■スポンサードリンク


egut さんのレビュー一覧

egutさんのページへ

レビュー数745

全745件 221~240 12/38ページ

※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
 閲覧する時は、『このレビューを表示する場合はここをクリック』を押してください。
No.525:
(2pt)

僕は君を殺せないの感想

好みは人それぞれなので。。。個人的に読めない作品でした。

場面ごとに人称が、"僕"や"俺"や"君"などに変化し、誰が誰だか分からない文章作品です。
文章も読み辛い為、まったくもって場面が想像できない駄文を読まされた気分でした。

広報宣伝はそこを逆手にとって『二度読み必死!!新感覚ミステリー』として売り出したのは作戦かもしれません。
二度読みの意味は、何か素晴らしい仕掛けがあるわけではなく、初読では登場人物の整理がされてない文章なので二度読んで理解してね。という意味で捉えられました。
僕は君を殺せない (集英社オレンジ文庫)
長谷川夕僕は君を殺せない についてのレビュー
No.524:
(6pt)

昨夜は殺れたかもの感想

コメディタッチの夫婦の殺しあいサスペンス。本書は企画もの。2人の著者によるリレー小説。
夫側は藤石波矢が担当し、妻側は辻堂ゆめが担当。片側が仕掛ける殺しの罠に対してもう一人の著者が巧く回避し今度は逆に罠を仕掛けるという応酬を行う。殺し合いという内容ですが、殺伐さはなくコメディ色の雰囲気作品です。

内容から個人的に好きな映画の『Mr.&Mrs. スミス』を思い浮かべました。作中にもこのタイトルが出てきたので、遠からずな設定です。企画ものとしての内容は面白く、本文も2人の著者が描いたとは思えないぐらい両者の文章が馴染んでおり、雰囲気ともども良い読書でした。
ただ、個人的に好みに合わなかったのは、夫婦の些細なきっかけで殺し合いになってしまう所。それを言ったら本書の企画で元も子もないかもですが、今まで良き夫婦の二人が急に殺意を抱く展開は違和感でした。映画の例ですとお互い元殺し屋という設定がある為、互いの仕事の殺し合いが活きてきて面白さに繋がりますが、本書は普通の夫婦でそれまでは険悪な仲でもありませんので、そんな二人が急に殺意を抱く思考が腑に落ちませんでした。

2人の著者による殺しと回避の応酬を描いたものとして、作品を作っている最中、もしくはこれがリアルタイムでの連載ならより楽しい気がします。ただ、この趣旨を知らなかったり、本書単体を読んだ感想としては、繰り返される小ネタのような殺し&回避の流れは退屈にも感じました。驚きとかなく相手の著者は巧くかわしたなという感想なので、それが物語として面白いかは別だと思った為です。最後は綺麗にまとまり良かったです。
昨夜は殺れたかも (講談社タイガ)
藤石波矢昨夜は殺れたかも についてのレビュー
No.523:
(6pt)

スクールカースト殺人教室の感想

あらすじとイラストの雰囲気からライトミステリを予想していたのですが、中身は堅実に捜査を進める警察小説のような作品でした。あらすじには、"バトルロワイヤル"、"復讐ゲーム"、と言った若者向けなワードがありますがそういう作品ではありません。コツコツと捜査を進め、クラス内で何が起きているのか全貌が見えてくるタイプの作品です。中身に沿わない宣伝は好きではありませんが、作品自体は面白く読めました。

担任の先生が殺害された1年D組。表向きの担任の姿は人気の先生らしいが、警察がクラスの生徒達から事情聴取を進めていくと、違った素顔が見えてきます。そして、クラス内の権力図、学級崩壊、いじめ、といった問題が浮かび上がってくる流れ。

