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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへ| 書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点6.61pt | ||||||||
レビュー数773件
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2024年度『このミステリーがすごい!』大賞の「文庫グランプリ」作品。
個人的には、ミステリーとしての内容や骨太さを考えると、大賞作品よりもこちらの作品の方が大賞だと思うレベルでした。タイトルや興味を惹かせるあらすじもよかったです。実際に読んでみても、文章はかなり読みやすくて、展開も素直に先が気になる作り。デビュー作としてはかなり完成度が高いなと感じました。 一方で、読んでいて少し引っかかったのはジャンルの振れ方でした。途中からホラーやSFに広がっていく展開は面白いと感じる部分もありつつ、やや唐突に感じて、「そういうオチか」と思ってしまったところもありました。こういう方向に振れるミステリー自体はあるので、試みとしては全然ありだと思うんですが、今回はそこに至る流れの納得感がもう少しほしかったな、という印象です。 なんとなく、角川ホラーが扱う内容の物語でした。そういう意味では宝島社のラインナップとして新鮮かも。そういう感覚を得た読後感でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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シリーズ3作目。シリーズ作品のため、1作目からの読書は必須です。
シリーズ通して減速することなく、今回も終始面白い。個人的にかなり楽しみにしているシリーズです。(☆8+好み補正) 作者があとがきで「ミステリーではなくラブコメ!」と語っている通り、本作はラブコメとして楽しむ作品。 ただし、ミステリー好きが惹かれる要素があるのも確かで、私もそこに強くハマっている一人です。 どんな要素かというと三角関係の恋愛模様における本音と建前、伝え方や考え方。さらに、題材となるボードゲームを比喩とした戦略や心理戦――相手に本性を悟らせない、本音の手札を見せない駆け引き。そうした要素がミステリー好きにも刺さり、ラブコメと重なって独特の面白さを生んでいます。 もちろんそれ以上にメインのラブコメは楽しさが健在で、会話のテンポやツッコミがとにかく軽快で楽しい。シリーズを通してセリフの一つひとつが丁寧に作られている印象があり、言葉選びひとつで心情や笑いのニュアンスが変わる巧さを感じます。今回は特にその良さが際立っていて、同時に“切なさ”の面でも印象的な巻でした。 3巻の内容は2巻の流れを強く受けているため詳細は伏せますが、前巻の展開をしっかり引き継ぎつつ、物語はさらに広がっています。前回の終わり方から早期完結もあり得るかと思いましたが、これはまだまだ続きそう。 ラブコメでありながら、各キャラクターの恋心を読者だけが俯瞰して見られる――その構造が、このシリーズの魅力だと改めて感じました。 この系統のライトノベルが好きな方には、とてもおすすめの作品です! ▼以下、ネタバレ感想 |
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ループもの×恋愛×青春小説という、自分にとっては大好物の組み合わせ。読後感も好みで、とても面白い作品でした。
物語は、不登校中の主人公・宇佐美栞が、中古のスマホに入っていた謎のアプリ『Origa』によって時間跳躍の力を得るところから始まる、ループものの作品です。 ループものの恋愛ストーリーは数多くありますが、まず本書でいいなと思ったのは、不登校の少女がループ体験を通して、少しずつ世界に慣れていく姿でした。学校や人間関係が苦手でも、「やり直せる」と思えば、ほんの少し勇気を出して、いつもとは違う行動を取ることができる。すると、意外と思い込みにすぎなかったことや、案外うまくいくこともある。そうして少しずつ成長していく彼女の姿が温かく、作品全体に流れる優しい雰囲気が心地よかったです。 そんな中で、学校一のモテ男・久慈池聖と縁ができるのですが、9月1日に登校すると、彼が8月31日の夜に必ず命を落としてしまうことがわかります。自殺らしいものの、その理由には思い当たる節がない。前日までは普通だったのに、なぜなのか。どうしてなのか。その死の理由を知るために過去へ戻る、という流れです。 ループものとしては、全体に緩やかで温かい空気感があり、難解さや硬派さはありません。青春小説における男女の想いに、ループ設定がうまく活用されていたと感じた作品でした。読後感もよい好みの一冊でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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電話のやりとりの会話文のみで構成された、連続狙撃事件の物語。
