虚ろな十字架



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初公開日(参考)2014年05月
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長編小説

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虚ろな十字架 (光文社文庫)

2017年05月11日 虚ろな十字架 (光文社文庫)

中原道正・小夜子夫妻は一人娘を殺害した犯人に死刑判決が出た後、離婚した。数年後、今度は小夜子が刺殺されるが、すぐに犯人・町村が出頭する。中原は、死刑を望む小夜子の両親の相談に乗るうち、彼女が犯罪被害者遺族の立場から死刑廃止反対を訴えていたと知る。一方、町村の娘婿である仁科史也は、離婚して町村たちと縁を切るよう母親から迫られていた―。(「BOOK」データベースより)




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虚ろな十字架の総合評価:7.83/10点レビュー 186件。Bランク


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全11件 1~11 1/1ページ
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(9pt)

虚ろな十字架の感想

「贖罪」と「寛怒」…東野氏の作品によく著されるテーマですね。今作も感慨深く読ませていただきました。人が人の命を奪うことの重みに向き合う時間をすごしました。
ちょうどこの週末、池袋暴走事故への有罪実刑判決が下されましたが、判決前に被害者遺族がSNS上でその心中を綴った文章で「誰かを憎む人生を終わりにさせて欲しい。妻子が愛していた私でいさせて欲しい。」といった内容が記されていたことを知りました。罪の十字架は加害者だけでなく被害者にも重くのし掛かって来るのです。
罪を背負わず生きる人間などいないと思います。誰もがただ生きるだけで、何がしらの十字架を背負っています。その中身は人により異なり、その重さは背負う人間にしか感じることはできません。「命を奪う」とい罪の重さを軽んじる人に、その罪の重みを知覚し、苦しみ贖罪へと導く方法があるとしたら、罪が罪であることを感じる心を人として生れたてそのときから育むことしかないのではというのが、私の結論なのですが、今の社会に、今の大人にそれが出来得るのか、疑問符を拭うことが出来ず、また混沌の思考のなかに堕ちて行ってしまいました…。
取りとめのない感想になってしまいましたが、ぜひオススメしたい作品でした。

はつえ
L7BVQMDY
No.10:
(6pt)

虚ろな十字架の感想


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mick
M6JVTZ3L
No.9:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

またもや東野圭吾は私を身悶えさせる

かつて東野圭吾氏は『手紙』で殺人犯の家族の物語を描き、『さまよう刃』で娘を殺害された父親の復讐譚を描いた。
本書『虚ろな十字架』ではその両方を描き、償いがテーマになっている。

本書では2つの家族を中心に物語が進む。

まず最愛の娘を強盗に殺害され、犯人に死刑の判決が下り、刑が成された後に離婚した中原道正と浜岡小夜子の夫婦。

もう1つは浜岡小夜子を殺害した町村作造を父に持つ花恵とその夫仁科史也の夫婦。

被害者側の夫婦と加害者を家族に持つ夫婦双方が同時進行的に描かれる。そのどちらの家族も決して幸せではなく、何がしらの問題を抱えている。

この浜岡小夜子の死を軸に不幸な、だがしかしどこにでもいそうな夫婦の抱える問題が次第に浮き彫りになってくる。

物語の主旋律は娘を殺害され、更に別れた妻を殺害された中原道正のパートであるが、次第に対旋律であった仁科史也のパートが重みを帯びてくる。特に仁科史也という人物の気高いまでの誠実さに隠された謎に俄然興味が増してくる。

