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egut さんのレビュー一覧

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レビュー数33

全33件 1~20 1/2ページ
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No.33:
(3pt)

シャーロック+アカデミー Logic.2 マクベス・ジャック・ジャックの感想

シリーズ2作目。前作は必読の続き物のシリーズです。
1作目は面白かったのですが本作については読み物として苦しいのが正直な気持ちでした。

孤島全体にホログラム処理され、見えるものが実在するのか映像なのか不明な状況で起こる事件。
ファンタジー小説なら幻惑魔法がかけられた状態。SFならVRなどゲーム内で起こる事件とイメージすればよいです。
アニメ化など映像化されれば映える画になると思うのですが、文章から現状がどういう状態なのかイメージがわかず辛い読書でした。おそらく著者の頭の中のイメージを勢いよく描いたと思われる文章であり、構成や校閲が煮詰まってなく感じました。状況把握が読みづらい為に事件が起きても盛り上がらず、登場人物達がどこで何をしているのか、今は誰の視点の文章なのかちんぷんかんぷんでした。

一方キャラは活き活きしていました。特に表紙左のフィオ先輩。というか本書はフィオ先輩の色々な側面を魅力的に描きたかった作品であるとも感じます。ライトノベル特有のエロ可愛もいい感じで、学園ものの主人公を狙うハーレム要素が面白さを期待させます。あとラストのとある人物の続投の構成は面白い。仮に本書を読まずに1巻→3巻と読んでも違和感がない登場人物構成になるのは見事でした。ただ言い換えると本書単体では突然の意外性を作ってみただけとも感じてちょっと雑で勿体ない。キャラや物語の内容は好みなので今後に期待です。

▼以下、ネタバレ感想
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シャーロック+アカデミー Logic.2 マクベス・ジャック・ジャック (MF文庫J)
No.32: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(3pt)

そして、よみがえる世界。の感想

表紙とタイトルに惹かれて購入。表紙のイラストが綺麗。
期待値が高かった為か、作品との相性が悪かったのが正直な気持ちです。

身体を動かす事ができない身体障碍者が脳(思考)で操作可能なデバイスにより介護ロボットを動かして自分自身を介護するという、近未来的な世界観と技術は面白く読めました。仮想現実や医療を交えたエンタメ作品です。

正直な所、設定上の問題かもしれませんが、他のSF作品や有名どころのアニメで見知っているような設定が多く感じられました。そして悪い事に本書の中盤までは非常に分り辛く教科書を読んでいるような気分で惹きこまれませんでした。相性の問題かもしれません。中身が把握できない説明主体の物語が展開されて、それを読まされたような気分です。それでいてどこかで見知っている設定達なのでそのイメージで補いながらの読書でした。
中盤から物語が稼働し始めてよくなるとはいえ、その時点では気持ちが離れてしまった読書でした。

※その他売り方について小言っぽくなりますが思う事を。
帯には【『同志少女よ、敵を撃て』につづくアガサ・クリスティー賞大賞受賞作】としてPRされています。版元の気持ちを察する印象です。本書の物語を純粋にPRするのではなく、わざわざ『同志少女』の名前を載せて、アガサ・クリスティー賞の自社の賞をPR。作品の帯がこれでは受賞者にちょっと失礼ではないでしょうか。作品内容からSFの読者を増やしたい意図も含まれているのだろうなと感じた次第。アガサ・クリスティー賞はまた迷走してしまったように感じました。
そして、よみがえる世界。
西式豊そして、よみがえる世界。 についてのレビュー
No.31: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(3pt)

絶体絶命ゲーム 1億円争奪サバイバルの感想

児童書ミステリのデスゲームもの。
著者は角川ホラーにてデスゲーム作品を出している人です。同角川からの児童書レーベルでどのようなデスゲームを描くのか期待していた次第。ですが正直な感想としては期待し過ぎだった気持ちでした。

