昨夜は殺れたかも
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点6.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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コメディタッチの夫婦の殺しあいサスペンス。本書は企画もの。2人の著者によるリレー小説。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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夫と妻が仲良く生活する水面下で殺しあいをするお話。夫と妻をそれぞれの作家さんが書いているそうですが、失礼ながらお二人とも知らなくてあまり期待もしてなかったのですが、サクサクと読みやすかったですし、展開も次々にかわっていくので面白く、気がつけば一気読みしていました。 ただお互いに都合よくいきなり殺したいほどになるかなぁ?とは思わなくもなかったのですが、お互いの仕掛けた罠の回避の仕方とかが非リアル過ぎて逆に軽いノリで読めましたし、殺しあいになるいきさつの唐突さの謎も最後で一応は回収されていましたので、結果として、読み終わりは満足しています。 | ||||
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※以下の内容には【ネタバレ】が含まれる可能性があります 始まりは小さな疑いと仕返しだったはずが,夫も妻も互いに秘密を抱える事情もあり, 疑念は確信へ,嫌がらせは殺意へ,そしてすれ違いが殺し合いへと膨らんでいく様子や, 身の回りのもので『工夫』を凝らす一方,どれもが空振りに終わる攻防には思わず苦笑い. ただ,情報を不自然にボカした書き方のせいで,勘違いであろう事が早々に察せられ, おおよその流れ,そして結末までが見えてしまうのは,何とももったいないところです. また,話が進むにつれて,二人の会話は生々しく,手段も過激になっていくのですが, どちらも先読み先読みで回避を繰り返す展開は,いささか単調になってしまった印象で, サスペンスにもコメディにも振り切れない,あと一押しの弱さをもどかしく感じることも. 事の真相と決着にも驚きまではなく,男女作家の合作が一つの話題だったようですが, その作り方は興味深かったものの,失礼ながら特に目立つ部分のない一冊に映りました. しかし…こうなる前に少しでも話をというのは,思うほど簡単ではないのでしょうね. | ||||
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最近追っている藤石波矢が新作を出すと聞いたが、どうも辻堂ゆめさんという別の作家との共作らしい。後者の作品は未読だけど、そもそも小説の共作というのが今ひとつ分からない。分からないなら読んでみるしかないと拝読してみる事に。 物語の主役を務めるのは藤堂光弘・咲奈という一組の夫婦(どうでも良いけど、この苗字作者二人の名前から取ってるんだな)。「ランカージョブ」という人材派遣会社に勤める光弘とそんな夫を主婦として甲斐甲斐しく支える咲菜は傍から見ても何一つ欠ける所の無い円満な夫婦生活を送っていたが、ある日光弘は同僚の女性社員・野中から「奥様が知らない男性と銀座を歩いている姿を見ました」と忠告を受ける。 まさかと思った光弘だったが咲奈の持ち物の中から自分が知らない高級香水の瓶を見付けた事で愛する妻に対する疑念が生じてしまう。時を同じくして夫には秘密のままエステティックサロンの手伝いに出掛けていた咲奈だったが、新しく入った店員の若宮が店の売上金を盗んだという話を耳にする。経理担当の明石から派遣社員の若宮を送り込んだのは「ランカージョブ」という会社で担当者は藤堂という男だと聞かされ、隠れて働きに出ている店を光弘が知り潰しに掛かっているのではという疑惑が生じてしまう。 かくして信じていた相手に対する疑惑が生じた夫婦の仲に生じた溝はやがて殺意へとエスカレートしてゆき…… おう、読む前は「共作」というスタイルに些か不安があったが、サクサク読ませる小気味の良い作品に仕上がっていた。後書きによれば執筆は夫である光弘が殺害の罠を仕掛けるパートを藤石氏が書き、その罠を咲奈が回避し報復とばかりに光弘に対するトラップを仕掛けるパートを辻堂女史が書いて送り返すというテニスのラリーの様なスタイルで行われたらしい。いわばミステリ作家二人による「知恵比べ」という形なのだが、これがテンポの良さに繋がりサクサクと読める良作を生む結果になったかと。 話の方は割と単純で純愛願望が故に妻の浮気を許せない光弘と自分を専業主婦と信じている夫の知らない所で外へ出て働いていた咲奈が自分の生きがいである店を潰そうとしていると思い込んでしまった咲奈が自分の疑念をエスカレートさせてしまい殺害目的のトラップ合戦を始めてしまう、というのが主な筋書き。 こうかくと序盤からどぎついトラップを仕掛け合うのかと思われるかもしれないが、序盤の方は「近所の野良猫に引っ掛かれて感染症に」とか「塩分がやたらと濃い料理を食わせ続けて病気に」とか互いにやたらと遠大極まりない手段にこだわるので思わず「お前ら『コロリころげた木の根っ子』してんじゃないよ」とツッコミを入れてしまう羽目に(「コロリころげた木の根っ子」が何か知らんという人は藤子F先生のSF短編を読む事)。 ただこのユルい、ほぼコメディのノリである序盤があるからこそ、次々に見えてくる「結婚しても気付けなかった部分」が夫婦の疑惑と「実は相手は本気で自分を殺しにきているのでは」という不安、「殺られる前に殺らねば」という焦燥感をエスカレートさせていく様が引き立つし「加速感」も味わえるのだ、とも言える。 後半戦は割とガチンコの殺し合いであり、互いに仕掛けるトラップも本格的で大掛かりなものへと変貌していくのだけど、その「本格さ」とは裏腹に表面上は互いに「愛し合う夫婦」を演じようとしているギャップがそこはかとなく面白い。表紙に描かれている様に互いを抱きしめている風を演じながら片手では凶器を構えている様なアンビバレンツさを楽しむ趣向となっている。それはもう「お前らこの段に及んでも仲良し夫婦演じ続けるのか」と呆れる位に。 そして遂にこの「仲良し夫婦」の仮面が砕け散るクライマックスに至るのだけど、そこまで読者が付き合わされてきた「仲良し夫婦」と「殺し合い夫婦」という二枚の絵の他に「第三の絵」が突如姿を現す事になる。正直、この仕掛けには「おっ!」と声が出るほど驚いた。コメディタッチで描かれ続けてきた夫婦の殺し合いの裏で進行していたもう一つの真実が読み返せばきっちり伏線を張られていた事に気付かされ、あまりの見事さに拍手喝采。一気に「第二のクライマックス」へと突入するスピード感が素晴らしい、トップスピードと思わせて実はもう一つ上のギアが用意されていた様な驚きに満ちていた。 欲を言えばこの夫婦のキャラの作り込みをもう少し掘り下げて欲しかったという部分はある。具体的に言うと光弘が妻の不貞を許せない性格を築いた過去なんかをもう少し詳しく描いて欲しかった。愛情に対する渇望を持つに至った経緯なんかをより強調していれば後半にかけてエスカレートしていく殺意に更なる説得力を持たせる事が出来たんじゃないかと思うのだが…… とはいえ作家二人が夫婦の各パートを担当して頭脳合戦という趣向は想像以上に楽しかったし、何よりリズム感が素晴らしかった。「小説は一人で孤独に書くものだ」という固定観念が吹っ飛び、こういう創作スタイルもあるのかと目から鱗がポロポロ落ちた感もある。二人のミステリ作家による「ラリー小説」、二人の作家のどちらかに少しでも興味がある方には間違いなく楽しめると思うし、そうでない方にも新奇な趣向をお楽しみいただければと推させて頂きたくなる、そんな一冊。 | ||||
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