本書のプロローグで描かれるのは井口沙織という父子家庭で育つ女子中学生が1年先輩の仁科史也と出逢い、相思相愛が成就する場面が描かれている。

しかし本編で出てくる、医者となった仁科史也の結婚相手は花恵という女性で井口沙織ではない。しかも花恵の父親は浜岡小夜子を殺害した町村作造であることが判明する。

更に井口沙織は逆に浜岡小夜子が万引き依存症の記事を書くのに取材した対象者であることが解ってくる。この2人の接点が浜岡小夜子に収束していく。

義理の父親の犯した罪に深く反省の念を込め、小夜子への遺族に手紙を認め、直接お詫びをしたいと告げる仁科史也。一方で町村作造の生涯は実に取るに足らない男として描かれる。
偽造ブランド品を売って東京と富山を往復しているうちに花恵の母と知り合い、そのまま結婚してしまうが、会社が警察に摘発されると職にも就かずに家に居つくが、しばらくすると女を作っていなくなる。とにかく怠けることしか考えない男だ。

そんなどうしようもない男の犯した罪のために代わって遺族へお詫びをしたいという。しかも花恵が生んだ息子翔は史也の実の子でなく、結婚詐欺師によって孕まされた子供であることも判っている。史也が花恵と出逢ったのは花恵が将来を絶望し、富士の樹海で自殺しようとしていたところを史也が思い留まらせたことがきっかけだ。そしてその後の10日間、史也はお金を与え、晩御飯を食べに行くようになって花恵に結婚を申し込む。
このもはや聖人としか思えないほどの精神性はどこから来るのかと非常に興味を持たされた。

そして今の仁科史也を形成する事件が明かされるのは物語の終盤だ。

結婚とは、夫婦になると云うのは、家族になると云うのは、知らない者同士が縁あって一緒になるということだ。一緒に住んでいくうちにお互いのそれまでの人生で培われた性格や癖、足跡などを知り、生活を作っていく。
しかし何十年過ごしても知らない一面があったことを気付かされるのもまた事実だろう。本書にはそんな家族という最小単位の共同体に隠された謎が描かれている。

愛する娘を喪ったことで共に裁判と戦いながらも最終的に離婚という道を選ばざるを得なかった中原道正と浜岡小夜子の夫婦は、地獄のような苦しみの中で共に戦った戦友でありながら、離婚後は相手のことを実は本当に解っていなかったことに気付かされる。

娘を自分の不注意で死なせたと自責の念に駆られていた小夜子はその後犯罪者と被害者について取材を重ね、死刑について自分なりの考えを持ち、原稿を書くまでのライターとなった、ペンを武器にした女闘士の如き女性だった。
しかしそんな彼女がなぜ穀潰しとも云われていたしようのない老人に殺されたのか。

一方有名大学の医学部に入り、そのまま附属病院に就職して順風満帆な人生を送っているかに見える仁科史也は、結婚詐欺師によって孕まされた元工員の女性を偶々自殺を踏み留まらせた経緯で結婚し、他の男の子供を自分の子供として育てる。穀潰しの妻の父が犯した罪を一身に背負い、家族を守ろうとする。

血の繋がった子供を持ちながらも、その実本当の姿を知らなかった夫婦。

血の繋がらない子供を持ちながらも、自ら降りかかった不幸に立ち向かおうとする夫婦。

血の繋がりこそが家族の絆ではないこと、それ以上の絆があることをこの2つの家族の生き様は象徴しているかのようだ。

そしてどうしようもない父親だった町村作造が小夜子を殺害したことは彼が娘夫婦を守ろうとした最後の父親らしい行動だったのだろう。これもまた親と子の不思議な絆の形だ。

タイトルになっている「虚ろな十字架」とは中原の元妻小夜子が生前ライターをしていた時に認めた原稿『死刑廃止論という名の暴力』の中にある一節に由来する。
人を殺害した人間に有罪判決を下して懲役○○年と罰しても、出所すれば再発の確率が高い現実を顧みればその罰はなんと虚ろな十字架を縛り付けているのだろうかと書かれている。

つまり人を殺した人間を罰するには死刑しかないのだと娘を喪った小夜子は訴えているのだ。

娘を殺害された被害者となった彼女がこのような極端に針の触れた結論を出したことは解る。
しかし一方で死刑は単なる通過点に過ぎないことも解っている。なぜなら中原たちの娘を殺害したしがない窃盗犯は最終的には裁判に疲れ、死刑になったことを拒まなかった。
しかしそこには贖罪の念はなく、ただ自分の決定された運命を受け入れただけだったのだ。もはや彼にとって死刑は自分の人生を諦めた行く末に過ぎなかったことが語られる。