物語は賞金1億円を求めて、それぞれの事情がある者達がデスゲームに参加するというもの。
デスゲームの定番要素となる、集められた男女10名、ゲームのルール、報酬とペナルティのお約束は守らています。が、肝心のゲーム内容が面白くない。理由は行きあたりバッタリで敗者が決まり、知的な感じが全くない為です。結末から考えればルールの存在意義も感じませんでした。

端的に言うと、本書はゲームの駆け引きが描かれていない作品。
プレイヤー同士の頭脳戦がない。不注意で死んだり、相手の影響がなく勝ったりと、ゲームにおけるキャラ同士の接点が弱く戦っている感じがしませんでした。この場合、小学生の読み物として類似ジャンルを例えると、妖怪ものや学校の怪談の部類の本であると感じます。本書はデスゲームの舞台を扱っただけで、キャーキャー怖さを描くだけの本という印象でした。とすると小学生低学年向けなのですが、中身にははっきり死が描かれているので低学年には読ませ辛い。内容とターゲットが少しミスマッチな印象を受けました。

まぁでも版数を重ねて売れているので子供には刺さっている内容なんだなと、気持ちの差を感じる一面を得た次第でした。
絶体絶命ゲーム 1億円争奪サバイバル (角川つばさ文庫)
No.30:
(3pt)

夜葬の感想

日本ホラー小説大賞読者賞。
科学が発達した現代において、ホラー小説の怖さや面白さをどのように表現するか気になる所。受賞作品なのと本屋で目に留まったので手に取りました。本書は現代要素のスマホ、アプリと、『リング』をリスペクトしたと感じる「呪いの本」を用いた現代と旧世代のハイブリットを感じる作品でした。

呪いの本に触れると、顔をくり貫く「どんぶりさん」に襲われる。
「どんぶりさん」という名称の語感の良さ、顔をくり貫く気持ち悪さ、スマホに着信通知されるタイムリミット感など、設定はとても良かったです。が、文章や会話文が軽いのが難点。若者口語体なのでオドロオドロしさや緊張感が感じられません。せっかくの「どんぶりさん」の不気味さに対しての緊張感がないので行動や場面がギャグやジョークのようにも感じてしまった次第。

ホラー特有の得体の知れない何かが人外の言葉で喋るという不気味な表現をアプリ通知の文字化けで現していますが、雰囲気が軽いので不気味に見えない。送信者が文字コードをミスったバグかなーとかそんな風に思ってしまった時点で作品にのめり込めていない気持ちになりました。
夜葬 (角川ホラー文庫)
最東対地夜葬 についてのレビュー
No.29:
(3pt)

隣人の死体は、何曜日に捨てればいいですか?の感想

タイトルは面白い。が、中身と関係がない。

内容は、江戸時代にあった五人組制度を現代に適用された世界での物語。
五人組制度というのは近隣住人を組として、問題があった時の連帯責任や相互観察を行ったもの。本書はその五人組の1グループだけに焦点をあてられている。
正直な所、この特殊な制度を活用した物語という訳ではなく、単純に登場人物や空間的な舞台を狭め、犯罪の切っ掛けを作った導入だけの要素でした。5世帯の家族の中で死者がでており、犯人はこの5世帯の中の誰か。犯罪が露呈すれば連帯責任で全員が捕まってしまう。どうするか。と言った流れ。

ここまでの設定は興味を沸いて面白いのですが、中身が低俗なのが残念で好みと違いました。期待する知的な心理戦や協力犯罪、、というのとは異なり、住人間の脅し、騒がしいだけのパニック、アクセントの為のエログロ、という展開。予めB級ホラーとして手に取っていれば印象が変わったかもしれません。小規模な疑心暗鬼もので救いもない話なので好みに合いませんでした。
設定や仕掛けは面白いのに、読んでいて面白くない。残念。

