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ハーモニー
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ハーモニーの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.15pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全253件 241~253 13/13ページ
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これまで人類は,文明の進歩と共に,大地や海などの外なる自然を征服し管理し,また様々な病気や病原菌との戦いにも勝利してきた。それによって人類は繁栄と幸福を手にしてきた。これをさらに推し進めた,「残された最後の自然」である自分の肉体と精神に対しても「合理的な」外部からの管理を行う社会とはどのようなものになるだろうか。 ・自分の身体・健康の管理も外部に委託した,健康で平穏であらざるを得ない生府社会 ・さらに進んで,結局悩みや争いが起こるのは個人の意志と意識によるのだから,これも手放してしまい,個人は意志・意識を失うが,完全に個人と社会が調和し,全き平和の支配する社会 のような社会を作ってしまったらどうなるだろうか?という問題提起の小説として私は読んだ。急進派と保守派の代表として,主人公の親友(御冷ミァハ)と父親(霧慧ヌァザ)を登場させている。どちらが良い,という意見は著者は特に述べていない。 難しい問題で,簡単には答えられない。古い人間としては昔のままの,ガタピシと個人個人がエゴをぶつけ合っている社会も悪くないと思うのだが,人類の大きな「進化」の方向としてはこのような「超高度管理社会」に進むのであろうか。案外近い将来実現しそうで怖い。考えさせられる,良い問題提起だと思った。 ただ,生府社会の偽善,気味の悪さの説明が少々観念的だと思った。「優しさと倫理が真綿で首を絞めるような世界」と言った説明は何度も出てくるが,もっと具体的な事件・エピソードを入れて,「確かにこんな社会は嫌だ,やりきれない,息が詰まる」と読者に生々しく体感させて欲しかった。アルコールやカフェインの話は出てくるが,もっと読んでいて気が重くなるような,嫌ったらしい,息苦しいエピソードを入れて欲しかった。これがうまく書けていれば,逆ユートピア小説としては大成功だったと思う。 | ||||
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話は『虐殺器官』のその後、世界はどうなったか?という内容だった。 私は楽園の住人だったミァハがこの世の地獄に引きづりだされ、自意識の檻であるこの世からコーカサスの故郷へ舞い戻ろうとした話とも読んだ。現代人は脳や精神を特別視するきらいがあるが、脳もまた内蔵や手足の一部の様に身体を構成するパーツの一部にすぎないのだ。この本を読んで自分の自意識というモノを考える。さして人の尊厳となる様な大した事は考えていな。腹がへったとか眠いとか仕事はつまらないけどもっと金持ちになりたいとかそんなレベルだ。身の危険や飢餓の心配が無ければ、自分や周囲を意識し続ける魂はすでに「いらない機能」であってもおかしくない。事実、自意識のなかった少女ミァハの自意識は人間の野蛮のるつぼから産まれたものではなかったか?自殺しようとしていたミァハは自分の中に産まれてしまった自意識が面倒て重くてたまらなかったのだろう。アダムもイブも「裸体である」事を意識して楽園を追放されたのだ。 人間は真実よりも幸福を選ぶ。パレーシア。ミシュル・フーコーはどんな感想をもつだろう? 自意識を研ぎすませた作者が導きだした一つの答えは「自意識はなくてもいいのではないか?」。皮肉なものだ。自意識は逆境の中でこそ意味を持ち、すべての生活を保障された日本の様な社会ではただの個人の欲望に墮する。そんな事を思った。 ただこの作品の決着、エヴァンゲリオンと一緒じゃないから。エヴァは「俺を傷つける世界なんか無くなっちゃえ」という臆病な個人の内面描写だし。 最後にこの話を読んでいた時、GBMはハチャトリアンの『ガヤーヌ』が合うと思った。冒頭のミァハ、トアン、キアンの三人の女の子達の場面は「ばらの娘達の踊り」、ミァハの死には「子守唄」。または川井憲次氏ならぴったりの曲を作ってくれると思う。 | ||||
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作者、伊藤計劃は、小説世界にイデオロギーを創出した。 王政、 ファシズム、 社会主義 資本主義、 その次に、核戦争と言う大災禍が勃発した世界を覆ったのは 『生命主義』と言うイデオロギーだった。 WatchMeと言う健康管理ソフトが全世界の8割の人間にインストールされ、 老衰と外部からの物理的破壊によってしか、死ぬことのない世界。 この世界は、人類に何をもたらすのか。 しかし、WatchMeには、脳までは管理できないという弱点があった。 そして、 果たして、脳は、人間の体のすべての上部機構なのだろうか。 伊藤計劃は、生命主義と言う一つの優れたアイデアで、物語全部を紡いでいく。 SFは、ひとつのアイデアで、全体を貫き通さねばならない。 そこに、他の種類のSF 的アイデアを持ち込んではならない。 なぜならば、それは、現実を描いた小説で、話の展開を偶然の出来事の委ねるのと同じ おろかで安易なことだからである。 | ||||