かなり面白い読書体験でした。会話文のみなのでスラスラと読み進められ、章の区切りも多いため、一息つきやすい構成になっています。 物語は、海外に住む男のもとへ若い警察官が電話をかけ、日本で起きている連続狙撃事件を伝えていく形で進みます。 電話先の相手は、安楽椅子探偵のように、与えられた情報から推理を述べていきます。 ただ、そもそもこの人物たちは何者なのか、そして序盤から何が起きているのかが謎に包まれており、先が気になる構成です。最初から最後まで惹き込まれる読書体験でした。 地の文はありませんが、事件概要を口頭で説明する形式のため、会話文だけでも読者が現場をイメージできるよう、情報が丁寧に語られています。そのため、読者自身が会話の断片から状況を組み立てていくような感覚があり、一般的なミステリーとは異なる没入感が味わえました。また、狙撃事件という題材上、銃に関するやや専門的な説明も多いですが、それも知的好奇心をくすぐる良い刺激で好みでした。 ミステリーとして、何か一発ネタや大きな仕掛けで驚かせるタイプではなく、徐々に物語の全貌が明らかになっていくサスペンス作品です。 予備知識がない状態で読むことで、展開の面白さがより際立つ作品だと思います。読み終えてみると、一つの物語としての完成度が非常に高く、強く印象に残りました。面白かったです。 |
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シリーズ第2弾。前作の続きの物語なので、1作目は必読です。
前作同様の面白さは健在で、軽めのホラーや幽霊要素、そして物語の根底にあるちょっといい話の人情物語が楽しめました。 最後はうるっとくるような読後感も好み。これも前作同様ですが、著者の持ち味であり、今後のシリーズ展開にも期待したくなります。 一方で、少し「あれ?」と思う点として、舞台となる雪中キャンプ。表紙や景色の雰囲気づくりとしては良いのですが、物語の要素としては『雪中キャンプ』である必要性はあまり感じませんでした。物語自体が面白いことを前提にした上での欲ですが、『雪中キャンプ』ならではの仕掛けや展開がもう少しあればよかったかなという気持ちです。とはいえ、ミステリー的な物語を繋げる伏線は丁寧で、「あの話がここに生きるのね」と感じる作りの巧妙さも楽しめました。 登場人物については、1作目から続く縁のある仲間たちの関係がいい感じですし、主人公ナツのキャラクターも一貫していて好み。 文章も読みやすく気軽に楽しめるため、今後のシリーズも引き続き楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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イクサガミシリーズ読了。
面白かったとも言えますし、長かったなと感じるのも正直な気持ち。ようやく結末までたどり着き、個人的には一段落といったところです。 個人的な本シリーズを振り返ると、2022年に1作目が発売された当初は続きものだと知らずに読んでしまい、ラストの「つづく」に少し戸惑いました。その後、三部作と知って「完結してからまとめて読もう」と思っていたところ、3冊目の発売時に4冊完結へ変更。さらに2025年にはNetflixでドラマ化(全6話)され、そちらで完結を見届けようと視聴したものの、ドラマ版もまた「つづく」。なかなか結末にたどり着けないシリーズ、という印象が強く残っていました。 という事で、今回ようやく完結。 振り返れば、個人的には1作目がいちばんワクワクして読めた印象です。 3~4作目では人物の背景や戦いがより描かれていきますが、展開はやや漫画的な必殺技バトル寄り。映像や漫画であれば迫力がありそうですが、小説として読むと少し内容が不明確で距離を感じる部分もありました。そして必殺技に明確な相性関係や三すくみ的な構造があるわけではないため、頭脳戦というよりは能力バトルの印象が強く、駆け引きの面白さはやや控えめ。それなら能力名や技の特性がもう少し分かりやすく整理されていれば、より読みやすくなっただろうなと感じます。