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プレーグ・コートの殺人(黒死荘の殺人)
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【この小説が収録されている参考書籍】
プレーグ・コートの殺人(黒死荘の殺人)の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.50pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全32件 1~20 1/2ページ
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城塚翡翠のなかで出てきた小説に興味が湧き 購入したのだが、中々面白い 探偵小説は幾つか読んだ事があるが、いわいる 本格ミステリー小説は初と言って良い位で ハマってしまいそうです。 | ||||
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初読は中学生の頃で、40年ぶりくらいの再読。面白かった! これほど単純かつ意外な密室トリックは、そうお目にかかれない。ぱっと思いつくので、同じ作者の「ユダの窓」、「赤後家の殺人」、「妖魔の森の家」、クレイトン・ロースン「この世の外から」、ウィリアム・ブリテン「ジョン・ディクスン・カーを読んだ男」、赤川次郎「三毛猫ホームズの推理」くらいかなあ。40年振りに読んだけど、トリックだけは鮮明に覚えていた。 前半はストーリー・テラーの筆者にしてはテンボがゆったりとしてるが、ヘンリー・メリヴェール卿が登場する真ん中辺りから俄然話が動き出す。女性にエロ話するとことか、フロスト警部の原型を見た。フェル博士と似たようなもの、と評する文書を何度か読んだことあるけど、全然違う。私は断然H.M派だ。 トリック以外はほぼほぼ忘れてましたが、伏線きちんと張ってあって、犯人も意外。これは、素晴らしい黄金期のパズラーだと思います。 この本の前に読んだのが、日本の社会派推理小説の名作との世評が高い「SのUTW」。 ミステリとしてあまりの酷さに憤慨していたところ、本作でカーがH.M卿通じて、こんなこと言わせてたので、溜飲が下がりました。 「科学的に未知のガスとか、痕跡を残さない毒物など扱った小説は反則にすべきだな。そういうのを読むたびに、わしは苦痛になるよ。そんなことをするくらいなら、犯人が何かを飲んで、鍵穴から自由に出入できるようにした方がましさ。」 | ||||
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「仄暗い中でなにかが首筋に触れた、あれは短剣の柄(つか=グリップの部分)だった。じゃあその人物は、 刃の部分をどうやって握っていたんだ?」と一同が慄くシーンがあります。まあ後でオチがつく訳ですが、 これ、試しに何かでやってみて下さい。アナタに絶対見えないように誰かがアナタの首筋を〝もの〟で撫でたとして、 それが‶何〟か、撫でられたほうはそこまでハッキリ分かります? ▼ ▼ 『プレーグ・コートの殺人』と次の『修道院殺人事件』、過去にそう訳されていたタイトルを近年の創元推理文庫では、 なぜ『黒死荘の殺人』『白い僧院の殺人』へとアップデートしたのか、その理由を解説にて戸川安宣氏が短く述べる。 新訳は高沢治がひとりでやる翻訳の時より語り口は若干堅めな感じがする。南條竹則の影響? かつて黒死病に脅えた旧時代の絞刑吏ルイス・プレージの影が残る幽霊屋敷、そして呪いの短剣。 70年代に本作の翻訳者として平井呈一に白羽の矢が立ったのも、むべなるかな。 ゴシック・ムードに演出され、心霊学者ロジャー・ダーワーズが誰も入れない石室でズタズタの屍と化す前半と、 ヘンリ・メリヴェール卿が呼び出され、霊媒オカルトを論理的に暴いてゆく後半との潮目の変化がこの長篇の醍醐味。 更に起きる第二の事件。 人肉の焼ける匂いを嗅がされたハンフリー・マスターズ警部達はその後暫くマトン料理を見るのも嫌だったろうな。 真犯人の暗躍手段は本格にしてはややルパンティックだし、ある人物がその従犯だったというのはそりゃわからんわ。 って、いちいち作者・カーにツッコみたくなるのが読者のわるい癖。 ‶幽霊犯人〟というワードが出てきて、つい私は戦前本格派の驍将と云われた甲賀三郎の事を思い浮かべる。 実質甲賀は本格の理想論だけで、小説でバキバキの本格ものを作り出す事が出来ずに病死してしまった。 本作の石室殺人に使われているような〇〇〇トリックを用いて、これ位のクオリティの長篇をたったひとつでも遺せたら、 日本の探偵小説史における甲賀(小酒井不木でもいいのだが)の評価は根底から変わっていたと思う。 ▽ ▽ 本作はH・M最初の事件であり、巻末解説ではヘンリ・メリヴェール卿の人物像や登場作品などが紹介されている。 H・M登場作を読破したい方には便利。ヘンリ卿好きの私としてはH・M登場作品だけを集成した全集が読みたい。 どこかのカー好きな奇特な出版社が企画してくれないものか? もちろん電子書籍ではなく紙書籍で。 | ||||
