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Tetchy さんのレビュー一覧
Tetchyさんのページへレビュー数1418件
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期待していたのだが、十分応えてはくれなかった。
探偵リュウ・アーチャー初登場ということで、「質問者」という位置付けはある程度規定されているものの、どうも三文役者に成り下がっている印象が濃い。人の間の渡り方がどうにも不器用で、未熟である。 もしかしたら作者は今後のシリーズを見込んでそんな設定にしたのかもしれないが。またプロットが平板で落ち着くであろう場所に落ち着いたという感じ。 う~ん、残念。 |
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求めていたのが違った。泡坂には、こんな浅薄な恋愛物語を描いて欲しくなかった。
一筋縄ではいかない恋もある。外国や都会を舞台にそんな物語を示したかったのだろう。しかしその一点に拘泥するあまり、物語を構成する人物たちに血が通っていない。 プロットはあるがストーリーがない、そんな感じだ。 ただ唯一、最後の一編「裸の真波」は「ゆきなだれ」や「蔭桔梗」に通ずる味があり、静かな春の温かみを感じさせる余韻を残してくれた。 |
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大傑作『11枚のとらんぷ』でもそうだが、奇術をミステリに絡ませた泡坂作品は、やはり物語自体に躍動感があって、しかも形式美に溢れている。
今回7作品中、表題作が最も優れていた。そのあまりにもシンプルな題名から連想される内容は、正に連想通りの展開を見せるのだが、結末はG・K・チェスタトンばりの逆説で鮮やかに決めてみせる。 あとは「虚像実像」の犯人消失ネタも捨て難いが、これはある程度の水準の奇術の知識が必要なのが残念な所だった。 |
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睡魔との闘い、それと5つの家族が物語を形成する設定で頭の中で始終混乱することが多かったが、終盤の残り130ページ余りでどんでん返しを繰り返しながら明確に物語が収束するその手際は、やはり巨匠の業故である。
今回は登場人物それぞれの思い込みが微妙なバランスを維持し、今日にまでに至り、アーチャーをして、もはや本来の任務は終えたのだから真相はそのままにしておいた方がよいのかと云わしめたほど。 そして恐るべしは母親の息子への記憶の刷り込み。これに尽きる。 |
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これはもはやミステリではなく普通小説だろう。
しかし構成は巧みである。狂える母、モブサを設定した所でこの小説は勝ったも同然である。この母の存在があったからこそ、到底起こりえない出来事がごく自然に流れとして滑り込んでくる。 そこから揺れ動く人々の心模様。そしてテレンス・ウォンドという小技が実に最後の最後で、絶妙な形で効いてくる。心情的にはこの小心者に勝利の美酒を与えたかったのだが。 しかし珍しく実に爽やかな読後感だった。 |
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読み始めてから200ページ辺りまでは前六作までに強いられた状況理解の困難さが全くなく、加速する物語に狂喜していたが、それ以降中だるみを憶え、そのまま終末を迎えたような感じだ。
犯人は予想外ではあるが真相は半ばで自らが仮説した通り。そのせいで物語に失速感を感じたのかもしれない。 人前では現実を直視しない素封家として振舞っていた彼女が実は常に過酷な現実に対峙せざるを得なかったために起こった憎悪が招いた悲劇。嗚呼、痛々しい。 |
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内容は純本格、文体はハードボイルド調と、実に島田荘司らしい仕上りになっている。
今回の目玉は2つ。 まずは吉敷物とは思えぬほどの超絶技巧を凝らした大トリックの殺人。とは云え、トリックの内容は後の御手洗物を読んでいる身にとっては十分予想のつくもの。ただそれを吉敷が解くというのが珍しい。 2点目はやや没個性的だった吉敷の個性、存在感がいつにも増して顕著だったこと。通子の存在が不屈の精神を幾度となく蘇らせ、熱い魂と言葉を持った存在にまで押し上げている。 |
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実家、列車内と、凡そ読書するには劣悪な環境の中、また父親の危篤とそれによる心労とで、最早、読書とは呼べない、書かれた活字だけを追うことも屡だったそんな中、頭に入っていないと思いながら最後で明かされる真相がピタピタと頭の中で当て嵌まっていくというその作者の手腕にただひたすら平伏。
今回は本当に作者に対して申し訳ないと思った。 ただ題名は、その内容とあまり合致していないのでは? |
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P.D.ジェイムズにしては全く異色の、子供の生まれない未来の地球を舞台にした物語。何故子供が生まれないかの謎を解明するとか、その設定でしか成立し得ない事件の解明というようなシチュエーション型ミステリではなく、あくまで世界を設定した上で繰り広げられるヒューマン・ドラマを描いている。
迎える結末はこういった設定で容易に予想されるものであるが、ジェイムズが敢えてこのような母性に満ちた物語を紡いだことに興味を覚える。 |
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押し寄せる睡魔に半ば勝ち、半ば負けながらの読書だったため、ほとんどストーリーを把握しないまま読み進んでいったにも拘らず、最後の章でバタバタ、と不明だったピースが嵌め込まれ、全体像が浮かび上がる所が凄い。
今回は終わってみれば実はサイコ・サスペンスでロス・マクドナルドの心理学への興趣が色濃く表れている。 また、最後の章の盲目の母の何気ない一幕で、無力だと思われていた存在が実は絶大なる支配力を持っていたという畏怖を表す所もまた印象深い。 |
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ウェクスフォードを外側から描く、ウェクスフォード物の異色作でどちらかと云えばノン・シリーズに近い。しかし、ウェクスフォードが登場人物の目にどのように映っているのかが垣間見れて面白かった。これほど影響力の強い人物だとは思わなかった。
主人公の牧師、アーチェリーをして「あの男は神の権化」とまで云わしめるのは過剰なる賛辞だと思うが。結局、「事実」はなんら変わらなかった。ただ「真実」が無機質な人間2人を変えた。 レンデル物では珍しい、爽やかな読後感だ。 |
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浅い、と思った。
ブラッドショーの苦悩、トム・マギーの苦渋、ドロシー・マギーの狂気、そのどれもが響かなかった。 最後の4ページで一気呵成に暴かれる真相に唖然とさせられたせいで、まだ頭の中が整理されていないのかもしれない。だが結末で憶えた戦慄は『象牙色の嘲笑』の方が上。 今回はドロシー・マギーの失踪に始まった人物相関が完全に遊離してしまったのが残念。マクドナルドは、ロイ・ブラッドショーをテリー・レノックスにしたかったのかもしれない。 |
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今回も彼は完膚なきまでに質問する。読んでいるこちらが当惑するほどに、個人の領域に立入る。そのあまりある執拗さは、終いには犯人が「なぜきみはおれを苦しめるのだ」と身震いさせられるくらいまでにもなる。
だがしかし、そこまで行いながらも彼の影は見えない。犯人は最後、足枷のように影を引き摺るのに、彼には影すら見えない。「質問者」である以上に「傍観者」である所以だ。 真相は戦慄を憶えた。しかし、未だに謎なのは、被害者は何を「嘲笑」っていたのだろうか? |
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古き良き時代の冒険活劇を匂わせ、また主人公を活発で美しい女性に設定したことで、その万能さもあざとく映らず、快い。それは自分に女性崇拝の精神が宿っていることに起因するのかもしれないが…。
採点は微妙だ。元来ならば五ツ星クラスだが、新訳版であったがための読みやすさ、さらに上記にある理由、それと二世紀を隔てて各国から信じ難い遺言を便りに再開するという展開が私の胸を打った。そういった理由で七ツ星とさせていただく。 |
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