名称は雰囲気作りによせているのでそれはそれで好みなのですが、読み辛さと把握のし辛さの方を感じました。強さの表現を技の特性で省略している点があまり好みではなかったという次第でした。 一方で、ドラマチックな人間の心情を軸に戦闘を描いている点は良かったと思います。 蟲毒の結末やエンディングについては、落ち着くところに落ち着いた印象。デスゲームの背景にも納得感がありました。一方で、キャラクターたちの結末には少し寂しさが残る読後感でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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時代小説×デスゲームのシリーズ3作目。前作は必読。全4巻構成です。
実在する人物も絡み、物語に一層の緊張感が加わっていて面白い。今回はバトル描写が多めで、その中でそれぞれのキャラクターの背景や信念がより深く描かれているのが印象的でした。 物語がどういう結末を向かえるのか楽しみ。このまま4巻へ |
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恋愛リアリティーショーを舞台にした、ティーンエイジャー向けの青春小説。
登場人物それぞれが抱える悩みや隠されたエピソードが丁寧に配置されており、その「隠し方」や「演出の仕方」を楽しみながら読むことができました。ミステリーを期待する作品ではありませんが、物語として十分に楽しめました。 本書で描かれる恋愛リアリティーショーは、デスゲーム的な様式を取り入れた設定になっており、その点が特に好みでした。 番組はネット配信され、1週間ごとにSNSで人気投票が行われ最下位の参加者は脱落。最後まで残った男女1名ずつが「最高のカップル」になれる権利を得るというルールです。さらに番組を盛り上げるためか、出演者のヒミツを暴露するSNSアカウントが登場し、恋愛ムードの中に不穏な空気が入り込んでいきます。現代的な要素をうまく取り入れた展開が新鮮でした。 大きな驚きはないものの、役職やキャラクターの背景の意外性を見せくる演出もなかなかでした。10名の物語がそれぞれうまく繋がっていく流れは良かったです。 結末は凄い所で物語が閉じらていると感じました。本編が急に締めくくられるような終わり方については、番組終了後の物語をあえて描かないという作者の意思も感じられました。良い意味で10代向け作品らしい若々しさを味わえる一冊だったと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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SNSで話題になっているのを目にし、気になって手に取りました。
帯にある「ネタバレ厳禁」「どんでん返し」といった煽り文句は個人的にはあまり好みではないものの、SNS上では内容を伏せた紹介が多く、そこに惹かれての読書です。少し期待しながら読み始めました。 結果として、予想外の展開が楽しい一冊でした。 「どんでん返し」と聞くと身構えてしまいがちですが、本作は一発ネタに頼るタイプではなく物語そのものの転がし方が巧みで自然と引き込まれる展開を楽しむ作品です。読後の印象は恋愛アドベンチャーゲームを思わせる構成。ミステリー好きでライトノベルやラブコメに苦手意識のない方には相性の良い作品だと思います。 タイトルに「1」とナンバリングがありますが、本書だけで物語はきれいに完結しています。続編が作れる余地はありつつも、単巻として十分に満足できました。 予備知識はないほうが楽しめる作品です。 序盤のハイスピードなラブコメ展開にはやや違和感を覚えましたが最後まで読むとその印象も払拭され、むしろよく練られた構成だったと感じました。ラブコメを活用した面白い物語でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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『このホラーがすごい! 2025年版』で1位を獲得した作品ということで気になり手に取りました。