学校内の悪い所が描かれ、暗く気分が悪くなるような話で読書の雰囲気は重め。ただ文章は読みやすく、警察の捜査と共に全貌が明かされていく展開は惹き込まれました。
本書の難点というか改善してほしいと感じた点は、登場人物の名前。苗字で呼んだり、下の名前で呼んだり、人物の把握が分り辛くなる所を感じました。フォローの為に帯裏に名前と関係図が載せてありましたが、本編に掲載しても良いのではと思いました。

中学・高校生向けの学園ミステリとしては良いバランス。気分が悪くなる所も含めて良い塩梅かなと思いました。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
スクールカースト殺人教室
堀内公太郎スクールカースト殺人教室 についてのレビュー
No.522:
(7pt)

なるほどフォカッチャ ハリネズミと謎解きたがりなパン屋さんの感想

ほんわか日常の謎のライトミステリ。
小学生から読んでも大丈夫な内容で、ゆるふわ系。殺伐さ皆無。

物語は、パン屋の女性に一目ぼれした大学生の主人公が、彼女と話す切っ掛け作りの為にパン屋に通い、身近に起きた謎についてお話するという流れです。

日常の謎を扱いますが、謎の程度はとても小さな事。本書の主体は男女の物語+ほんわか雰囲気。そこにちょっとだけ謎が加わったような話。男子学生の良い意味でのバカ騒ぎな雰囲気、漫才の様にボケとツッコミがあるユーモアな雰囲気、初々しい学生の恋愛模様を微笑ましく感じる読書でした。
ハリネズミは二人の様子を眺めるキューピットのような存在で、雰囲気を和ませる良い味出してます。

表紙にて雰囲気が出ている通り、小中学生から読ませられるミステリとしてよい作品だと思いました。
なるほどフォカッチャ ハリネズミと謎解きたがりなパン屋さん (メディアワークス文庫)
No.521: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

天国までの49日間の感想

書店で多く平積みされていたので手に取りました。
小中学生向けのいじめをテーマとした物語。ミステリ要素はほぼなく若い世代向けの社会派小説です。
自殺をした少女が成仏するまでの49日間、幽霊として家族や加害者や学校のその後を見つめる話。

話の流れだけ拾ってしまうと良くある物語ではありましたが、
小中学生を読者ターゲットとして、いじめ問題を読みやすく触れさせる事を考えると中々良く出来た作品に感じました。
毒々しさも控えめで、優しすぎる展開については大人心では軽過ぎますが、死者から見る被害者・加害者・関わった人の心の例を物語として触れる分にはアリかと。良い意味で文章はサクサク読めるので、嫌な気持ちになり過ぎずに読めるのが良かったです。

国語や道徳の教科書では真面目で固くなりそうな内容を、本書の少しファンタジーな物語としてなら読みやすい。
小中学生の読書感想文の題材としてもアリかもしれない。そんな事も思いました。
天国までの49日間 (スターツ出版文庫)
櫻井千姫天国までの49日間 についてのレビュー
No.520:
(6pt)

孤島の来訪者の感想

途中で何を読んでいるのか分からなくなって混乱しました。良い意味でも悪い意味でも。
予備知識がない方が良さそうな面もあれば、無いならないで混乱しそうな要素があり、あらすじにある通り、『予測不能』な孤島本格ミステリとなっていました。

シリーズ2弾とありますが、前作とは関わりありませんので、本書単体で楽しめます。

最初に書きましたが個人的に中盤は混乱してしまい、内容が把握できなくなってしまいました。で、少ししてそういう本か!と理解し、読者への挑戦を迎えて解答編を読み終えました。
読み終わってみれば特殊な状況もののミステリとして久しぶりな刺激で面白かったです。2度目をサラッと読み直してよくできているなと改めて感じました。※2度読みな仕掛けがある本という意味ではなくて、自分が理解し辛かっただけです。
なので率直な感想として分り辛い本でした。場面や視点や状況が変わり過ぎてますし、登場人物の役柄も似ていて区別が付き辛かったです。
ミステリとしての物語の構築、繋がり方なんかはとても面白い。ただ前作でも感じたのですが、話しが説明的というか盛り上がりの演出が弱いというか、物語を眺めているような気分で気持ちが入り辛く、初読では理解し辛いというのが個人的な印象でした。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
孤島の来訪者 (創元推理文庫)
方丈貴恵孤島の来訪者 についてのレビュー
No.519: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

