(碇)として、それなりの効果を
醸成している。

第二部の震災8年後の世界は、もうひとつのありえたかもしれない日本の近未来を描くが、登場人部の描き方や社会情勢
の変化が、紋切り型で、なんかいまいち乗ってこない。

もちろん、その場その場では、読ませるものはあるが、読後感は、あまりカタルシスには結びつかない。

ざっくりとした印象にすぎないが、少女バラカの生きざまは、かつて一世を風靡した映画「ターミネーター」に登場するサラ・コナーズを
連想させる。

余談ですが、表紙のマネキンのような少女は、私の想像力をむしろ制約する方向に作用しています。
中表紙の、原発廃墟?の白黒シルエットのほうがいいなあ。

二度読み返すかといわれると、ビミョーです。
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.29:
(2pt)

人物描写が散漫

とりわけTVディレクターと出版社勤務の二人の女性描写が、余りにもご都合主義かつ平板。まぁ、TV屋なんかはそれでもいいのかも知れないが(それにしてもドキュメンタリーを製作するにはそれなりの覚悟がいるはずだが、その辺りもいい加減)出版社勤務の女性のフラフラぶりはあまりにもひどい。むろん出版社と一口に言っても、弥生や人文、白水社、みすずや小澤といった一流出版ばかりではないのは分かるが…。それにしても学生時代に妊娠させられ、墓場までその秘密を持って行こうと苦悩しているはずなのに、その原因になるヒール役の男にあっという間に取り込まれ、結婚してしまう。さらに婚姻後に「ねえ、結婚してよかったのかどうか教えて!」と、友人に依拠する。とても主体的に生きているキャリア・ウーマンとは思えない。この辺り、篠田節子さんの「アクアリウム」同様、筆者の同性フォビアを感じてしまうのはぼくだけだろうか。 また、ヒール役の男も「なぜそうなったのか?」がストンと落ちない。たとえば、宮部みゆきさんの「模倣犯」における、緻密かつ細緻なキャラクターの積み重ねと場面描写、その蓄積が最後のカタストロフに至るまで首尾一貫し、巨大なコーダを構築しているのと比べると、やはり相当物足りなさが残る。また、北野慶さんの「亡国記」同様に重要なテーマを軸にしながら、それが活きていない憾みを拭えない。「このシチュエーションだからこそ本作が生まれたんだ」という説得力が希薄と言わざるを得ない。力のある作家さんであるが故に残念だ。「模倣犯」のように、ハード・カヴァー二分冊の大分なヴォリュームでありながら希薄な部分がなく、かつ、圧倒するゴシック的構造感と深さ、余韻の長さを備えた、思わず唸る「ロマン・ノワール」を、次作に期待したい。
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.28:
(4pt)

桐野夏生の想像力に圧倒されました

ドバイの赤ん坊市場で買われてきた少女「バラカ」の人生を東日本大震災と原発事故を背景に描きます。
前半の読むのがとめられないほどの面白さに比べると、
後半はやや急ぎ足で細部の描き方が散漫な気がしたのが小説としては残念です。
ですが、震災までの出来事は現実とリンクしているし、
震災後の世界は現実とはちょっと違うけど十分にありえたことでもあるので、まったくのフィクションとして読むことはできませんでした。
私たちが知らないだけで、もしかしたら現実はこれよりもっとひどいかもしれない・・・。そう思わずにいられない恐怖もあります。

「一人の子供がただ生きるということ」、たったそれだけのことも許されなかったバラカを思うと胸が痛い。
ミカちゃんには子供らしく、自分らしく、生きてほしい。そんな未来があってほしいです。

ほーんと、五輪どころじゃないよなぁ。
スポーツの力で被災地を元気にしたいとかそんなぬるいこと言ってる場合じゃない。
今の日本は五輪なんかより、もっともっとやらなきゃいけないことがいっぱいあります。
桐野さんはこの作品を通してそういうことも言いたかったのではないでしょうか?
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.27:
(4pt)

前半すばらしい。

バラカをとりまく物語。
プライドの高い女たち、人身売買、外国人労働者、大震災・・
社会性の高いテーマがたくさん盛り込まれ、そのなかにバラカがいた。

バラカが産まれるまえ、および、ことばを発しない幼少のころのストーリーが抜群におもしろかった。

残念なのは、後半、ぱたぱたと話がまとめられてしまったように見えること。とくに、ヒールの立ち位置にいたある人物の書かれ方が、もったいなかった。「いや、この人、もっと悪辣だろ、そんなおとなしくないだろ」、と思いながら読んだ。この小説がもともと連載小説だったことと関係あるのだろうか? 終わりの時期が決まっていて、無理矢理クローズした感じだ。単行本化にあたって、もっと書き加えてほしかったなと思う。

とはいえ、桐野氏の、読者を引きこむ力はよく発揮されていたと思う。☆4つで。
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.26:
(5pt)

桐野作品らしい作品

この数年桐野さんの小説にスリルや凄みが感じられなくなっていましたが、これは久しぶりにザ・桐野夏生といった作品だったと思います。早期のOUTとか柔らかな頬とかダークとか、犯罪に近い、もしくは罪を犯す人たちの内面への洞察力が桐野さんの筆力だと思っていましたが、今作も視点人物それぞれの内実に迫力があります。桐野さんおかえりなさいといった感じw
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.25:
(3pt)