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『虐殺器官』に続いて読みました。 高度に発達した医療によって成り立つ社会の息苦しさを描いている本作。 「医療の発達が新たな問題を作り出す」、というのはあまり人前で大きな声では言えないけど、 無視できなくなってくるであろう問題に真正面から向かっていく点に凄く価値があると思いますが、 最も重要なのは「人間の存在、その意識」について、ではないでしょうか。 外的要因によって人類の未来が左右される話はよくありますが、こういった 人間の内側から出てくる問題によってどうにかなってしまう話はあまり無いですよね? 僕が知らないだけかもしれませんが。 読みやすい作品ですが人物の名前が発音し難かったり、ある仕掛けが組み込まれた文章によって 敬遠する人もいるかもしれませんが、普段、目を向けない問題を考えさせてくれる作品 なので、できるだけ多くの人に読んでもらいたいです。 ただ、終盤の主人公を動かす動機が全体のテーマと比較すると、単純な気がするのと 医療社会のシステムを受け入れた人達とそうでない人達の関わり合いの部分が あんまりはっきりとしない点が気になります。 僕が『虐殺器官』と本作を読んだ理由は、正直、作者にあるのですが 作者の身に起こった事を思うと客観的な評価が出来ない気がします。 そういった風に考える事に意味があるのか分かりませんが、この2作を読んでみると きっと作者は作者自身のことを前提として読まれる事は望んでいないんじゃないかと感じました。 あくまで個人的にそう思うだけですが。 | ||||
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思いやりにあふれ、医療福祉が完全に行き届いた 社会の息苦しさ、という舞台設定は興味深い。 作品は作者と切り離して読まれるべきであろうが、 この物語が、死の床にある作者によって 紡がれたものであることを考え合わせればなおさらであろう。 しかし、物語後半における主人公の変化は、どうしたことだろう。 彼女が突如「正義」に目覚めたのはなぜなのか。 既読の方はコメント欄を通してぜひ、ご教示いただきたい。 | ||||
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虐殺器官より完成度が高く、個人的には争いの無い世界の実現というユートピアテーマ的にも感心のあるところで満足のいく一冊でした。ひとつ難点としては主人公の人間的魅力・存在感がいまいちで感情移入がときどき阻害されました。もう少し人物もうまく描けていたらパーフェクトだったと思います。SFでは人間の争いの解決方法について様々な作品として提示されてきました。昔の作品ですが、他の生き物に危害を加えると、加害者に同じ効果が現れるウィルスを作り世界に撒くもの、最近ではガンダムシードディスティニイーのデュランデルの遺伝子に手を加えるという企て、SF大賞の「新世界より」のなかの人を殺すことを禁忌として刷り込まれた世界。その系譜における最新の成果だと思います。でもまだ完璧なユートピアでは無いはずです。この世界でも外部から衝撃があった場合、ミァハのように意識のようなものがエミュレートされる可能性を残しており再びハーモニーの世界が崩れる可能性が残っていると思われます。今後さらに完成されたユートピアが誰かによって描かれんことを期待します。 | ||||
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生府という高度医療福祉社会の中で、人は己が何者であるかを公開されて、お互いの位置を確かめながら、温和に寿命を全うして暮らすことができる。その一方で、戦乱や劣悪な環境の中、明日をも知れぬ生き方を余儀なくされる者が残されている。 現代社会の実相を、拡現、医療分子、等々SF的な小物で色づけて少し違う世界の物語を展開している。その(ディス)ユートピア社会の構想力は面白く読み進めていたものの、人物に生気を感じきれなかったため、違和感が残りました。 | ||||
