新ナポレオン奇譚



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    初公開日(参考)1978年11月
    分類

    長編小説

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    新ナポレオン奇譚 (ちくま文庫)

    2010年07月07日 新ナポレオン奇譚 (ちくま文庫)

    1904年に発表されたチェスタトンのデビュー長編小説、初の文庫化。1984年、ロンドン。人々は民主主義を捨て、籤引きで専制君主を選ぶようになっていた―選ばれた国王は「古き中世都市の誇りを復活」させるべく、市ごとに城壁を築き、衛兵を配備。国王の思いつきに人々は嫌々ながら従う。だが、誇りを胸に故郷の土地買収に武力で抵抗する男が現れ、ロンドンは戦場と化す…幻想的なユーモアの中に人間の本質をえぐり出す傑作。(「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

    新ナポレオン奇譚の総合評価:9.29/10点レビュー 7件。Cランク


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    全1件 1~1 1/1ページ
    No.1:
    (7pt)

    真面目に不真面目なチェスタトンデビュー作

    1904年に発表されたチェスタトンのデビュー長編小説。実にチェスタトンらしく、様々な警句と美意識に満ちた作品だ。

    まず冒頭の2章まで読むに限って、この小説をなんと称したらいいだろうか、私には皆目見当が付かなかった。
    1907年に著した1984年を舞台にした近未来小説。籤引きで国王が選ばれるイギリスを舞台にした物語。この設定からしてチェスタトン自身がふざけながら楽しんで筆を進めているのが解る。
    最初の100ページまではチェスタトンお得意の言葉遊びに満ちており、ストーリーが全く見えてこない。ここら辺は非常に難解で思考があっちこっちに飛び、理解に苦しむ。

    しかしやはり奇想の思想人チェスタトン。そこを過ぎると実に面白いストーリーが見えてくる。

    ロンドンの一大プロジェクトである3市を貫く大街道建設に異を唱え、たった100人ぐらいしか住まないポンプ・ストリートというちっぽけな通りを守るべく、そこの市長アダム・ウェインが国王と袂を分かち、戦争が勃発するのである。圧倒的数の劣勢は明白でアダムの敗北は十中八九間違いないと思われていたが、そのポンプ・ストリートには戦争マニアである玩具屋の主人がいた。彼はかねてよりその通りが戦火にまみえた時にどう守るかを研究していたのだったという、なんとも喜劇的なお話なのだ。

    しかしそんな“ありえない”話が各市長との幾度とない戦いが繰り返されるにしたがって次第に真剣味を帯びてくる。冒険活劇小説としても楽しめるほど、ロンドンの町の一角で繰り広げられる市街戦は迫真的でしかも実に策略に富んだ内容でエンタテインメントとして十分成り立っている。
    ブラウン神父シリーズに代表されるチェスタトンの作品は独特の思考と常人を超越した理論で常識に凝り固まった我々を開眼させてくれる思弁小説というイメージが強かったがいやいやカーのそれとも劣らない活劇が書けるものだと感服した。

    しかしそれでもやはりチェスタトンはチェスタトンである。
    物語とは関係のないところで方々で挿入される言葉遊び。イギリス各地の地名の由来を、その真偽について眉を顰めざるを得ないような駄洒落や冗談で説明する件があったり、オーベロンの、人を笑わすために取る奇矯な振舞いにもっともらしい説明を加えたり、そしてお得意の狂人が登場したり、と展開は天真爛漫、自由奔放だ。
    また狂人がほんの数十メートルしかない通りをめぐって国王と連合軍に立ち向かうというこの物語は壮大な冗談小説と取れるだろう。

    しかしその冗談に命を賭ける人々がいる。それは愚直なまでに自らの信ずる道を行く、女性から見れば呆れるだけの戦争ごっこのような類にしか映らないだろう。しかしこれこそがジョンブル魂なのだとチェスタトンが鼓舞しているようだ。
    これを著した1904年当時、イギリスはまさに世界の王であった。しかしその絶対なる優位もヨーロッパの周辺国が力をつけてその地位を脅かしつつあった時期である。そんな英国に送った応援歌なのではないだろうか。

    特に象徴的なのは最初市長がノッティング・ヒルの独立を宣言した時、住民の1人の乾物商は全く妙ちきりんな事として取り合わなかった、その時の自分は一介の乾物商に過ぎなかったが、実は自分は水の生き物を手にいれ、地球の裏側の果実を集める輩どもを従える王であったと気付かされたと述べる件だ。まさに”Everybody’s a HERO”である。ここに私はチェスタトンの真意を見た。

    しかしこの小説は初めてチェスタトンを読むにはかなりハードルの高い小説だと思う。
    このチェスタトンしか書けないテイストはやはり他の作品、やはりブラウン神父シリーズを導入部として読んでからにして欲しい。もしくは『木曜の男』(光文社古典新訳文庫版は『木曜だった男』)を愉しめた人ならば本書も愉しめるだろう。
    私にとって本書は繰り返しになるがチェスタトンはやはり最初からチェスタトンだったと思えただけに嬉しい作品だった。

    Tetchy
    WHOKS60S
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    ※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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    No.6:
    (5pt)

    原題『ノッティング・ヒルのナポレオン』(下町のナポレオンって事)