あり得る現実の巧みさ

あり得る現実――この作家に、構想する力は衰えていない。

 群馬県で働く日系ブラジル人夫婦は、夫の飲酒癖で夫婦仲に亀裂が入る。飲酒をやめるためには、いっそイスラム教国に。乳飲み子を連れた夫婦はドバイに渡る。一方、東京で暮らす男性不信の30代の編集者は、子どもを切に欲する。友人のテレビウーマンに「ドバイには赤ちゃん販売店」があると誘われ、旅した。買った子どもの名前は「バラカ」で連れ帰るが、なつかない。編集者は妊娠し、結婚する。夫の仕事の都合で仙台にいったときに、震災が発生。福島原発は爆発し、関東地方も避難勧告。首都は大阪に移転。愛されないバカラは、被災地をさまよう。甲状腺癌にかかった美少女バカラは、原発反対派・推進派双方が利用しようとつけねらう。10歳のバラカの冒険は――。

 ドバイのショッピングモールの暗い一角に、貧しさから売られた赤ん坊を陳列する店。現代世界で欲望の極点の都市のひとつドバイでは、あっても不思議ではない。桐野は読者をそう思わせる。実際よりひどい原発事故となり、東京にも一時避難勧告が出て、多くの住民は西へ避難。閑散とした東京は、出稼ぎの外国人労働者がすみつく街となった。5年前、事故処理を少し誤れば、いや、運がもうちょっとだけ悪ければ、実際になっていた事態だ。こうした「あり得る現実」を説得的に描くのが、桐野はあきれるほどうまい。「優しいおとな」では、代々木公園に子どもホームレスが棲息している実態を描いた。信じてしまう。子どもを欲する30代女性の欲望のいやらしさ、醜さを描く彼女の筆力は、これまでの作品同様、冴えわたる。

 こうした背景の「あり得さ」やリアリティーに対し、主人公の少女の冒険譚には現実味がほとんどない。したがって物語としては失格。しかし、読む意義は大きい。5年前の原発事故と、それによっていまも苦しむ人々が膨大にいることをすぐ忘れてしまう私たち。この忘却と、おのれの怠惰に気づかざるをえない。その意味で、読むべし。日頃から、フクシマを考えている人は読む必要がない。
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.24:
(4pt)

やっぱり怒りですかね?

福島原発が震災で爆発してたらという仮定において描かれる一人の少女の冒険譚であるが、現実にも、これに近い場面が垣間見られます、作者はやっぱりそ
れに怒り覚えているのでしょうかね...例えば、福島県内の甲状腺癌罹患率が全国平均の数十倍にも及びながら、いまだに原発の影響とは考えにくいとする
福島県の健康調査検討委員会、いまだに制御されていない汚染水とその報道の少なさ、そして欺瞞に満ちたオリンピックの進行とか。
個人的には、主人公が最後に行った場所が、神奈川在住の私が現在、物件を探している避難候補地の一つに該当した事に妙に納得感がありました。私の場合は、温暖化進展に伴う関東からの避難場所確保ですが。
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465
No.23:
(5pt)

3・11から5年。大震災、大津波、そして原発事故から5年の歳月が過ぎた。

忘れてはいけない、風化させてはならない、と人は言うが、時間は残酷に前へ前へと流れ、過去はどんどん薄れていく。
過ぎ去った年月は、現在の時間の濃密さに勝ることはない。
忌まわしい記憶をいつまでも同じ濃度で抱えていると、人はおそらく狂ってしまう。
だから、忘れることも必要。と説明する人もいる。

そうこう考えると、小説とは、なかなか結構な記憶装置なのかもしれない。
小説『バラカ』は、福島原発事故以降のこの国の、ひとつのあり得た近未来を描いている。
「あり得た」というのは、原発事故を、現在われわれが把握している規模(本当のことは誰も分からないが)よりもじゃっかん大きめに設定して、関東から東北全体が広範囲に汚染されてしまったとされているから。

作者は、3・11以前から書き始めた長編小説を、途中から大幅に軌道修正して原発事故後の小説に、いわば強引に仕上げたようだ。
作者の小説を読みなれている人は、おそらく「あ、この強烈なキャラは、3・11以前からのだな」「これは3・11以降に創ったキャラだな」などと、登場人物を読み分けることも可能だろう。
桐野作品がほとんど初めての筆者でも、なんとなく分かった。

それは、小説としてはマイナスなはずで、作者も出来ればしたくないに違いない。
でも、今回は違った。
書いていた物語が、3・11、とくに原発事故によって、よりいっそう切実に書きたい物語になったのではないか。
あるいは、3・11、とくに福島原発事故を、小説家として「なにがなんでも書かねばならない」と、腹をくくったのではないか。
そんなふうに思えてくる。
読者としては、「忘れまい」とする意志や希望に反して、少しずつ忘れかけていたものが、沸々とよみがえってきた感じがする。
忌まわしい記憶というより、向き合わねばならない現実として。

原発の事故だったのだ。
地震や大津波とは違う。

時間が経つと、その違いが薄れてくる。
この小説は、ガツンとそれを思い起こさせる。

小説としての結構がどうだとか、キャラの設定がどうだとか、結末に不満だとか、そういうことをぜんぜん言いたくならない。
強烈なストレートパンチを喰らった印象がある。

福島原発事故。
忘れるものか。
バラカAmazon書評・レビュー:バラカより
4087716465

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