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アルカトラズ幻想
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アルカトラズ幻想の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.65pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全20件 1~20 1/1ページ
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よくこんな話を書けると思う、すごいの一言 | ||||
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島田荘司の『アルカトラズ幻想』を読了した。2012年9月25日リリースである。 この作品は、読んでいて島田荘司の作品を読んでいる、というより、アメリカの現代ミステリー作家が書いている作品を読んでいるような錯覚に何度も陥った。おそらくは意識してそういう書き方をしている気がする。 4つの章から成るこの作品。これも故意に、全く無関係に感じられる話4つを組み合わせ、最後のエピローグでその説明をしているという手法を導入している。とても実験的で、『試してみたい』という気持ちが随所に溢れている。そこに感心した。 おそらくは、もうこの頃は、フツーのカタチで進行するミステリーの書き方に何の面白みも感じていないのだろう。それが良く出ている。 最後に登場する軍艦島には、今年の3月に行ってきたのでイメージが良く湧いて読んでいて楽しかった。語られる内容も、軍艦島のガイドが熱弁を振るって語っていたことと重なった。 おそらくは、アルカトラズにも実際に行き、有名な1962年6月11日、フランク・モリスとアングリン兄弟が監房から消えるという有名な脱獄事件をヒントにしている気がした。と言うのは、1962年の脱獄事件で壁に開けられていた穴と、ベッドに置かれていたダミーの頭が被るからだ。 ミステリーとしてよりも、その実験性の高さに惹かれる一冊だった。 | ||||
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ミステリーとしての筋は通しつつ猟奇殺人、監獄、ファンタジー、回想記と種々の名著からのメタ的な視点を破綻なく統合している、島田荘司級の才能がなければ書けず、許されずの作品だったと思う。 好みは分かれる。私は文句なしに傑作だと感じた。 | ||||
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アノ動機だと死体をわざわざ途中で外に放置する意味ないし、そこに目撃者がいなかった理由も最後まで説明ないし 後半犯人目線だけど、どう考えてもこんな事件起こすバイタリティがある人物としても描けてない | ||||
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最後のどんでん返しを食らったのは初期のドキドキワクワク感を感じさせてくれたが、冒頭の陰惨たる事件は果たして必要だっただのだろうか?という疑問に至る。 研究者としての探求心を満たすためにしても、難攻不落のアルカトラズに投獄する動機にするにしても例として比較するが暗闇坂の人喰いの木やアトポスに比べたら切っ掛けにするには弱い。上下巻での繋がりが薄いのと、一人目の犠牲者との関わりが見えず、後の鍵となる人物と出会った時に驚嘆していたが何故そこまで拘ったのかすら書いていないため腑に落ちない。探求心を満たすためだけなら一人目の犠牲者は単なる女性であり驚くことも少ないと感じた。 | ||||
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島田荘司作品に代表される御手洗氏は登場しないが、ワクワクの展開が面白い。 | ||||
