(短編集)

四人の申し分なき重罪人



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四人の申し分なき重罪人 (ちくま文庫)

2010年12月10日 四人の申し分なき重罪人 (ちくま文庫)

特ダネを追って世界を駆けめぐる新聞記者ピニオンは、ロンドンで四人の不思議な人物に出会った。『誤解された男のクラブ』を名乗る彼らは、やがてそれぞれの奇妙な体験を語り始める。穏和な殺人者、頼もしい薮医者、不注意な泥棒、忠義な反逆者―彼らが受けた誤解と、奇想天外な真実。理性と逆説が交錯する、チェスタトン円熟の連作中篇小説集。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

四人の申し分なき重罪人の総合評価:7.40/10点レビュー 5件。Cランク


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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(7pt)

チェスタトンの奇想は好きなんだけど…

新聞記者の前に鎮座する泥棒、藪医者、殺人者そして反逆者からなる4人の重罪人たちが自分達の過去を打ち明けていくという構成で物語は語られる。

第1話目「穏便な殺人者」はエジプトに隣接したポリビアと呼ばれる国で起こった総督射殺未遂事件をテーマにしている。犯人であるジョン・ヒュームは人が撃たれることを妨げる為にその人物を撃ったという奇妙な動機を話す。
非常に状況設定が判りにくい話。なかなか進めないストーリーにいつ起きたのか解りかねるうちにいつの間にか事件が起きていたという漠然とした展開でしか読み取れなかった。
しかし作中で出てくる単眼鏡をつけた巨躯の大男グレゴリーはどう考えても作者自身のように思われる。どちらもイニシャルはGだし。自作にカメオ出演するというのはヒッチコックが自身の映画でよくやっていたことだが、実はそれに先駆けてチェスタトンがやっていたとは思わなかった。一種の読者サービスといったところか。

次の「頼もしい藪医者」は古くからある古い大木を庭に持つ画家兼詩人であるウォルター・ウィンドラッシュ氏とジャドスン医師2人の物語。
これも非常に解りにくい展開の話だ。自分の庭の大木を愛す芸術家ウォルター・ウィンドラッシュ氏と若く、妙に自分の論理に固執するジャドスン医師との交流が描かれ、さらにそこにウィンドラッシュ氏の娘イーニッドが加わるという流れが、いきなり精神病院送りの展開が訪れ、さらには殺人容疑の話にまで発展していく。
作者は二重三重の解明を用意しており、私もこの真相の一歩手前の真相と医師が氏を精神病院に入院させた意図が判ったときには思わずニヤリとしてしまった。しかしエピローグでさらにどんでん返しが行われるのだが、これといった衝撃度は薄い。
しかしチェスタトンの話で使われる樹には一種独特の雰囲気がある。私の好きな短編に「驕りの樹」があるが、本作の巨木も奇妙で歪な形をし、文中の表現を借りるならば「足を一杯に広げた蛸あるいは烏賊にそっくり」で強い印象が残る。この樹が正に物語のキーで、なんとなく「桜の木の下には死体が埋まっている」という、美しいもの、生命力に溢れるものにはそれに伴う犠牲があるものだ、といった日本人的観念に通じるものを感じた。

「不注意な泥棒」は本書の中での個人的ベスト。
逆説のチェスタトン。実に先の読めない展開で読者の予想の裏を常に行く物語展開の真骨頂が本作だと感じた。数年ぶりに島送りにされたオーストラリアから戻ってきた放蕩息子アランの、家名を汚すことに執着するかの如き犯罪行為に隠された真意は、多分納得できる人はさほどいないのではないだろうか。

最後の1人は「忠義な反逆者」。
本書の唯一ミステリらしい趣向である包囲された一軒家から一瞬の間で4人もの人間が消失するという謎の真相は人の先入観を利用したものでなかなか面白かった。
風評や噂で人は簡単に権威者を創り、有名人を創っていく。実体の無い物を有難み、敬うという奇妙な群集心理を痛烈にチェスタトンはこの作品で批判している。

本書をミステリとして捉えるか、寓話の形を借りた啓蒙書として捉えるか、ひとそれぞれ抱き方は違うだろう。私はそのどちらでもなく、その両方をミックスした書物、即ちミステリの手法で描いた啓蒙書として捉えた。

しかし約80ページ前後で語られる各編の内容はなかなか要旨を理解しがたい構成を取っている。舞台設定の説明はあるが、事件、というか出来事は筍式にポツポツと語られ、それが物語の総体をなす。つまり探偵役、犯人役が不在のため、物事を思うがまま、起こるがままに筆を走らせているように取れた。
しかし最後にチェスタトン特有の皮肉と警告がきちんと挟まれているのはさすが。特に先にも書いたが「不注意な泥棒」についてはまさかあんな自らの過去(ネタバレに記載)をフラッシュバックさせるような話が読めるとは思えなかった。

常人には全く理解できない各編の登場人物の行動が最後になって腑に落ちるのは実に鮮やか。21世紀の今でもその特異性は十分通じる。
しかし知の巨人チェスタトンよ、もう少しすっきりとした文体で書けなかったものだろうか?情報過多で実に読むのに苦労した。
この齢にもなると理解する力も衰えてきたようで、学生の頃に読んだようにはなかなか読めなかった。訳者の苦労も窺えるが、もう少し柔らかい日本語で読みたかったかな。

しかし最近筑摩書房は過去に単行本で出版されて絶版となっていた作品を落穂拾いのように文庫化して再販してくれる。チェスタトンに関してはこの次は是非とも「マンアライブ」もしくは「知りすぎた男」の文庫化を期待したい。
頑張れ、筑摩書房!


