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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数745件
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ディーヴァーの作品はボリュームがあって、手に取るのを躊躇してしまうのですが、やはり読むと面白いですね。
事件のテンポはスピーディーだし、緊張感あるわ、最後は驚きの真相の安定感。 シリーズとしてはこの後の作品の評判がさらに良くなる為、ひとまず順番に3作目を読書でした。話が繋がっているので順番は大事です。 本作で思う所としては、探偵役のリンカーン・ライムの凄さがない。 前作までの四肢麻痺なのに圧倒的な知力で他を圧倒する力強さの良さが今回感じられず、苦悩や挫折、弱々しさを感じました。 ストーリー進行も最後はどんでん返しがあるだろうと身構えて読んでしまった為、現在の進行に対するライムの推理が間違っている気にもなり、ライムどうしちゃったんだよ……と思う心境でした。まぁ、今作はライムより、サックスが主人公で輝いてました。 相変わらずオチが読めない真相で凄いですね。 ただ、今作はやられた!と言う一撃ではなくて、複雑で言葉がでない気持ちでした。蜂多すぎです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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1作目のリライトは好み。3作目の評判が良い為、間の2作目を読書…。
が、これは訳が分からず正直面白くなかった。 注意事項として、まず本書『リビジョン』は単品作品としては楽しめません。 1作目『リライト』を読んでいる人が前提であり、扱うタイムパラドックスの話から、1作目の舞台裏でこんな事がありましたと、前作に助けを借りてしまっている点や、おそらく3作目の為の設定作りを感じる所が本書単品で楽しめず、橋渡し作品な印象です。 過去が変われば未来が変わる。すなわち、未来を変える為に過去を変える。時間作品の設定を理詰めで展開するのですが、こだわる点と大雑把で突如現れる設定が混ざり、ルールが崩壊してしまっているのが残念です。ミステリとしてもSFとしても何だか分かりませんでした。 3作目も購入済みなので、この破綻した内容が次作に、どう活きるのか見てみようと思います。 |
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いつもの癖で話題本は敬遠してしまっていたのですが……読んでみると面白かった。
主人公は無職男性。昔おばあちゃんに酷く叱られたトラウマにより本が読めない。本を読めていたらどんな人生を歩んでいたのだろうと思う今日このごろ。おばあちゃんが亡くなり、遺品の本を売りに行く為、ビブリア古書堂に訪れる――。 キャラクター作りやその人達の役割が綺麗に繋がるな~という印象でした。 本にめちゃくちゃ詳しい女店長も魅力的で、人見知りと本を語る時のギャップが面白い。また、病院で入院中で行動不可なのに、安楽椅子探偵ばりに聞いた話から、古書のエピソードにちなんだ日常の謎を推理し解決する名推理っぷり。ミステリ要素以外にも本が読めない男性との出会いから、仕事仲間になり、会話も生まれて・・と、男女の青春物語としても綺麗に楽しめました。 太宰治や夏目漱石などの読書経験は、有名どころを国語の教科書レベルで読んだ程度だったので、この手に詳しい人はもっと楽しめる要素があるのかなと思います。まったくの射程外だったので各エピソードについては新鮮で楽しめました。 刺激的な要素はないのですが、たまには落ち着いて楽しむのも良いかも。と思える温かい綺麗な作品でした。 |
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凄く好みで面白かった。テンションあがります。ライトノベルテイストの表紙で敬遠している読者がいそうな掘り出し物作品。