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島田荘司は軽々に批判出来ない。何と言っても「占星術殺人事件」に驚愕し、「斜め屋敷の犯罪」で絶句し、「死者が飲む水」で頭を殴られたからだ。それから、御手洗シリーズは言わずもがな、「北の夕鶴2/3の殺人」等の吉敷竹史シリーズに嵌り、加納通子が好きになり、一方、「火刑都市」や「網走発遥かなり」の抒情性、「眩暈」、「アトポス」、「水晶のピラミッド」等のストーリテリングノの巧さ、「秋好事件」等のノンフィクションの見事さや、その余りのマルチさに、リスペクトはするが、批判など出来ないからだ。 とはいえ、以前に較べれば島田荘司にドップリと浸かった読書生活は無くなったが、それでも、これだと思う作品は読みたいし、本書がまさにそうだと思ったが、正直、肩透かしを喰らわされた。 1939年11月2日早朝、ワシントンDCの森で、中年女性の死体が発見された。両手と首がロープで枝に吊られていて、性器が楕円状に切られていた為、スカートから膀胱と膣が棒状に垂れていた。 発端はそのような状況だが、ひとつの小さな手掛かりから、次の手掛かりへ正攻法の連鎖で進むので、いたって読み易い。島田荘司の作品はいつも読み易いので、長編でも億劫ではない。 異様な幕開けはより異様な状況で連続する。 ただ事件は、異様に長い「重力論文」であっけなく終結し、タイトルでもあるアルカトラズへ舞台は移る。難攻不落の刑務所だが、好むと好まざるに関わらず、主人公は脱走計画に乗り、当初のオーソドックスな事件の展開から随分かけ離れていく。 それからの目まぐるしいストーリー展開をどう受け取ったらよいか、部分的に面白い箇所は有るが違和感だらけで、期待値から大きく外れた着地は、カタルシスのない茫然自失だけが残り、島田荘司の初期の作品群に有った輝きを今となっては懐かしむばかりだ。 | ||||
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本書は、1.意図不明の猟奇、2.重力論文、3.アルカトラズ、4.パンプキン王国、の四章とエピローグから成り立っています。1で女性の死体が発見され、その事件と生物の進化の問題とが、第2、3章で関連づけられます。第4章は謎のような章で、その謎解きがエピローグでなされます。問題は、文章がくどくて長いこと。それは、第2章に象徴的に現れています。科学論文は、簡潔な説明が要求されるので、くどい記述で、著者が優秀な科学者というのは、少々無理があります。しかも残念ながら、この「論文」で示唆される、恐竜の絶滅の原因は、間違っています。(The Chicxulub Asteroid Impact and Mass Extinction at the Cretaceous-Paleogene Boundary で検索すると、本当の論文が見つかりますが、この論文が発表されたのは2010年で、島田氏の小説が刊行されるよりも前です。)エピローグで、日本に投下された原爆に関する、かなり重要な裏話が書かれていたのと、アルカトラズ島と、別の地域とを結びつける着眼が面白かったのを評価しました。 | ||||
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島田 荘司は昔よく読んで好きな作家だったので買ってみたのだが、これのどこが「超本格ミステリー」なのか、まったく理解できない。冒頭の事件はあまりにもグロテスクで気持ちが悪すぎる。最近は帯に猟奇的なことを書かないと売れないので、そのためにあえてこのようなホラー的な描写をわざわざ入れたのかと勘ぐりたくなってしまうようなひどさである。そのようなものでもストーリ展開上の伏線など、必要があって書いているなら百歩譲るところだが、そういうわけでもまったくない。監獄に入れる理由が何か必要であるにしても、あまりにも悪趣味すぎる。こんなことをしなくても、監獄行きの理由はいくらでもつけられるだろう。途中の「重力論文」はいちおうもっともらしいことが書いてあり、それなりにおもしろかったが、これもストーリーには直接関係ない。この論文が冒頭の事件の動機というのも強引すぎる。脱走の場面も冗長だし、最悪なのは「パンプキン王国」の部分であろう。ファンタジーのような、恋愛もののような、とにかく「本格ミステリー」とはほど遠い内容であり、ただただ退屈で読むのが苦痛であった。結局は最後のエピローグの内容を、ひたすら長々と伸ばして書いたようなものであり、内容的にはとても薄いものと感じる。エピローグの内容自体も特に目新しいものではなく、「驚愕の結末」とはほど遠い。正直言って、これが本当にあの「島田 荘司」が書いたものなのか、と信じられない思いだった。ホラー、ファンタジーが好きな人にはいいのかどうか、自分にはわからないが、「本格ミステリー」を求めている人にはまったく薦められないものである。 | ||||