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私もこの平井訳の講談社文庫版が好みです。推理小説の場合、基本的には創元推理文庫の訳が好きですが、「アクロイド」は中村訳の新潮文庫版、「僧正」は角川文庫版が好みです。最近の新訳は文章が短く味がなくて好みではありません。「長いお別れ」は清水訳のハヤカワ版が好みです。 | ||||
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創元新訳カーシリーズの印象が良く、1930年代のJDC/CDを全部読みたい! でカーター ディクスン名義のH.M.卿第一作目を再読。40年前ハヤカワ文庫(仁賀訳)で読んだときは「大傑作!」の印象が強く残っていましたが、H.M.が被害者の部屋を調べるシーン以外、ほぼ全部忘却の彼方。歳を重ねると探偵小説が二度(三度目もありそう)新鮮に楽しめるわけですね!訳注の処理がウザい(是非同じページ内で処理して欲しい)のを除くと新訳は非常に良質。そして肝心の内容も抜群です。不可能犯罪はこのくらい設定に凝らないとリアルにならないよ、とJDCがニヤついています。ただし生きている時の被害者が描かれていないのが残念。前フリがあった方が盛り上がると思うのですが… 手品の世界では「これから鳩が現れます」とかの宣言は厳禁ですけどね。いつもの通り2回目の犯罪が雑、マリオンや偏屈婆さんの描き方も物足りないです。ところで本作のマスターズの設定を読んでJDCの怪奇趣味の正体がわかりました。もし本物の不可能犯罪が存在するなら超自然現象になっちゃうからですね。理性VS超自然現象、ランディVSユリ ゲラーというわけです。そこら辺のメンタリティも本作では明快に描かれていてJDC/CD入門に最適かつ最高傑作ではないか、と思いました。 | ||||
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カーの代表作の一つである本作は別題「プレーグ・コートの殺人」でも知られている。ヘンリー・メリヴェール卿の初登場作である。(その事からも分かる様に、この小説は本来、カーター・ディクスン名義の作品なのだが、本文庫では何故かJ.D.カーの名義になっている。いや、細かい事なのだが。) そして、この小説は以前創元推理文庫で読んだ事があるのだが、この平井呈一訳が在ることを知り、今回こちらも購入した。平井訳はさすがに非常に特徴的な訳文になっている。作中の古い書簡を候文で訳しているのもそうだが、それより全体的に目立つのは、会話文の伝法な言葉使いで、極端に言えば時として捕物帖を読んでいる様な印象も受ける(笑)。しかも本作は一人称の小説なので、この伝法な言葉使いが地の文にまで侵入してくる事もある。そしてこれが、カー作品独特のファルス的要素を強調する効果をあげているのである。好き嫌いはあろうけれど、特徴的な名訳であるのは間違いない。前述の創元推理文庫本(題名は「黒死荘の殺人」)は標準的意味での名訳だと思うので、読み比べてとても面白く思った。 本作の内容はいかにもカーらしい怪奇的な雰囲気に満ちた、超自然的な謎が合理的に解決される小説で、個人的にディクスン・カー、カーター・ディクスン両名義合わせても五本の指に入る名作だと思う。 | ||||
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前半は怪奇趣味満載だが、ヘンリ・メリヴェール卿の登場から、密室殺人事件の状況が論理的に説明されていって、面白く一気読みできた。しかし、前半の導入部分が長く、文庫本の一頁目についている<あらまし>を読んでも前半の状況がわかりにくかった。第五章に挿入されている黒死荘にまつわる十八世紀の手記あたりから、全体像が明瞭になっていった。第十三章から、探偵役のヘンリ・メリヴェール卿が登場する。少し、小説の起動が遅いような気もしたが、前半にミスディレクションが周到に張り巡らされていたので、真相がわかってなるほどと思った。 個人的な趣味で言えば、もっとゴシック色、幽霊譚の色濃い方が好きだ。これだと、やはりミステリーに重きが置かれていて、ホラーはあくまでも演出としてつかっているなといった感じ。 | ||||