本年度末の各誌ランキングにどう影響するか気になります。☆9+好み補正で。 過去の事件を孤島で再検証する話は『七人の証人』を思い出したり、賞金獲得の件は『インシテミル』、裁判討論は『ダンガンロンパ』や『逆転裁判』などのノリを感じ……というか好きな作品の要素を個人的に感じ取っていっただけなのですが、色々感じ取れるぐらいミステリの要素が豊富です。 孤島での1日は、事件概要→自由時間→裁判開始→議論→判決。と、ゲームシナリオの様な謎解き展開でテンポよく進みます。が、軽いだけでなく、ストーリーの根底には、裁判員制度、冤罪、量刑や罪の意識、死刑問題などのテーマがしっかりと根を張っています。 加害者・被害者それぞれの視点からの事件の見つめ方。法廷で推理した事件模様が真実であるとも限らない。視点を変えるだけで変化する事件の全貌。口達者で皆を説得すれば有罪・無罪が変化する特性。そもそもの裁判員制度の意味など。社会へのメッセージ性も高いのが凄い。 著者は元警察官であり、あとがきで事件の被害者と加害者両方に接していたエピソードが納得で、被害者や冤罪者の虚無感や異常心理も魅力でした。 いきなり急展開する真相解明やちょっと悪ノリした雰囲気は好みではない人が多いかもしれませんし、リアリティや推理の粗さを気にする人もいると思われ万人には薦め辛い。ただ、私の場合は細かい所は突かず、読んでいて楽しかった点。テーマがしっかりしている点。意外でインパクトがある真相。ラストのスッキリ具合。読み返すと初読と印象が変わる伏線の数々。などを踏まえ、殿堂入り作品でした。サクっと読めるゲーム系ミステリが好きでしたら、とてもオススメです。 各事件の感想はネタバレで。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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シリーズ2作目。死体発見現場の虫の生体環境を推理して真相へ近づく流れが前作に劣らず面白い。
貸倉庫で発見された身元不明の腐乱死体。手がかりが皆無で捜査は混迷する。が、現場から見つかった虫の一部から捜査が進展。昆虫学の必要性がとても感じられる点が見所です。 キャラ立ちも楽しく、岩楯刑事&学者の赤堀との関係が今後も気になりますし、新キャラの月縞も個性的で良い味が出ていて、今作では一気に成長も感じさせる物語になっている。 科学捜査で警察小説なのですが、地味ではなく、個性的でとても面白いシリーズだと思います。 前作と比べると、虫の活用具合が前半に集中していて、後半は違う物語になった所は、法医昆虫学をもっと知りたかった私としては少し物足りなさを感じました。が、着地点がまったく予想できない所は凄いので、これはこれで好み。 続編が出てほしいシリーズです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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たまには本屋で話題本を衝動買い。帯に書いてあった『ラストは絶対予測不能』『シャマラン監督映像化』に釣られて購入です。元々は電子書籍で、米Amazonでは5星が700越えなど話題になってる模様。まぁそんなの気にせず『シャマラン監督が興味を持った』ところに自分は意識が向くわけでした。この監督の作品、何故かよく見ちゃうので。。
話は、主人公が目を覚ますと、何故ここにいるのか?と記憶をなくした状態からスタート。なんだか具合も悪いし怪我をしている気がする。そういえば交通事故にあったような記憶がする中、近くに見える街へ足を運ぶ。街の人々と主人公の会話が食い違う。何かおかしい。そして何故か街から出られない・・・。 記憶喪失の主人公で、閉ざされた街が舞台である、状況不明系のストーリーです。 主人公の話や街の人々の対応、どれが真実なのか。それともすべて虚偽なのか?定番の疑惑を考えながら読書なのですが個人的に刺激や魅惑の要素がなく退屈でした。それでも終盤に差し掛かる頃にはやっと真相がまとまっていき、あー…本当にシャマラン監督の作品にありそうで好みそうな内容だった。と思う次第でした。 なんというか、表面は好き勝手自由だとしても、必ず根底にあるのは人を思う愛があるというか、そういう作品。 他レビューが作品の中身には触れられず映画寄りな感想になるのもわかる気がします。内容はネタバレになる為避けられている。文章や表現を味わう文学作品でもない。ただ、映像になった時の姿が目に浮かびやすいからです。悪い意味では既視感がとてもある作品でありますけどね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これは面白かった。斬新で知的好奇心をくすぐられました。法医昆虫学を扱ったミステリ。
科学捜査系の小説で、焼死体を解剖すると中の内臓は荒らされ、異様なウジの塊が見つかる――。 前半の導入から虫達のウネウネと気持ち悪い雰囲気を醸し出して敬遠されそうですが、この虫が何故こういう成長を遂げているのか?現場の虫の生態系に変化がないか?など、虫を基点に推理を進めていくのが斬新で、気持ち悪いよりも虫から導かれる科学捜査の流れに興味津々で楽しめました。 また、虫の気持ち悪い雰囲気を払拭するかの如く、捜査依頼された昆虫学者が底抜けに明るい性格の女性に設定されているのも良いです。 虫が大好きで生態系を楽しく解説してくれたり、おもむろに網で虫を採集しだすわと、変人ぷりも活き活きしてます。警察が、うげーっこの人は住んでる世界が違う!というやり取りがユーモア溢れて楽しめました。 TVドラマでも楽しめそうだなーと思いましたが、虫の映像がちょっとNGか...。 類似作品が思い浮かばない斬新な小説で面白かった。次作も楽しみ。 |