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島田荘司先生は初期作品から大好きで、新刊が出るのを心待ちにしながら読むくらいのファンですが、 10年くらい前から、島田流ともいうべき「ワクワク感」が減ってきたなあ・・・・とは感じています。 初期から割と、パズルのピースをタタタタッとまき散らし、読者に「どうだ分かるか」と挑戦した後、 一気にパタタタタと組み立てて「ほーら実はこうだったんだー」と見せてくれる人だったんで・・・・ まあ昔も長編は書いておられたけど、どっちかというと中・短編くらいがいいのかなあ・・・・ 本作も最後には満足させてもらえますが、最初のあたりの進行のダレ感、 「重力論文」がなぜ挟まってるのか、よくわからない点、全体的な「引き伸ばし感」は どうしても感じてしまいます。 端的に言うと、初期の島田作品に比べ、くたびれます。 とはいえ、これも島田氏が、コアなミステリー作家で現在も色あせしていない人物、という前提で ここまで言うことが出来るものであり、基本的にすごい作品であるという点は動きません。 | ||||
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一見荒唐無稽なハチャメチャなストーリーに見えて 最後は「なるほどそういうことか」と納得させられる。 作者はアメリカに住んでいたときに、アルカトラズ島を見て ○○島を即連想したんでしようね。そこからアレにつながって、こういうストーリーを思いついた。なるほどですね。 大御所でありながら、未だにこういういい意味でのトンデモ作品を 産み出す作者はすごいなと思います。 私も○○島みたいなのにはロマンを感じるというか惹きつけられます。 海上都市とか、地底都市とか、限られた空間に何でもあるような そういう場所に。 二章目の重力論文はストーリーに直接関係無く入れなくてもいいものですが、あえて入れちゃってしまうところがこの作者らしいですね。言いたいことはとりあえず言おうと(笑) ただ論文の内容はちょっと疑問ではありますが。恐竜はなぜあんなに巨大なのか。もともと恐竜のいた時代は今よりはるかに重力が小さくつまり体重もはるかに軽かった。だから自由に動き回れた。 ところがあるとき地球に小惑星がぶつかって、自転の速度が遅くなり結果重力が強くなり、巨大生物である恐竜はすべて自らの「重さ」のために滅びてしまった。 どうですかね。 重力が小さかったといっても、それは他の動物も同じですからね。恐竜の動きがいいといっても、他の動物も速いわけで、果たして捕まえられますかね。 それに自転のスピードを弱めるほどの、大きな小惑星の激突なら なんかもっと大変なことになって、地球がめちゃくちゃになりませんかね。大気も逃げてしまうだろうし。 どの程度重力の変化があったのか、そのあたりの検証がまったくされていないのは物足りないですね。 5トンの恐竜が当時は4トンだったとしても、大して変わりませんからね。ただ、恐竜に対する「あんな巨大な生物が生きていけるわけが無い」という疑問には同感です。不思議は不思議ですよね。 島田氏はそれは重力が弱かったせいで体重が軽かったからと結論付けたわけですけどね。 私は重力説は疑問です、かといって他の説は思い浮かびません(笑) 島田氏のことだから、二章を膨らませて現代からジュラ紀をまたにかけた壮大な本格ミステリを書いてくれそうです(笑) | ||||
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呆れる程の低レベルの物語。短編で済む程度の内容を無理やり薄く引き伸ばして長編に仕立て上げた挙句、その内容には見るべき所がカケラもないと言ったお粗末な作品。ミステリでもなければ、思想性がある訳でもない。舞台を1940年前後のアメリカに設定しており、ドイツによる原爆開発を盛んに話題に出して事から着地点もミエミエで、作者の意匠が全く理解出来なかった。 作者の創造力・想像力の貧困さも目を覆いたくなる程。切り裂きジャック、今では常識となっている進化論(特に恐竜絶滅の理由)、宇宙物理学(太陽系生成の過程)、ヴェルヌのSF小説、ウェグナーの大陸移動説、マザーグース、「パピヨン」にヒントを得たと思われる「アルカトラズ」牢獄脱走劇と既存のピースを単に組み合わせているだけで、作者のオリジナリティが全く感じられない。特に、この時代に、恐竜絶滅の理由、冥王星が惑星ではなく彗星である事、ウェグナーの大陸移動説(正しくはプレートテクトニクス理論)を科学的に論じられた人間が居た筈もなく、作者は現代の知識で、これら諸々を書いているのである。そして、これらのピースの繋ぎ方がデタラメ(例えば、冒頭で切り裂きジャックもどきの事件を出す必要があったのだろうか、あるいは「重力論文」なる章を設ける必要があったのだろうか)で、物語の求心性が非常に乏しい。 社会的正義を訴えれば、そこにミステリ的アイデアが皆無であっても、作品として成立すると作者が勘違いしている節がある。デビュー当時の独創性を想うと非常に寂しい物を感じた。 | ||||
