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照柿
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照柿の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.99pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全109件 61~80 4/6ページ
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文庫化に際し大幅な加筆修正がなされているのだが、単行本を読んだのがかなり以前であったので初読のつもりで読んだ。しかも、高村薫の作品は軽い気持ちで読むことができるような内容ではないばかりではなく、著者自身も読者に居住まいを正して読めと言っているような気がしてならないので、気合を入れて読んだ。 重苦しい。暗い。救いようがない。そんな言葉ばかりが浮かんでくる。硬質な文体と相俟ってその世界に引きずり込まれていく。ストーリーは覚えているはずなのに本を閉じることができずに、ほぼ徹夜で上下巻を読み終わってしまった。 高村薫は自身の作品をミステリーではないしそれを書いているつもりもないと語って(書いて?)いる。では、どのジャンルなのかと考えてみても思いつかない。純文学の色合いも濃いがストーリー物として読んでもイッキ読みが可能な作家だ。高村薫とはジャンル分けすることのできない孤高の存在なのかもしれない。 それにしても「照柿」というタイトルは素晴らしい。これは著者の造語ではなく日本の伝統色の名前だが、作品全編を通じる色彩と熱を見事に表している | ||||
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「合田刑事シリーズ」第二作だが、作者の意図が奈辺にあるのか曖昧模糊としていて鵺のような作品になってしまった。作中の事件は単なる添え物である。「照柿」と言う題名に合わせ、赤、臙脂、青、青緑、白、薄桃、群青、赤茶、紫、茜などの"色"が作中で強調される。だが、その色の意匠が不明で、太陽と達夫の職場の熱処理の象徴の赤以外は謎である。普通なら精緻な描写と呼びたい工場内のスケッチもピント外れで、「また、いつもの工機オタクかよ」と言う程度の感想しかもたらさない。 作品そのものも登場人物間の宿縁と言うよりは、「作者」にとって都合の良い偶然の積み重ねによって構成された胡乱なものである。冒頭の、合田が乗った電車が美保子の夫の愛人の人身事故に遭遇すると言う偶然。その偶然を契機とする合田と幼馴染の達夫の邂逅と言う偶然。更に合田が達夫の愛人美保子に惚れると言う強引な設定。高村氏は元々女性を描くのが巧くないので、美保子の魅力の源泉が不明であり、何故合田が美保子に惹かれるのか読む者には理解できない。単に瞳が翳を帯びているから(=似たもの同士)と言う理由では安易過ぎるだろう。更に、達夫の父が亡くなると言う弔事と容疑者の自殺未遂が重なると言う偶然の末、合田と達夫が共に故郷の大阪に帰ると言う極め付けの偶然。泰三の狂気の象徴が青か。高村氏がホーム・グラウンドの大阪を舞台に書きたい気持ちは分かるが、読む方はウンザリだ。合田と達夫が交わす昔話や忸怩たる人生論の書き込みも意図不明である。読む者は合田の行動と心理に不安感を覚えるだけである。 読者を楽しませると言う作家本来の使命を放棄し、作者自らの澱を吐き出したかのような不毛な作品。下巻に期待したい。 | ||||
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事件物、推理物として読む本ではないが、さりとて文学作品としては、ドストエフスキーはもちろん、中上健次の最良作にも及ばない。読み応えはあったが、焦点を絞りきれずに、事件の解決でまとめた感じ。合田と美保子がセックスするところまで行かないと、このテーマは描けないのでは……。ストーリーの弱さを文章表現と取材力で補っているうちは、改稿癖は直らないだろう。 | ||||
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事件物、推理物として読む本ではないが、さりとて文学作品としては、ドストエフスキーはもちろん、中上健次の最良作にも及ばない。読み応えはあったが、焦点を絞りきれずに、事件の解決でまとめた感じ。合田と美保子がセックスするところまで行かないと、このテーマは描けないのでは……。ストーリーの弱さを文章表現と取材力で補っているうちは、改稿癖は直らないだろう。 | ||||
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「マースクの山」に続いて刑事の合田雄一郎が主人公。前作のように楽しめるサスペンスであると同時に、合田刑事の私情、内面も入り混じり文学的要素がますます濃くなっている。情景描写は相変わらず豊か。ちょっと長いかなと思わないでもないです。 | ||||
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「マースクの山」に続いて刑事の合田雄一郎が主人公。前作のように楽しめるサスペンスであると同時に、合田刑事の私情、内面も入り混じり文学的要素がますます濃くなっている。情景描写は相変わらず豊か。ちょっと長いかなと思わないでもないです。 | ||||
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「マースクの山」に続いて刑事の合田雄一郎が主人公。前作のように楽しめるサスペンスであると同時に、合田刑事の私情、内面も入り混じり文学的要素がますます濃くなっている。情景描写は相変わらず豊か。ちょっと長いかなと思わないでもないです。 | ||||