ワトソン力の感想

『ワトソン力』というネーミングセンス、設定勝ちな1作。(☆7+好み補正)

目立たず平凡な和戸宋志。彼は周囲の人達の推理力を飛躍的に向上させる能力を持つ。
ゲーム用語で言うと味方に推理力のバフを与えるエンチャンターの人物。本人以外が名探偵になるという設定。これが非常に面白い。

著者の過去作品のイメージは事件と解決のみを主軸とした問題集のようなパズル小説の印象でした。本書もその傾向は変わらずなのですが、登場人物皆を名探偵の如く推理させる事により、従来の解法1つだけにとどまらず、1つの事件・問題に対して豊富な謎解きシーンが楽しめる作品集に仕上がっており、読んでいて楽しかったです。

映像・ドラマ化も面白そうです。誰もが名探偵役になれる設定って斬新ではないでしょうか。俳優さん皆が主役みたいな名探偵役が出来るわけです。そういう点でもこの『ワトソン力』という設定はかなり発明な印象で驚かされました。

トリックや真相はパズル小説の様で現実的ではない感じではありますが、今回はそんな事は気にせずユーモアある雰囲気とミステリの楽しさを味わえた一冊でした。おすすめです。
ワトソン力 (光文社文庫 お 63-1)
大山誠一郎ワトソン力 についてのレビュー
No.518:
(8pt)

だから僕は君をさらうの感想

帯やあらすじにある、"衝撃"とか"読後、恋がしたくなる"の過剰なPRは期待とのギャップで悩ましい所でありますが、作品自体は綺麗にまとまった青春ミステリで良かったです。ティーンエイジャーを狙った強い宣伝文句にあるような驚きや派手さはないので、宣伝は見ないか気にしない事にして読めると良いかもです。

恋愛小説やミステリの要素はあれど、個人的に思った本書の雰囲気は救済や更生の物語。マイナスからプラスに転じる場面に立ち会える作品に感じました。そして気分が悪くなるような点はなく、若者向けの丁度よいバランスで描かれている点が好みでした。
読後に思う意外な点は、社会的テーマが結構散りばめられており、これらはよくあるミステリだと重く描かれる内容なのですが、本書はそう感じさせてなかった所です。

主人公は誘拐犯の父を持つ息子。
その父の事件の影響もあり、重い過去を引きずりながら日陰者として暮らす日々。その彼が夜中の墓地でとある少女と出会った所から歯車が動き出す。という流れです。

巧くまとまっていると感じる大事な点は、タイトル『"だから"僕は君をさらう』の"だから"の理由が納得できる点。ミステリの衝撃というものとは違うので期待し過ぎないで欲しい点ではありますが、理由はちゃんと共感でき、そしてそれが主人公の優しさや決断する成長に結びつき、周りの知人友人達との絆が感じられる為、読後感は良いものでした。

気になった悩ましい点は主人公の年齢設定が29歳な所。歳の差や、年齢に対しての思考や雰囲気が幼いのが引っかかるので、もっと主人公が若ければより納得できそうな気持が芽生えます。が、この年齢設定は物語を構築する上でこうなるというのは理解できるので、人物配置含めてかなり考えた結果だと感じました。だから著者はこういう設定している。と感じる点が多く、時間をかけて構築された思い入れの強さも感じた作品でした。

ミステリでの誘拐作品は色々ありますが、重くなく、恋愛もので良い雰囲気の他の作品が思いつかないので、そういう点でも新鮮で楽しめました。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
だから僕は君をさらう (双葉文庫)
斎藤千輪だから僕は君をさらう についてのレビュー
No.517:
(5pt)