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文芸+ミステリ。
子供にとっての夏休みというのは、ある一定期間での出会いと別れがあり、青春小説の定番舞台。六甲の別荘にて男の子2人が出会った女の子とのエピソードから始まり、ミステリらしからぬ雰囲気のまま物語が始まります。 著者の本は初めてです。読んでいて、あぁ文章が綺麗だなー。表現が丁寧だなーと、国語の教科書を読んでいる気持ちになり文芸を味わいます。ミステリらしい謎は全く感じない読書でした。 時代は変わり、戦争前の昭和の物語に入ると登場する人物達がカッコよく魅力的。ベルリンで出会った謎の女性とのエピソード。時代を歩んで社を育てた翁の貫録のある行動やセリフ。この過去エピソードがとても楽しかったです。 そうこうするうちに物語は終盤に至り、あれ?これミステリだったの?どういうことだ?・・・あっ!となりました。 Amazonレビューなどでは「だまされた!」と言う表現がありますが、そういうトリック系の話ではなくて、表向きは文芸書。物語の裏側に謎がある系のミステリです。なのでミステリを期待すると退屈です。文芸書を読む感じで物語に浸る感覚で手に取ると良いと思いました。 物語の背景にミステリが存在する作品は好きな方なのですが、本作は、あまり乗り気になれませんでした。 文学にゆったり触れるより、刺激やワクワク感が好みだからかもしません。 あと、倉沢家の登場人物の把握に混乱して感動を弱めた気もします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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横須賀米軍基地の内側と外側が舞台の本格ミステリ。
日本でいながらアメリカの法律が適用される米軍基地の特殊な舞台。 基地の内側で発見された惨殺死体と基地の外側で発見された大量の血痕の関連性の謎から始まる『基地の密室』という問題が新鮮でした。 基地の内側と外側、事件現場はどちらなのか?被害者or犯人はどうやって出入りしたのか? 密室殺人でのテーマが基地の規模で行われている面白さがあり、さらに法律の違いから、基地の内側の米軍と外側の日本警察とで情報共有の制限が生まれ、今ある手がかりで事件を推理するロジカルな面も楽しめます。 本書を読む前は、警察小説のサスペンス的な本なのかと思っていたのですが、上記の密室問題。手がかりを得るための推理考察。最後は関係者を集めての推理披露の解決編。などなど、好きな様式の本格ミステリを味わえました。 また、作品の中に組み込まれているテーマや話題など無駄なく関連していたり、手がかりの散りばめ方が綺麗で読み直すと発見もある。かなり整ってます。 雑誌のランキングからは外れている作品なのですが、見落とされて読まれていないのでは?と思う気がするぐらい、よく出来ている作品だと思います。 好き嫌い分かれそうな要素もありますが、とてもよかったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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さらっとした学園ミステリ。人が死なない作品でもあります。
ミステリとしては謎や手がかりの魅力が弱く伏線と言った要素もないので物足りなさを感じました。 タイトルとなる『退出ゲーム』は即興演劇の頭脳戦。行動やセリフをその場で考え、巧く相手を出し抜いて舞台から退場できれば勝ちと言うもの。新鮮な設定で面白かったのですが、読中に条件が変化して行き、解決へ向けての展開に置いてけぼりにされてしまった印象でした。作品の背景は良かったです。 2話目の『クロスキューブ』は好み。遺品となる6面が白のルービックキューブの謎は、登場人物とともに何故こんなものが?と共感しながらストーリーが進行していったので最後の解決まで楽しめました。 学園物としてはキャラが明るくて可愛らしいです。特にハルチカの千夏が元気よいのが好感でした。 その明るさの影にただの日常の謎ではなく、少しテーマに毒っ気を加えている所も個性的で魅力でした。 |
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読み切った。。。何だかよく判らないままも、最後は不思議なエネルギーをもらって、凄かったぜ!!とテンション上がっちゃうような作品。
