法螺吹き友の会
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連作短編集「法螺吹き友の会」(Tales of the Long Bow 連載Storyteller 1924.6-1925.3、単行本Cassell 1925): 推理・探偵ものではありません。英語の言い回しが鍵なので、翻訳が難しい作品だと思いました。静かに狂い突発的に実行する登場人物は作者の十八番ですが、この作品ではその発想に共感出来ず、寓話っぽい印象です。併録の三短編: 単行本未収額のブラウン神父もの「ミダスの仮面」(1936)神父の現代に対する愚痴が聴けます。他二編は、単発もの。見かけに騙される事なかれ、というテーマは共通で、夕方の情景が印象深い「キツネを撃った男」(1921)も良いのですが、探偵小説を完全否定する探偵小説「白柱荘の殺人」(1925)がとても面白かったです。 | ||||
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始めのうちは「会」のメンバーの奇行を一人ずつ描いていく連作短編かと思いましたが、次第にこの著者らしく奇妙かつ周到に組み立てられた長編であることが判ってきます。 原題は「TALES OF THE LONG BOW」で、辞書を引くと例えば「draw the long bow」は「法螺を吹く」という意味だそうですが、メンバー諸氏は法螺吹きどころか自分が口にした出来そうもないことを〈文字どおり〉実行してみせる、有言実行というか奇言実行の人たちです。 いつもながら素晴らしいのは著者の転倒した(けれど、よく読めばまともで正直な)語り方で、「long bow」とは長弓、大弓というよりはむしろ「長い湾曲」、つまりこの見事に遠回りする語り方のことではないのか、などと考えたくなります。 その意味で、訳者・井伊順彦氏があとがきで第四話「ホワイト牧師の捉えどころなき相棒」について“こぢんまりとしている印象が強く、存在感はあまり感じられないかもしれない”と述べられているのは、少々著者に成り代わっての謙遜が過ぎると言わねばならないでしょう(もちろん井伊氏は、その後に続けて“...が、謎[ミステリ]性が高い点では指折りの一篇”とお書きになっておられます)。“手紙を書く際に、“敬具”で始めて“拝啓”で締めくくる流儀を持っている”ホワイト牧師からの手紙の解釈で始まる第四話こそは、チェスタトンの long bow な語り方の面目躍如と言うべきであり、真夜中の森から突き出した丘の上の四本の白い柱に載った「牧師館」の情景とそこに響く不気味な音は、ラヴクラフトの「ダンウィッチの怪」のあのラストさえ想起させます(ちょっと言い過ぎ)。 チェスタトンの、どこへ連れていかれるか見当のつかない語り自体が大きな魅力であるということからすれば決定的なネタバレと申さねばなりませんが、『法螺吹き友の会』には、その全体について言えば、イングランドに巻き起こる反乱/内戦を描く、両大戦間期に書かれた「直近未来SF」という趣きがあります。 強引にすっきりさせた言い方をすれば、チェスタトンの小説は、逆説によって垣間見える世界を神が創造した奇蹟として味わい、「順説」に慣れきって自らが被造物であることを忘れ果てた者たちの眼を覚まさせる、ということなのでしょうが、社会主義的政策を採る政府側と農地の私有を標榜する反乱側(したがって本作には処女長編『新ナポレオン奇譚』の語り直しという側面もあるように思われます)という「ねじれ」もさることながら、内戦の帰趨を決定づけるいくつかの政治的要因が逆説的に語られるのを選挙を間近に控えた今の日本で読むことは、なかなかアクチュアルな体験でした。 最後に一つ。井伊順彦氏のたいへん行き届いた「訳者あとがき」のなかで、第一話「クレイン大佐のみっともない見た目」で、キャベツを頭にかぶった大佐に、頭に載っているのは妙な代物ですね、とずばり指摘するオードリー・スミス嬢の名前が「キャサリン」と誤記されている件。この錯誤は、オードリーといえばヘプバーンだが、ヘプバーンといえばオードリーよりもキャサリンであるという、井伊氏の意識下における選好がもたらしたものでしょうか。 | ||||
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