名探偵のはらわたの感想

著者の作風を変えた一冊。
著者の作品と言えば鬼畜系のグロ系。世の中そんな印象になっていましたが、本書はその要素を無くして本格ミステリの仕掛けや謎解きに重き置いた一冊となっていました。著者のイメージを変える勝負作品とも感じます。

物語は昭和の殺人鬼vs名探偵もの。
タイトルは映画『死霊のはらわた』のオマージュ。若者達が悪霊を甦らせてしまうという映画同様、本書は実在した昭和の殺人鬼の魂が現代に甦り、人に乗り移り事件を犯すというもの。津山事件や阿部定事件といった小説お馴染みの有名所を題材に、それに模した事件と悪霊が乗り移った犯人を暴き倒すという物語。

過去の事件をオリジナルな解釈と仕掛けを施したミステリとなっているのが面白い。
江戸や戦国時代などの大昔にせず、昭和の事件を取り扱っている点についても、雰囲気も然ることながらミステリとして巧く活用していたのが見事でした。持ち味であると設定付けされているグロや鬼畜がなくても本格ミステリとして面白い作品が描けると感じました。昭和の事件を模した見立て殺人の部類ですが、描き方、物語の設定が現代的で良かったです。

作品単体は良かったのですが個人的な好みの点数は少し低めで。読書前の著者本の期待値とも違い、横溝時代の古い昭和の作品を読んでいる気分にもなり、読書中は古く重めであまり楽しめなかったのが正直な所でした。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
名探偵のはらわた (新潮文庫)
白井智之名探偵のはらわた についてのレビュー
No.516: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

透明人間は密室に潜むの感想

表題作を含む4つの短編集。
・透明人間の倒叙ものである『透明人間は密室に潜む』
・アイドルオタク達の裁判員制度『六人の熱狂する日本人』
・聴覚が優れた特殊能力を用いた犯人当て『盗聴された殺人』
・船上の脱出ゲーム『第13号客室からの脱出』

特に2話目はアイドルオタクならではの気づきを用いた推理劇が新鮮でした。
3話目の探偵コンビとなる上司と部下の関係も良くてシリーズで読みたい程。

作品の雰囲気については、過去に『紅蓮館の殺人』を読んでいますが、その印象とは違いキャラクター達が元気で勢いがあるように感じました。言い換えると筆が乗っているというか読んでいて面白い。本書も手に取るまで表紙の雰囲気から重そうだなと感じていたのですが、読んでみたらサクサクと楽しい読書でした。著者からミステリが好きなんだなという気持ちがとても感じる作品で楽しかったです。
透明人間は密室に潜む (光文社文庫)
阿津川辰海透明人間は密室に潜む についてのレビュー
No.515: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

教会堂の殺人 ~Game Theory~の感想

堂シリーズ5作目。シリーズ全7作のうち後半へ向けての転換と整理作品。
本書はミステリというより、登場人物達の物語が主要で、まとめに入りました。
その為、登場人物達の設定や扱いが良い意味でも悪い意味でも整理されていると感じます。

堂に関するトリックが魅力的なシリーズ作品ですが、今回は設定の説明不足と既視感あるもので残念な結果でした。
あまり世の中の感想で見かけないのですが、この仕掛けと設定や舞台は某漫画で行われたものそのままですね。
漫画と小説の読者層の違い、両方の知名度からか、あまり気づかれなかったのかな。時期も同じ2000年代。集英社ヤングジャンプの騙し合いギャンブラー系の某漫画です。オマージュではなく劣化コピーに感じるのが残念。

という事もあり、本書は色々と残念に感じました。
残り2冊で物語がどう変わるのか期待です。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
教会堂の殺人 ~Game Theory~ (講談社文庫)
周木律教会堂の殺人 ~Game Theory~ についてのレビュー
No.514:
(2pt)

奈落のエレベーターの感想

著者の"悪夢シリーズ"となっていますがシリーズ内作品はどこから読んでも大丈夫です。
ただ本書はデビュー作の『悪夢のエレベーター』のラストからそのまま時系列が続いている話なので、本書を読む場合は『悪夢のエレベーター』を読まなければ意味がわかりません。

