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Tetchy さんのレビュー一覧
Tetchyさんのページへレビュー数1418件
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マンディ・プライスという従来の作者の作品にはいなかった現代的な娘を要所要所に活用する事で、何か軽快なテンポのいいストーリー展開が生まれ、非常に愉しく読み進めることが出来た。
とは云え、改行の少ない文字のぎっしり詰まった文章は相変わらずだし、最後の最後に来て救済のない結末を持ってくる所などは、ああ、やはりP.D.ジェイムズか、と嘆息してしまった。 しかし、ある種吹っ切れた感があるのは確か。『策謀と欲望』、『死の味』に比べると遥かに読みやすく、しかも解りやすい。当時の自らの読書力の無さが最大の要因であろうが、原子力発電所の世界なぞ、およそP.D.ジェイムズに似つかわしくない世界を扱った点がまずかったように思える。 やはり今回のように出版業界のような勝手知ったる世界を舞台に扱う方が俄然物語に勢いがついてくる。本当に今回は面白かった。 |
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前作『推定無罪』で主人公サビッチの弁護人として快刀乱麻の活躍ぶりを見せたスターンが今回の主人公だが、前作とは打って変わって妻の自殺で始まる冒頭から肉欲に溺れていく凋落ぶり、はたまた長男ピーターに鼻で笑われるダメ親父ぶりをこれでもかこれでもかと見せつけ、結局スターンも“人”に過ぎないのだなと思わせる。
人間ドラマとして本書は最高の部類に入るだろう。それは人物描写の緻密性、物語としての結構を見ても間違いない。 しかし、私は今回求めたのは“切れ味”だった。前作『推定無罪』に九ツ星を付けさせる原動力となったスターンの、弁護士としてのそれ、物語としてのそれである。 ディクスンの、スターンに対する羨望は中盤で判った。だからその点では胸を打つものは無かった。ただ、解説の北上次郎の云うように、私が初老の域に達した時に本書を読み返せばまた全く違った感慨を抱き、採点も(良い方向に)変わるであろうことは想像に難くない。 |
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光文社による裏表紙の紹介文によると本書は「異色の旅行推理集」となっている。確かに“異色”である。収録された3編全てにおいて主人公は名前すらない男で、しかも「早見優」、「カトリーヌ・ドヌーブ」といった実在の人物が出てくるあたり、実話のような錯覚を憶える。
だが“推理集”というのは些か大袈裟だろう。確かに各編において謎はある。しかし本書は異国での恋を主体にした短編集であると私は認識した。恋愛にはある程度謎はつきものである。ここに収められている謎はその範疇を超えるものではないし、ミステリへと昇華しているものでもない。従って私は「異色の旅行恋愛集」と呼びたい。 翻って内容について述べると、ほとんど実体験に基づいたエッセイに近く、それに現地女性との交流を絡めた恋愛短編集といった感。3編全てに共通するのは『異邦の騎士』に脈絡するある種の喪失感。この作家、根っからのロマンティストらしい。 |
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これは掛け値なしの本物である。上手く云えないが、登場人物全てに嘘が無い。要するに、作り物めいた感じがしないのだ。
特に現職検事補であった作者の最大の長所を存分に活かした法廷劇は史上最高の知的ゲームであり、今までシドニー・シェルダンの諸作で読んだそれが所詮素人の手になるものでしかない事をむざむざと見せつけられた。正に圧巻である。 ただ惜しむらくは、ストーリー全体に通底する過度なまでのペシミズム、重厚というより陰鬱である。私はどうも苦手だった。 しかし次作が非常に楽しみである。 |
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この短編集を読んだ限りでは、ロスマクは短編を書けない作家であると云える。意外性を無理矢理でも持たせようとする強引さが目に余る。プロット重視の作家と云われている、又は自分でも云っている、にしては何ともお粗末である。
書かれた年代が現時点では不明だが、このラフさは恐らくアーチャー初期のものに類すると思われる。 あと外的要因として、大阪への旅行を間に挟んだのも大きな原因だろう。その点は自分が甘かったと云わざるを得ない。 教訓:旅先の読書はやるだけムダ。 |
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短編集とは云えど、いまや絶版となった角川文庫の短編集から選りすぐりを選んで編まれた物で、全くさらの作品集でないところが残念。前半7編がノン・シリーズ物で後半4編がウェクスフォード物。率直に云えば、順番は逆の方が読後感は良かったように思うし、評価も星1つ上がっただろう。
ウェクスフォード物については措くとして、ノン・シリーズ物について云うと、長編におけるそれは、砂の一粒一粒までを描くような木目細やかな心理描写を幾度となく畳み掛ける“重量感”があり、時にはそのために辟易してしまう所があるが短編のそれはほぼ20ページ前後の長さに集約された“切れ味”が際立っており、心地良い。久々にレンデルを読むならば長編だろうが、レンデル漬けになるとこういった短編が息抜きとなってちょうどいい。 |
