骨董屋探偵の事件簿
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本書は、Sax Rohmerの『The Dream Detective』の翻訳。1913-14年に『ニュー・マガジン』に連載され、1920/1925年に単行本となったものだ。全10話。 オカルト的な要素と、合理的な推理が融合した不思議な味わいのミステリだ。 モリス・クロウは犯罪現場で眠ることによって真相へと迫っていく。現在では馬鹿馬鹿しく思えるが、同時代のイギリスは心霊学花盛りの時代で、それなりに説得力があったのだろう。 「象牙の彫像」が気の利いたアイデアでおもしろい。 「ト短調の和音」も動機がいい。 一部、訳に疑問を感じる。 | ||||
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「思念は実体」であり、犯行現場には犯人や被害者の"残留思念"が存在するとの前提の下、探偵役が犯行現場で眠る事によって、夢の中でその残留思念を捉える(原題は「The Dream Detective」)、という如何にも胡散臭い設定であり、内容もその通り胡乱な短編集。百歩譲って残留思念の存在を認めたとしても、大人の読書には堪えない瑕疵だらけの作品である。 まず、各事件そのものが残留思念を要する程の難解なものではない上に、推理(解決)の過程に新規性が見られない(カーのアイデアそのものの物もあるし、秘密の通路と言った陳腐な物もある)。また、「京極堂」シリーズの榎木津の記憶透視とは異なり、残留思念がアンチ・ミステリの意図の象徴となっている訳でもないし、カーやタルボットの様に心霊現象をミステリとして昇華している訳でもない。更に、捜査関係者が感嘆する程の解決を探偵役がしている訳でもないのに、記述者も含め、探偵役に対する賛美の嵐となっている内容は奇異に映った。古代あるいは"曰く付き"の遺物・貴重品・古書を出す等、神秘性を高める努力をしている様だが、読者にとっては単なる衒学趣味としか映らず、仰々しいだけで、その内容は非常に空疎なのである。 残留思念を用いなければ解けない謎を案出するとか、初めからアンチ・ミステリを標榜するとかの創意がなければ、元々無理な構想だったのではないか。 | ||||
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サックス・ローマー著、近藤麻里子訳『骨董屋探偵の事件簿』は骨董屋を営む素人探偵モリス・クロウの活躍を描いた推理小説の短編集である。骨董屋探偵というだけあって事件は考古学的価値のある文物が多い。 『骨董屋探偵の事件簿』の最大の特徴はオカルト趣味である。モリスは霊感によって事件を解決する。ミステリーとオカルトは本来ならば相性がいい。読者は怪奇なもの、不思議なものを求めており、推理小説では殺人事件となって現れる。故にどれほど優れた名探偵であっても殺人事件を阻止することはない。殺人事件を解決する名探偵よりも殺人事件を阻止する名探偵の方が有能であるが、それでは推理小説の需要を満たさない。 だから事件は起きる。それも考えられないような複雑怪奇な状況で。それによって読者のオカルト趣味を満足させる。しかし、その後の展開はオカルト趣味とは反対に進む。名探偵が謎を解き明かし、事件がオカルト現象でも何でもないことを明らかにする。このために探偵は一般にオカルトを否定する科学信奉者というイメージがある。 しかし、探偵を科学信奉者と位置付けることはステレオタイプである。かのシャーロック・ホームズでさえ、オカルト趣味が興隆したヴィクトリア朝の社会背景を無視しては十分に楽しめない作品である。ホームズ自身にも阿片吸引やコカイン注射で、妄想にふける描写があった。 勿論、ドラッグは否定されるべきである。オルタナティブの提唱者にドラッグ容認論者が多いことは事実であるが、それはオルタナティブを市民的支持から遠ざけ、迫害の正当化に結びつく。特に脱法ハーブ(脱法ドラッグ)が社会問題になっている現代日本ではフィクション上であっても薬物への厳しい姿勢が求められる。