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とめどなく囁く



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とめどなく囁くの評価: 8.00/10点 レビュー 1件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

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全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(8pt)

夫を、妻を、どれだけ知っているか?

2017年から18年にかけて新聞連載された長編小説。ミステリーよりも男女の心理的葛藤を描いたエンターテイメント作品である。
湘南の海を望む逗子の高台にある超高級邸宅に住む、現在41歳の塩崎早樹。31歳年上の資産家・塩崎克典と結婚したのは、お互いに伴侶を亡くしたという共通点からであり、決して資産目当てではないのだが、世間は何かと好奇の目を向けて来る。息子に事業を譲り悠々自適の生活を送る克典と、隠棲しているような穏やかな日々に満足していた早樹だったが、元夫の母親から電話があり「(亡くなった夫の)庸介を見た」と告げられたことから、激しく動揺し始めた。庸介は8年前、趣味の夜釣りに出たまま行方不明になり、死体は発見されず、7年後に死亡認定されたのだったが、早樹は庸介がどこかで生きているのではないかという疑惑を拭いきれずにいたのだった。真相を知りたいと思った早樹が昔の仲間たちを訪ねて当時の様子を聞き出そうとしたとき、現われてきたのは、早樹が全く知らなかった庸介の隠された一面だった・・・。
死んだはずの人物の影が現われるという、よくあるパターンの物語で、失踪の謎を解くミステリー要素はきちんと押さえられているが、本筋は「あなたは結婚相手のことをどこまで知っているか?」という問いかけであり、本質的に理解し合えない、他人との生活をどう考え、どう営んで行くのかという、大人のための寓話である。物語の構成も人物設定も巧みで、会話も上手く、ありふれたテーマながらどんどん引き込まれていく。最後の最後、真相が明らかにされるとちょっと違和感があるが、ストーリー全体は緊張感があって読み応えがある。
最近の桐野夏生作品の中では出色のエンターテイメント作品として、多くの方にオススメだ。

iisan
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