そして一方で中原夫妻も死刑になったことで最愛の娘の死が浮かばれたとは思っていなかった。ただ事件が終った、それだけだったと述べる。
しかしそのことを経験しながらもやはり一つの命を奪った人は同じようにその命を死刑によって罰せられるべきだと元妻の小夜子は決意したのだった。

彼女もまた娘を一人家に残したことを後悔し、その後再婚して子供を産もうとは考えられなかった。自分は子供を産んではいけない女性だという罪の意識に苛まれながら、事件や依存症などと向き合う人々を取材してきたのだ。
まだ若い妻の人生のやり直し、殺された娘の代わりの子を産むチャンスを与える意味で離婚を決意した中原の思惑とは全く別のことを小夜子が考えていたとは皮肉だ。

仁科史也は町村花恵を家族として迎えることで過去の罪を償おうと生きてきた。

死刑もまた贖罪であるが、この仁科史也もまた贖罪だろう。
そして作者はどちらが罪の償いとして正しいのかと読者に問いかける。更に法律は矛盾だらけだ、人間に人は裁けないとまで述懐する人物もいる。

お母さんの留守番をしていて殺された子供。

留守番をさせて娘を死なせたことを抱えて生きていく母親。

娘を殺害された虚しさゆえに離婚を選んだ父親。

一文無しで空腹だったために小銭を稼ごうと泥棒に入った家に子供がいたことで通報されるとまずいからと短絡的に子供を殺した男。

他人の子供でありながら我が子として育て、また金に卑しい義理の父親を受け入れながら日々小児科医として子供を救う男。

男に騙され、絶望して死を選ぼうとしていたところを今の夫に救われた女。

無職で怠けることしか考えていないが、ある日人を殺害した父親。

犯罪者の義理の父親を持つことを大いに案ずる母親。

父子家庭で育ち、美容師になって上京し、結婚に失敗し風俗嬢となった暗い過去を持つ女。

男手一つで娘を育て、多忙な日々を送る中でも娘に気を配りながら、事故で死んでしまった父親。

様々な人があれば様々な人生、様々な事情、そして生き様や考え方がある。上に並べた今回登場した人物の人生が等価であるとは決して云えないだろう。
それを人を殺したから罰せられるべきなど単純化したルールで果たして杓子定規的に人を断ぜられるものかとこれまで作者は問いかけてきた。結局人は道理で生きているのではなく、人情で生きているのだとこのような作品を読むと痛感させられ、何が正しくて間違っているのかという我々の既存概念を揺さぶられる。

死刑に値する愚かな犯罪者もいれば、刑に罰せられると等価の償いをし、周囲から必要とされる人もいる。罪を裁くとき、このように違った人生を歩んできた人々を一律のルールで裁くことが本当に正しいのかと考えさせられる。
しかし一方で近しい人を殺されたことで人生が変わってしまった人もおり、その喪失感を思えば加害者側の事情などは関係ないとも思える。
更に死んで当然だった、死んでよかったと思われる人もいる。そんな世の中の秩序を保つためにまた法律も必要なのだ。いやはや難しい。

深く深く考えさせられる作品だった。決して全てにおいて正しい考えなどないことをまた思い知らされた。
人は過ちを犯してもやり直して生きていられる、そんな世の中が来ることを望むのは夢物語なのか。そんな思いが押し寄せてくる作品だった。


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Tetchy
WHOKS60S
No.8:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

死刑の是非をあなたはどう考えるか?