    チェスタトンはまじめである。まじめだからこそふざけるのだ。彼は本物のキリスト教徒でもある。キリスト教徒だからこそ、預言者とよばれる事を回避しえたという逆説。

    現代における狂気と生真面目さの問題をこれほど愉快にそして切実に料理した人は他にいないだろう。

    私は、チェスタトンの真剣さはドストエフスキーやコリン·ウィルソンを凌ぐものだと思う。人前で苦しげな顔や真剣な顔をする男だけが信用に足るわけではないと言う事だ。

    ただ、題名だけは直訳で良かったと思う。ナポレオンの話かと思うがフランスの大野心家は爪先すら出てこない。原題どおり『ノッティングヒルの』ナポレオンが主人公の話。イギリスの下町で不羈に目覚めた男を、諧謔の試練に掛けながらカッチョ良く描く。

    チェスタトンの小説第一作は、軽さと崇高さを釣り合わせるいう挑戦だったのかな?
    G.K.チェスタトン著作集 10 (10) 新ナポレオン奇譚Amazon書評・レビュー:G.K.チェスタトン著作集 10 (10) 新ナポレオン奇譚より
    4393412206
    No.5:
    (5pt)

    諧謔家対理想家。

    くじ引きで国王を決めてしまうと云うふざけた設定以外はまるきり「今(原書は1904年刊)」と全く同じである百年後のロンドン。そこで偶然国王になってしまった諧謔家が、これまたふざけた施策を次々と断行し、古き良き騎士道精神に則った(と云う名目の)社会を作ってしまうが、これを大真面目に捉えた一人の子供がやがて若者に成長し、そうした諧謔の裏側、詰まり真の意図を全く汲み取ろうとせず、その「理想」に全身全霊挙げて殉じてしまうことから思わぬ混乱が引き起こされる………と云うお話。逆説を好んだチェスタトンらしい、ジョークがジョークでなくなってしまうことから来るドタバタを、哄笑と共にスイスイと描いてみせるユーモア小説。長編処女作と云うことだけあって、技巧的には些か未完成なところも見受けられ、著者自身、本作の出来には満足していなかったらしいが、チェスタトン風味は存分に出ている。狂信に対するピリリとした逆説的な教訓を含む警世の書として読むも好し、アホらしい笑い話として読むも好し。原題は『ノッティング・ヒルのナポレオン』。『◯◯横丁の革命家』位の意か。邦題ではこのバカバカしさが良く分からないのがもどかしい。
    G.K.チェスタトン著作集 10 (10) 新ナポレオン奇譚Amazon書評・レビュー:G.K.チェスタトン著作集 10 (10) 新ナポレオン奇譚より
    4393412206
    No.4:
    (5pt)

    チェスタトンの中で一番好き

    序盤は初期の漱石を彷彿とさせます。 オーベロン・クウィンは『我が輩は猫である』の迷亭と思えば楽しめます。 アダム・ウェインが登場すると俄然富野由悠季の小説っぽくなってきます。 結末は逆襲のシャアです。 サブカル好きにもっと持て囃されていい一冊です。
    新ナポレオン奇譚 (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:新ナポレオン奇譚 (ちくま文庫)より
    4480427201
    No.3:
    (5pt)

    愚かなのだ、しかし、愚か故に

    人間とはこのように困ったものである、という話。ではどのように?というのをイギリス風ユーモアで笑った後にぞくりと体験するために、この本はある。

    人間は愚かである、が、その愚かさこそが人間を有意義にしている。ひっくり返して言うなら、人間が賢くなったそのときに、人間の美徳やら情熱やらもすっかりなくなりなんとも無意味な滓しか残らない...ようだ。でもそうはならない。人間は愚かであり続けるので。

    クウィンの政治システムを現行の(そして、かつて現行であった)あらゆる政治システムに置き換え、ウェインのロマンを愛国心やら民族主義やらのすべての信条、情熱に照らし合わせて読んでみてください。
    世界を一歩ひいた地点から眺めることができるようになります。
    G.K.チェスタトン著作集 10 (10) 新ナポレオン奇譚Amazon書評・レビュー:G.K.チェスタトン著作集 10 (10) 新ナポレオン奇譚より
    4393412206
    No.2:
    (5pt)

    若き冒険的小説

    チェスタトンを社会哲学・思想家と位置づけていない
    人には氏が好んで使う警句や逆説的な言い回しの
    観念的な難解さは免れない小説だと思う。

    ただ、1点だけ付け足すと、この本についてはチェスタトン自身
    まだ思想が固まっていたとは言い難い時だったらしいということ。

    私はチェスタトン思想の完熟しきった「正統とは何か」
    の良き理解者とは言えないが、良き読者であると思うが、
    もしもチェスタトンを保守主義者と呼ぶことができるとしたら、
    この小説は「レトロ趣味」、
    (幾分否定的な意味合いを込めざるをえないものとして)
    そういう読後感として残ってしまったという印象がある。
    それはやはり私の尺度によって思想哲学の観点から照らし出し
    たものであるから、小説の名誉は傷つける意図はまったくない。

    つまり純粋に思想として、純粋に小説として読むのは間違っている
    ということかもしれない。若い小説というべきか。
    その意味は若さには、危険なくらいに魅力がありはするが未熟さを
    免れない。

    ユーモアキングのクゥインが、諧謔の人チェスタトンに、
    狂信情熱家のウェインが、超人ニーチェに見えたのだが、
    小説中で語られるように、両者は互いに対立するものだが、
    両者は実は「近代的なるものに懐疑を向けた」という点では、
    互いに背を付け合っているという構図に見え面白かったというのは、
    余計な感想レビューだろうか。

    話がまとまらないが、ともかくチェスタトンを単なる推理小説家として
    読むことだけは許してはならない。彼の評価を貶めるのはやめるべきだ。
    G.K.チェスタトン著作集 10 (10) 新ナポレオン奇譚Amazon書評・レビュー:G.K.チェスタトン著作集 10 (10) 新ナポレオン奇譚より
    4393412206



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