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自分が読んだ中では、カー作品でも怪奇とミステリーのバランスが半々で、読みやすい気がしました。 「夜歩く」は、濃すぎて読んだあと呆然としたので | ||||
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買ってから40年近く。 年に1度は必ず読み返します。 カーらしい怪奇趣味、密室の謎、何よりいいのが平井呈一氏の翻訳ですね。 今の人たちには、少し難しいかもしれませんが、この美文はそれだけで 値打ちがあります。 カーの文章は、残念ながらここまで見事ではないんですが、まあ、翻案とでも 言いたいようなこの平井訳を、とことん楽しむのもいいのではないかと。 | ||||
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旧「プレーグ・コートの殺人」からの改題・新訳である。 ルイス・プレージという絞刑吏が刑死体の処理に使い、ペスト(黒死病)の流行時には病気を媒介するとされた犬・猫・豚等の動物を虐殺するのに使われた千枚通し風の短剣。そして、家人を呪いながらペストで死んだプレージの死体が埋まっているとされる「黒死荘」(プレーグ・コート)。その敷地の一角に建つ石室。そこで催される交霊会と悪霊払いの儀式。首を切断された猫の死骸。 ---前半で描写されるこうした怪奇趣味とオカルティズム満載のシチュエーションが、密室トリックや殺害方法と密接に連関し、しかも巧妙なミスディレクションになっているところが巧い。 カーター・ディクスン名義の中心キャラとなるヘンリー・メルヴェール(H・M)卿の初登場となるこの作品だが、卿が出てくるのはほぼ半分を過ぎたあたりから。前半で醸しだされる怪奇趣味と不可能興味が、敵軍を目一杯引きつけておいて一斉射撃するかのごとく、後半でのH・Mの快刀乱麻の活躍を浮き立たせる。 メインの密室トリックは、もうほとんど古典的に有名だが、「そんなのズルイ!」って感じで悪名も高い。で、このいささか陳腐で即物的なトリックがある程度違和感なく成り立ってしまうのも、前半のルイス・プレージに纏わる執拗な雰囲気作りの賜物であることが、読んだあとわかる。 要するに、一発トリックをはめ込むための土台作りに本の半分を使っているわけだ。人を騙すために必死で雰囲気と伏線を構築していくカーの根性と執着心には恐れ入る。 日本サッカーチームもこのぐらいゴールへの執着心をもってワールドカップに臨んでほしい・・・(^o^; | ||||
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最近、新訳で「黒死荘の殺人」が出版され購入しました。また「ブレークコートの殺人」も所持しており、何のために購入するのか判らない状態ですが、カーマニアといってしまえば、お終いです。新訳の方が圧倒的に読みやすいです。カーマニア以外の方は新訳を勧めます。 | ||||
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プレーグコートの殺人、黒死荘の殺人と色々な版を所持している。犯人やトリックが変わる訳でもないが、やはり購入してしまうカーの魅力。 HM卿が登場する最初の名作。絶版にならないうちに、推理小説ファンなら、是非購入して欲しい。 | ||||
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H・Mシリーズの中でよくできた作品ということでさっそく購入。怪奇幻想的な世界の中で殺人。一気に読みました。トリックがわかりませんでした。ディクスンの密室トリックには驚きです。 | ||||
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カー初期の名作。H.M.卿の初出作品として知られるもの。 いきなり冒頭からおどろおどろしい降霊会の話で始まり、怪しげな幽霊屋敷の真っ暗な部屋での恐怖体験、いわくつきの石室などなど、怪奇趣味満載でこれでもかーという趣向である。そして発生する不可能殺人。当然、きわめて堅牢な密室だ。前半の探偵役たるマスターズ警部が困り果てているところで、場面変わって HM卿の登場と相成る。そしてここからはHMの独壇場となっていって、そして実は犯人は・・・というカーお得意のパターンである。 特に前半の怪奇描写にどこまで入り込めるか、で、作品全体として面白いと思うかどうかが決まる気がする。案外そのあたりもちゃんと読み込んでおかないと、なにげなく伏線が張られていたりするので気が抜けないのだが、あまり興味ない心霊話ばかり延々と続けられてもなぁ、という印象もある。 まあとにもかくにもHM卿の登場作品なので、一度は読んでおいて、他の作品に出てくるHMと比べてみるのも一興かもしれない。 | ||||