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ハードボイルドのプロトタイプの型にかっちり嵌め込んで作られた印象が強く、従って妙に何も残らなかった。文章は今までの一連のロス・マク作品の中では最も読みやすく、あれよあれよという間に事が進んでいった。事件の手掛かりが容易に手に入るのも気になったし、登場人物各々があまりに類型的過ぎた(トニー・トーレスは若干異なっていたが)。
思うに、ハードボイルドは読みやすくてはいけない文学ではなかろうか。癖のある文書の裏側に潜む作者の主張を一字一字丹念に読み上げることで理解してこそ、探偵の生き様に味わいが増すのではなかろうか。 |
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これはもはやミステリではない。
ヴァイン名義の『アスタの日記』、『長い夜の果てに』と同様、物語は主人公の回想という形で語られるが、前2作において物語の牽引力となる謎については最も希薄、いや寧ろ全く無いと云ってもよいだろう。 作中幾度となく引合いに出されるように、これはレンデル流『千夜一夜物語』なのだ。シュローヴ館という建物に魅了された女の破滅への道のりと、その娘の、母という繭からの脱皮と自我の覚醒とを書いた。 今回のラストは実にレンデルらしくなくて清々しい。ショーンよ、御前は真底、男だったゾ。 |
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レンデルが、ヴァインとして描く作品はハッピーエンドが多い(まだ2作しか読んでないが)。しかし、今回は重厚かつ陰鬱で北方の凍てつく寒さのイメージが物語全体を覆っていて、なかなかノレなかった。
正味560ページの長い物語の中で、延々謎として設定されていた諸々の事象が最後に何とも呆気なく明かされる辺り、結局今までの物語は何だったの?と呆れてしまった。 『アスタの日記』の、最後のこの上なく温かみのあるシーンに匹敵するものを本作でも盛り込んで欲しかった。 |
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ひたすら脱帽である。
よくもまあ、ここまで精緻に“歴史”を紡ぎ上げたものだ。実際の歴史的事実を織り交ぜ―しかも史実を織り交ぜた事が紛失した日記の一部のキーとなっている!―、また実際にそこにあるかのような細かい描写。強烈な個性を放つアスタを筆頭に一読忘れ難い人々。 そのあまりの詳細さに疲弊し、また睡魔との格闘を幾度となく繰り返したが、今はただ最後まで読み通せ、また素晴らしい幕切れに感無量である。 要した日数15日。読んだ内容86年分。 |
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最盛期を迎える前の作品ということもあってか、結末の真相がインパクトに欠ける。意外と云えば意外だが衝撃は皆無に等しい。
ストーリーが流れるままに過ぎて行き、各々の人物像の性格が掴みにくく、透明度が高過ぎて浸透してこなかった。 アーチャーは若く、ラストシーンで警察署長と殴り合いを演じるほどの青さも見せるが、マーロウの影を引き摺っている感は多々生じた。 若さゆえのニヒリズムがアーチャーをアーチャー未満にしている。 今度は睡魔に邪魔されないよう、臨みたいものだ。 |
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少年漫画のような、とにかくこういう風になっているんだから全て受け入れてくれぃとでも云っているぐらいのとんでもなく御都合主義な小説だった。
発端からして、祖母には予知能力があるのだから、島に行けと云うのなら行こうという展開には参った! その後も殺人事件が4つ起きても警察が介入するのは最初に発覚した1件のみ!しかも主人公はなぜかやたらとモテる! あまりに現実からかけ離れている。 唯一現実的だったのは最後の美波の独白。これは名探偵のパラドックスとしても面白かった。 |
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ミステリとしての骨格はごく普通で謎はあるが、その一点のみで読者の興味を魅いていくものではない。寧ろ明らかにわざとらしい演出で犯人を露呈してしまっているだけだ。
この本の魅力は前作『古本屋探偵の事件簿』同様、古書に纏わる人達の各々の個性を軸にしたエピソードにあるのだ。 本に歴史を見出す者や純然たる収集欲を満足させる者、又はそういった人達を金蔓に単なる金の成る木として扱う者。 前作のインパクトよりは劣るものの、やはり捨て難い一品。 |
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呆然。
真相が語られる最終章20ページは、途轍もない内容だった。しかもそれが理解できる、いや共感できるが故に恐ろしい。 なんと表現すればいいのだろうか、論理などという左脳的驚愕ではなく、狂おしいほどの愛情という情念の、右脳的驚愕。 私を含め、誰もが持っているであろう歪んだ心の部分、心の奥底に潜む獣性を引き摺り出された感じだ。 死にたいほどの幸福ではなく、死んでもいいという幸福。そこに美しさはなく、ただ純粋さがあるのみ。だからこそ温かく見守れるのか…。 |
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