この本では死刑制度について書かれている。
その中で死刑制度を容認する言葉として小説で書かれた次の文が記憶に残る。
「人を殺せば死刑-そのようにさだめる最大のメリットは、その犯人にはもう誰も殺せないということだ」
そうは思っても死んだ人間は帰らない。だったら「死刑は無力」なのか?
その葛藤に悩む姿がうまく書かれている。
東野圭吾っぽくない小説だが、死刑制度の是非を考えさせられるダークな物語であった。

yoshiki56
9CQVKKZH
No.7:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

虚ろな十字架の感想

殺人事件の加害者及び被害者家族の立場から、その罪と罰、そして死刑制度にまで、真摯に向き合ったかなり重めの作品です。
作者にも正解は出せなかったのか、意図的に出さなかったのか・・・実際回答は出されていないように思うのですが、そんな訳で、読了後、結構じわじわくる作品です。

娘を殺害された被害者側の夫婦である道正と小夜子。
中学生でありながら妊娠、出産、そして産まれてきた子供を出産後直ぐに殺害した加害者側である史也と沙織。
この2つの別の殺人事件を起点とした、被害者側、加害者側の関係者のその後の人生の対比がズシッときます。
被害者の側は女性(小夜子)、加害者の側は男性(史也)の方が、強くそして正しく生きているように描かれています。
そして、被害者側の男性(道正)は「静」、加害者側は女性(沙織)は「堕」
こう見てみると女性って両極端ですよね。壊れるか凶暴になるか(笑) 二人共壊れたという解釈もできそうですが。

私は小夜子の言動が理解できず不快でした。作者は意図的にそういう人間として描いていたようにも思えました。
そして史也には同情が向くようにも。
作者の回答はこれなのかな、とも少し思ってるんですけどね。
史也が罰せられる事は果たして正しいのでしょうかね。私にも分かりません。


梁山泊
MTNH2G0O
No.6:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

虚ろな十字架の感想

薬丸岳氏のテイストと東野氏らしい結論までのプロセスが合わさった良い作品だと思います。

kmak
0RVCT7SX
No.5:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

虚ろな十字架の感想


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FSD78H58
No.4:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

虚ろな十字架の感想

考えさせられるような作品です。
あっという間に読み終えた、ページをめくる手が止まらないと言うような作品ではありませんでした。


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ぺこりん12
M5MH63SF
No.3:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

殺人犯には、どんな刑罰を与えるべきか?

タイトルはあまり感心しなかったが、罪と罰の難問に真摯に取り組んだ、硬質で面白い社会派ミステリーである。
フリーライターの女性が帰宅途中の路上で刺殺された。犯人が2日後に自首し、金目当ての短絡的な犯行だと自供した。しかし、被害女性が過去に、仮釈放されて間がない強盗犯に自分の娘を殺害された経験があったことから、警察から被害者の元夫・中原に連絡があり、犯行動機に疑問を持った中原は元妻の取材活動に本当の動機があったのではないかと調べ始める。一方、有名大学病院の小児科医・仁科は、この事件の犯人が妻の父親であったことから、周囲からさまざまな圧力を受けるようになる。
中原と仁科、被害者の遺族と加害者の親族という二人の人物を中心に、裁判や量刑に対する被害者と加害者の思いの違い、死刑という刑罰の犯罪抑止効果、罪を償うとはどういうことか、罪は償えるのか、などの重い課題が議論される。誰が考えても正解は出ないけれど、誰もが考えなくてはならない難問を、見事なエンターテイメントで提起する作者の力量に舌を巻いた。
多くのミステリーファンにオススメしたい。

iisan
927253Y1
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

虚ろな読後感


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ショボタン
G1380KCM
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

虚ろな十字架の感想

死刑制度や犯罪に関するテーマで、その裏に隠れている人間の問題を表している。死刑に対する遺族の考え方に対し、死刑は無力ととらえる見方を紹介していた。ただ、ミステリーというよりは、犯罪を通じて、死刑制度を紹介しているので、ハラハラドキドキを期待している方には、読み応えとしては、いまいちに思う。

ビッケ
K1LY4PU3
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