文庫版1500ページ。『煙か土か食い物』のように改行がなく、ひたすら文章が襲いかかってくる。それでいて内容は、帯にある『あらゆるジャンルを越境した…』の通り、ミステリをベースにSFやら哲学やらが、ぐちゃぐちゃに絡んできて、もうわけわからない・・・。なんだけど、最後まで読めちゃう文章作りが不思議で面白い。5,6冊ぐらい読んだ気分のボリュームでした。 読書前に本書は現代の奇書みたいな話を知っていたので、その感覚を踏まえて読むと、大分昔に読んだ奇書の1つ『黒死館殺人事件』を思い出しました。あの作品は、いきなり紋章学やら医学やらおかしな推理が始まって内容が把握できなくて、さらに言葉も古いからさっぱり頭に入らず眠くなった記憶がありました。が、本書は現代語なので、ちゃんと読めて分かりながら放り投げられる感覚が得られますので、奇書っぽいものを読みたい人には昔の作品より本書を薦められます。現代の奇書と誰が言ったか分かりませんが、的を射ていると思いました。 さて、表紙に書かれている女の子が探偵ディスコなのかと思いきや、探偵は30代男性のアメリカ人でハードボイルド寄り。手に取った時と最初にページをめくった時とでギャップを食らいましたが、この後の展開のインパクトを思い返すと軽いジャブにもなっていない些細な事。迷子探しの探偵が救出した女の子の梢の中に未来の梢の魂が入りこんで序盤から魂やら未来話やらで哲学やSFが展開して、その後のパインハウスを舞台に探偵達の推理合戦が開始。密室、暗号、見立て、などミステリの定番から星座や神話やらと衒学的に話が飛んでいきます。 話の整合性やらロジックなどは真面目に考えても仕様がない状態なので、探偵達が語る話を受けるがまま脳を刺激される印象で読み進めました。 なんといいますが、話の全貌やネタバレ的な事を仮に語ったとしても、その要所要所では本書を把握する事はできない作品です。 作品に触れて、四方八方に話が発散する中に、自身がどんな所に刺激を受けるかという文学的な作品で、どう表現したらいいか分からないぐらい、作者凄い。と思う次第です。 著者の中に『好き好き大好き超愛してる。』という作品があり、いろんな設定での愛の姿がありましたが、本書もディスコが梢を想う愛が根底に敷かれているように感じましたし、全部包み込んだ外側に作者の気持ちを感じました。 |
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タイトルや表紙の絵柄通り『不思議の国のアリス』をモチーフにしたミステリ。
アリスの世界観が活きていて、会話が噛み合わない独特の雰囲気が健在。 登場キャラクター達の会話の可笑しさにクスっときました。 夢の世界では不思議の国のアリスに登場するキャラクターになっており、その夢は登場人物達と共有されます。 夢と現実世界はリンクしていて、どちらかの世界で殺されると、本当に死んでしまいます。 ※最初の事件は夢の世界でハンプティ・ダンプティが塀から落とされ死亡。ハンプティ・ダンプティになった夢を見ていた人が現実世界で死亡する。 本書は、夢or現実で事件を起こしている犯人は誰なのか? と言う、謎から始まる特殊なミステリです。 現実世界と仮想世界がリンクする物語の定番要素である、誰がどのキャラクターなのか?の割り当てを感じながら読書をしようと思いましたが、会話主体の構成の中、不思議の国のアリスの世界観での噛み合わない会話に混乱してしまい、あまり事件は意識せず世界観に浸る感じで読みました。 最後の展開は好みが分かれる所だと思いますが、アリスの世界観と著者らしさを十分に感じる作品であると思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ほんわかすると言うか、感動的で、よかったなぁ。と、読後しみじみする作品でした。
書籍区分はミステリですが、恋模様や不思議な事がおきる広義のミステリ。中身は恋愛小説に近いです。 登場人物達が基本みんな良い人で、恋の邪魔に感じる所もそれぞれが前向きに行動している結果なだけなので、 何が起きていても基本的に嫌な気持ちにはならず、読んでいて気持ちが良かったです。 序盤は、万年筆の話が面白く、最近はPCや携帯で文字を打つので、ペンで文字を書く機会が減ったな…とか、 作中に出てくる万年筆を調べてみたら凄いオシャレで興味が沸いたりと、楽しみながら読みました。 香恵の初々しい恋模様や、伊吹先生のノートが良きメンターとして活用され成長していく流れなど、とても心地よい作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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日本の高齢化社会、介護問題を改めて突きつけられ、なんとも言えない気持ちになりました。
