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湿地
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湿地の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.87pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全69件 61~69 4/4ページ
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人口32万人の北欧の小国、アイルランドから届いたミステリーの傑作です。 秋の冷たい雨が降りしきる首都レイキャヴィクが犯罪の舞台です。湿地を埋め立てた住宅地の古いアパートで老人が殺害されます。ノートの切れ端に謎の言葉が残されていました。主人公のエーレンデュル刑事は現場一筋で、腕はいいが上司や部下たちとはうまくいっていません。彼は離婚してやもめ暮らしが長く、二人の子供は薬物中毒のうえ家出中と辛いプライベートを抱えています。無口で無愛想で、何を考えているかわからない刑事ですが、有能で人間味にあふれた人物に描かれています。 文章は的確であり、簡潔でリズムよく、展開が早くて読みやすい。おまけに人物の造型が巧みなので端役にいたるまで存在感があります。少し読んだだけで、たいへんな筆力をもった作家だとわかりました。 ネタバレになるので詳しく書けませんが、心が凍りつくような悲惨な事実が次々に明らかになります。過去の犯罪が火種となって罪無き者が死に至るのです。犯人の推理や捜査の過程よりもこの国の悲惨な人間模様を語ることに作者のねらいがあるように感じました。 陰鬱なアイルランドの秋の雨を背景に語られる悲しい物語です。しかし、読後に重い気分にならずにすんだのはエーレンデュル刑事の抑えた感情表現に、とりわけ最後の一言に救われる思いがしたからでしょう。 | ||||
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十月、アイルランドのレイキャヴィク。北の湿地にあるアパートで老人の死体が発見された。麻薬中毒者か強盗による単純な殺人に思えたが、“おれはあいつ”という意味不明のメッセージが残されていた。計画的な殺人なのか。レイキャヴィク警察犯罪捜査官エーレンデュルが調べると、1968年に4歳で亡くなった少女の墓石の写真が見つかる。少女の死因は悪性脳腫瘍で、母親は3年後に自殺していた。老人とどのような関係があるのだろうか。エーレンデュルは父としての辛い役割を果たしながらも捜査を続ける・・・さぁ、彼がたどりつく衝撃的な真相とは何か。詳細はお読みください。 著者は北欧5カ国の最優秀ミステリ作品に与えられる“ガラスの鍵”賞を本書と次の作品で連続受賞している。 | ||||
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ミステリの多くが事件を発端として、なぜそれが起きなくてはならなかったのかを追って過去へと遡る。だが、この作品は血のつながりをめぐるミステリであり、過去へと時間を遡行することそれ自体が二重、三重の意味で作品のモチーフとなっている。そのためか、読んでいるうちに登場人物の行為のいくつかが象徴的なふるまいに見えてくる。古いアルバムの中の退色した写真を見る行為、死者の眠っていた墓を掘り返すという行為、最新技術でDNAを鑑定する行為、いずれもミステリではおなじみの出来事なのだが、この作品では、それらがいずれも過去へと時間を遡る行為であることにあらためて気づかされ、まるで神聖で儀式的な行為であるかのように感じられてくる。実に不思議な読書体験だった。文体はきわめて叙述的で、描かれる事件も虚飾を排したものだが、読み手はまさに神話劇のような、人の営みにまつわるどうにも逃れえぬものを目の当たりにせざるを得ない。ページ数にしては思いがけない重い読後感は、おそらくそこに由来するのではないか。 | ||||
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アイスランド。2〜3年前に火山が噴火して国際航空線が大混乱したのはたしかあの島だった。「国」というよりも、火山と氷河、寒々とした不毛の「島」というイメージである。 知らない国の小説は、読んでそのお国柄を垣間見ることができれば、ストーリーそのものよりものめり込めることがある。この作品はその典型だと思う。 2001年、雨が降り続く暗い町。首都レイキャヴィクのノルデュルミリ(北部の湿地を埋め立てた住宅街)。物語の人間関係を象徴するかのようにジメジメとして陰鬱な情景描写は印象的だ。 レイプ、家庭内の倒錯した性、暴力、薬物中毒、親子の愛憎。