東京創元社が新たに設立した「創元ホラー長編賞」の第1回受賞作でもあり、注目度の高い一冊です。 物語は、大学のオカルト研究会が主催するイベントで話題の学生による講演に参加したことをきっかけに、怪異のような現象に巻き込まれていくという始まり。SNSで知った調査会社に相談しながら事態の解明を進めていく流れは、現代的で入りやすい構成でした。序盤はオカルトの調査ものの作品という感じで、怪異を科学的な装置で検証し、可能性を一つずつ潰していく描写が印象的です。起きている現象や発生条件を推察していく過程はホラーというよりミステリー寄りで、バランスの取れた読み心地でした。 オカルト×ホラーにミステリー要素を加えた、現代的で読みやすいエンタメ小説として楽しめたのは確かです。一方で、全体的にやや軽やかで強く心に残る尖った要素が少なかった点は惜しく感じました。 創元レーベルの印象かもしれませんが、もしライトノベル発の作品として出会っていたら「予想以上に楽しめた」というプラスの感想になっていたかもしれません。話題性の高さゆえに期待値が上がってしまったというのが正直な読後感でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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タイトルから連想して、気軽にサクッと読めそうな携帯小説的な印象で手に取りました。ですがその気軽さはありつつも、物語の内容は予想を良い意味で裏切られる面白い作品でした。良い意味での「B級映画」的な味わいがありつつ、人間ドラマとしてもきちんとした読後感が残る一冊。手ごろなホラー作品として人に薦めやすい点も評価したく、好み補正込みで☆8(☆7+好み)です。
物語は人付き合いが苦手な主人公が一人でソロキャンプを楽しもうとしたところ幽霊に遭遇する、という展開から始まります。ただし主人公は幽霊にまったく興味がなく、淡々とドライな対応を続けながらキャンプを楽しむ。その姿がユーモラスで印象的です。しかし「そもそもなぜ幽霊がいるのか?」という疑問をきっかけに、物語は徐々にサバイバルホラーの様相を帯びていきます。 本作は、ソロキャンプという題材と主人公の現代的な性格設定を取り入れた純粋なサバイバルホラー作品です。展開自体はホラーのお約束に沿ったもので、真相の意外性やトリックを語るタイプの作品ではありません。ミステリー的な構成や大掛かりな仕掛けがあるわけではないのですが、小道具やささやかなエピソードが積み重なり、それらが自然につながっていく感覚がとても心地よいです。文章も非常に読みやすく、定番の展開の中に本作ならではの味や魅力がきちんと感じられる点が好印象でした。 ホラーとしての冷酷さ、それと対比となる登場人物の成長を描く人間ドラマの温かさも心地よい。そして読後感が良いため人に薦めたくなるホラー作品と思った次第です。 何を期待して読むかによって評価が分かれそうな作品ではありますが、気軽に現代調のB級ホラー映画的な作品を楽しみたい方には、素直におすすめです。 |
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今回も素晴らしく楽しい読書でした。早く続きが読みたいと思えるシリーズはひさびさです。(☆8+好み)
物語の基本はラブコメ。ライトノベルで、ボードゲーム要素を取り入れたいわゆるオタク好きな物語なので、人により好みが分かれる作品であります。そしてあまり期待させて紹介をしてしまうと、「思っていたのと違う」と感じさせてしまうのは避けたいので、本当にこういう系統が好きな方におすすめしたい一作です。 シリーズ作品のため1作目からの読書は必須。 前作同様に時系列がバラバラに配置された構成、人物の関係図が複雑ながら絶妙で、その組み合わせにミステリー的な仕掛けが施されているラブコメです。 本心と表向きの振る舞いという二面性、そして相手との関係性によって変化する掛け算的な恋愛模様が非常にもどかしく、展開にドキドキさせられるのが素晴らしいです。恋心の手札を見せない、相手に本性を悟らせない――そうした隠匿された思考や戦略がボードゲーム的な比喩で描かれている点が非常に面白いのです。 また、セリフ1つ1つが丁寧に練られているのを感じます。 ボケとツッコミのコメディ的な応酬や、相手に解釈の余地を残す言葉の伝え方など、セリフ回しの完成度が高く読んでいて心地よさがあります。 1作目でそれぞれの想いが明かされたうえで、本作では恋路がどのように発展していくのか?さらに過去を持つ新キャラクターが登場することで、どんなイベントが発生するのか?魅力が尽きません。なんといいますか、本書はボードゲームにおける追加パックのような感覚で、ゴールを目指す途中に新たな追加イベントが発生し、それが物語全体にどう絡むのかが非常に面白く、かつ仕掛けありで堪能できました。 作者あとがきによると、3作目はミステリー的な構成ではなく、より純粋なラブコメになるとのこと。ただ2作目の終わり方がかなり気になる終わり方をしたので、早く続きを読みたい気持ちが強まってます。かなり好みのシリーズでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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東京大空襲という戦時下を舞台にした作品。