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体内に埋め込まれた医療分子が個々人の健康状態を常にモニターし、病気をいち早く発見してくれる社会。酒やタバコといった健康被害に結びつく物質も既に排され、人々は健全で長命でいる世界を実現した。そうした社会システムに悪影響を及ぼす恐れがないかどうかを監視するWHOの生命監察機関に勤める霧慧トァンは、少女時代に幼なじみ二人と共に自殺未遂を起こした過去がある。 あれから13年、ともに生き残った友人キアンが目の前で自殺を遂げる。あのとき一人逝ったミァハの影がちらつき始めたトァンは、医療経済の中心都市となったバグダッドへ向かうのだが…。 誰もが健康で天寿を全うできる社会。その夢の世界が実現した21世紀半ばに、その社会に矢を放つ組織の存在が見え隠れするという物語です。 読者の眼前に広がるのは誰もがハーモニーを保って生きるユートピアなのか、それとも自殺する自由と意志が抑圧されたディストピアなのか。頁を繰るにつけ、眼前の世界に対して自分の判断が大きく振幅するのが手に取れるのです。 オルダス・ハックスリーの「すばらしい新世界 (講談社文庫 は 20-1)」でも、知的で“進化”した文明人と、“野蛮人”とが対極に置かれたディストピアの世界が展開していましたが、あの小説を読むと“野蛮人”に心寄せる自分が見えてきたものです。まさにあの、理屈では処理しきれない不思議な感覚がこの「ハーモニー」によって私の中に引き起こされたのでした。 書き下ろしであるというこの作品の最終頁に「私の困難な時にあって支えてくれた両親、叔父母に。」という作者の謝辞が置かれています。 新聞報道で知ったところによれば、作者は今年(2009年)3月に肺がんで亡くなるまで病室のベッドでこの作品を書いていたとのこと。享年34歳という若さの彼が、病気が消滅して天寿を全うできる社会を独特の否定的な視点で描いたということを思って、心震える思いがしました。 | ||||
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文句なしの2008年度SFベスト1。 前作『虐殺器官』もすごかったけど、徹底した生府による健康管理社会(生命管理社会って言った方がいいかもしれない)の下、安全で幸福な人間社会を襲うテロを描いたこの作品は、斬新な形式も含めて、現代社会における人間性を深く洞察していて、ほかに並ぶもののないぐらいの小説だ。 良くある単純な管理社会批判の小説ではない。 暴力描写は前作に比べれば大人しくなったが、その作品の異端性、タブーを恐れない記述は、SF作品と呼ぶにはもったいないような小説だ。いや、むしろSFでしか書けない作品なのかもしれない。 ありうべき近未来がこのように暗いものなのか、人間が生きている意味とは何なのか、単純な善悪を超えた人間のあり方。 深くものを考えさせられた1冊だった。 日本の作家でもこれぐらいの作品を書けるんだってことを英訳して海外に知らせて欲しい。 いやぁ、すごい小説だった。ただ、エンディングは別な書き方もできたかもしれない。あの後の世界がどうなったかが知りたい。 | ||||
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虐殺器官、ハーモニーの二冊だけでの読者ですが、世界観の構築といい、ストーリーの展開といい、会話文の妙といい、実力のある作家でした。 次も次も楽しみにしていましたが残念です。 良い本ですのでご一読をお勧めします。 | ||||
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環境管理型権力或いはフーコー的生権力が前面に押し出された高福祉近未来の絶望感を描いた作品。古典的ユートピア(≒ディストピア)がビッグブラザー的規律訓練を描いていたのに対して、世相を反映してか高福祉型社会の究極の息苦しさというものをひとつのテーマにしている。 その点に関して問うならば、生まれるべくして生まれた作品ともいえるが「何を今更」という感もなくはない。 ただし相変わらずのSFガジェットの描写の面白さや著者本人が闘病中という背景情報を頭の片隅に置いておくと楽しめる。 ただし、途中からプロットがまんま「パトレイバー2」になるのはいかがなものかと思った。 | ||||
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著者の前作「虐殺器官」の続編(少なくとも世界観的に矛盾しない)。 ストーリー展開は,新世紀エヴァンゲリオンやアップルシードを思い起こさせる。 | ||||
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デビュー作『虐殺器官』で かの「PLAYBOYミステリー大賞」を受賞した 奇才・伊藤計劃さんの最新刊『ハーモニー』。 脳に埋め込まれたチップによって 完全な「平穏、安全、平和」が実現した世界を舞台に それに抗う者と守る者 かつて、ともに死のうとした二人の女性の運命が交錯し 世界に真の「ハーモニー(調和)」をもたらす― 前作をはるかに凌駕する独創的な舞台設定と スピーディーなストーリー展開 特にラスト数ページはまさに圧巻!!!! 物語上級者にこそ手に取っていただきたい作品です☆☆ | ||||
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