さて1作目のデビュー作を繋げた作品となる本書。正直な感想としては蛇足でした。
登場するキャラクター達、皆が不幸になっていくので正直楽しみ所が感じられなかったです。気分は奈落というコンセプトならその通りですが、読まなければ良かったという気持ちがいっぱいです。

作品を刊行していくにあたり、ネタに困ったので1作目を題材に続きを書こうという軽い気持ちを感じてしまいます。話の展開が煮詰まっていなくて、場当たり的なドタバタ展開。前後の話に脈絡がなく思いついたエピソードをとりあえず書いて繋げましたという構成。それが持ち味でブラックコメディと言えばそうなのかもしれませんが、、、好みに合わなかったという事で。
奈落のエレベーター (幻冬舎文庫)
木下半太奈落のエレベーター についてのレビュー
No.513: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

命の後で咲いた花の感想

不治の病、難病ものジャンルの恋愛小説+少しミステリ。かなり惹き込まれ感動しました。
この手のジャンルや設定はよくあるゆえ、文章・表現力など作家の力が試されますね。読んでいて情景や人物の心情がとても丁寧に描かれています。名文章や名言を所々に感じる作品であり小説の良さを感じる読書でもありました。

ミステリを期待して手に取ると違うものになりますので、恋愛小説を主な期待として読むと良いです。
男女の内面にある心模様、すれ違い、もどかしい気持ちなど、読んでいて楽しかったり心苦しくなったりと青春模様も堪能しました。

本書は下調べせずに前知識が無い方がよいです。表紙とタイトルが目に留まり、あらすじに"恋愛ミステリ"と書かれていたので衝動買いした次第。結果良かった。

他作で個人的に好きな恋愛ミステリがあるのですが、出版日を見ると本書の方が早かった。このアイディアは本書の方が先だったんだと再び味わえたのも良かったです。

世界で一番美しい言葉。ここは完璧な演出で心を持ってかれました。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
命の後で咲いた花 (メディアワークス文庫)
綾崎隼命の後で咲いた花 についてのレビュー
No.512: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

地べたを旅立つ 掃除機探偵の推理と冒険の感想

ロボット掃除機への転生もの。
設定は面白い。あらすじは事故にあった警察官が目を覚ましたらロボット掃除機になっていたという始まり。SF転生ものであるが、対象がロボット掃除機という現代のアイテムが活用されている点が新しいです。IOTとなる掃除機に組み込まれたwifi通信でネットからの情報を送受信したり、ロボットアームを用いるなど現代要素が満載になっていました。そして目を覚ましたすぐ隣の部屋に死体があったというミステリの流れが興味をそそられました。

特殊設定ミステリの期待が高まりましたが、実際の所本書はミステリというより冒険小説。転生先から30km離れた姪の元へ向う事がメインストーリー。走行速度は時速1.8km。充電どうなる?その道中での出会いとプチ事件が絡んでいく流れです。

読書中の正直な感想として、「早川」主催の「アガサ・クリスティー賞」というワードに期待し過ぎてしまったかもです。本格的、大人向けというより、ライトミステリの部類。個人的にはティーンエイジャー向けのレーベル出版ならもっと評価が上がると思った次第。というのは扱うミステリ要素は軽めですし、社会問題も扱われますがテーマに深みはなくTVで見知れる内容なので、早川の濃い内容(勝手な早川イメージ)を求めて読んでしまうと、物足りなくなってしまった次第。

あえて冒険小説として見たとすると札幌小樽の30kmの景色があまり感じられませんでした。ロボット掃除機の苦労は微笑ましいのですがせっかく地名を出すなら空気感や情景も感じたかった。主人公と姪の料理などのエピソードも微笑ましく読めますが、本筋とはあまり結び付かず。デビュー作なので色々書きたい事を書いたという印象を受けた作品でした。

