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ローカル線で行こう!



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【この小説が収録されている参考書籍】
ローカル線で行こう!
ローカル線で行こう! (講談社文庫)

ローカル線で行こう!の評価: 3.76/5点 レビュー 34件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.76pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全4件 1~4 1/1ページ
No.4:
(2pt)

リアリティのあるストーリの割に細部の詰めが甘くて萎える

赤字ローカル鉄道を再生しようと、カリスマ新幹線車内販売員の女性が社長に抜擢されて活躍するというお話。
帯紙には「読めば元気が出てくる痛快鉄道再生ミステリ」、裏表紙には「お金がないなら知恵を出すのよ!」などと刺激的な文言が並ぶ。
書店に平積みになっているのが目について読了。真保作品は初読。

結論から言ってしまうと、この文庫で500ページ超という分量の割には、かなりいまいちです。

この売り文句と表紙絵から考えると、鉄道ネタに詳しい読者、経営再建や地方再生に興味のある読者、といったところを対象に書かれたものなのだと想像するのだが、その分野の詰めが妙に甘くて読んでいて引っかかるのが難点。

鉄道の話では、どうも話し言葉が付け焼刃知識的な感がぬぐえない。もっとも引っかかったのは、地元に昔から住んでいると思われる町長や社長祖母の「電車通勤」「終電」などという謎の言葉。この路線は第三セクター化される前から、非電化(ディーゼル車による運行で、電車は走らない)であるという設定のはずなのだが、いずれも学齢期を都会で過ごしたとでもいうのだろうか?(ちなみにこういう路線沿線の方は、首都圏などに住むものが「終電」と呼ぶ概念を、ふつう「終列車」「最終」などと呼称すると思います。)

経営的な話では、ごく初歩的なおかしな計算式でもって一気に萎えた。
必要な車両改装費が200万円、期待できる「売上」が一列車あたり20万円、10回の運行で「投入資金の回収が見込める」、「初年度のみ初期投資で次々の黒字が計上できる」って。(笑
冒頭あたりで、「彼女にバランスシートが読めますか?キャッシュフローの正確な意味すら知っているかどうか怪しい」とまで言わせておいて、この計算ですかという感じで、何かの冗談なのかと思った。

行政がらみでは、個人情報保護法のきわめて典型的な初歩的誤り(目的外利用)を、県とはいえ幹部職員として採用されているような者がスルーするのはあまりにもおかしくて吹いてしまった。聞かれたほうの会社の対応も、そんなのを「東京本社の許可が必要」なんて答えてないで、駄目にきまっているではないですか。

もちろん、地道な経営改善のアイデアだしや、行政や融資元など含めたステークホルダとの交渉ごと、経営改善の方向ではあるもののまだまだ目標までは遠い、など、全体としてはあるていど現実的にリアリティのあるストーリー展開は読んでいてなかなか面白い。しかしそうであるからこそ、こういった枝葉末節な致命的誤りがちょこちょこみられるのはちょっとまずい気がする。最初からファンタジーやおふざけ小説なら問題ないのでしょうが、ちょっと色々な意味でチェックが甘かったのでしょう。残念。
ローカル線で行こう!Amazon書評・レビュー:ローカル線で行こう!より
4062182173
No.3:
(1pt)