空襲で日常的に人が命を落とす混乱の時代に、殺人事件を捜査する意味はあるのか――。 実在したカメラマン・石川光陽と、絞殺の「吉川線」を考案した吉川澄一のタッグによる、戦時下の捜査・警察小説です。 先に触れておくと、本作は戦時下という特殊な状況を活かしたミステリーとして優れた作品でした。 面白いというより物語の作りが巧かったです。戦時下のミステリーとしてかなり良いです。一方、個人的な点数の理由なのですが、戦時下という舞台ゆえに、かなり重苦しい読書だったため、雰囲気の面では好みとは違ったという結果でした。 戦時下において、その現実をカメラに収める者、未来のために捜査記録の重要性を説く者、そしてこの状況下でも美しくありたいと洋装をまとう女性の姿――それぞれの想いが、本書のミステリーと巧みに結びついている点が素晴らしかったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これは超傑作!ボドゲカフェを舞台にしたラブコメ作品。
ライトノベルで、いわゆるミステリー作品ではありませんが、まったく別物かと言われるとそうでもなく、物語の作り方にはミステリーの技法がうまく使われています。読者にだけ明かされる恋模様や人間関係の描き方がとても面白いです。 読書のきっかけは「このライトノベルがすごい!2026」で1位を獲得したことでした。 ミステリーを期待して読む作品ではないものの、ミステリーらしさを感じさせる構成が随所にあり、ミステリー読者でライトノベルも好き、という人にはかなり刺さる一冊だと思います。 見どころとしては、登場人物たちが正体や想いを隠したまま関係を築いていく、その複雑さがとにかく面白いところ。時系列がバラバラで進むため、読み進めるうちに伏線というか、「そういうことだったのか」と思わされる場面も多くありました。ミステリーで犯人が明かされていく過程のようなものが、本書では人間関係の舞台裏が明かされていく形で使われており、話の作り方がとても巧いと感じました。 それでいて、構成や設定だけで魅せる作品かというとそうではなく、それ以上にキャラクターや会話文が抜群に面白い。ライトノベル特有のノリのある会話が中心なので、ラノベが合わない人には合わないと思いますが、ハマる人には確実にハマる作品です。私自身、電車内で読んでいたら噴き出しそうになり、ニヤニヤが止まらなくなったため、慌てて自宅で読むことにしました。会話のテンポや笑わせ方がかなりツボで、終始満足度の高い読書でした。 時系列がバラバラな構成のため、読後にもう一度最初から読むと新たな発見があるところも好みです。 シリーズ作品ではありますが、本書1巻だけでとても綺麗に完結しており、完成度の高い一冊。続巻も出ているので、次も続けて読んでみようと思います。ラノベ好きにはぜひおすすめしたい作品です。 |
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時代小説×デスゲームのシリーズ2作目。前作の必読。全4巻構成です。
正直続きものは読む気がしなくて1巻で止めてました。ところが最近Netflixでドラマ化したので映像で見て補間しようと思っていたら、ドラマもまさかの未完で"つづく……"。そのため、物語の結末を知りたくてモヤモヤする為、3年ぶりにシリーズの続きを読書再開です。 シリーズ2作目の本書では主人公の過去が描かれて、仲間も増え、バトル要素も強まり、物語がぐっと盛り上がってきます。ミステリー要素も含まれており、このデスゲームの目的は何か、黒幕は誰なのか――といった謎を追う面白さが健在。さらに実在する歴史上の人物たちも参戦するため、かなり要素豊富で面白いエンターテインメント作品となっています。 ひとまず、この勢いで続巻も読んでいきます。 |
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累計部数が電子含めて100万部を突破しているという人気作品。作者の作品を久々に手に取りました。