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幽霊屋敷『黒死荘』での降霊会の最中に発生した不可解な密室殺人事件。 朽ちかけた屋敷の不気味な雰囲気と、そこにまつわる奇怪な因縁話が、いかにもカーらしい怪奇趣味を味あわせてくれます。 また密室トリックでも、犯行状況を工夫したり怪談話をうまく利用したりと、その腕の冴えを見せてくれます。 物語の後半から捜査が行き詰まり、探偵役のヘンリ・メルヴェール(H・M)卿が登場となるわけですが、私はこの名探偵らしからぬ登場シーンが大好きです。これ以降物語の雰囲気は一変し、罵詈雑言をまき散らし、セクハラ発言を繰り返す卿の好々爺(?)ぶりが痛快です。 個人的には、後半の展開が急すぎて、探偵と犯人が直接対峙する場面なんかあれば良いのにと感じましたが、作者の本領が余すことなく発揮された傑作だと思います。 | ||||
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1934年発表の記念すべきH・M卿初登場作品です。カーの怪奇趣味が存分に発揮された初期を代表する傑作であり、その密室トリックは数々のネタバレ本や推理クイズなどでも紹介されたあまりにも有名な物です。 かつてヨーロッパを震撼させたペスト病(黒死病)に因縁をもつ屋敷で催された降霊会。庭に建てられた石室に篭っていた心霊研究家が体をメッタ刺しにされ死んでいた。厳重に戸締りされた石室の周りに足跡はなく、凶器はロンドン博物館から盗まれた曰く付きの短剣だった。H・M卿が捜査を開始するが第二の殺人が・・・ この作品は前半の怪奇趣味と、H・M卿が登場する後半の謎解きとのバランスが非常によく考えられていて、オドロオドロした謎がパチッパチッと解決されていくのは爽快でもあります。しかしそこはカーのこと、いささか反則気味のトリックもあり手放しでは褒められません。まぁそれがカーでもあり、ファンなれば当たり前といったところでしょうか?(笑い) よく異名同体とか、基本的に差異がないと言われる、フェル博士とH・M卿ですが、意外と性格的な違いがあるのではないでしょうか?お茶目で人にやさしく接するフェル博士、いつもブツブツ不平をいってドタバタを繰り広げるH・M卿。実は私、フェル博士よりもH・M卿のファンなのであります。そのH・M卿、初登場からやってくれます。彼のドタバタは物語の良い息抜きになり、この作品でも彼が登場するや、それまでのオドロオドロしさが吹き飛んでガラリと雰囲気が変わります。 カーの傑作の一つであり、入門書としてもお奨めできる本書ですが、新訳とはいえちょっと難しい漢字や言い回しが使われているのは、古い作品でもあり致し方無いところでしょう。しかし、ここのところ昔の作品を新訳で次々リリースしてくれている創元社さんには感謝すると共に、カーの他の絶版作品もお願いしたいものです。 | ||||
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カー(ディクスン)の代表作の一つにあげられる傑作。 (別邦題『プレーグ・コートの殺人』) 横溝正史が『本陣殺人事件』を執筆する際にインスパイアされた一冊としても有名。 怪奇的で陰鬱な雰囲気は『本陣』と共通しているが密室トリックのスマートさはこちらが数段上であろう。 出来栄えのバランスの良さからカー入門編としても推選できる。 ヘンリー・メリヴェール卿初登場の記念すべき作品でもある。 | ||||
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カーの小説とは、結局のところバカミスではないのかと思う。 たとえば、この小説にしても、物語の舞台となる国死荘の、敷地内平面図さえあれば、足跡の無い密室状況がどのように作られたのか、容易に推察できるはずだ。 しかし読者は、ドタバタ劇を演じている登場人物の視点を通してしか、敷地内の状況がわからない。 これでは100ページ読んだって、何もわからないに等しい。 探偵役は現地を実際に見ているのだから、そりゃまぁ気付くだろ、と思う。 さらに、トリックを成り立たせるための小道具となる、特殊な形状の凶器。 この凶器あってこそのトリックであり、他の凶器では、このトリックは成立しない。 そして、事件の鍵を握る人物は、他の登場人物にはない特技または経歴を持っている。 それ無しには、トリックが成り立たない。 真相を聞かされると、そんなに都合良く「舞台」「小道具」「役者」が揃うのは、ご都合主義に過ぎるだろ、と思わざるを得ない。 だが、それは真剣に読んだ場合の話だ。 はじめから、カーはバカミスだ、と思って読めば、結末は爆笑もの。 そんなに都合よく、条件の揃った者が「真犯人」なら、どんな事件だって、こいつが真犯人だろ。 なんなんだよ、この特殊な人間像は。 江戸川乱歩が、カーに刺激を受けながらも、あくまでも子ども向けの世界で、犯人を天才的な犯罪者に置き換え、子どもを相手に不可思議を演じて見せる作品を多作したのも、本来カーの作品には、ある種のバカバカしさがあるからでは、と思えてくる。 なお、バカミスとして読むなら、このハヤカワ版よりも講談社文庫から出ていた平井呈一訳のほうが、茶番劇であることを更に強調した訳文になっているので、一層おすすめできると思う。 | ||||
