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egut さんのレビュー一覧

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レビュー数738

全738件 421~440 22/37ページ

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No.318:
(5pt)

初恋ロスタイムの感想

勉強に明け暮れていた男子高の生徒が、決まった時刻から1時間だけ世界の時間が止まる状況に遭遇。
時間停止の中、女の子と触れたいと男子心が騒ぎ、別の高校へ行ってみると動ける女の子と出会う。

まぁ、ベタな青春物語です。
SFらしさやミステリらしさは正直ありません。時間停止モノですがSF的な深い介入はなく、そういう設定として捉えます。
とにかく時間が停止した中で女の子と出会い、ひとときの青春を味わうお話でした。

初心な男女の恋愛模様は微笑ましいですし、時間停止ならではとして動物園の檻の中に入るデートなどは楽しそうだな。とか、最後の方で一応の真相があるのですが、これと言って尖った要素がないド定番の流れなので可もなく不可もなしでした。

綺麗にまとまっているので安心して読める青春物語としては良かった。

▼以下、ネタバレ感想
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初恋ロスタイム -First Time- (メディアワークス文庫)
仁科裕貴初恋ロスタイム -First Time- についてのレビュー
No.317: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)
【ネタバレかも!?】 (1件の連絡あり)[]   ネタバレを表示する

人工知能が犯人。SF倒叙ミステリ。

傑作。SFならではの驚愕の真相と着地。これはすごい。SFとミステリの見事な融合作品です。
20年前の作品なのに人工知能が流行った近年に読んでも遜色がないどころか、よりリアルに感じるのも凄い。

地球とよく似た惑星探査の為に1万人規模の宇宙大旅行。その宇宙船を制御・管理するのは人工知能のイアソン。人工知能イアソンが1人の女性を殺害するシーンから始まる倒叙ミステリです。

さらにクローズド・サークルとなった宇宙船の『舞台=犯人』という図式も特異なポイントです。全編が人工知能視点で描かれますが、館内カメラおよびマイクは自由にアクセス可能なので神の視点で登場人物達の会話・行動を把握できるのです。もう、この設定だけでも興奮でした。凄い事を思いつくものです。

SFや人工知能というと固い小説かな?なんて思ってましたが、人間臭いユーモアとちょっと抜けた感覚で軽く読める。それでいて犯人視点なので、何を考えているんだ?という不気味さのアナログ感もよい。
終盤の探偵役の人間と人工知能のバトルも見ものでした。

かなり特徴的な要素が豊富であり、SFミステリとしては外せない作品でしょう。
市場在庫が少ないのが難。たまたま見つけて入手できてよかったです。オススメ。

▼以下、ネタバレ感想
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ゴールデン・フリース (ハヤカワ文庫SF)
No.316:
(7pt)

恋する殺人オーディションの感想

現代風デスゲーム作品。

日本一のアイドルグループを結成すべく集められたのは日本一の【容姿】【歌唱力】【ダンス】【頭脳】【演技】【性格】に該当する6名。監禁模様が動画サイトでリアルタムに公開。視聴者が購入する投票権によって順位が決められ、最下位には死が待っている。

デスゲームもので狂った非現実作品かと思えばそうとも思えなくて、アイドルが結成される背景や舞台装置など、かなり現実的で違和感がないため、読んでいて惹き込まれました。閉じ込められた女の子達の反応もありそうな行動を起こしていくのでとても良いです。
1000年に一度のアイドルや,2ch,ニコニコ動画など現実の用語を使いながらその雰囲気を脳内補間させているのも個人的にはアリです。現実に起きたら同じような反応になりそうな所が巧い。読者層を考えたエンタメ作品としてよかったです。

頭脳戦の作品ではないので、そこに期待はないのですが、時勢ネタを取り入れた今だから楽しめるデスゲーム作品として読んでいて面白かったです。サクッと読めるライトなミステリでした。

▼以下、ネタバレ感想
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恋する殺人オーディション (メディアワークス文庫)
御影瑛路恋する殺人オーディション についてのレビュー
No.315:
(3pt)

桜と富士と星の迷宮の感想

恒例のアレ系技巧作品。
いやー、、、なんというか作品を作る苦悩を感じました。
今度の倉阪先生は何をしてきたのか?と、読者は期待して手に取ってしまうので、見抜かれないように趣向を凝らしていくわけですね。もう何度も何年も繰り返された結果、本作はまた新しい要素を加えた超絶技巧となったわけです。ただその結果、読み物としての物語への代償が大きく、楽しめるストーリーが皆無に感じました。技巧と解説と保管するテキストで構成されている本でした。