事件の周囲はどの国でも変わらないものだ。そりの合わない捜査官同士で角を突き合わせながら真実にたどり着くというのも最近の警察小説にはよくある。物語の横軸にベテラン捜査官の家庭内事情が描かれ、ストーリーに膨らみをもたせるパターンである。同情を誘う犯行動機の悲劇性だってテレビ放映のミステリードラマでは定番になっている。 これだけであれば万国共通の平板な作品にとどまるところだが………。 実はこの作品の肝心なところはアイスランド国の成立ちそのものにあるのだ。「なるほどそういうことなの」と得心できる謎の核心がある。だから、アイスランド国の成立ちの特性とはなにか?をここで述べることはしない。 巻末に柳沢由実子氏の「訳者あとがき」と川出正樹氏の書評「灰色の物語― 節義と血讐を描くアイスランド生まれの警察小説」の二つの解説があるが、本編を読み終えるまで絶対に読んではならないとだけは言っておこう。わたしは途中でうっかり読んでしまったので、それ以降、謎解きの興味は半減してしまった。 ミステリー用には過剰な説明であり、あまり出くわしたことのない特殊ケースだった。 ただ、この解説がなかったなら、小説本文だけでは読み取れない。欧米人はある程度、常識なのかもしれないが………。おそらく作品の魅力は理解できず、平板な印象のままで終わっただろう。 お国柄を知りたいと思っていたものだから、謎の部分にとどまらずにアイスランドの諸般事情におよんだこの解説はそのものに価値があった。 先に読まれるとネタバレになるリスクがあるとしても、全く知識のない国の作品にはこういう特別な配慮が必要なのだろう。 蛇足だが、犯人のこの状況は殺人を実行する強い動機を生むものなのだろうか?殺人犯にメモ書きを残させたものは?………日本人の感覚からすると疑問が残るのだが、これもアイスランドの国柄なのか。 | ||||
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鳴り物入りで登場した「北欧の巨人」の作品? 好意的なレビューが多いですね〜 おおいに期待して読みはじめたものの、自分が女だからか、冒頭から違和感てんこもり。 まず、自分なら 「こんな状況でデキた子どもは絶対産まない」 ですね。 念のため、数人の女友達に聞いてみましたがところ、 「もちろん私も産まない」 という回答が返ってきました。 「しょせん、男の作家の書く話だよね・・・」と失笑を禁じ得ない作品も巷には少なくないのが残念です。 女性はこんなに弱くもないし、愚かでもない、と言いたくなる女性読者もいることでしょう。 そこんところ、「40年前だから」とか「まだ女性の社会的な地位が〜」とかでウヤムヤにはしてほしくありませんよね? もちろん「アイスランドだから」ってことも。 そんな「細部」につまずいてしまったからか、中心となる殺人事件は自業自得としか思えないし、その他のお気の毒な「被害者」たちにもあまり感情移入できないし・・・ さらに私が許せなかったのが(まだあるのかっ?!)、主人公エーレンデュルの親子関係!! あれ、マジ、ヤバいっすよ・・・ 他人の事件なんか追いかけてる場合じゃないのでは??? ラストの一行には、ただただあぜんとしてしまいました。 ありえね〜 次回作はCWAゴールドダガー賞を受賞したらしいので、ぜひ挽回を期待します。 | ||||
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北欧アイスランド・ミステリー界で活躍し世界中で高い評価を得ているキャリア15年のベテラン作家アーナルデュルの出世作となったエーレンデュル捜査官シリーズの第3作です。近年の北欧ミステリーブームの中で私がこれまで読んできた作品の国は、スウェーデン・デンマーク・ノルウェーに次いで本書のアイスランドが4ヶ国目となりました。(余談ですが残り1国フィンランドの作品も何時か読んでみたいと思います。)本書は本国で1999年に原書が刊行されてから5年後の2004年に英米に向けて紹介されまして、更に8年後の今年やっと日本版が刊行となりました。どうしてこんなに素晴らしい実力派の著者の紹介が遅れたのか?やはりまだ馴染みの薄い国の作品だから運に恵まれなかったのだなと思えますが、でも過ぎた事は振り返らずに未来に目を向けてこれから残された未訳の14作をどんどん紹介して行って欲しいと強く望みます。私が本書を読んで一番強く感じたのはヒューマニズムの部分で、久々に昔読んだ日本ミステリー「人間の証明」森村誠一著を思い出しました。この二作は内容的に見ると共通する部分がそれ程多くないとは思いますが、その人間の遣る瀬無い感情を生々しく描いている点に於いては似た雰囲気を感じました。 北の湿地ノルデュルミリのアパートで発見された老人の死体の傍らには意味不明のメッセージが残されていた。