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パラサイト・イヴ



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パラサイト・イヴの評価: 7.00/10点 レビュー 4件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全4件 1~4 1/1ページ
No.4:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

日本ホラーブームの幕開け、そして理系ミステリの幕開けとなった作品

日本の新人文学賞でも屈指の難関と云われる日本ホラー大賞初の受賞作である本書はそれが単なる飾りでない事を証明する濃い内容の作品だ。というよりもこの作品が基準となり、同賞が難関となったと云っても間違いではないだろう。

発表当時大学の薬学部で博士課程だった瀬名氏。その専門分野をいかんなく本作に導入しているがために、中身は専門用語が縦横無尽に横溢してあり、門外漢である私はしばし内容を理解するのにページを捲る手を休めざるを得ない状況に陥った。
しかし、それでもリーダビリティが落ちなかったのは、作者の高度に計算された物語運びの妙にある。

主人公永島利明のパートでは死亡した妻聖美の細胞を培養するプロセスが事細かに書かれ、聞き馴れない専門設備・器具の名称や専門用語の応酬に怯むものの、そのパートでは迫り来る得体の知れない何かに対する危機感めいた物がきちんと挿入されている。さらに話は腎臓移植を受けた麻里子のエピソードやその経過、そして生前の聖美と利明との馴れ初めなどが絶妙にブレンドされ、読み物として退屈を呼び込んでこない。実にバランスの良いストーリー運びである。

本作のプロットは実に単純である。人間にとって寄生して生存していると思われたミトコンドリア自身が寄生体そのものを凌駕し、逆に征服し、次世代知的生物に成り代わるというものだ。
本書が他のホラー作品と比べて一歩抜きん出ているのは、まずその壮大な嘘を博識な専門知識によって理論武装し、本当にありえそうな恐怖を齎したこと、そして従来人間に寄生し、征服しようとする存在は地球外生物が多かったのに対し、瀬名氏は元来全ての生物に備わっているミトコンドリアという存在に着目したこと、この2点にあるだろう。

そして本書が突拍子のなさを持っていないのは、寄生体であるミトコンドリアが人間のDNAを逆支配するという可能性がゼロではないことだ。現代の最新研究ではまだその証明がなされていないが、これから先、科学の分野が発展するにつれてこれら机上の空論であった事実が実はかなりの必然性を持った可能性となることもあるかもしれない。
そんな潜在的恐怖を抱かせてくれるところに瀬名氏の作品の特色があると思う。
それはやはり専門家としての瀬名氏の博学な知識がそれを裏付けているし、またそれが彼の作家としての他の作家と一線を画する特質であろう。

私が本書において特に驚嘆したのは腎臓移植手術に関する事細かな叙述である。例えば臓器提供者(ドナー)と臓器受容者(レシピエント)との間を取り持つ移植コーディネーターなる存在があることもその1つだ。
なによりも腎移植手術の件が特に興味深かった。メスを入れるところから、腎臓を摘出するまでのプロセスとそこから移植手術に移るまでの時間との闘いといった一連の流れが精緻な叙述で眼前に映像が浮かぶかのごとく描かれる。素人考えで恐縮だが、薬学部である瀬名氏が医学部の学生でも立ち会わないだろう内臓移植手術をかくも迫真性を以って描いていることに驚く。しかもこれはベテランの作家によるものではなく、新人賞に出された原稿なのである。取材費なども出ない作品の制作にここまでよく取材した物だと感心した。

そして瀬名氏が理系研究者が陥りがちな説明調文章を多用するわけでなく、作家として物語を形成する技量にも長けていることが本作ではよく解る。
本作は3つの大きな話が同時進行で語られるが、私が一番印象に残ったのはサブストーリーとも云える、腎臓移植を受けた麻里子のパートだ。娘とのギクシャクしたコミュニケーションに悩む父親と、麻里子自身が負った心の傷のエピソードについつい親の視点で読んでしまい、自分ならどう対処するかと考えさせられた。

また移植手術がレシピエントにとって必ずしも喜びをもたらすものではない事を本作では教えてくれる。
元々成功率が低い手術であるのに、患者は術後は普通の生活に戻れるものだと100%思い込む。それがゆえに拒絶反応が出て摘出しなければならなくなったときの落胆振り。更に麻里子の場合は、腎移植が仇になりいじめの対象になってしまう。特に彼女の、死体から摘出した腎臓を移植する嫌悪感からくる「わたしはフランケンシュタインじゃない」という悲痛な叫びが胸を打った。
こういう細かい人間描写が本作を単なるホラー作品ではなく、小説として真っ当な読み物にしている。

と、全面これ、賞賛の嵐となっているが、やはりエンタテインメントとしての勢いを減じているのが先ほどから述べているその圧倒的な量を誇る専門知識と専門用語だ。
これを語るにはこの知識が、この作業にはこういう装置が必要だ、だからそのことを説明するにはこの分野について触れておかねばならない、といった瀬名氏の読者に対する配慮が行間からも解るのだが、その親切すぎる配慮ゆえに情報量が多すぎ、読者の理解力をことごとく試すような物語の流れになっているのが惜しい。そういった理解しがたいパートについては読み流せばよいのだろうが、当方はそれがどうしても出来ず、理解するために何度も読み返してしまった。
この辺の匙加減がやはり若書きの至りというものだろうか。しかしそれを第1作目で求めるのは酷というものだろう。日本ホラー大賞の黎明を告げた本書はその賞に恥じない、力作である事は間違いない。

Tetchy
WHOKS60S
No.3:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

パラサイト・イヴの感想

相当前になりますが日本ホラー小説大賞を受賞した作品で、かなり骨太で読み応えのある作品だと思います。

ただ、他の方たちのレビューにもあるように、薬学部出身の作者による専門用語の登場頻度が高すぎますね。
適量ならビシっと作品を引き締めてくれたりするんですが、ちょっと長すぎですかね。
また、これを読み飛ばした場合、Y染色体のくだりなど、物語の把握に支障をきたす可能性があるのがたちが悪いです。
あと意図的なのかは不明ですが、視点や時系列が前触れもなく変わるので、その場その場の状況が理解できるまでに時間を要してしまいました。
色んな点で少し読みづらい作品だなと感じました。
ただ、ミトコンドリア視点の描写は失敗ではなかったかなと。
思考をトレースできた時点で、底知れぬ怖さではなくなってしまった気がします。

共生が寄生だったというアイデア、その発想は抜群だったと思います。
しかし、その後の展開が余りにも現実離れ過ぎ、突飛過ぎるように思えます。
鈴木光司氏の「らせん」に表向きは非常に似た流れになるのですが、「らせん」のパロディかと思えるくらいのドタバタ劇になってしまいます。
ジワジワ見せるのが怖いのに、この作品の場合、いきなり「ドッカーン」です。
「発火」って・・・まぁここまでは分からんでもないですが、「意外と軽症だった」ってどんな発火システムなんだろう?

梁山泊
MTNH2G0O
No.2:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

パラサイト・イヴの感想

専門的な内容が多いですが後半からの勢いが良く、生理的な嫌悪感が自然と湧き上がってきました。
ホラー小説として十分に楽しめる作品でした。

LN
XL1SRHRZ
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

パラサイト・イヴの感想

ホラーとしてはスリル感は乏しいが、なかなか面白く読めた。特に後半から面白くなるのが良い。オタク小説であるが、まあ許容範囲。

supoo0331
76NSOQ3P

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