他思う所は登場する人やエピソードの温かさや優しさの表現が印象に残りました。悪意な内容だとしても優しい雰囲気を醸し出しています。著者の持ち味なのかなと。それゆえ殺伐さを求めないティーンエイジャー向けな作品で読んでみたいと思った次第。アイディアと雰囲気はよいので次の作品はどうなるのだろうと気になる所です。
地べたを旅立つ 掃除機探偵の推理と冒険
No.511:
(6pt)

悪夢のエレベーターの感想

エレベーターの室内だけで起きるドラマなので演劇や小規模撮影の映像化向きな作品。
著者デビュー作であり、その後の著者の特徴となる群像劇作品の初々しさを感じる内容でした。冗長に感じたのは、第一章で進められた物語が第二章にて別の視点で描かれる様子。ほとんど同じ内容であり、会話内容も繰り返す為、違った視点の面白さより退屈が勝りました。好みは別として、最後まで意外な展開を用意して読者を楽しませようとする脚本作りを感じた作品でした。
悪夢のエレベーター (幻冬舎文庫)
木下半太悪夢のエレベーター についてのレビュー
No.510:
(3pt)

夜葬の感想

日本ホラー小説大賞読者賞。
科学が発達した現代において、ホラー小説の怖さや面白さをどのように表現するか気になる所。受賞作品なのと本屋で目に留まったので手に取りました。本書は現代要素のスマホ、アプリと、『リング』をリスペクトしたと感じる「呪いの本」を用いた現代と旧世代のハイブリットを感じる作品でした。

呪いの本に触れると、顔をくり貫く「どんぶりさん」に襲われる。
「どんぶりさん」という名称の語感の良さ、顔をくり貫く気持ち悪さ、スマホに着信通知されるタイムリミット感など、設定はとても良かったです。が、文章や会話文が軽いのが難点。若者口語体なのでオドロオドロしさや緊張感が感じられません。せっかくの「どんぶりさん」の不気味さに対しての緊張感がないので行動や場面がギャグやジョークのようにも感じてしまった次第。

ホラー特有の得体の知れない何かが人外の言葉で喋るという不気味な表現をアプリ通知の文字化けで現していますが、雰囲気が軽いので不気味に見えない。送信者が文字コードをミスったバグかなーとかそんな風に思ってしまった時点で作品にのめり込めていない気持ちになりました。
夜葬 (角川ホラー文庫)
最東対地夜葬 についてのレビュー
No.509: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

閻魔堂沙羅の推理奇譚 A+B+Cの殺人の感想

安定の面白さでした。☆7(+好み1)
シリーズ作品ですが1作目以降はどこから読んでも問題ありません。
今作は長編作品ですがサクッと一気に読める。気軽に楽しめるミステリとして良かったです。

ミステリの謎については早々に見えてくるので謎解き重視の方には好みに合わないと思いますが、人間模様のドラマを楽しみたい方には丁度良い作品です。本年には予想通りドラマ化したので正にそれ向きの作品となっています。

本シリーズの幅が広がったと感じる所は、閻魔娘の沙羅が地上で活動するようになった事。事件が起こる前に閻魔の娘として死期を感じる者の近くで活動した所がシリーズ内での変化でした。
沙羅の活動がより見えてくるのは好みの問題であり、この流れだと、伊坂幸太郎と知念実希人それぞれの死神がそばにいるという『死神シリーズ』と似たような印象を受けました。どれも好きなシリーズなので同系統が読めるのはそれはそれで楽しみです。

印象に残った所として、沙羅が堕落した人間に対して述べる説法について。
ダメ人間の反面教師と閻魔からの人間の志のメッセージの対比や例が巧く、自己啓発のように読者の心に響かせる面を感じました。ミステリやドラマだけではない魅力も含まれたとても良い作品でした。
閻魔堂沙羅の推理奇譚 A+B+Cの殺人 (講談社タイガ)
No.508: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