物語は、彼女がストーカー被害に遭ったことをきっかけに同棲が始まり、ほどなく婚約に至ったものの、その彼女が突然行方不明になってしまう――というところから始まります。彼女はどこへ消えたのか。ストーカーは誰なのか。行方不明の彼女を探す、男性主人公の視点から始まる物語です。文庫のあらすじでは"恋愛ミステリ"と書かれていますが、ミステリー要素は失踪もの作品という扱いぐらいで、ミステリー要素は低めです。 扱われる内容は、30代後半の未婚男女の実情や、婚活模様、アプリでの出会いなど、現代における恋愛感が描かれています。そして自分や相手の"傲慢さ"、そして"善良"に生きてきた人々の価値観などが描かれていきます。読み進めるうちに、読者自身がハッとさせられる一面があり、多くの気づきを得ることになるのではないでしょうか。一方で、こういう感想を抱くこと自体が傲慢さゆえに起きている次第だなと、少し言葉を選びたくなる読後感を得る気持ちでした。 作品中では、傲慢と善良といった言葉で男女の考えを示していますが、結局のところ、この表現は相手にレッテルを貼って距離を取っているだけな気もします。婚活の売れ残りと表現している人々も相手を品定めして距離を置いているだけな気がしました。相手の思考を汲み取ったうえで、傲慢と突き放すのか、許容とするかは人それぞれの解釈だなと感じます。 ストーリーとしては2章まではとても面白かったのですが、3章からはやや脇道に逸れたような印象でした。心境を改める大事な場面転換ではありますが、間延びしてしまった印象を受けました。 作品はよくできていて8点ぐらい気持ちなのですが、内容の好みの問題でこの点数で。 |
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山奥にある温泉湖近くの病院が舞台。災害により病院一帯は濃霧と温泉区域による硫化水素ガスが発生。
硫化水素は空気よりも重いため、すぐに吸い込む事はないが、徐々に足元から上がってくるタイムリミット状況。ガスによるクローズド・サークルの状況設定に新しさを感じた作品でした。 前作が面白く本作も本格ミステリとして描かれ、斬新なクローズド・サークルの環境設定に期待値が高まりました。しかし結果としては個人的にはやや合わなかった印象です。 本書はデビュー前のストック的な作品でしょうか。前作では感じない文章の質で、今回は内容が把握し辛い読書でした。 小説冒頭のミステリのワクワク感として、病院内の見取り図はとても好感でした。一方、登場人物紹介の方法がやや難点でした。病院ゆえに患者の登場人物だけで70名以上います。主要な登場人物も19名と多く、人物の把握に苦労します。そして主要登場人物の肩書も「外科部長」や「薬剤師」や「看護師」という特徴的な要素で簡潔に示せるところを「更冠病院薬剤師」 「更冠病院新館三階看護師」というフル名称で並べるため、圧迫感といいますか把握し辛さを強めている気がします。共通項はグループ分けで整理すればより良いと思います。もしかすると、あえて意図的に人物は把握しないで読んでもらいたいという狙いがあるのかもしれないのですが、私は登場人物表の段階で少し挫けそうになりました。 登場人物の把握以外にも、突然の回想や、ローカルネタのような知っていて当然のように扱われる用語が多く、内容が散漫に感じました。ただし医療現場の描写や専門的な説明は解説付きであり、前作同様にリアルに描かれたシーンは魅力的でよかったです。見知らぬ時事ネタが同じトーンで差し込まれる箇所はやや違和感が残りました。 ミステリとしての骨格や医療問題を通じた社会的なテーマは印象に残り、意図自体は好感です。今回は構成や文章が合わなかったのですが、シリーズとしての魅力は十分。また、城崎医師がシリーズとして登場しているのはとても良く、彼の性格や行動は個性的で作品の強みになると感じます。その点でも今回は少し役割が少なかった印象。などなど気になり楽しみな点も多い為、今後のシリーズも出れば手に取りたいと思います。 |
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7歳で引き取られた妾の娘・かな子の成長を描くサバイバル小説のような歴史ドラマの大作。
2024年度の各紙ミステリランキングで上位に入った話題作。800ページ近い骨太長編のため読むのを躊躇していて積読状態でした。時間が取れたのでやっと手に取った次第。結果、とても充実した読書で大満足でした。内容の密度が非常に濃いため、時間が取れる時に腰を据えて読むのがおすすめです。 物語は、富豪一族の当主の妾の娘・かな子(7歳)が、一族の屋敷に引き取られるところから始まります。母を亡くし、父も倒れ、味方のいない幼い少女。正妻の子ではないゆえに、やっかい者として迎えられるなか、彼女がどう生き抜いていくか――。かな子の成長を描くサバイバル小説の側面を持った歴史ドラマとなります。 ミステリーとしての知名度はありますが、殺人事件やトリックを期待する物語ではなないです。 ではどのような点がミステリーとしての面白さがあるのか。それは、富豪一族のそれぞれの腹の内や思惑、そして会話の裏に潜む駆け引きです。