アルカトラズ幻想



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初公開日(参考)2012年09月
分類

長編小説

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アルカトラズ幻想

2012年09月23日 アルカトラズ幻想

一九三九年十一月二日、ワシントンDCの森で、娼婦の死体が発見された。被害者は木の枝に吊るされ、女性器の周辺をえぐられたため、股間から内臓が垂れ下がっていた。時をおかず第二の事件も発生。凄惨な猟奇殺人に世間も騒然となる中、意外な男が逮捕され、サンフランシスコ沖に浮かぶ孤島の刑務所、アルカトラズに収監される。やがて心ならずも脱獄した男は、奇妙な地下世界に迷い込む―。 (「BOOK」データベースより)




書評・レビュー点数毎のグラフです平均点5.50pt

アルカトラズ幻想の総合評価:7.14/10点レビュー 22件。Cランク


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全2件 1~2 1/1ページ
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

まだ読んだことのない物語がここにある

島田荘司氏のノンシリーズである本書は読者の予断を常に超え、全く想像のつかない展開で物語が進んでいく。
それはあらゆる学問や知識が動員された奇妙な、しかしそれでいて実に説得力のある話が展開したかと思えば、奇想に満ちた世界が連続する。

まず開巻一番、御手洗シリーズに負けず劣らずにセンセーショナルな事件が繰り広げられる。

木に吊るされた2人の女性の死体。1人は性器の周囲を抉られ、内臓が垂れ下がり、もう1人は腹を一文字に裂かれ、骨盤が真っ二つに割られ、前に腹が引き出されているという、まさに島田氏ならではの読者の想像をはるかに超える凄まじい有様だ。

この猟奇的事件を追うのはワシントン東警察署のロン・ハーパーとウィリー・マクグレィという2人の刑事。この人智を超えた殺人事件の謎を追う展開は海外ミステリの警察小説のような色合いをまとっている。

そんな犯行の動機が理解し難い事件の謎はこれまた理解し難い手掛かりをきっかけに犯人に辿り着く。それはある大学院生が書いた恐竜滅亡の謎について考察した論文だ。この内容が実に興味深い。
なぜ2億5千万年前に出現した巨大な恐竜が1億3,500万年もの長き間に亘って繁栄し生き長らえたのかを現代科学の知識から解き明かしていく。その一つ一つが新たな見地を開いており、まさに蒙が啓かれる思いがした。ちょっとかいつまんで書き並べていこう。

現在生存する生物の視点から考えると恐竜のスケールの大きさやその骨格の不自然はどうにも生存するには不便であり、恐らく自重によって内臓が圧迫され、長くは生きられなかったとするのが当然であり、また草食の首の長い恐竜も胃までの十数メートルもの距離をベルトコンベアのような機能を備えていないと食物を運ぶことは到底不可能であることやバランスを取るために長い頸部と尻尾を平行にして歩行したと推測されているが、これらは構造の観点から云えば、かなりの負荷が頸と尻尾の付け根に課せられ、現代では吊り橋のような構造にしないと長期に亘って支えられないことも挙げられている。

また5トンもの体重があると想定されるティラノサウルスが同等の体重を持つ象が4つ足歩行しかできないのに、2足歩行が出来たのか?
それを解決する1つの方法がカンガルーのようにジャンプしながら移動していたのではないかという説。

さらには翼竜など飛行する恐竜たちもまた今の鳥類のスケールから考えても到底空を飛べたとは思えないほどの大きさと重さを持っているのになぜ飛ぶことが出来たのか。

他にも太陽系の惑星に関する自転周期の奇妙な事実など単なる生物学を超えて物理学、構造力学、天文学の観点から疑問を投げかけているのが実に興味深い。
そしてこれら不可解な事実を一転して理解可能とするのが、恐竜たちが棲息していた時代は重力が今よりも軽かったとする説。それが故に最も自転によって生じる遠心力が最も大きい赤道周辺に恐竜がいたこと、そして現在の重力になったのは巨大隕石による衝突の衝撃によるものだという実に画期的な説だ。

この実に知的好奇心溢れる学説は全く以て知らなかった。どうやらこの説は前から出ていたそうだが、ウェブで調べるとトンデモ学説と断ざれたり、支持する声もあったりと様々だ。私はこのコペルニクス的転回であるこの重力説を支持したい。

ここまでが上巻の展開だ。そこから物語は文字通り目くるめく展開を見せる。

これはまさに島田氏しか書けない物語だ。題名が示すようにこれはまさに幻想物語だ。
第2次大戦下のアメリカを舞台に古代生物学、物理学に構造力学、天文学といった知識がふんだんに盛り込まれ、空想の世界を補強し、このとんでもない空想物語がさも実存するかのように島田氏は語る。

5つに分かれるこの壮大な幻想譚は1章では行間から血の臭いまでもが匂い立つほどの迫真性に満ちた人智を超えた猟奇的事件を語り、2章では重力論文なる、現代科学において規格外とされる巨大な生物、恐竜の存在とその絶滅の謎に対する学術的な話が展開し、3章ではアルカトラズ刑務所を舞台にした刑務所生活と手に汗握る脱獄劇が、そして4章では一転して島田ワールドとも云える空想世界の物語だ。
それは『ネジ式ザゼツキー』で語られた「タンジール蜜柑共和国」を髣髴とさせる「パンプキン王国」なる不思議の国の話。そしてそんなメルヘンとしか思えない世界が最後のエピローグで意外な真相と共に明かされる。