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一言で言うと、島田荘司だから許される『力技』だと思います。それだけに読者に とっては好き嫌いが出るでしょうね。 元々コアなファンが多いこの著者ですから、ありきたりなミステリでは誰も満足し ませんし、読者がそれを許しません。そう言った観点からこの作品は、久々に島田 荘司らしい小説と言えます。 整合性を持った解決は最早望むべくもない展開で、さすがの私も「ああ、これは ミステリではなくファンタジーだったのね」と思い始めた頃、物語は突如急展開を 始めます。この『力技』は「奇想、天を動かす」に匹敵しますね。 でもよかった、著者がまだまだ健在で。 | ||||
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ものすごく苦手なタイプ。とうとう、最後は斜め読みをしてしまった。一番苦手なのは、人の感情や内面にほとんど触れていないこと。翻訳もののような文体でサクサク。中身も跳びまくっているし、二度と読みたくない作家。 | ||||
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とある雑誌でおすすめになっており購入しました。物語に引きこまれ一気に読み終わりました。途中でなんとなく気づいたところはありましたが、ラストまで気持よくページがめくれました。惜しむらくは、前半と後半では物語のトーンが異なり、違う小説をマージした感じがしました。いろいろな科学的論議が緩衝になっていますが、ちょっと強引な感じも否めません。読み終わったあとの満足感はありますが、読み返すことはないと思います。とはいっても面白く読め、夢中になって読めます。文庫であればお勧めです。 | ||||
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出版時期を考えると年間ミステリーランキングのトップ10入りは難しいかもしれないが、第二次大戦中の時代背景、猟奇的な事件、アルカトラズ監獄などを壮大な構想のもとに、有機的につなげて論理的に収束させる手腕はさすがなもの。 冒頭の猟奇事件から始まり、動機の解明、収監されたアルカトラズ監獄からの脱獄譚、恐竜絶滅と重力に関するうんちく、幻想的な異世界で繰り広げられる不可思議な事象、そして収束がおおまかなストーリーの構図である。 これだけのスケールを持つ作品なので、多少ご都合主義になってしまうのはやむを得ない部分はあるが、読者をこの幻想、奇想、ロジックの世界に引き込むパワーはすばらしい。 島田荘司の本流をいく本格ミステリーの傑作である。 | ||||
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奇妙で凄惨な殺人事件から始まる物語。面白いミステリだとわくわくしながら読み進めると、あっという間に幻想と奇想の豪腕に絡め取られてしまう。パンプキン王国の謎は圧倒的で、こんな常識がぶっ飛んだ世界でも、島田荘司の作品なんだから、絶対に最後は合理的に着陸するはずだ、と思いながらも、やっぱり巨大な謎に魅せられてしまう。ギリギリだがヒントは散りばめられている。素晴らしい本格ミステリです。パンプキン王国…!迷い込んでみたい…。 | ||||
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1939年11月、ワシントンDCで相次いで起きた凄惨な猟奇殺人。逮捕されたのは恐竜の謎を独自の観点から研究する大学院生バーナードであった。彼は孤島の監獄”アルカトラズ”に収監されたが、脱獄。そして、まことに奇妙な地下の世界に迷い込む。 第1章における、女性の体を、あのように損壊する衝撃は非常に大きいが、異世界への導入のつもりだったのか、それともハードボイルド調なのか・・・。また。第2章の恐竜に関する“重力論文”にも記述の意味が。そして、監獄島の地下に・・・異世界が待っているとは。ここからの展開は、まさに予測不能、驚愕の結末が・・・。詳細は本書でどうぞ。 本作は現代ミステリーに新境地を開く長編である。 | ||||