あなたの罪を数えましょうの感想

シリーズ2作目ですが、本書単体で楽しめる作品。
前作では物足りなかった著者成分を十分に感じられた作品でした。

前作同様に物語は2つのパートが交互に描かれます。
1つ目は、廃屋で監禁された男女6名の惨殺シーン含む事件模様。
2つ目は、事件後に訪れた探偵パートの調査。

著者の持ち味である惨殺、微グロ、狂人の描写が活かされている内容。それ系が苦手な方には好まれない内容です。
B級スプラッター映画の中に探偵やミステリ要素を混ぜ込んだ内容であり、それが過激的な要素なだけでなく、真相がこの世界だから納得できる内容になっているのが見事。個人的にプラス点でした。

一方、純粋なミステリを好む方、グロが苦手な方には非常に評判が悪くなる作品です。良い意味でのB級・インディーズに属する少し尖がった所に魅力を感じる方向けの作品。個人的にこの著者の持ち味と本格ミステリっぽさを混ぜ込んだ作風は好みで、今後の作品も楽しみにする次第。

ちなみに帯の推薦が綾辻行人ですが、館ではなく『殺人鬼』の綾辻行人が推薦、と言えば内容がなんとなく伝わる事でしょうw

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
あなたの罪を数えましょう (講談社タイガ)
菅原和也あなたの罪を数えましょう についてのレビュー
No.507:
(6pt)

あなたは嘘を見抜けないの感想

物語は2つのパートが章ごとに交互に描かれます。
1つ目は、無人島での廃墟探索ツアーで死んだ彼女を想う男性パート。島の外視点。
2つ目は、無人島での廃墟探索ツアーの様子。島の中での視点。
廃墟探索ツアーの面々はSNSで知り合った者達。お互いをハンドルネームで呼び合う。その島で事件が起きます。
さて、ピンと来る方、大いにいると思います。個人的に『十角館』を思い浮かびました。同じ講談社ですしね。そういった本格ミステリの設定を感じながらの読書は楽しかったです。

ただ、なんというか薄味さを感じました。コテコテではなく、ライトミステリです。
また、菅原和也作品はアングラや微グロ、刺激的な表現が多かった印象ですが、本書の講談社タイガからの作品は大分マイルドになっていますね。持ち味の良さがあまりなく特徴が見え辛い平凡な作品になっている印象でした。
表紙・タイトル・あらすじが、中身の雰囲気と合っていないのも残念。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
あなたは嘘を見抜けない (講談社タイガ)
菅原和也あなたは嘘を見抜けない についてのレビュー
No.506:
(2pt)

殺さずに済ませたいの感想

締め切りに間に合わせる為に、作品を無理矢理終わらせて商品にしたような結末がひどい。初稿のような継ぎ接ぎ展開。
辛口で述べますが、作品が未完成で煮詰まっていないと感じます。390ページの本で、300ページ頃から突然の様変わりで何もなく終わり非常に残念でした。

物語は、快楽殺人鬼の人形作家の話。性機能障害をもつ主人公は自分の作品である人形とそっくりな人の死体となら交われる。女性を狙う犯罪シーンと人形作家の犯罪心理が描かれていく流れ。エロさもグロさもなく、話の展開の意味も見いだせず、ただ女性を殺すいろんなパターンを考えてみました、というようなアイディア帳を読まされた気分でした。刺激も見所が無くて面白くない。

人形作家の心理についても徐々に読者を魅了するような展開ではなく、急に興ざめするような流れで、読者は置いてけぼり気分。
正直まったく面白くない作品でした。

良かった所は、人形を窯で焼く所と火葬のシーンをシンクロさせた表現。死体と人形、どちらも動かない人の形をしたものに対しての狂人の考え方。ここらへんは楽しめました。

▼以下、ネタバレ感想
※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[] ログインはこちら
殺さずに済ませたい (徳間文庫)
大石圭殺さずに済ませたい についてのレビュー