まさにこれはそれまでの島田作品のエッセンスを惜しみもなくふんだんに盛り込んだ集大成的作品と云えるだろう。

世のミステリ作家の想像の遥か彼方の地平を進む本格ミステリの巨匠の飽くなき探求心とその豪腕ぶりに今回もひれ伏せてしまった。
島田氏はまたしても我々が読んだことのないミステリを提供してくれた。
ミステリの地平と明日はまだまだ限りなく広く、そして遠いことをこの巨匠は見せてくれたのだ。まさに孤高という名に相応しい作家である。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.1:
(4pt)

アルカトラズ幻想の感想

普通に面白いです。ですが、万人に勧められるという本ではないかな・・と思います。新境地に挑戦した意欲作だとは思います。全部で4章からなる作品ですが、それぞれが、まるで違うお話のようで、全く異なるテーマで書かれたかのように見えながら、最後にはばらばらの伏線が一気にまとまっていきます。登場人物の一人だけがかろうじて全体を支えており、読んでいる間は目が点になります。しかも、第二章は小説ですらなく全体が一つの論文です。
第一章はある殺人事件
第二章「重力論文」という名前の論文
第三章アルカトラズ島
第四章・・・はネタバレで
最後の最後でばらばらな伏線が一つながりにまとまっていく快感は特別で、何だか銃弾で撃たれて飛び散っていくガラス瓶を、フィルム逆回しで観察しているかのようです。
残念なことに、最後のオチのための仕掛けに凝りすぎてしまった感が強く、進め方が強引過ぎる気がしました。

何か、新境地に挑戦した変わったものが読んでみたい方にはお勧めかもしれません。

▼以下、ネタバレ感想

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absinthe
BZLMTCHK
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

No.20:
(5pt)

最高

よくこんな話を書けると思う、すごいの一言
アルカトラズ幻想Amazon書評・レビュー:アルカトラズ幻想より
4163816607
No.19:
(4pt)

ミステリーとしてよりも、その実験性の高さに惹かれる一冊

島田荘司の『アルカトラズ幻想』を読了した。2012年9月25日リリースである。

この作品は、読んでいて島田荘司の作品を読んでいる、というより、アメリカの現代ミステリー作家が書いている作品を読んでいるような錯覚に何度も陥った。おそらくは意識してそういう書き方をしている気がする。

4つの章から成るこの作品。これも故意に、全く無関係に感じられる話4つを組み合わせ、最後のエピローグでその説明をしているという手法を導入している。とても実験的で、『試してみたい』という気持ちが随所に溢れている。そこに感心した。

おそらくは、もうこの頃は、フツーのカタチで進行するミステリーの書き方に何の面白みも感じていないのだろう。それが良く出ている。

最後に登場する軍艦島には、今年の3月に行ってきたのでイメージが良く湧いて読んでいて楽しかった。語られる内容も、軍艦島のガイドが熱弁を振るって語っていたことと重なった。

おそらくは、アルカトラズにも実際に行き、有名な1962年6月11日、フランク・モリスとアングリン兄弟が監房から消えるという有名な脱獄事件をヒントにしている気がした。と言うのは、1962年の脱獄事件で壁に開けられていた穴と、ベッドに置かれていたダミーの頭が被るからだ。

ミステリーとしてよりも、その実験性の高さに惹かれる一冊だった。
アルカトラズ幻想Amazon書評・レビュー:アルカトラズ幻想より
4163816607
No.18:
(5pt)

デイヴィッド・リンチ級の力技

ミステリーとしての筋は通しつつ猟奇殺人、監獄、ファンタジー、回想記と種々の名著からのメタ的な視点を破綻なく統合している、島田荘司級の才能がなければ書けず、許されずの作品だったと思う。
好みは分かれる。私は文句なしに傑作だと感じた。
アルカトラズ幻想Amazon書評・レビュー:アルカトラズ幻想より
4163816607
No.17:
(2pt)

死体損壊の動機はちょっと面白かったけどミステリとしては落第点

アノ動機だと死体をわざわざ途中で外に放置する意味ないし、そこに目撃者がいなかった理由も最後まで説明ないし
後半犯人目線だけど、どう考えてもこんな事件起こすバイタリティがある人物としても描けてない
アルカトラズ幻想Amazon書評・レビュー:アルカトラズ幻想より
4163816607
No.16:
(3pt)

不明な動機

最後のどんでん返しを食らったのは初期のドキドキワクワク感を感じさせてくれたが、冒頭の陰惨たる事件は果たして必要だっただのだろうか?という疑問に至る。
研究者としての探求心を満たすためにしても、難攻不落のアルカトラズに投獄する動機にするにしても例として比較するが暗闇坂の人喰いの木やアトポスに比べたら切っ掛けにするには弱い。上下巻での繋がりが薄いのと、一人目の犠牲者との関わりが見えず、後の鍵となる人物と出会った時に驚嘆していたが何故そこまで拘ったのかすら書いていないため腑に落ちない。探求心を満たすためだけなら一人目の犠牲者は単なる女性であり驚くことも少ないと感じた。
アルカトラズ幻想Amazon書評・レビュー:アルカトラズ幻想より
4163816607



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