これは読者の好みの問題で、技巧だけ楽しむか、物語も楽しみたいのか。技巧と物語のバランス作りの難しさですね。本作は技巧9:物語1ぐらいの感覚で、凄いんだけど楽しめなかったのが正直な感想です。
余談で表紙がとても綺麗です。

▼以下、ネタバレ感想
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桜と富士と星の迷宮 (講談社ノベルス)
倉阪鬼一郎桜と富士と星の迷宮 についてのレビュー
No.314: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

君が電話をかけていた場所/僕が電話をかけていた場所の感想

『君が/僕が電話をかけていた場所』のタイトル違い2冊が上下巻です。
文章の空気感や不思議なストーリーが良いです。単純に好みの物語でした。

顔の醜い痣のせいで交友関係も築けず人生を悲観している主人公。小学校時代の思い出の中で痣を気にせず接してくれた女の子がいたけれど、痣のコンプレックスのせいで僕なんかと釣り合わないと避けてしまう。そんな主人公が高校生になった時、謎の公衆電話からの女の賭けによって痣を消してもらうが、再開した女の子は顔に痣をおって自殺しようとしていた。という始まり。
『オペラ座の怪人』や『美女と野獣』の男視点の主人公物語といえばイメージしやすいです。逆の立場になった時、さらには新たな困難を知っていく中で恋の結末はどうなるのか。という話かと思いきや、もっと複雑になって先が読めない展開でした。

著者4冊目ですが、今作も女の子が魅力的ですし、頭に浮かぶ情景がとても綺麗。固くなくすんなり入る文章が好みでした。ミステリとしては広義な位置付け。恋愛ゲーム系のストーリーが好きな人には刺さります。ネタバレなく細かい事は言いづらいですが、暗雲立ち込めるテーマの中でこの読後感は気持ち良い作品でした。

▼以下、ネタバレ感想
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君が電話をかけていた場所 (メディアワークス文庫)
No.313:
(8pt)

SFファーストコンタクト+法廷ミステリ

著者本、初読書。
容疑者がエイリアンという変わった法廷ミステリですが、これが新鮮で面白い。

人類が初めて宇宙人と遭遇したファーストコンタクトから始まり、容姿や言語や価値観の違いなど、異星人への興味好奇心が登場人物達同様に夢中にさせます。人類は左右対称の2対に対して、現れた異星人は前後左右の4対からなる生物(表紙の異星人)。前後にも腕や目や内臓が存在するといった設定がしっかりしていて惹き込まれます。

価値観の違いを活用したミステリの経験はありますが、相手が異星人となると精神面と肉体的な物理面が異なるので、何が起きるか予想できません。中盤からは法廷ミステリとなり、1つずつ細かく事実を突き止めて行くのが見ものでした。

終盤のまとめ方も爽快で、SFとしてもミステリとしても二重に楽しめた傑作でした。
他の作品も面白そうなので追っかけてみようと思います。

▼以下、ネタバレ感想
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イリーガル・エイリアン (ハヤカワ文庫SF)
No.312: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

戦場のコックたちの感想

なんというか粗がなく完成度が高い作品。点数はジャンル的な好みから。

第二次世界大戦中のアメリカ後方支援部隊の視点で描く日常の謎。
戦争という非日常が舞台なので、戦火の中では当たり前の出来事が盲点的に刺激となりました。
読書前はミステリと料理が絡むのかな?と思ってましたが料理の話は少な目。というか他の戦場の様子の密度が濃いゆえの感覚。ミステリというより青春小説の印象です。
戦争中の悲惨な様子も描かれていますが、陰鬱な気持ちにならなず冒険物として読める文章の爽やかさは良かったです。

日常の謎ジャンルのミステリは刺激が弱くあまり好みではないのが影響して本作もミステリを読んでいる気分ではありませんでした。ここは好みの問題です。ですが終盤のまとめ方は、ミステリ、青春物、戦争の社会的メッセージなどがうまくまとまった瞬間で楽しめました。

▼以下、ネタバレ感想
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戦場のコックたち (創元推理文庫)
深緑野分戦場のコックたち についてのレビュー
No.311: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

偽のデュー警部の感想

傑作でした。80年代の作品ですが、見落としている名作がまだまだあると痛感しました。

ジャンルとしてはミステリ仕立ての喜劇です。
喜劇というと低俗なギャグもの?と誤解が生まれそうですし、殺人事件が起きているので喜劇は無いだろうと指摘を受けそうなですが、文章・構成・会話がセンスある笑いを誘います。訳者あとがきにもありますが、実在するチャップリンが出てくるあたり、その雰囲気を狙っている本でもあります。