ミステリ要素は弱め。ただ、ミステリの形式を借りた社会派小説としては一級品です。 扱われている伏線も社会的なテーマの為に存在していると感じました。 裁判にかけられた犯人の供述から始まる冒頭。 犯人が行なった犯罪は、在宅介護に苦しむ家庭を探し出し、老体を自然死に見せかけて毒殺して周った事。 殺人=罪で悪い事だという人間的な感情がありますが、介護に苦しんだ家庭にとっては地獄の日々が終わり、救われた気持ちも芽生える事から、殺人が必ず悪ではない状況が生まれている問題を読者に投げかけます。 正義の立場である検事をキリスト教徒とし、度々現れる教えの扱いが凄い。 黄金律である、 『人にしてもらいたいと思う事は何でも、あなた方も人にしなさい』 この言葉の意味を本書の介護においてみた時、介護の苦しみを終わらせてほしいという希望を叶えた犯人の行動は正しかったのか?道徳的に考えさせられます。キリスト教徒の検事の葛藤が何とも言えませんでした。 犯人、キリスト教の検事、介護会社の社員、現場の介護スタッフ…。それぞれの視点から描く高齢化社会の問題。お金が無ければ安全地帯である老人ホームの施設に入るのも難しい。また介護者達の時間、金銭的、精神的なストレスなど、今は身に覚えなくても将来自分が高齢になった時、社会や家族はどうなるのか。とても考えさせられました。 誰が犯人なのか?と言ったミステリの下地はありますが、それを考える暇がない程、この本書の掲げているテーマは深いもの。 読後将来について不安を感じる後味は辛いですが、一読の価値はある作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これは面白かったです。
好みはあれど、児童や初心者も、ある程度のミステリ好きも楽しめそうな万人向けな作品だと思いました。 個性的で好みなので加点。 白雪姫をモチーフに、なんでも答える「魔法の鏡」が存在するファンタジーミステリ。 『鏡や鏡!真相を教えてちょうだいな』 と、鏡に聞けば、事件はどうで、動機はこうでと、絶対的な真実を教えてくれます。 まず、解答が先に提示されてしまう可笑しさがあります。 それでミステリとして楽しいのか?と言う点については、本作は工夫が凝らされていて、鏡を持つ女子中学生のママエの探偵業の設定が活きています。 依頼人から悩みを相談され、鏡で答えを聞いて、答えだけ依頼人に告げると、何でそんな事知っているの?実はグルだったの?と、真相は正しいのに、話の道筋が無い事で疑惑が生まれる悩みを抱えます。ここからミステリの面白さが生まれ、何故その真相に行き着いたかを導き出す所が、それまでの些細な出来事に深みが生まれ驚かされます。 よくあるミステリの、『事件発生→推理→真相』で真相がすごいと印象を受ける感想とは違い、『発生→真相→推理』の順序だてで、最後の推理に注目が集まり、過程や伏線に驚きを得るのが刺激的でした。 本書は、2部構成で上記の雰囲気が第1部。 読者が舞台の概要や登場人物達を把握した所で、悪い名探偵に鏡の存在がバレ、あらすじ通り命を狙われてしまいます。 第2部は、非現実の超アイテムの魔法の鏡と、超頭脳の悪役名探偵の事件模様に変わります。 漫画のデスノートをイメージすると伝わりやすいかもしれないですが、これがまた発想外で面白い。 入り込み易い周知の白雪姫のモチーフ。ミステリ要素、何でも知る事ができる鏡のアイテムなど、個性的な設定。 現実的な深みを求める人には合わないかも知れないですが、軽い雰囲気も好感触で読んでいて凄く楽しかったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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前作の『黄昏に眠る秋』に続く冬の2作目。シリーズ作品となっていますが、前後の関係性は殆どないので、今作から読んでも問題ないです。
冬の灯台、観光客がいない時期のひっそりとしたエーランド島。派手さがない情景や雰囲気と島の人々の模様を描く静かなミステリ。幽霊やら、日本のこっくりさんのような要素もでてきてオカルト色が強いです。とはいえ、ホラーや恐怖の派手さもなく、幽霊要素は雰囲気の1つに取り込まれている感じです。 私自身の記録の為にも感想を残しておきたい所なのですが、特徴的な派手さがないこの手の作品はどうやって感想を書いたら良いか悩む次第。 ここがいい、あれがいい。と言うのではなく全体的な雰囲気が神秘的で、読後良かったなと思う作品です。 静かな冬の空気感を味わう文学ミステリ。 いろいろな賞を受賞している本作ですが、日本の受賞作品で感じる、仕掛けや論理や推理展開とは違った評価が、海外ミステリで行なわれているんだと感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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キャラ立ちや設定がよくて事件も把握しやすい。読みやすい海外ミステリでした。