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達夫は雄一郎の影であり、雄一郎は達夫の影だった。互いに相手を見つめたとき、 自分自身の一番見たくない部分を見たような、そんな気がしたのではないだろうか。 彼らはまるで、背中合わせに生きてきたようだ。そんな二人が、美保子を挟み対峙 する。もし美保子が達夫と何の関係もなかったら、雄一郎もそこまでこだわら なかったのではないのか?もし雄一郎が美保子を気にかけなかったら、達夫の行動も もう少し違ったものになったのでは?いったん狂いだした歯車は思わぬ事態を招く。 人を狂気に駆り立てるものはいったい何か?作者は緻密な描写で、読み手さえその 狂気の中に引きずり込んでいく。内容の濃い、読み応え充分な作品だった。 | ||||
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達夫は雄一郎の影であり、雄一郎は達夫の影だった。互いに相手を見つめたとき、 自分自身の一番見たくない部分を見たような、そんな気がしたのではないだろうか。 彼らはまるで、背中合わせに生きてきたようだ。そんな二人が、美保子を挟み対峙 する。もし美保子が達夫と何の関係もなかったら、雄一郎もそこまでこだわら なかったのではないのか?もし雄一郎が美保子を気にかけなかったら、達夫の行動も もう少し違ったものになったのでは?いったん狂いだした歯車は思わぬ事態を招く。 人を狂気に駆り立てるものはいったい何か?作者は緻密な描写で、読み手さえその 狂気の中に引きずり込んでいく。内容の濃い、読み応え充分な作品だった。 | ||||
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全く異なる家庭環境ながら幼少の頃を一緒に過ごした二人が主人公です。 優等生として育ち刑事をしている合田雄一郎、荒れた少年期を経て工場の熱処理工程で働く野田達夫。 合田雄一郎がひょんなことで出くわした電車への飛び込み事故をきっかけに、18年振りに再開した合田雄一郎と野田達夫、そこに絡む佐野美保子。 全編を通じて一貫しているのが猛暑とそれを表現する「照柿」色。 こんな筈じゃなかったと思いながら悶々とする毎日を過ごす二人の心理が細かに描写されています。 猛暑の中、ただでさえ日常にうんざりしている人は、何処にでもいます。 著者の描写力にすっかり飲み込まれ、ほんの小さなきっかけが、人を狂気に駆り立てる様子に、途轍もない恐怖を感じました。 きっと、自分は大丈夫だろうかと思いながら、読み進める読者も少なくないでしょう。 優れた作品ではありますが、気楽に読書を楽しみたい人には勧められない作品です。 | ||||
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全く異なる家庭環境ながら幼少の頃を一緒に過ごした二人が主人公です。 優等生として育ち刑事をしている合田雄一郎、荒れた少年期を経て工場の熱処理工程で働く野田達夫。 合田雄一郎がひょんなことで出くわした電車への飛び込み事故をきっかけに、18年振りに再開した合田雄一郎と野田達夫、そこに絡む佐野美保子。 全編を通じて一貫しているのが猛暑とそれを表現する「照柿」色。 こんな筈じゃなかったと思いながら悶々とする毎日を過ごす二人の心理が細かに描写されています。 猛暑の中、ただでさえ日常にうんざりしている人は、何処にでもいます。 著者の描写力にすっかり飲み込まれ、ほんの小さなきっかけが、人を狂気に駆り立てる様子に、途轍もない恐怖を感じました。 きっと、自分は大丈夫だろうかと思いながら、読み進める読者も少なくないでしょう。 優れた作品ではありますが、気楽に読書を楽しみたい人には勧められない作品です。 | ||||
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「マークスの山」の会田刑事 再登場。 評価は分かれるのかな? マークスの山でも、そうでしたが、刑事物として読むと、真夏の暑さそのままの、ジリジリ、ドロドロ感に辟易してしまうかもしれませんし、派手さもありません。 しかし、刑事物の枠を越えた、骨太な人間ドラマであることは間違いありません。 | ||||
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「マークスの山」の会田刑事 再登場。 評価は分かれるのかな? マークスの山でも、そうでしたが、刑事物として読むと、真夏の暑さそのままの、ジリジリ、ドロドロ感に辟易してしまうかもしれませんし、派手さもありません。 しかし、刑事物の枠を越えた、骨太な人間ドラマであることは間違いありません。 | ||||
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現代版「罪と罰」のフレーズに惹かれて読み始めたのだが、私の中では高村薫はドストエフスキーを超えた。私が現代日本社会に生きる人間だから共感しやすいというのもある。しかしそれ以上に、作家高村薫の描写力はロシアの文豪をしのぐほど圧倒的なのである。まず達夫の勤める熱処理工場での描写。単に精緻であるだけでなく、大型炉の発する熱と醸し出される陰鬱な空気が肌で感じられるのだ。また再開した達夫と雄一郎が飲み交わす場面。達夫は幼少期にふすまの隙間から父の座敷を覗き込むのだが、そのとき見えた光景を回想する。朽ちてゆく食物の発する鮮やかな色彩の描写とその様をとらえる高村薫の洞察力に鳥肌が立った。また彼女の人間への視線も有無を言わさぬものがある。ラスコーリニコフは思想上の理由で不条理殺人を犯したが、同じ不条理でも達夫のそれには納得させられてしまった。突如変調をきたした炉、女を自殺へと追いやった父への屈折した思い、葡萄色の目をした美保子への情欲、自分とは別次元にいる雄一郎への嫉妬、追い込まれるかのように不眠不休を続ける精神と肉体、そしてキュビズム、キュビズム・・・・突然の出来事ではなかった。それは少しずつ狂い始めていたのである。雄一郎と達夫の歪んだ過去が明らかになる場面も、それだからこそ感慨を催す電話ボックスの場面も圧巻。そして何よりも膨大な下調べを毎回断行し、一度世に出した本であっても推敲を重ね、小説と真摯に向き合う高村薫に、ただただ平伏すばかりである。 | ||||
