■スポンサードリンク
(短編集)
奇商クラブ
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
奇商クラブの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.50pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全6件 1~6 1/1ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
「ブラウン少佐の途轍もない冒険」、「赫々たる名声の痛ましき失墜」、「牧師さんがやって来た恐るべき理由」、「家宅周旋人の突飛な投資」、「チャド教授の目を惹く行動」、「老婦人の風変わりな幽棲」の六編。探偵役と目されるのはバジル・グラントだが、彼が推理を披露することはない。いつも「それは分かっていることだ」という謎の微笑みを浮かべるばかりであり、真相は謎の渦中にいる本人によって明かされる。語り役は「私」であるが、その名前が「スウィンバーン」だと示されるのはようやく第三話においてである。しかもまた、六編すべてに言えることなのだが、謎が明かされても読者は大して驚かない(ような気がする)。それは出来事が浮世離れしていることと、その真相もまたそれに負けず劣らず浮世離れしている、という事情に依るのだろう。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
本作は某探偵になぞらえるように探偵役と語り部を用意し、奇怪な事件の真相を解き明かすというもの。 しかし探偵役は自他ともに認める狂人で神秘家という点でエポックメイキングを図ろうとした作品といえるだろう。 安楽椅子探偵というよりも矢吹駆のような直感系の探偵の走りというべきだろうか。 作者は推理小説のスタイルに対して一石を投じたかったのかもしれない。 ただ、正直に申し上げて、書き方が稚拙と言わざるを得ない。 本作は殺人事件ではなく、怪事件の真相を追う形やそれに巻き込まれる形で進展する。 そしてその影に潜むのは「奇商クラブ」という秘密結社。 別に悪の組織ではない。当時の考え方から言うとかなりぶっ飛んだことを生業とする、そういう人たちの連合だ。 そしてこの小説のオチは、早い話が「奇商クラブの仕業」で終わるのである(厳密にはすべてではないが) 三話くらい読むと、話のオチが見えるので特に展開に期待などできなくなる。 さらに、その真相に迫る過程がひどい。 探偵役の狂人バジルは謎の明察でひとりでに真相に辿り着くが、 その推理や思考は、神秘学的な経験則だと言って、全く説明しないのである。 早い話が、名探偵コナンから解説パートを一切合切取り除くようなものだ。 追い詰めると犯人は勝手に自白し、めでたしめでたしとなる。 スカスカの中身を埋めるため、語り部が当時の世相や町並みの描写を所々に入れてくるが、 翻訳があまり上手くないこともあって、正直読んでいくのが辛い。 中身のある内容ではないため、読むのが面倒になってくるのだ。 当時の風情を出すにしても、もうちょっと何かなかったのか。 結局、本作は、頭の悪い中学生が考えた「最強の名探偵」というレベルの代物でしかなかった。 頭がいいという設定だけがあり、それを表現する能力や知性を、作者自体が有していない。 スカスカの中身を言葉だけで誤魔化すのは、今の世も昔も変わらないらしい。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
表題作「奇商クラブ」は六つの短編集で、 ブラウン神父シリーズの先駆けであり、パラドキシカルな機知、 エキセントリックな様相、馥郁たるユーモアなど、 共通する面も多々ありますが、殺人は起こらない。 わたし=スウィンバーンが語り手となり、 元判事の発狂探偵バジル・グラントが先陣をきって奇妙な謎を 解決します。最後に奇商クラブ会員の仕掛けが明らかになる 体裁をとっています。しかし、「チャッド教授の奇行」だけは、 趣を異にしています。 「家屋周旋業者の珍種目」にハッキリとした推理の手がかりは 示されるが、その他は希薄で、愉しむべくはパズラーではなく、 チェスタトン一流の逆説的機知その他にあるといって良い。 終章のオチは多少予測できるとしてもキマっている。 中編二作のうち「背信の塔」は、今でこそ古めかしい手だが、 当時としては斬新だったのではないでしょうか。 「驕りの樹」は、孔雀の樹に、伝説と現実、二つの属性が与えられる。 それらを結果的に止揚してしまう首謀者の底意と行為がとても面白い。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