激情による突発的な殺人と見える状況の中でレイキャヴィク警察犯罪捜査官エーレンデュルは不審を感じ被害者の老人の過去を辿る内に新たな犯罪の手掛かりを得てある異常な仮説を立てるのだった。 本書は複数の容疑者の中から真犯人を突き止めるという形のミステリーではなく、確かに定石通りに終盤まで犯人の正体は明かされませんが、謎解きや推理する事にあまり意味があるとは思えません。とにかくこの心が張り裂けそうになる悲痛な犯罪ドラマと必然に思える悲劇的な結末の衝撃を全身全霊でもって受け止めてください。本書を読んで特に感心したのは著者がそれぞれの人物像を描く事に心を砕く方であり性格の造形が非常に巧みだという点で、重要でない端役の人々に至るまで登場する全ての人が生き生きとした印象を残し決しておざなりには書かれていません。そんな中でやはり何と言っても主役のエーレンデュル捜査官の人間的な魅力が最高です。同僚と全く意見を交換せずに行動する身勝手なオレ流の独断専行家タイプであり、当然の如く年下の若い同僚二人エーリンボルク(女性)とシグルデュル=オーリとの間にジェネレーション・ギャップが生まれ昔気質の捜査の進め方に不満を抱いたりもしますが、でも最後にはその実力と人間性に共感し完全にわだかまりを解いて心の底からの信頼を勝ち取るのは流石だと思います。またほとんど堅物でありながらも自分では意識しないユーモア感覚の持ち主で、妻が結婚式の場から失踪した品質管理責任者の夫に向かって「女は品質管理しがたいもの」と言う所などは皮肉も効かせて絶妙の味だと思います。警察官としてはほぼ完璧な彼も私生活では自信がなく悩みが多い50歳のやもめ男で、20年前に別れた妻との間に出来た二人の子供の不幸な境遇に負い目を感じています。本書では麻薬中毒常習者の娘エヴァ=リンドの荒んだ生き方を正そうと幾度も苦労した果てに遠慮を捨て去り真っ向からぶつかって心を通わせる父娘の人間ドラマが素晴らしいです。今回は名前のみ紹介された息子シンドリ=スナイルも次作以降に登場するのか興味を惹かれます。 本書は真実の意味での被害者と言える人々、特にカバーに描かれた幼い少女ウイドルの死が可哀そうで心が張り裂けそうになるあまりにも酷く悲痛な犯罪ドラマの完成度によって世界中から高い評価を得たのでしょう。私は一読して強い感銘を受け著者の才能は正真正銘の本物だと確信した次第で、ぜひとも全ての作品を読みたくて堪らない気持ちで一杯になりました。東京創元社様には努力して頂いて今後単行本でも文庫本でもどちらでも結構ですのでどんなに時間がかかろうとも着実に紹介を進めて行って欲しいと強く願います。 | ||||
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結論から言えば、買って損のない本でした 犯人の動機が、被害者の過去の犯罪から生じていること 被害者はレイプ犯罪者だったこと 犯罪と犯罪が、まさに”血脈”として繋がっていくこと とても上手に構成されていると思います 惜しむらくは、相も変わらずこの手の作品の主人公、 今回は警察官ですが、身内に不幸な状況を抱えているという設定は 何とかならないものでしょうか 不幸を背負ったものしかミステリーの主人公にはなれないのでしょうか? 作品に深みを持たせるためには不幸というバックボーンがなければだめなのでしょうか? 日本の2時間ドラマの主人公のような設定はやめてほしかったなと それが残念です | ||||
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アイスランドの荒涼とした無彩色の風景描写が、陰惨な物語世界と不可分にマッチしています。 物語は、40年前に起きたある事件に端を発する悲劇が描かれるのですが、主だった登場人物のほとんどはいわゆる善良な無辜の民で、無理なく感情移入できます。 過剰に踏み込んだ人物描写や複雑な背景設定は無く、物語を追うのに難渋することはありません。 失ったものへの深い哀惜が事件を加速させ、失いかけているものへの焦燥が主人公の再生につながっていく。 何より特筆すべき点は、基本的に暗い物語で悲劇的結末を迎える割に、読後感がかなり良い点です。 ドライな語り口に反して、主人公や犯人のナイーブでウェットな内面描写は、日本人の感性にかなりフィットしそうな気がします。 | ||||
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冒頭から、退屈なのんびりペースと思いきや…どんどん謎に引き込まれていきました。 そのあと急加速し、一気に終局へ・・・・。 なかなか面白いミステリーでした。 途中で犯人がわあってしまったのは少し残念ですが、シリーズ初作としては及第点でしょう。 面白かったです。 | ||||
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