「大きくなること、それは悲劇である」。

出産を控えた姉に毒薬の染まったジャムを食べさせる妹…。

記憶が80分しか持続しない天才数学者は、通いの家政婦の「私」と阪神タイガースファンの10歳の息子に、世界が驚きと喜びに満ちていることをたった1つの数式で示した…。

楽譜に書かれた音、愛鳥の骨、火傷の傷跡…。

美しくて、かよわくて、本を愛したミーナ。

こうして書棚の秘密は私とＢ、 二人だけのものになった―― ハリウッド俳優Ｂの泊まった部屋からは、決まって一冊の本が抜き取られていた。

「だって人は誰でも、失敗をする生きものですものね。だから役者さんには身代わりが必要なの。

染みだらけの彼の背中を、私はなめる。腹の皺の間に、汗で湿った脇に、足の裏に、舌を這わせる。

魂は身体の細部にこそ宿る 隠された美を掬い取り、やわらかに照らし出す。極上の随筆16篇。

俳句のリズム、いのちのリズム、俳句を発見する歓びにあふれる、小川楓子の第1句集『ことり』 自然や生き物との対話、暮らしの情景……。

耳縮小手術専用メス、シロイワバイソンの毛皮、切り取られた乳首…「私が求めたのは、その肉体が間違いなく存在しておったという証拠を、最も生々しく、最も忠実に記憶する品なのだ」―老婆に雇われ村を訪れた若い博物館技師が死者たちの形見を盗み集める。

耳の中に棲む私の最初の友だちは 涙を音符にして、とても親密な演奏をしてくれるのです。

遠く隔絶された場所から、彼らの声は届いた。紙をめくる音、咳払い、慎み深い拍手で朗読会が始まる。

きみはなぜ、まぶたを閉じて生きると決めたの―― 共に生きながら、今は遠く離れてしまった「わたし」と「ぼく」。

記憶狩りによって消滅が静かにすすむ島の生活。人は何をなくしたのかさえ思い出せない。

どうやら俺の人生には、今後何一つ良いことがないらしい。寿命の“査定価格”が一年につき一万円ぽっちだったのは、そのせいだ。

人が生まれながらに持つ純粋な哀しみ、生きることそのものの哀しみを心の奥から引き出すことが小説の役割りではないだろうか。

クラスでは目立たない存在の結佳。

夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。

小学四年生のぼくが住む郊外の町に突然ペンギンたちが現れた。

大阪の下町で生まれ小説家を目指し上京した夏子。38歳の頃、自分の子どもに会いたいと思い始める。

生前の罪により、輪廻のサイクルから外されたぼくの魂。だが天使業界の抽選にあたり、再挑戦のチャンスを得た。

林ちひろは、中学3年生。

夫も食べてもらえると喜ぶと思うんで――死んだ人間を食べる新たな葬式を描く表題作のほか、村田沙耶香自身がセレクトした、脳そのものを揺さぶる12篇。

「お探し物は、本ですか？仕事ですか？人生ですか？」。仕事や人生に行き詰まりを感じている５人が訪れた、町の小さな図書室。

17人の書き手が自らの「身体」と向き合って記す、生きるためのリレーエッセイ 私の身体はほんとうに私のもの? 私の身体はどんな視線にさらされ、どのように規定され、内面化されているのか。

20世紀初頭のロンドン。気はいいが少しおつむのゆるい金持ち青年バーティには、厄介事が盛りだくさん。

長く続いた戦争のため、放射能灰に汚染され廃墟と化した地球。生き残ったものの中には異星に安住の地を求めるものも多い。

あの日、あんなことをしなければ…。心ならずも親友を裏切ってしまった中学生さくら。

小学生の百音と統理はふたり暮らし。朝になると同じマンションに住む路有が遊びにきて、三人でご飯を食べる。

羊飼いの少年サンチャゴは、アンダルシアの平原からエジプトのピラミッドに向けて旅に出た。

3年ごとに開催される芳ヶ江国際ピアノコンクール。

ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。

その愛は、あまりにも切ない。 正しさに縛られ、愛に呪われ、それでもわたしたちは生きていく。

自分で殺した女の子に恋をするなんて、どうかしている。 「私、死んじゃいました。

十七歳の夏、親もとを出て「黄色い家」に集った少女たちは、生きていくためにカード犯罪の出し子というシノギに手を染める。

長年勤めた病院を辞めた元看護師、売れないながらも夢を諦めきれない芸人、娘や妻との関係の変化に寂しさを抱える二輪自動車整備士、親から離れて早く自立したいと願う女子高生、仕事が順調になるにつれ家族とのバランスに悩むアクセサリー作家。

「突然のメッセージで驚かれたことと思います。失礼をお許しください」―送信した相手は、かつての恋人。

「むらさきのスカートの女」と呼ばれる女性が気になって仕方のない〈わたし〉は、彼女と「ともだち」になるために、自分と同じ職場で彼女が働きだすよう誘導し……。

娘の緑子を連れて大阪から上京してきた、「わたし」の姉でありホステスの巻子。

検事を辞して弁護士に転身した佐方貞人のもとに殺人事件の弁護依頼が舞い込む。

神奈川県川崎市で、14歳の女子中学生・冬野ネガが、同級生の春日井のぞみを殺害した容疑で逮捕された。

専業主婦の小夜子は、ベンチャー企業の女社長、葵にスカウトされ、ハウスクリーニングの仕事を始めるが…。

「美」は魔物―。

空港のバーで離陸までの時間をつぶしていたテッドは、見知らぬ美女リリーに出会う。

恋人に騙され、仕事もお金も居場所さえも失った２５歳のエミリ。

病弱で生意気な美少女つぐみ。

逆境にもめげず簡単ではない現実に立ち向かい非日常的な出来事に巻き込まれながらもアンハッピーな展開を乗り越え僕たちは逆転する!無上の短編5編(書き下ろし3編)を収録。

その日、兄とあたしは、必死に山を登っていた。見つけたくない「あるもの」を見つけてしまうために。

藤子・F・不二雄を「先生」と呼び、その作品を愛する父が失踪して5年。

椎名きさらは小学五年生。

古書店『無窮堂』の若き当主、真

お前は、運命を信じるか?東京を仕事場にする天才スリ師。彼のターゲットはわかりやすい裕福者たち。

「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。

“本の町”読長町に住み、書物の蒐集家を曾祖父に持つ高校生の深冬。