▼以下、ネタバレ感想
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隣人の死体は、何曜日に捨てればいいですか? (メディアワークス文庫)
No.28:
(3pt)

トラップ・ハウスの感想

トレーラーハウスに閉じ込められた男女9名に襲い掛かる罠。シチュエーションは面白い。よくある孤島や洋館に閉じ込められるのとは違い、各自は何処かへ行くことができず、まとまった状況を作り出せる。ここまでは良い。
ただ、狭苦しい室内で罠を仕掛ける作品を作る事を考えると、打撲系なら物が落下、刺傷なら画鋲という具合に扱える道具が限られており、かなり地味になる印象が拭えない。ホラー作品なら、水攻め・毒ガス・感電・虫・襲い掛かる刃物でバッサリ。なんて具合で痛さや恐怖を演出して惹き込めますが、本作品はホラー的な恐怖はまったくなく、地味で罠もぬるい為に緊張感がありませんでした。罠については、手足を洋服や小物でくるんでみたり、針なら叩いて潰せば回避できるんじゃない?とか読者が回避方法を色々想像できてしまう内容。そういう事が出来ない状況設定や説明が本書にはないので、作り手が意図しない方向へ読者が勝手に想像してしまう誘導ミスの粗が多く気になりました。

読んでいて作者が違うのかな?と感じる次第。ただ、突然な動機設定や企業エピソードを盛り込んでくるのは著者らしさを感じますのでやっぱり本人かと思う次第。んー。。。この当時、忙しかったのかな。そんな事を感じる作品でした。

▼以下、ネタバレ感想
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トラップ・ハウス (光文社文庫)
石持浅海トラップ・ハウス についてのレビュー
No.27: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(3pt)

少女を殺す100の方法の感想

うーん。これは評価に悩ましい本ですね。
著者の『鬼畜系特殊設定パズラー』という路線での作品作りはとても期待しております。出版社の売り出し方なのかもしれませんが、グロ系の異質な状況における本格ミステリ作品はなかなか出会えないので今後も続けてもらいたい所であるのです。
そんな中での感想となりますが、否定というより応援の気持ちを込めて色々思う所を書きます。

グロ系の話については問題なく好みに入ります。ぐちゃぐちゃなホラーも読むのでその設定で評価を下げる事はないという所を伝えた上で、本書のグロ表現は単語集に感じました。デビュー作の『人間の顔は食べづらい』の時も感じたのですが、グロい言葉を使うだけで、感情や五感に響かないのですよね。血飛沫やら内臓やら性器やらウ〇コやらの気分を害しそうな単語が頻繁にでるのですが、何も感じません。ホラー作品のグロ表現では、匂いだったり、痛さだったり、ねっとりした皮膚感覚だったり、読者に感覚を想像させて吐き気を催すような文章表現を感じますが本作にはないです。あえて気持ち悪さを削っているのかもしれませんが、そしたらグロ表現はノイズに感じます。グロい所にミステリ仕掛けの意味があればよいですがそういう事もないので作品スタイルの強みが弱く感じてしまいます。もっと目を背けたくなるような表現で鬼畜を表し、だけど本格ミステリの刺激が癖になる。そんな個性を強みとして持ってもらいたいと思いました。

本格ミステリ要素について。本書の中では『少女ミキサー』『「少女」殺人事件』が楽しく読めました。『「少女」殺人事件』は面白いですけど、ネタ集の部類なので短編らしいな。と思う所であります。

タイトルについてですが中身と合っていません。
100の方法を感じるハウダニット作品に感じますが違います。各短編での被害者の合計が100人な話です。で、100人や20人の必然性がないので、商業的戦略で大量殺人にして、100の数を使ったタイトルにしたかと思ってしまいます。どんな方法だろう?思いながら本書を手に取るわけですが、その期待の内容が中には描かれていないので残念な読後感になってしまいます。
まぁ、出版事情として手に取ってもらえる切っ掛け作りや売れれば正義で大事な所なのですが、期待するものと中身が違うと評判は悪くなり今後に響くのではないでしょうか。余計な心配なのですが、なんか残念な気持ちをとても受けました。