本職や経済左派は絶対読んではいけない、壮絶な勘違い本

実に不愉快。阿川大樹のを読んだ方がいいわ。
決め台詞が「ローカル線にしてはダイヤをきっちり守ってる」。こんなナメきった態度の鉄道会社がどこにあるのか。社長自ら、他社含めたローカル線を頭から馬鹿にしてかかっているではないか。「町工場にしては納期を守ります」って言うか?職業意識の話としてはもちろんのこと、原理的にも、単線のローカル線こそダイヤをきっちり守らないとスレ違えない筈。この一点を取っても鉄道を全く理解していない杜撰さが分かる。
また、主人公が社長として参戦する前の、鉄道の設立経緯の説明が、放漫経営のリゾート三セクと同列扱い。県民の命や生活を守るための事業は採算度外視でいいが鉄道は違うとまで地の文で言う。地方がどんな思いで鉄道を残したと思っているのか。いや、ローカル鉄道は不要で税金の無駄だという観点・設定の作品ならいい。しかし、通学ラッシュと老人の通院で混む、つまり必要な鉄道だと描写しながら、「展望なしのどんぶり勘定」「破綻の道をひた走る」と続ける。作中の直前直後の記述と記述が論理的に繋がらず、設定崩壊している。展望なんてあるわけねえだろクソが。展望があろうがなかろうが維持しないといけないのが公共サービスなんだよクソが。
経営再建ストーリーゆえ、改革前の体質をDISってSAGEてから俺TUEEEEする物語になるのは必然。だから、接客しないお飾り駅長といった分かりやすい造形は別にいい。でも、公共の利益に十分資する鉄道を赤字とばっさり否定した所から始めるのでは、公共の意味を理解していない。登場人物の口からは地域にとって大事だからと語られるが、地の文(=客観的真実とされるもの)の無知無理解な冷笑的視点は敵側の立場に一致し、これが作品のトーンを決めてしまう。日経連載でもないのに、とにかく儲かるかが全て、利用されている公共サービスでも赤字なら悪、という感性を前提にして、その立場に寄り添っていくのだ。新自由主義信奉がここまでナチュラルに蔓延している事実に愕然とせざるを得ない。マネタイズで黒字化できるから価値があるという勝利条件に共感できないのだ。日本から公共は失われたのだろう。情けなくて涙が出て来る。

取材に時間や費用をかけられないその辺の三文作家ならともかく、徹底取材で知られる真保裕一がこんな初歩的な無知をざくざく晒すのは変だ、と疑問に思って参考文献を見て納得。TVでも人気の鉄道お笑い芸人である川島令三の名が挙がっていた。これは、鉄道会社ではなく鉄道マニアの方に取材した本なのだろう。だから、電気で走らない汽車は電車と呼ばないと説明して鉄道マニアに媚を売る接待記述は盛り込む一方で、鉄道の社会的役割はスルッと見落とした本が出来上がるわけだ。鉄道マニアの本を参考に鉄道の本を書くと鉄道の社会性への視点が抜け落ちてしまう…となると、これはもう、鉄道マニアの非社会性(反とは言わない)が批判されるべきかもしれない。

職業ものが本職やマニアにとっては不満の塊ということはよくあるが、これもご多分に漏れない。本職や経済左翼、国鉄時代にいた社会派鉄道マニアの生き残りは、読んではいけない。脳の血管が切れます。安易な経済俺TUEEEEのビジネスサクセスストーリーが読みたい日経読者はどうぞどうぞ。どうせローカル線や公共なんてものは見下しているだろうから、ぴったり合うだろう。
ローカル線で行こう!Amazon書評・レビュー:ローカル線で行こう!より
4062182173
No.2:
(2pt)

地方をナチュラルに見下す都会人にはアリ

ローカル(線)に対するナチュラルな蔑視が実に不愉快である。なので、そこに同調できる都会人にはアリ、だろうか。

決め台詞が「ローカル線にしてはダイヤをきっちり守ってる」。こんなナメきった態度の鉄道会社はないだろう。社長自ら、他社含めたローカル線を頭から馬鹿にしてかかっている。例えば「町工場にしては納期を守ります」って言わないだろう。職業意識のみならず、原理的にも、単線のローカル線こそダイヤをきっちり守らないとスレ違えない筈。杜撰だ。
その辺の三文作家ならともかく、徹底取材で知られる真保裕一が初歩的な無知を晒すのは変だが、参考文献で納得。TVでも人気の鉄道芸人である川島令三の名が挙がっていた。鉄道会社ではなく鉄道マニアに取材した本なのだろう。だから、鉄道マニアのこだわりに媚を売る趣味的な記述は盛り込める一方、技術面や社会性はスルッと見落としている。鉄道マニアの本を参考に鉄道の本を書くと鉄道の社会性への視点が抜け落ちてしまう…となると、これはもう、鉄道マニアの非社会性が批判されるべきか。

