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魔剣天翔



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魔剣天翔の評価: 7.00/10点 レビュー 5件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全4件 1~4 1/1ページ
No.4:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

ミステリ度数はかなり高いのだが…

Vシリーズ5作目は再び那古野市に舞台を戻し、阿漕荘と瀬在丸紅子といったお馴染みの面々が事件に巻き込まれる。
今回の舞台は航空ショー。衆人環視の中、なんと演技中の飛行機の中でパイロットが射殺されるという、これまでにない非常に限定的な密室殺人を扱っている。

しかしそれにも増して正体不明の美術専門窃盗犯であった保呂草潤平に危機が訪れるのが面白い。
各務亜樹良というジャーナリストの強引な依頼でエンジェル・マヌーヴァという特大のエメラルドを埋め込まれた短剣を盗み出すことを依頼された保呂草が飛行機の中の密室殺人の容疑者となった各務を助けたことで自身も警察から追われる身になってしまう。

また被害者宛てに送られたエンジェル・マヌーヴァを魔剣と称する詩めいた内容のカタカナで書かれた脅迫状の存在に、加えて発生する見習パイロットがホテルの一室で射殺事件。そこにはまた同じようなカタカナで書かれた一行のメッセージが残されていた。また機内で射殺されたパイロットの口の中からヒューズが発見されるという異常な事実も発覚する。
ヘルメットを被った状態で口の中から異物が発見される。最小の密室状態で更なる不可解事の発生。それに加えて保呂草の逃亡と本格ミステリとサスペンスが融合した、森氏にしてはミステリ色の濃い作品である。

また本書ではサブストーリーとして小鳥遊練無の過去についても語られる。
事件の中心となるエアロバティックス・チームの一員である関根杏奈が彼の憧れの存在であり、練無が少林寺拳法を始めたのも彼女の影響であることが判明する。さらに女装も杏奈の影響によるものであることが解る。女装が趣味で少林寺拳法の有段者という個性の強いキャラクターだけの存在だった―個人的には漫画ハンター×ハンターのビスケをイメージとして重ね合わせていたのだが―が、今回は女装をせずに物語に登場する。

物語後半で明かされる関根朔太と西崎勇輝、そして関根杏奈出生の秘密は非常にオーソドックスな真相だろう。

関根杏奈がスカイ・ボルトは人の命を奪うほど価値があるものなのかという祖父江七夏の問いに対して頷き、その後にこのように云う。

「人の命なんて、大したものではない。命をかけるものが、あるからこそ、人は生きているんです」

この言葉はそのまま彼女の母親の生き様に繋がる。奇しくも2人は同じ覚悟を持って人生を生きていることに気付かされる。ここに2人の強い絆を感じた。

たった2人しか入ることの出来ない飛行機のコクピットという極限的に狭い密室殺人でこのようなすっきりとした解答が得られる森氏のミステリスピリットは非常に素晴らしいと思うのだが、また今回も犯人の動機が不明なまま終わるのが不完全燃焼でがっかりである。
多分森氏が「人が人を殺す理由は他人には到底わかるものではないから敢えて書かない」というスタンスを崩さない限り、私は彼の作品を高く評価することはしないだろう。
前にも書いたがそれは我々が生きる社会の中では至極当たり前であるが、せめて作り物の物語の中くらいははっきり答えが出てもいいではないかと思うからだ。割り切れない世の中を生きているからこそ答えのある世界を欲しているのだ。

今まで書いてきたように本書は森作品の中でもミステリ色が濃い作品である。
10億円は下らない特大の宝石が埋められた短剣の行方、密室殺人、脅迫状、ダイイング・メッセージとミステリど真ん中のシチュエーションと小道具が散りばめられているし、また保呂草の逃亡劇というサスペンス要素も加わっている。さらに瀬在丸紅子が最後に警察に持ってくるウィスキーのボトルに付いた指紋の件は刑事コロンボの『二枚のドガの絵』を彷彿とさせる演出だ。

しかしそんな盛り上がってしょうがないと思われる材料を実にあっさりと料理してしまうのだ。
例えば保呂草が依頼された宝剣エンジェル・マヌーヴァの在処も特に謎解き要素があるわけでもなく、最後に仄めかすに留まるし、保呂草の逃亡劇の顛末も瀬在丸紅子の推理ですっきり解消してしまう。
またカタカナで書かれた脅迫状は特に暗号でも何もないままに処理されるだけだ。

この辺のあっさりさがどうにも腑に落ちない。せっかく色々な設定を施しながら全てが中途半端な感じで終わるのが残念なのだ。

恐らくは関根朔太の数奇な運命こそがこの物語の主眼だったのかもしれない。
人が命をかけるからこそ人は生きている。このテーマを書いたところで森氏にしてみれば物語の目的は達成したのかもしれない。それ以降は物語を畳むための作業に過ぎなかったというと云い過ぎだろうか。

またシリーズも5作目となって次第に各登場人物のキャラクターに踏み込んだ内容が書かれるようになった。
小鳥遊練無の憧れの存在関根杏奈は彼が唯一惚れた女性だ。そして林と紅子が別れた件もほんの少しだが明かされる。
本書はシリーズの折り返し地点でもあるから、後半になると更にみんなの過去が明かされるだろうと期待しよう。

さて本書の隠されたテーマは全ての章題に付せられた「形」というキーワードか。森氏はエッセイでも述べているように無類の飛行機好きでその形に機能美を超えた美しさを感じているようだ。その心情は本書のプロローグで遺憾なく開陳されているが、本書では飛行機の形だけでなく、家族の形、過去の形、友人たちの形と人と人を繋いで形成されるものを指しているのではないだろうか。
保呂草が冒頭に述べる多少の演出を交えた形が本書の物語であり、最後に瀬在丸紅子の笑顔を求める形と述べている。つまりそれらの形がその人の生き様を、人生を作る。即ち人生とは形の集合体であるということだろうか。

そうであるならばまだ形は変わっていく。今回の形はこの事件が起きた時の形だ。シリーズが最終作に至る時、どんな形を描くのだろうか。その形こそがこのシリーズの最大のミステリなのかもしれない。


▼以下、ネタバレ感想

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Tetchy
WHOKS60S
No.3:
(7pt)

暫定、シリーズ中で最も地味

特にこれといって言うことのない回だった。
森作品の中ではかなり平坦な作品だと思う。
7点。

かいん
AGLSXFF0
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

魔剣天翔の感想

二人乗り飛行機の中で起こった殺人、同乗者が疑われるが、同乗者は犯人ではないといった状況。そして、保呂草さんの本業がなんともスリリング。紅子さんが、紫子の部屋を密室にして帰るだとか、へっくんが、図工の宿題で紙粘土のざるそばを作ったりなど、Vシリーズはキャラが魅力的です

ほっと
2XKXV6EI
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

Vシリーズの第5作目

どう考えても殺害方法は機械を飛行機に設置するしかないだろう、と思い込んで読み進めた。当然機械はないわけで・・・。なるほど。
脅迫文についても謎は分からずネットで探しました。古典的なメッセージでわかった人も多かったみたいだ。悔しい!相変わらず紅子の人物像がぶっとんでる感じがなんともいえない。

izutti
N05IGXOE

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