総じて、本格ミステリとしての仕掛けの設定は面白いです。
ただ『特殊設定パズラー』だと多くの作家がいるので埋もれる。そこで『鬼畜系』を加えていて個性を作っているわけなので、その内容がよりよくなる今後を期待します。
少女を殺す100の方法
白井智之少女を殺す100の方法 についてのレビュー
No.26: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(3pt)

イノセント・デイズの感想

率直に言うと嫌いな本ですね。
もう、出てくる人物達との感性が全く合わない。その為、本書はより一層他人事な気持ちであり傍観して物語を眺めていました。
とすると誰にも感情移入できない為、可哀想とも怒りも起こらずです。日本推理作家協会賞なので何か面白い仕掛けがないかなという期待を求める読書をしていました。それも叶わずでした。

ま、内容が嫌いとはいえ本書の物語はとても読み易かったのが好感。
世の中のニュースで飛び交う事件の数々。人相や雰囲気、凶悪犯罪者のテロップ。読者がやっぱりねと感じさせる加害者の悪い過去の表現たち。凶悪犯罪者は本当に凶悪な犯罪者なのか?そんな外見の印象の裏にある内面や人との関わりの複雑さが描かれていました。

正直な所、他人はあくまで他人で本心なんて分かりません。
本書の物語にしても皆の願いが叶ってハッピーエンド!としても別に良いですし、何も救われないでバッドエンド。。どちらでも捉えられるわけです。
明確的な解答を示すのではなく、物語に触れて読者はどこにどう感じるかお任せですね。好きなキャラクターがいればその視点で幸か不幸か示されるのですが、全員嫌いなタイプな為に勝手にすれば状態でした。
日々垂れ流される事件のニュースの1つに過ぎず、何も記憶に残らず通り過ぎる物語でした。

▼以下、ネタバレ感想
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イノセント・デイズ (新潮文庫)
早見和真イノセント・デイズ についてのレビュー
No.25:
(3pt)

いくさの底の感想

戦争の特異性を活かした戦争ミステリであり、本書の状況だからこそ起きた事件という固性がある小説です。

著者作品はデビュー付近の作品を読んでいます。2017年度ミステリランキングで久々に名前がでたので手に取りました。
久々に読みましたが率直な感想として気軽に読めなくて難解になっていると感じました。特徴ある戦争色が強くでた内容で、作品を楽しむには戦争・組織・国の情勢の知識が必要、またはそれらに興味が無いと頭に入ってきません。ビルマ戦線、重慶軍、中国政権など、単語や当時の情勢のイメージが沸かず、自分には状況を楽しむ以前の問題でした。時代や軍隊など無駄な解説がない200P台のコンパクトさは良いので、戦争ものが好きな人が楽しめるかと思いました。歴史小説や戦争小説が嫌いなわけではないので、本書は単純に合わなかった模様です。
人物像も浮かばず、淡々とした文章が状況だけ書かれているように感じ、当時のレポートを読んでいるような気分でした。
いくさの底 (角川文庫)
古処誠二いくさの底 についてのレビュー
No.24:
(3pt)

くりかえす桜の下で君との感想

あらすじの設定はとても好み。ループ世界に閉じ込められ、脱出する方法が同じ境遇の仲間の誰かと恋人になる事。
脱出する為の条件が新鮮でした。どのような展開がなされるのか期待が高まっていたのですが、本作は好みに合わずです。

主人公には、元々告白しそびれた好きな人がいたのですが、ループ世界から抜けられずに暮らしていると他の人が気になり始めるわけです。この心理・恋模様を見せられるのですが、浮気のような"好き"の感覚が軽くて共感できず。そして、ループ世界の必然性がありません。この内容の恋愛話では、どこか遠くへ連れ去られてしまった境遇でもよさそうです。