それ故にホームズに理知的な人物とのイメージを振り撒くことは社会的に健全である。 この点で『骨董屋探偵の事件簿』のオカルト趣味は健全である。モリスはドラッグなどに頼らずに睡眠という健康的な手法で事件を解決する。『骨董屋探偵の事件簿』の中で毛色の変わった短編である最期の「イシスのヴェール」がドラッグによる悲劇と解釈できる面がある点も興味深い。 モリスの捜査手法は探偵としてはチート的な能力である。犯人が物的な手がかりを一切残していなくても事件を解決することができる。事件解決は楽勝に思えるが、多くの短編で事件は必ずしもあっさり解決しない。この点には筋運びの巧みさがある。 モリス自身は自己の捜査手法を「思念の科学」と名付けるが、一般的な感覚では非科学的な捜査手法である。日本で非科学的な捜査手法と言えば思い込み捜査であり、行き着く先が自白の強要である。これに対して『骨董屋探偵の事件簿』は健全である。「十字軍の斧」では容疑者候補は一人に絞られ、グリムズリー警部補は逮捕状まで用意したが、疑いはクリアにならず、探偵に助けを求める。日本の警察ならば自白を強要して冤罪を作り出すところである。 モリスの成果を自分の手柄にして出世するグリムズリー警部補への語り手の皮肉めいた評価も興味深い。日本の警察ならば面子を優先し、モリスのような人物の言葉に耳を傾けることはないためである。 最後にモリスは「ロンドンで最も貧しい界隈の住人」である(216頁)。娘のイシスは高価な宝石や衣服を持っており、貧しい界隈でなければ住めない訳ではない。「再開発で街が綺麗になる」という論理に反対してきた立場にとって、主人公をゴミゴミした庶民の街に住まわせる設定にしたことは歓迎でできる。ゴミゴミした街にこそ生活があり、暮らしの価値がある。 | ||||
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フー・マンチューの作者サックス・ローマーに依るオカルト探偵ものの連作集。 事件現場で眠ると夢の中で手がかりとなる光景を見る事が出来る骨董店の主人モリス・クロウとその娘で助手的役割の黒髪の美女イシス・クロウが博物館など古美術が絡む事件を解決していく。 枕持参で現場(博物館の床など)で一晩眠ると云うのは絵として想い浮かべると笑ってしまうのだが、作者は大真面目。凄いのは警察もモリスの能力を信用し、彼が夢の中で見た光景と一致していれば、それを元に犯人を捕まえてしまったり・・・いや、裁判でそれ証拠にならんだろう・・・でも、面白い。 代表作であるフー・マンチューですら殆ど未紹介の状態で本作が出版されたのは喜ばしい事だ。他にも著者の多くのシリーズがまるで未紹介なので、国書観光会や論創社にも頑張ってもらいたいところ。 | ||||
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収録作品 「ギリシャの間の悲劇」 「アヌビスの陶片」 「十字軍の斧」 「象牙の彫像」 「ブルー・ラージャ」 「囁くポプラ」 「ト短調の和音」 「頭のないミイラ」 「グレンジ館の呪い」 「イシスのヴェール」 エラリー・クイーンによる名作リスト「クイーンの定員」第64番目に選ばれた短編集。(原題The Dream Detective 1920年刊) 怪人フーマンチュー博士物で知られる作者によるサイキック探偵の先駆モーリス・クロウ物の全訳。 伝奇的な、悪く言えば古色蒼然たる珍品を予想して読み始めたが、それは良い意味で裏切られた。怪奇的展開のみに終始する物語でなく、ドイルに始まる英国伝統の探偵小説の味わいをくっきりと持った端正な短編が並ぶ。 翻訳文の明快さにも拠るものだろうが事前の想像以上のモダンな展開はサックス・ローマーという作家の印象を新たにするものだ。 犯罪現場で眠り、夢見る事で真相を透視する仙人めいた老骨董商のユニークなキャラクター(解説によれば作者自身も夢遊病であったという)がもたらす怪奇幻想性と論理性のバランスが結果的に絶妙なものとなっている。 | ||||
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