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怪奇趣味と難解な密室の興味と独特のユーモア溢れる作風で今も世界中のファンから愛され続ける巨匠カーの別名義第二作です。まず、本書の訳題「黒死荘殺人事件」を見ると誰もが小栗虫太郎氏の名作「黒死館殺人事件」を思い浮かべるでしょう。やや紛らわしくはなりましたが、旧訳の題名「プレーグ・コートの殺人」から新たに改題された翻訳者の平井呈一氏のお気持ちも私には十分理解できます。翻訳の方も1987年出版にしては古風な趣があり、書簡の文体を「ござ候」と表記する部分では読み難くてかなり苦労しましたが、べらんめえ調に「あかん」等の関西弁を混ぜた訳文にはくだけた面白味と名調子を感じて結構気に入りました。 ロンドン博物館から死刑執行人の短刀が盗まれ、件の死刑執行人が18世紀黒死病流行の折に恨みを残して死んだ「黒死荘」を舞台にする心霊実験の場で見つかる。完全密室の石室での殺人の謎にお手上げのロンドン警視庁マスターズ警部は戦時中の情報局長の老ヘンリー・メリヴェール卿(H・M)に協力を仰ぐ。 本書が初登場の名探偵H・M卿は調査途中にちゃっかり居酒屋に寄って陽気に騒いだりもしますが、難解な謎に悩む胸中を素直に喋るという謙虚な所もある全く偉ぶらない面白い爺さんです。ミステリー面では、幽霊による殺人という説は有り得ないと否定しながらも超難解な密室の謎が全然見当がつかず幻惑されたまま五里霧中で最後まで犯行動機を考える余裕もありません。やがて遂に明かされる驚愕の真相には、不可能を可能にする為には何でも有りなのかと思わせるずるい面もありますが、巧妙な伏線や手掛かりの出し方等のテクニックに感心し悔しいけれど完璧に納得させられました。巧緻な密室トリックと意外な犯人の隠し方が素晴らしい本書を今回20数年振りに読み返し、今も昔も変わらない新鮮で普遍的なミステリーの魅力に酔い痴れ幸福な気分を味わいました。 | ||||
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カーの創造した2大探偵の1人、 ヘンリー・メリヴェール卿の初登場となるのが、 本書「プレーグ・コートの殺人」です。 本書の語り手、ケンウッド・ブレークは、 <プレーグ・コート>の持ち主、ディーン・ハリディに 「幽霊屋敷で一晩を明かしてほしい」と頼まれ、 マスターズ警部とともに邸を訪れることに。 邸に到着すると、敷地内の石室には、 心霊学者のロジャー・ダーワースが悪霊を祓うために籠もっており、 邸の客間には、彼を信奉する4人の人物が集まっていました。 果たして深夜、石室からは危急を告げる鐘が鳴り、 密室状態の石室を開けてみると、 中にはダーワースが血まみれになって絶命しており、 傍らには、ロンドン博物館から盗まれた短剣が・・・。 この作品、事前情報では、 ある有名なトリックが使われているということでした。 読み終えてみると、確かに、聞いたことのあるトリックで、 ちょっとミステリが好きな人なら 知っているトリックなのではないかと思われます。 しかし、この作品は、 そのことで評価が下がるものではないように思えました。 正直なところ、私は、 そのトリックがこの作品で使われていようとは、 最後まで気づきませんでした。 それはこの作品が単なる推理クイズではなく、 優れた長編推理小説として成立しているからでしょう。 冒頭の不可能状況の提示から、 石室と短剣にまつわるオカルト的題材が絡まり、 また、もう一つ殺人事件が起こるという展開、 さらには、不可能興味のハウダニットに加えて、 フーダニットの要素も含まれていく物語は、 最後まで読者を飽きさせない巧みなミステリで、 現代の読者も十分に楽しめる作品だと思いました。 ところで、作中でヘンリー・メリヴェール卿の あだ名が「マイクロフト」だとの記述がありましたが、 ホームズ好きでなくとも、 ニヤリとさせられる設定だと思いませんか? | ||||
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