確かにこの世界に長く滞在していた桜庭視点では世界観に意味が生まれるのですが、読者が追体験する主人公視点では浮気模様を読んでいるような気分でした。
主人公視点の魅せ方がとてもミスマッチ。ページの半分以上を桜庭視点で描いた方がもっと深く共感できる世界と物語になると思いました。

▼以下、ネタバレ感想
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くりかえす桜の下で君と (メディアワークス文庫)
周防ツカサくりかえす桜の下で君と についてのレビュー
No.23:
(3pt)

ゴースト≠ノイズ(リダクション)の感想

好みの問題で、相性が悪かった作品でした。

主人公は、生きているのか?幽霊なのか?どっちつかずのモヤモヤの読書。そんな中、同級生間のスクールカースト、家庭問題、小動物殺傷事件……。提示された複数の問題が何処かへ収束させるのかなと思いきや、必然性があるわけではなく、終始悲観した話の雰囲気要素となっていたのが好みに合わずでした。

読後の解説で腑に落ちたのは本書は多面性を持った作品であるという事。
ミステリではなく青春小説としてみた場合、プチいじめのような状況の中で、社会や同級生との関わりにおいて主人公がどう成長するかの物語を感じる事が出来る……かもしれない。まぁここは好みです。

好みの点としては、格言的な比喩が面白かったです。
短いバトンは落とせない。破れても傷つけずにおかない紙ヤスリ。等、独特な表現が印象に残りました。

元々電子書籍の自費出版物なので、編集して内容をまとめたというより、著者の想いが散りばめられている作品の印象でした。
ゴースト≠ノイズ(リダクション) (創元推理文庫)
十市社ゴースト≠ノイズ(リダクション) についてのレビュー
No.22:
(3pt)

桜と富士と星の迷宮の感想

恒例のアレ系技巧作品。
いやー、、、なんというか作品を作る苦悩を感じました。
今度の倉阪先生は何をしてきたのか?と、読者は期待して手に取ってしまうので、見抜かれないように趣向を凝らしていくわけですね。もう何度も何年も繰り返された結果、本作はまた新しい要素を加えた超絶技巧となったわけです。ただその結果、読み物としての物語への代償が大きく、楽しめるストーリーが皆無に感じました。技巧と解説と保管するテキストで構成されている本でした。

これは読者の好みの問題で、技巧だけ楽しむか、物語も楽しみたいのか。技巧と物語のバランス作りの難しさですね。本作は技巧9:物語1ぐらいの感覚で、凄いんだけど楽しめなかったのが正直な感想です。
余談で表紙がとても綺麗です。

▼以下、ネタバレ感想
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桜と富士と星の迷宮 (講談社ノベルス)
倉阪鬼一郎桜と富士と星の迷宮 についてのレビュー
No.21:
(3pt)

ホテル1222の感想

吹雪の中、列車事故が発生。近くのホテルに避難したものの、そこで殺人事件が発生する。外はマイナス20度の猛吹雪。作者のクリスティに捧げる意気込みや、シチュエーションが最高!と思って購入したのですが、個人的には期待外れの内容でした。

実際読んでみると乗客の数は200名超え。1人、2人と被害者が増える中、登場人物の発言で『そして誰もいなくなったを思い出した。』とクリスティとの結び付けの表現があるのですが、いやいやいや、先長っ!と、ツッコミ入れてしまう心境です。

ミステリとしてもクリスティ的なサスペンスとしても惹き込まれる要素が自分にはありませんでした。また、実は本書がシリーズの8作目だった事に若干困惑。主人公の同性愛の設定がシリーズ序盤で社会へのメッセージとなっていた事や、途中で現れる知人など、本書から読むと設定がわからず混乱してしまいました。