本書は、ブラウン神父シリーズを読んで、著者の魅力に惹かれた方にオススメの一冊。 ブラウン神父シリーズ発表前の1905年に発表された連作ミステリ【奇商クラブ】と、シリーズ刊行中の1922年に発表された短編【背信の塔】及び中編【騙りの樹】を収録。 (題名と章立てをコメント欄に記載しました) 【奇商クラブ】 会員は、完全に新しい生業の方法を持っており、その商売は生活を支えるに足るものであること−−そんな奇妙奇天烈なクラブの存在を知った、元裁判官バジル・グラントが出遭った事件の数々は、そのクラブの存在を裏付けるものであった…。 と、いうわけで、各編とも解決編近くで、その突拍子もない「生業」が明らかになるのですが、見方を変えると、爆笑に値する内容であったりもします。 「チャッド教授の奇行」が傑出した出来でした。 【騙りの樹】 「まさか歩く樹の話を本気にしているんじゃありますまい?」−−このセリフを冒頭に引用した作品「樹霊 (ミステリ・フロンティア)」(鳥飼否宇著)で知った本作品ですが、本当に楽しめました。 「人を喰う樹」の伝説の残るイギリスの一地方では、「孔雀の樹」と呼ばれる灌木が不吉なものとして恐れられていた。 果たして、村人が熱病に冒され次々と死亡、地主も森の中に分け入ったきり行方不明に…。 忌まわしい伝説の残る土地で事件が起こり、探偵が「迷信」を打ち破り、合理的解決に導く−−という、ディクスン・カーや横溝正史の作風の原点ともいえるのではないかと思われる本作品、その解決編は、ある意味、逆説的で、著者の本領発揮といったところでしょうか。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
チェスタトンが「ブラウン神父」シリーズの前に発表した作品。「奇商クラブ」には短編六作、他に中篇二作が収められている。「ブラウン神父」と同様、逆説と奇想と諧謔が楽しめる。 「奇商クラブ」は勿論作者の想像の産物だが、これ自身、奇想の塊である。この会員は次のルールを守らなくてはならないのである。 (1) それまでにない新しい職業を考えなければならない。 (2) その職業で生計を立てなければならない。 この「奇商クラブ」に纏わる一風変わった事件を元裁判官の風流人グラントが解き明かすという趣向である。会員達が従事する職業は正直言って、"奇商"と呼べる程珍奇なものでは無いのだが、物語の中で普通に日常生活を営む常識人と係ると、摩訶不思議な印象を与えるのである。これを一見奇人のグラントが逆説めいた言辞で次々と解く様は爽快である。物事の見かけに騙されるのではなく、裏にある真実を突く姿勢はまさにブラウン神父そのものである。物質文明・階級社会に対する批判精神も健在。最終第六話で作品全体の意匠が明らかにされるという凝った趣向。「背信の塔」は"仮想"の国トランシルヴァニアの辺境で起こる宝石紛失事件を、スティーヴン神父(=ブラウン神父の前身)が逆説的論理で、身を挺して解決する幻想的物語。「驕りの樹」はケルト地方の南海岸に生える人食い木と恐れられる"孔雀の樹"に纏わる神秘的物語。幻想と現実が交錯する傑作。 逆説、奇想、諧謔、そして幻想味に溢れた、「ブラウン神父」シリーズに劣らない珠玉の短編集。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ブラウン神父シリーズの作者として推理小説ファンに知られるチェスタトンが、初めてその分野に足を踏み入れたのが表題の『奇商クラブ』です。 本書にはその他に中編として『驕りの樹』と『背信の塔』が収録されています。 『奇商クラブ』は、「会員は既存の商売の応用・変形ではない完全に新しい生業を発明し、発明者の生活を支えなければならない」という奇妙な規則を持ったクラブの面々との騒動を描いたもので、その謎を解き明かすのも発狂して裁判官を引退した人物だというのだから変わっています。 会員達の商売はどれもユニークで面白いものですし(1つ規則にひっかかっているものがあるような気がしますが)、文章自体にもお得意の逆説がちりばめられているので楽しく読めます。 最後には狐につままれたような展開も待っていて、完成度はなかなか高いのではないでしょうか。 中編についても簡単に述べますと、『驕りの樹』は章に分かれた劇を観ているような感じで、ラストの皮肉も利いています。 『背信の塔』は劇的な効果、逆説を表現しようと凝った装飾を加えようとしている気配がありありで、ちょっと不自然な仕上がりになってしまっていると感じました。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!