セリフの1つ1つが巧妙です。登場人物たちは皆、頭の回転が速く、上流階級ゆえの遠回しな言葉を操ります。一見普通の会話が読み進めるうちに緊張感ある心理戦へとなっている。その意味は数ページ後に解説と共に気づかされるのですが、それらによって恐ろしさと凄さを味わいます。主人公視点で気づかない所で進行している根回しや政略的活動、立場ある者・悟られない為の発言。そうした細かく設計された構成がミステリーとしての魅力になっていると感じました。 中盤、かな子が成長していき、交友関係も増えてくる400ページ過ぎあたりから、面白さがさらに加速していきました。本作にて物語としては一区切りがついていますが、このボリュームを読み切ったうえでなお、まだまだ序章と感じさせる結末が凄い。それだけ魅力的でこの先の物語も知りたくなる力を持った作品でした。 本書の注意点としては非常に頭を使う内容なので、気楽に物語を楽しみにたい人には少し難しく感じるかもしれません。じっくり時間を取れるときの読書をおすすめします。歴史ドラマや時代もの作品が好きな方にオススメです。 |
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最近映画化されたこともあり、書店でよく見かけるようになった一冊。『第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞』の受賞作ということで手に取りました。
少し背景をお話しすると、第39回から賞名に「ホラー」が加わり、『横溝正史ミステリ大賞』は『横溝正史ミステリ&ホラー大賞』へと改称されました。しかし初年度は「受賞作なし」。本作『火喰鳥を、喰う』は、名称変更後はじめての受賞作です。 そのため「ミステリなのか?ホラーなのか?」という点が大きな注目を集めた作品でした。 読んでみると、その境界は確かに曖昧で、良い意味でジャンルの掴みどころがない物語です。どちらとも言い切れない不穏な雰囲気と、予想外の方向へ進む展開には驚かされました。この「先の見えなさ」は見事だと思います。 一方で、個人的には非常に読みづらい文章で、内容も把握しづらい印象でした。今どうなっているのか、理解が追いつかないまま読み進める読書体験でした。結末の意外性は評価したいものの、ついていけないまま終わってしまい、「そういう結末にするのか」としか思えなかったのが正直なところです。 後味の悪さもホラーとしては正解かもしれませんが、私とは相性が合わなかった作品でした。 |
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SNSで話題となり、口コミで広がっている注目作。その流れに乗って読みましたが、話題になるのも納得の面白さでした。
まず本作は海外ミステリが苦手な人に手に取ってもらいたい作品です。海外作品で人物や地名の把握が苦手な人でも大丈夫。なぜなら舞台は家周辺。そして登場人物は5名だけです。海外ミステリーならではのスリルと展開が味わえます。 物語は裕福な家庭に住み込みのハウスメイド(家政婦)として雇われるところから始まります。前科持ちで仮出所したばかりのミリーは住む場所もなく絶対に仕事を失いたくない立場。そこへ舞い込んだ裕福な家庭のハウスメイドとしての仕事。待遇は良い。ただし雇い主からは理不尽な扱いを受けていきます。内容は読んでいてイヤミス模様で心苦しいです。理不尽さが凄く、頭がおかしいんじゃないかと雇い主の行動に嫌悪する読書でした。それでも仕事を辞められないミリーの境遇に、読者も一緒にやるせない気持ちを味わうことになります。嫌な気持ちを共有しながらの読書でした。 翻訳はとても読みやすくページがどんどん進む読書でした。内容的には重苦しい場面は多いものの不思議と読む手が止まりませんでした。ただ正直な所、序盤は「これはSNSで話題になるほどのものなのか?」という疑問の読書でした。ただ止められない読書であるのと、物語の全貌が見えてきた所からはさらに加速しての一気読み。後半は「そうきたか。」と唸る展開で話題になるのも納得。とても充実した読書体験でした。物語の終わり方も素晴らしく続編が読みたい気持ちでいっぱいでした。 本書は海外ですでに3作が刊行されている人気シリーズで近日映画公開も予定されています。2作目の翻訳も年内発売との事でかなり楽しみなシリーズに出会えたという気持ちでした。海外ミステリをあまり読まない人ほどオススメです。海外ミステリを読み慣れていると既視感を感じると思うのですが、それでも楽しかったので個人的に満足の作品でした。 |
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