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龍臥亭幻想



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龍臥亭幻想の評価: 8.00/10点 レビュー 4件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全4件 1~4 1/1ページ
No.4:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

最後はスッキリ

バラバラにされた死者が蘇って復讐をするという謎が。これは何かのトリックなのか、それとも伝説通りの出来事なのか?興味深く読めました。また、どうやって一人の人間をセメントで覆われている地面に一瞬で埋めることができるのか、についてもスッキリ解明!出てきた人たちも皆魅力的でしたが、最後に残された育子がかわいそうに感じました。龍臥亭事件も良かったけど、こちらも負けずに良かったです。

タッキー
KURC2DIQ
No.3:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

龍臥亭幻想の感想

この作者の作品で「幻想」なんて言葉がついてしまうと少々危険な香りがしてしまいます。
この作者には「眩暈」なんていう前科がありましたかな。
しかし、高評価をした「龍臥亭事件」の続編となれば読まなければ・・・って事で読んでみた。

御手洗シリーズだが前作同様主役は石岡で、何故か吉敷も登場する。犬坊里見もいるわけで、ある意味オールスターキャストかと。
その割に、結局謎は解明できずラストは犯人の手記による独白。
だったら御手洗も吉敷も要らんやろって正直オモタ。
バラバラ殺人で、パーツの組み合わせ的な展開まであって、御大ファンなら間違いなくあの作品を想起したはず。
期待は裏切られるのだが、トリックは御大らしさ満載で大味であり、ある意味(では)期待を裏切らない。

梁山泊
MTNH2G0O
No.2:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

本格ミステリの巨人の豪腕ぶりが思う存分!

前作『龍臥亭事件』に引き続き、業の深さが主題になっている。
閉鎖された村社会に伝わる因習。妄信のように今に伝わる差別。主従関係の厳格さから生じる男と女の色の縺れ。

そして御手洗シリーズの定番となっている物語を彩る逸話ともいうべきエピソードが今回も添えられており、それこそが森孝伝説、そして森孝魔王といった話だ。
森孝伝説は島田氏が常々テーマに挙げている日本の歪な上下関係・主従関係を扱った悲しい物語。さらに挿入される森孝魔王の物語も悪徳代官が百姓をいたぶる話だ。
森孝伝説の内容を受け、死体に森孝の霊が乗り移り、甲冑を身に纏い、代官に処刑を下すといった内容だ。虐げられた弱者を救済するために、人智を超えた存在が現れ、惨殺する。
同様の挿話は『魔神の遊戯』にも見られたが、この弱者救済の話はデビュー以来、島田氏が一貫して扱ってきたテーマだ。

そして本作ではこの森孝に纏わる話に加え、他に第二次大戦中の日本軍が秘密裏に行った人体実験の話などの戦時日本の暗部、そして獣憑き、獣子といった村社会独特の妄信による人種差別についても述べられている。
特に気のいいお手伝いとして登場した斉藤櫂が、その過去には小さい頃に獣憑きの疑いがあって里子に出された、先祖が首切り役人で呪われた家系だった、引き取られた両親と反りが合わず、子供を置いて夫と共に逃げた、といった業の深い人生を歩んできたことに驚いた。最後の方で明かされるこの女性の凄まじいまでの虐待の日々は、本作のもう1つのテーマだろう。
この櫂の人生を通して語られる、村人の、その村に強く根付いた独特の道徳観に基づく嫁婿夫婦への躾なども、深く考えさせられる重い内容だ。

物語はこの他にも日本の鎧に関する薀蓄、からくり人形の歴史と江戸との係わり合いなど、興味深いエピソードが物語を彩る。
とは云え、前作に比べると比較的内容は明るいようだ。犬坊家は特に前作に見られた一家の業の深さなどは微塵も描かれず、犬坊里美の若者特有の軽さや寺の住職日照、神社の神主二子山などの漫才の掛け合いのような方言交じりの会話などで重苦しい雰囲気を淡くしている。
事件自体は非常に陰惨なのだが、特にこの日照と二子山の語り口の面白さがそれを軽減している。
そして石岡も以前に見られた情けなさから幾分復調して、女々しさが消えている(それでも好きな女性に振られて、ストーカーになるのかと自問した時に、自分にはそんな事やる元気がないと云ったのには苦笑したが)。

また加納通子が娘を歌手にしてステージママになりたがっているなんていう意外なエピソードも面白い。
そのほか、里美が語る日本の司法試験とその採用制度の話も面白かった。裁判官が司法試験の成績上位者しかなれないなんて初めて知った。

しかし、本作の目玉と云えば、やはり島田荘司氏2大シリーズの主役、御手洗と吉敷のコラボレーションだ。
この趣向は両シリーズを読み通して来た者にとって、なんとも感慨深い、心憎い演出である。『涙流れるまま』以降、吉敷と通子のその後をこんな形で知らせてくれるとは思わなかった。これこそ一級のファンサービスだろう。

そして吉敷は事件の1つを解決して去っていく。それも石岡から御手洗の残したヒントを聞いて。
両者のファンの中にはこのコラボレーションに物足りなさを感じる者もいるだろう。しかし、私はもうこれだけで十分だ。強烈な個性の2人が一所に集まるよりも、石岡という緩衝材を間に介する必要があった方がいいと感じた。

そしてこの2人と石岡が挑む事件、これも豪腕島田氏の健在振りを強くアピールするものだ。
地震で起きた地割れで厚いコンクリートの下から出て来た死体。2つのバラバラ死体を合わせ、甲冑を着せた死体が甦り、悪を討つ。そして最後には100年前に行方不明となった森孝が現れる。
今回はもうほとんど論理的解決は不可能だと思っていた。実際、日照とナバやんの2つの死体を合わせて甦った森孝魔王の真相は石岡も解明できず、手記にて真相が暴かれる。

で、これら3つの大きな謎の真相だが、大いに偶然が重なっているなあとの印象が強い。『暗闇坂の人喰いの木』、『疾走する死者』、『北の夕鶴2/3の殺人』らに共通する豪腕ぶりだ。実に島田氏らしくて呆れるというより微笑ましく思った。まだこういう物を堂々と書く、その若さが嬉しく思った。
そう、そしてこの死体を繋ぎ合わせて1つの魔王を甦らせるというのは奇しくもデビュー作である『占星術殺人事件』のモチーフとなったアゾートを連想させる。これは御手洗と吉敷を一同に会するために敢えて原点に戻ったということなのだろうか?

これら謎の真相については首肯せざるを得ないが、やはり島田氏の物語の力は素晴らしいと思った。どんどんその世界に引き吊り込まれていく。そして必ず胸に去来するものがある。こういうのを読むと推理小説は驚愕のトリックも大切だが、やはり物語があってのものだと実感する。
推理小説界の巨人とも云うべき存在においてその精神を失わない島田氏。いやだからこそ巨人とも云うべき存在なのか。
もう一生ついていくぞ!


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

ムラ社会のおぞましさ

貝繁村怖すぎる。しかしいい人だから、真面目だから、信仰心が強いから差別や掟をしっかり遂行する、というのはこの村に限ったことじゃないんだろうなと思った。龍臥亭事件の時もそうだったけど、里美がどうしてビッチになったのかがよく分かる。それにしてもこの作家は業を背負った美女が好きだな。

ヘッポコ屋敷嬢
XG82ACXM

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