さて、舞台となるホテル『フィンセ1222』は実在するホテルでした。読後知りましたが、読む場合は最初に見ておくと良いです。
『連絡通路が車両でできている』事や、200数名の乗客が猛吹雪の中到着できる線路近くのホテルなど、どんな感じなのか、あまりイメージが掴めなかったのですが、実在するホテルの外観を見て合点しました。
フィンセはスターウォーズEP5の撮影場所になっていたりと、知る人は知っている有名スポットな模様です。

勝手に期待してしまった事もあり、ミステリとしては好みに合わない本でしたが、ノルウェーの気候や人柄、観光スポットを知るうえでは楽しめた本でした。
ホテル1222 (創元推理文庫)
アンネ・ホルトホテル1222 についてのレビュー
No.20:
(3pt)

FAKE OF THE DEADの感想

特殊な環境の心理模様に定評がある著者の作品ですが、この作品は正直好みに合いませんでした。

あらすじ通り、ゾンビが存在する世界を演じる物語。
『死体が蘇る……』と訴える精神病を患ってしまった深雪の為に、ホームセンターの閉ざされた空間内でゾンビが存在する世界を演じて、深雪を認めてあげながら徐々に正気を取り戻す治療を試みるお話。

読者に対して序盤から虚構を明かしている為、ゾンビに襲われる!というイベントが起きても緊迫感がありません。
ホームセンターやら演出などは確かにゾンビ映画の定番を活用しており、分かるネタが見つかるとクスっときますが、それでも何か滑稽な演劇を見ているような気分でした。

思わぬ闖入者が混じり虚像劇がうまくいかない展開や、そもそも何故深雪がこのような精神病になっているのかなど、謎やサスペンスの要素はある事はあります。
ただどうも他の著者の作品と比べると、脱出したい、生き残りたい、といった渇望の目的がありません。今回は各人の狙いがバラバラで根幹となる目的がよく分からず、どこにも感情移入ができなかったので面白さが感じられませんでした。

面出しの状態で本屋で並べてあったのですが、、、何か話題になったのか。ただの書店員の好みだったのかと不思議に思う次第。

▼以下、ネタバレ感想
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FAKE OF THE DEAD (メディアワークス文庫)
土橋真二郎FAKE OF THE DEAD についてのレビュー
No.19: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(3pt)

望んでいたシリーズとは別物の作品でした

『死神の精度』の続編で本作は長編。
率直な感想としては好みではない。前作が好きだっただけに期待値が上がってしまいました。
まず、自分が気に入っていた死神像の千葉は短編で活きているんだと気づきました。普通の人間と感性が違い、一般人とはちぐはぐなになってしまう会話も短編毎で初対面の人物同士のやりとりではクスっとくるのですが、長編で同じ人物とずっと続けていると、この人たち大丈夫か?となります。作中でも苦労してそうで、千葉さんは不思議な人だ。と、割り切ってまとめている様子が感じられました。
物語はどうかと言うと、作者の他の作品でも感じる『悪意に満ちたキャラクター』が登場するのですが、それが強調されすぎています。悪意のキャラはサイコパ スであり、主人公の娘を殺した後日からのストーリー。主人公達はこのサイコパスへの復讐劇の話でして、悪意でドロドロしていて重く、千葉が登場する死神のシリーズとは別でやってほしかったと言うのが正直な感想です。
話を和らげようとする千葉のコミカルさはなんか苦しかったり。結末もなんだかしっくりきませんでした。
死神として関わる生と死を考えるような題材は本作は弱く、千葉のユニークなキャラクターを使ったという、望んでいたシリーズとは別物の印象でした。

▼以下、ネタバレ感想
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死神の浮力
伊坂幸太郎死神の浮力 についてのレビュー
No.18: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(3pt)