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現代版「罪と罰」のフレーズに惹かれて読み始めたのだが、私の中では高村薫はドストエフスキーを超えた。私が現代日本社会に生きる人間だから共感しやすいというのもある。しかしそれ以上に、作家高村薫の描写力はロシアの文豪をしのぐほど圧倒的なのである。まず達夫の勤める熱処理工場での描写。単に精緻であるだけでなく、大型炉の発する熱と醸し出される陰鬱な空気が肌で感じられるのだ。また再開した達夫と雄一郎が飲み交わす場面。達夫は幼少期にふすまの隙間から父の座敷を覗き込むのだが、そのとき見えた光景を回想する。朽ちてゆく食物の発する鮮やかな色彩の描写とその様をとらえる高村薫の洞察力に鳥肌が立った。また彼女の人間への視線も有無を言わさぬものがある。ラスコーリニコフは思想上の理由で不条理殺人を犯したが、同じ不条理でも達夫のそれには納得させられてしまった。突如変調をきたした炉、女を自殺へと追いやった父への屈折した思い、葡萄色の目をした美保子への情欲、自分とは別次元にいる雄一郎への嫉妬、追い込まれるかのように不眠不休を続ける精神と肉体、そしてキュビズム、キュビズム・・・・突然の出来事ではなかった。それは少しずつ狂い始めていたのである。雄一郎と達夫の歪んだ過去が明らかになる場面も、それだからこそ感慨を催す電話ボックスの場面も圧巻。そして何よりも膨大な下調べを毎回断行し、一度世に出した本であっても推敲を重ね、小説と真摯に向き合う高村薫に、ただただ平伏すばかりである。 | ||||
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文庫化にはいつも大幅改稿する高村先生、今度の照柿も事前にハードカバーを読み直してから挑みました。 書き直し部分は思ったより(失礼)多くなかったものの、何故ここを書き直したか?などと検討しながら読むのもまた一興。もちろん何度読んでも読みごたえ十分の力作であり、男の仕事と女に対するどろどろとした情念をよくもここまで深く描いたな、といつも感心してしまう。書いたのが昔なので古臭さは否めないが、それでも十分楽しめると思います。 | ||||
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文庫化にはいつも大幅改稿する高村先生、今度の照柿も事前にハードカバーを読み直してから挑みました。 書き直し部分は思ったより(失礼)多くなかったものの、何故ここを書き直したか?などと検討しながら読むのもまた一興。もちろん何度読んでも読みごたえ十分の力作であり、男の仕事と女に対するどろどろとした情念をよくもここまで深く描いたな、といつも感心してしまう。書いたのが昔なので古臭さは否めないが、それでも十分楽しめると思います。 | ||||
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良く取材も行われているようで力作なのだろうが、この作品は良くも悪くも読者を選ぶと思う。 個人的な感想でいえば、あまり好きな作風ではない。 なにより、ストーリーはそれほど複雑でもないが、描き方が暗く、重い。動機のはっきりしない殺人事件を描くためには、仕方の無いことかもしれないが、人間の描き方もネガティブな感情をこれでもかという感じで書いているので、逆に、その人物像が判りづらいような印象なのだ。 それがまた集中力を奪って行くので、読み終えるのにかなり苦痛を感じてしまった。 | ||||
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良く取材も行われているようで力作なのだろうが、この作品は良くも悪くも読者を選ぶと思う。 個人的な感想でいえば、あまり好きな作風ではない。 なにより、ストーリーはそれほど複雑でもないが、描き方が暗く、重い。動機のはっきりしない殺人事件を描くためには、仕方の無いことかもしれないが、人間の描き方もネガティブな感情をこれでもかという感じで書いているので、逆に、その人物像が判りづらいような印象なのだ。 それがまた集中力を奪って行くので、読み終えるのにかなり苦痛を感じてしまった。 | ||||
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10年以上前に単行本が出たとき読んだ作品ですが、今回例によって全面改稿ということなので再読しました。非行歴はあるものの社会人になってからは人並みに生きてきた野田達夫が殺人を犯すまでの過程と、達夫の幼なじみである合田雄一郎が達夫への嫉妬に駆られて刑事の道を踏み外していく様が、現在・過去、東京・大阪と舞台を変えながら丁寧に描かれていきます。達夫の狂気も雄一郎のエゴも、どうしてここまで書けるのかというくらい現実感があり、以前と変わらぬ迫力を感じました。大雨の中、達夫が公衆電話から雄一郎に電話をかけてくるラストシーンは感動的です。 | ||||
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