窓際族のように警察内の地下室に新設された部署へ追いやられてしまう主人公のカール。 未解決となった事件を再調査すると言った名目の部署ですが、1度は警察が組織で調べた事件であるのに、それを1人で再調査という無理難題、閑職もいい所。そんな中、アサドと名乗る1人の部下が得られるのですが、この変人がいいキャラしていて、日本の小説でよくある、警察+変人(探偵)のタッグのような感覚が馴染みやすく楽しめました。 作りが巧いのが、人物構成と同時平行して展開される、未解決事件の猟奇性。 現在→未解決事件の過去→現在→未解決事件の過去・・・ と交互に展開される話の中で、サブタイトルにある監禁された状況の緊迫感が与えられます。 緩急つけた話の構成は、最後まで読ませるリーダビリティがありました。 主人公カールの家族は?アサド何者だよ。今後の特捜部Qの活躍は? など、シリーズの次作を期待させる内容としても十分で、面白い本に出会えました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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2作目も満足。シリーズが楽しみになりました。
前作ファンの期待に答えるロジカルな推理が健在。前作は1本の傘。今作はモップとバケツの手がかりから真相を導き出していく思考錯誤は楽しいです。 警察が高校生に事件捜査を頼ったり、アニメオタクな探偵など、読者を選ぶ要素がありますが、私は金田一少年の事件簿系統の学園かつ本格物はとても好物なのでハマります。 11人の容疑者から犯人を特定していく流れについても、前作同様に推理の過程が丁寧。 ○○だから、数人一気に除外という荒削りな消去法はなく、1人1人丁寧に論理的に除外されていきます。 犯人が絞り込まれていく過程は読んでいて大興奮でした。 ただ正直な所、事件やトリックなど特出して印象に残るものではありませんでした。また、分単位で事件を検証する所に、そんなに正確な時間をみんな意識して行動しないよなぁ、と感じたり、本当にこれが唯一の解なのか?と思えたりとするのですが、 そんな細かい事は気にせず、なんか推理している様子が単純に楽しいと思える作品なのが好みです。 2作目だから水車館をもじった水族館についても、言葉だけではなく、ちゃんと水族館ならではの事件・動機であり、とても考えられていて面白かったです。 また、製本の見返しや、しおりひもも水族館ぽく青に染めてあり、色々とこだわりを感じました。 次回作も楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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海外物は異常な登場人物やバイオレンスなど、日本にはない刺激的な要素でスリルやサスペンスといった作品に出会う事が多いのですが、本書はそれらとは違う作品です。
非常に刺激がない。 秋から冬にかけての哀愁漂うシンミリした雰囲気。 メインの登場人物は老人でスピード感がでるアクションはなし。 ここら辺の感覚から好みに合わなかったり退屈に感じてしまうかもしれません。 単に私が中盤までページの進みが遅かっただけですが。。。 が、読み終わってみればミステリ文学といいますか、 作品に張られている伏線がミステリとしての面白さを感じ、 舞台のエーランド島の空気感やそこに住む人々の模様を味わえるよい作品でした。 読む前のオススメですが、 本書の舞台となる、『エーランド島』をGoogleの画像や地図検索で視覚的に見ておくと、より作品に入り込めます。 何かの手がかりというわけではないのでご安心を。 石灰岩の荒地や平野の何か物寂しい感じを一層引き立てると思います。 20年前に子供が行方不明になって悲壮感漂いながら暮らしていた母ユリア。 介護施設で暮らす80歳近いユリアの父 イェルロフ。 人生の終盤で、季節でいうところ冬の一歩手前と言うところ。 今頃になって何者かから子供の靴が届く。 子供は生きているのか?行方不明になった時、何が起きたのか? 現在と過去を繰り返すよくある構成の中で、読者は物語の真相を知っていきます。 読者は過去も見れるので、登場人物達より多い情報量で話を把握して行くわけですが、 ここがなんというか魅せ方が巧かったです。 途中まで面白さが分からなく読書が大変だった為、好みの点数はそんなに高くないです。 2作目以降は同じ舞台や登場人物で内容把握が容易らしいので、より楽しめそう。 続けて読んでみようと思います。 |
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