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眼の壁



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眼の壁の評価: 8.00/10点 レビュー 1件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

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No.1:
(8pt)

松本清張の本領発揮

「点と線」と同時期に発表された、松本清張初期の長編。いわゆる「社会派推理小説」分野を確立することになった記念碑的作品のひとつと言える。
時代は1950年代後半、日本は経済の成長が著しく戦後の混乱から脱すると同時に、復古の動きもみられるようになっていた。某企業会計課次長の萩崎竜雄は、勤務先が手形詐欺に合い、尊敬する会計課長が責任を取って自殺したことに衝撃を受け、報復のために犯人探しに乗り出す。しかし、素人ひとりでは思うに任せず、友人の新聞記者の助けを得ることにしたが、なかなか真相にたどり着くことができなかった。一方、別の殺人事件から捜査を始めた警察も、捜査を進めるうちに手形詐欺の背景に迫ることになっていた。素人探偵二人は、警察より早く真犯人をとらえることができるのか?
経理部門の企業人、新聞記者、闇金融業者、バーテンダー、弁護士、黒幕の右翼などの登場人物も、東京駅、銀座や新宿の夜の街、競馬場、中央線沿線や信州の片田舎などの舞台もきわめて強い存在感を持っており、読み進めるにつれて引き込まれていった。
トリック中心のマニアックな推理小説からリアリティのある推理小説へ、そのための人間性と社会性の重視へという、松本清張の主張が十二分に発揮された構成とストーリーで、半世紀を過ぎた現時点の基準で見ても非常に高く評価できる。
ただ、当時の社会状況を知らない、若い世代の読者には理解しにくいというか、良さが分かりにくいだろうと思う。

iisan
927253Y1

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