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Tetchy
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No.4:
(3pt)

チェスタートンの名作

私が所属する推理小説研究会の課題作でした。 途中まで読んでいたところで体調を壊し、研究会にも出席出来ず、未読のまま、今日に至っています。 途中までの感想ですが、私の好みからはずれているようです。
四人の申し分なき重罪人 (ミステリーの本棚)Amazon書評・レビュー:四人の申し分なき重罪人 (ミステリーの本棚)より
4336042411
No.3:
(4pt)

多様なチェスタトンの魅力が堪能出来る佳作

チェスタトンの幻の中編集。「誤解された男のクラブ」の4人の会員に纏わる「穏和な殺人者」、「頼もしい藪医者」、「不注意な泥棒」、「忠義な反逆者」の四編を収録。各編の題名からして逆説的だが、内容も期待に違わず逆説と風刺と詩的風情に満ちている。「詩人と狂人たち」に似た趣きを感じるが、本作は幻想味がやや薄い代わりに政治・社会批判が色濃く出ている印象を受けた。各編において会員は必ずしも主人公とは限らない。

「穏和な殺人者」は、大英帝国による植民地統治政策批判に主眼を置いたものだが、細かな伏線によって、会員の逆説的言動が論理的に解明される辺りが流石。ある種の偏見に対する批判も込められている様に思えた。「頼もしい藪医者」は、一本の大樹に憑かれた詩人に纏わる物語で本作にしては幻想味が濃い秀作。「エデンの園」をモチーフにしたらしい。機械文明と原初的感情との対比、物語を覆う茫漠とした雰囲気と巧まざるユーモア。如何にも"らしい"作品である。会員の独善的言動と真相との組み合わせの妙も光る。進化論が当時の社会に与えた影響も窺える。「不注意(ecstatic)な泥棒」は、"贖罪"をテーマにしたものだが冗漫で、全体構成や論理の切れ味と言う点で今一つの感がある。彼我の宗教観の相違のせいかもしれない。「忠義な反逆者」は、革命が起きそうな架空の王国を舞台に、人権や階級制度などを扱ったもので作者の信条が一番率直に出ている。チェスタトンらしい仕掛けも施されている。

優れた思想家であり、洞察力もミステリ的アイデアも卓越している。それでいて文学的滋味にも溢れているチェスタトンの魅力が堪能出来る佳作。
四人の申し分なき重罪人 (ミステリーの本棚)Amazon書評・レビュー:四人の申し分なき重罪人 (ミステリーの本棚)より
4336042411
No.2:
(4pt)

多様なチェスタトンの魅力が堪能出来る佳作

チェスタトンの幻の中編集。「誤解された男のクラブ」の4人の会員に纏わる「穏和な殺人者」、「頼もしい藪医者」、「不注意な泥棒」、「忠義な反逆者」の四編を収録。各編の題名からして逆説的だが、内容も期待に違わず逆説と風刺と詩的風情に満ちている。「詩人と狂人たち」に似た趣きを感じるが、本作は幻想味がやや薄い代わりに政治・社会批判が色濃く出ている印象を受けた。各編において会員は必ずしも主人公とは限らない。「穏和な殺人者」は、大英帝国による植民地統治政策批判に主眼を置いたものだが、細かな伏線によって、会員の逆説的言動が論理的に解明される辺りが流石。ある種の偏見に対する批判も込められている様に思えた。「頼もしい藪医者」は、一本の大樹に憑かれた詩人に纏わる物語で本作にしては幻想味が濃い秀作。「エデンの園」をモチーフにしたらしい。機械文明と原初的感情との対比、物語を覆う茫漠とした雰囲気と巧まざるユーモア。如何にも"らしい"作品である。会員の独善的言動と真相との組み合わせの妙も光る。進化論が当時の社会に与えた影響も窺える。「不注意(ecstatic)な泥棒」は、"贖罪"をテーマにしたものだが冗漫で、全体構成や論理の切れ味と言う点で今一つの感がある。彼我の宗教観の相違のせいかもしれない。「忠義な反逆者」は、革命が起きそうな架空の王国を舞台に、人権や階級制度などを扱ったもので作者の信条が一番率直に出ている。チェスタトンらしい仕掛けも施されている。優れた思想家であり、洞察力もミステリ的アイデアも卓越している。それでいて文学的滋味にも溢れているチェスタトンの魅力が堪能出来る佳作。
四人の申し分なき重罪人 (ちくま文庫)Amazon書評・レビュー:四人の申し分なき重罪人 (ちくま文庫)より
4480427791
No.1:
(4pt)

パラドックス

逆説の魔術師 チェスタトンの真骨頂である本がようやく完訳されました 哲学的に展開されるパラドックスを楽しんでください
四人の申し分なき重罪人 (ミステリーの本棚)Amazon書評・レビュー:四人の申し分なき重罪人 (ミステリーの本棚)より
4336042411



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