鉄道描写にとどまらない。こういった地方舞台のサクセスストーリーの宿命として、「勝ち組に入れるから滅びなくていいよ」というエールは、実はアプリオリに「負け組は滅べ」を前提にしている。これはもう、どんな小説にも新書にも記事にも思うことで、ここを問うのは酷ではあるけど。
主人公が社長として参戦する前の、鉄道の設立経緯の説明が、放漫経営のリゾート三セクと同列扱い。バスで十分なら鉄道は税金の無駄遣いだが、通勤ラッシュと老人の通院で混む、つまり鉄道が必要と描写しながら「展望なしのどんぶり勘定」「破綻の道をひた走る」と叩き斬る。県民の命や生活を守るための事業は採算度外視でいいが鉄道は違うとまで地の文で説明するのだ(ただしこれは伏線)。しょっちゅう事故を起こすと通勤客が車通勤に変えるかもしれないと悩むローカル線って、ちゃんと住民に利用されてて、恵まれすぎだろう。これを展望がないと切り捨てるのは地方の存在自体を許さない考え方だ。地方がどんな思いで公共サービスを維持していることか。要求する「展望」の閾値が都市基準で、高すぎるのだ。
経営再建ストーリーゆえ、改革前の体質をDISってSAGEてから俺TUEEEEする物語になるのは必然。でも、公共の利益に十分資する鉄道を赤字とばっさり否定する所から始めるのでは…。登場人物は地域にとって大事と語るものの、地の文(=客観的真実とされるもの)は無知無理解な冷笑的視点を貫き、これがトーンを決めてしまう。まあエンタメでいちいち地方を覆う構造的問題に処方箋出せとは言わないが、黒字化目処で大勝利ってハッピーエンドへの道は、赤字の地方の公共サービスは切れというテーゼを完全に肯定しちゃってる。住民に活用される限り維持しないといけないのが公共サービスではないのか。日本から公共は失われたのだろう。情けなくて涙が出て来る。

なお、半ばからはもう勝利条件すら吹っ飛び、イリーガルな手法(主人公側も!)と政治的駆け引きでせめぎ合うクライムサスペンスに遷移していく。そこからは真保裕一作品を堪能できる。ま、実のところそれが物語の本体で、最初からくだらないローカル鉄道一社ごときの活性化を描く話ではないのだろう。ただ、方向性を転換しつつの400P以上は、お得ではあるものの疲れる。鉄道目当てなら阿川大樹ので、後半のネタ目当てならカジシンのなり何なりで用が足りる気は、個人的にはした。
宮城県内陸地震を思い起こすとオチのネタには到底納得できない。震源地にそれはない。配慮ではなく、純然たる合理的判断として、ない。だからこの物語は宮城県内陸地震以前、平成の大合併真っ盛りの時代に、今の世相がいくばくか(鉄道アテンダントやB級グルメ)混じった世界で展開しているのかと思う。あえて合併前の状態で、吸収されれば衰える弱い自治体に肩入れするところには、地方への愛を感じる。ただそれも、ローカル線の見下しっぷりから、劣った弱いものを可愛がる視線とも思える。同じ目線の高さでがっぷり組むのではなく、都会からの上から目線でマネタイズの成功例を取り出して持て囃す愛玩の臭いが拭えない。

職業ものが本職やマニアにとっては不満の塊ということはよくある。これもご多分に漏れず、本職や経済左派だと不満が出るだろう。極端に経済右傾化する日本を目の当たりにした思いがする。経済俺TUEEEEのビジネスサクセスストーリーが読みたい日経読者や、クライムサスペンスを読みたいファンなら、それぞれの求めていない部分で多少寄り道感はあるかもしれないが、楽しめるのでは。
ローカル線で行こう!Amazon書評・レビュー:ローカル線で行こう!より
4062182173
No.1:
(2pt)

何だか安っぽい気がする

ローカル鉄道の再生物語としては、うまく行き過ぎているせいか、何だか軽い感じがした。その話を掘り下げれば、もっと楽しかったのだが…。

その上に、途中から結論が分かりそうな安っぽいミステリーがまぶされて、そのままラストへ。

こんなに話を盛らなくても、1つ1つの物語は掘り下げれば十分楽しめる作品と思うだけに残念。
ローカル線で行こう!Amazon書評・レビュー:ローカル線で行こう!より
4062182173

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