去年の冬、きみと別れの感想

ミステリとしての複雑な舞台模様と登場人物達の内面に潜む異様な雰囲気が文学的で印象に残りました。
ただ、個人的に複雑で雰囲気が重いものは苦手な傾向です。
異様な雰囲気も文学では強烈な設定かもしれないですが、ミステリだと普段から殺人事件やら異常な犯人や事件を読み慣れてしまっている為か、刺激が弱かった気持ちでした。好みではなかった為、この点数で。


▼以下、ネタバレ感想
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去年の冬、きみと別れ
中村文則去年の冬、きみと別れ についてのレビュー
No.17: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(3pt)

スキップの感想

読中は色々と揺さぶられて良い本だとは思いますが点数は好みの問題で。

なんと表現したら良いか複雑ですが
真理子に起きた年齢がスキップしてしまった現象は、
第三者視点の読者と文章により、
綺麗で前向きに感じさせられてしまいますが、
我に返って考えれば、これは相当な悲劇です。

家族や関わる仲間たちに恵まれている暖かさを強調し、
全体的に柔らかで光が差し込むような心地よい印象を持たせてますが、
私にはそれが強がった仮面のような印象を受けてしまいました。

もっと真理子がパニックになってドロドロしていれば好みかと言えば違うのですが、
何と言うか他人事な気分で読まされた感じだった次第です。

疎外感はあったものの、
物事の教え方や学内の雰囲気はとても良い印象でした。
これは、著者が国語の先生という事もあり、
とても温かみのある言葉や感情がよかったです。

▼以下、ネタバレ感想
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スキップ (新潮文庫)
北村薫スキップ についてのレビュー
No.16: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(3pt)

模倣の殺意の感想

この作品については何も背景を知らずに、本屋に並んでいたのを購入して読みました。
1973年に「新人賞殺人事件」のタイトルで本書が出版。
実に40年以上前の作品でした。
タイトルを変えて復刻されていた本書を読みましたが、
やはり時代を感じさせる文章や内容で、正直な所、読書の足取りが重かったです。

ただ、この時代からこう言うトリックを施した推理小説があったという
歴史的な意味が知れたのは良かったです。

▼以下、ネタバレ感想
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模倣の殺意 (創元推理文庫)
中町信模倣の殺意(新人賞殺人事件) についてのレビュー
No.15:
(3pt)

衣更月家の一族の感想

2013年の本格ミステリ大賞候補作。
ミステリー・リーグからの発売も相まって本格物を堪能しました。
個人の好みによるのですが、とても読書感が重かったです。
重いのは内容ではなくて、派手さがないというか、ズッシリと複雑な話です。

1つの手がかりから紐解く展開・・・とは違い、
全体像を掴みながら内容をしっかりと把握して読書をしないと、
ただややこしい。難しかった。緻密だ。固い。と言った印象だけが残り、
真相の驚きを味わえなさそうです。

とてもしっかりした作品なのですが、好みとは違うのでこの点数で。

▼以下、ネタバレ感想
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衣更月家の一族 (講談社文庫)
深木章子衣更月家の一族 についてのレビュー
No.14:
(3pt)

かいぶつのまちの感想

『少女たちの羅針盤』に続く2作目。
前作の結末後の話なのでネタバレなしに1作目は先に手に取られた方が良いです。

前作が好みで期待値が上がり過ぎてしまったか、
今作は謎と登場人物たちの魅力は分散していて複雑さが残った印象でした。

後輩達や先生方など関わる面々がドロドロしており、
なんか足を踏み入れては行けない所に来ちゃった不安だけが残ります。
そんな雰囲気なだけに前作で苦手だった渡見が自分の思いに真摯で輝いて見えました。

羅針盤のメンバーにまた会えたのは嬉しかったのですが、
言い換えれば、夢中になれた読みどころはそこかな。。

作中作の演劇のシナリオの「かいぶつのまち」は面白いと思いました。
演劇のシナリオは魅力があります。
またいつか羅針盤のメンバーが活躍する話を楽しみにしてます。
かいぶつのまち (光文社文庫)
水生大海かいぶつのまち についてのレビュー


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