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島田ワールドはミステリーという固定概念で形づくられた空間を突き破って伸び続けている、巨木のようなものだと感じます。御手洗潔を探偵役に据えた謎解き小説を「新本格」というジャンルを開拓した一本の太い幹だとすれば、吉敷竹史を中心とする警察小説がもう一本の枝であり、奇想・幻想に展開しつつ、ミステリーの謎解きとしても(強引に?)着地させる幻想ミステリーもまた、太い幹のひとつです。 今回の「アルカトラズ幻想」は、上記で言えば三番目の分類に属します。1939年、米ワシントンDCで起きた、冒頭の陰惨な猟奇事件はミステリーそのものですが、話はいつのまにかそこから大きく無重力空間に飛翔し、恐竜、人類、太陽系、第二次世界大戦へと展開していきます。 「写楽−閉じた国の幻」が日本の美術史についての大胆な仮説だったとすれば、「アルカトラズ幻想」には地球史についての仮説の提示があります。仮説といっても素描に近く、容易に反証が挙げられそうです。また、冒頭の事件の登場人物がなおざりにされるなど、消化不良感が残る部分もあります。 ただ、それでもこの本を読んで良かった、と私は思います。中生代にタイムスリップして恐竜が跳躍する姿に思いを馳せたり、地球と惑星とが衝突し、炎を上げる宇宙空間を想像したり、孤島から孤島へと驚くべきスピードで空間を移動したり、刑務所の地下に広がる美しい世界にいざなわれたり。それがミステリーとしてのエンディングに、ぎりぎりで着地するのですから。 些事に捉われることなく、ミステリーと幻想世界を描き出す「現代の江戸川乱歩」の筆にいざなわれて、目の前に広がるジュラ紀の天変地異を、宇宙から地下への瞬間移動を、無重力で楽しんでみたい。そんな方におすすめです。 | ||||
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面白かったんだけど、これは著者の提唱する21世紀本格ではないな。 なんというか、戦争秘話といった趣だ。 ただし、それがこれだけ面白いんだから、著者の筆は相変わらず達者だということだ。 むしろ、本格志向の最近の作品「ゴーグル男〜」と比べると、読後の充実感はずっと上だ。 どうやら著者も年を取って、こういうシミュレーション・ノベルというか、疑似実録ものみたいなものに面白いものが多い。 そして、あいかわらずのリーダビリティの高さはさすがだ。 さて、本作は女性の猟奇事件から始まって、アルカトラズ島の刑務所内へと舞台が移る。 その途中には地球空洞化説に関する論文が挟まっており、このあたりは「ネジ式ザゼスキー」のような体裁となっている。 そして、このアルカトラズ収容所の描写が、実に面白い。 もちろん、読んでいると違和感を感じるところが頻出するのだが、このあたりは著者としてもネタが割れるリスクを覚悟のうえで、エンタテインメント性を優先したのだろう。 あんな囚人同士のやりとりなんて、実際には考えられないだろうけれども、これが実にスリリング゛で面白い。 ただし、収容所内のストーリーの展開は、けっこう都合が良すぎる感じではある。 まあ、このあたりは本作の設定上、許容範囲なのであろう。 そして後半、不可思議なことが相次ぐのだが、このあたりはどうしても○○オチがミエミエになってしまうあたり、ちょっと惜しいかな。 しかし、この怒濤の展開というか力業は、さすが豪腕の著者だけのことはある。 この怒濤の展開がどうして生じたか、というのが本作の最大の謎になるのだが、伏線は張りまくりだし、論理的に読者が解明するという類のものではない。 ただし、伏線から創造は可能であり、おそらく普通の読者は容易にアウトラインは推測がつくだろう。 著者も特別にこの謎を強烈に前面に打ち出す意図はないようだ。 しかしながら、この謎がエピローグの余韻とアイロニーに繋がるあたりは、やはり稀代のストーリーテラーである。 本格ミステリを期待すると肩すかしを食うとは思うが、物語を堪能するという意味では、読んで損のない作品であるといえるだろう。 | ||||
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