話の序盤は妻の尻に敷かれる40代の歯科医の夫が20代の患者女性と良い関係になっていき、苦悩や願望や人生の刺激などのロマンスが展開されます。ロマンス小説から妻殺害への犯人視点の倒叙ミステリとなり、さらには予想外の事が発生し探偵役に選ばれてしまうドタバタが混ざり、男性=犯人=探偵という不思議な構図になるのも魅力。この設定をどう味付けするかが作家の技ですが、クスっと笑えるやり取り豊富のユーモアな小説に仕上がっているのが良かったです。
実在するクリッペン事件やルシタニア号沈没やチャップリンといった時代の雰囲気が感じられるものの導入は作品にも関係しており効果的。
それでいてラストは見事な形での幕切れという、とても良い作品でした。


▼以下、ネタバレ感想
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偽のデュー警部 (ハヤカワ・ミステリ文庫 91-1)
ピーター・ラヴゼイ偽のデュー警部 についてのレビュー
No.310: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

映画→本書の順序がオススメ

凄い書物に触れてしまいました。内容の密度がとても濃く読み終わるまで1か月要しました。ただ、この期間は難しくて挫折の意味ではなく、数多く現れる内容から興味を持ったものを脱線して調べながらの読書だったためです。それでも正直わからない事だらけで、拾えるものが微々たるものでした。本書の凄まじさは読者が持っている知識に呼応して魅力が増す作品になっている所です。

いきなり本書に触れると返り討ちに合いそうなので、先人に習って以下の手順で自分は触れました。

■個人的なオススメの作品の触れ方
▽映画を見る(ショーン・コネリー主演、ジャン=ジャック・アノー監督)

▽下巻の解説を読む

▽本書を読む。

まず映画の出来がとてもよいです。本書のミステリ部分が強調された作品となっており、難しい知識が必要なく楽しめます。
1327年の修道院で発生した連続怪死事件をバスカヴィルのウィリアムとメルクのアドソの探偵&助手(書記)の2人が体験します。ピンと来ると思いますが、シャーロックホームズの設定を活用しています。ウィリアムの圧倒的な知識と洞察力で、修道士達の発言や行動、黙示録に見立てられたような事件現場や占星術や神学等、見習いアドソ&読者に教える先生のように推理と解説をしていきます。ミステリの面白さを十分に楽しみながら全体像を映像として把握できるので映画はオススメです。
次に下巻の解説を読みました。ストーリーは映画で把握済みなので、ネタバレ気にせず翻訳者の解説にて本書の背景がどういうもので、歴史や書物、著者専門の記号論がどのように扱われているかが感じ取れます。

この手順であれば、登場人物のカタカナ名に悩まされる事も場面混乱も回避でき、最大の魅力であるミステリを模した書物の迷宮を集中して体験できるでしょう。

個人的な感覚ですが、昔に体験した三大奇書の黒死館の衒学やドグラマグラの作中作の面白い意味でのパニック感を、数年経った今、学術的な要素で再体験した気持ちです。難しくて好みが分かれるかもしれないですが、そういう圧倒的なものに触れるのが好きな方にはささる作品です。

拙い知識でどう書いたらよいか悩むのですが、設定の数々である、時代や現場や言語体系やミステリ要素や書物に関する事、どれもこれもが外せずに絡んでいて、こうじゃなきゃ成立しない凄まじいバランスの妙の作品ですね。何かに気付いてもそれが必然になっている事に気づかされる。。。。うーむ、、、すごい。

▼以下、ネタバレ感想
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薔薇の名前〈上〉
ウンベルト・エーコ薔薇の名前 についてのレビュー
No.309:
(5pt)

スターティング・オーヴァーの感想

20歳の記憶をもったまま10歳にタイムスリップ。

よくある話では人生の逆転や成功を願う話になる所、幸せだった1周目を変えたくない想いで進行する設定が斬新でした。
もともと成功して不満なんてなかった人には、タイムスリップのやり直しは苦痛でしかないですし、道を外せばカオスのように結果が変わってしまい不満が募るわけです。

本書はその主人公の不平不満のような気持ちの独白で構成された話です。もともとこの話もネットのスレッド小説なので、誰かにちょっと話を聞いてもらいたい。といった気持ちの書き込みが淡々と流れてくるようでした。ネット文章が元ですが、相変わらず読みやすく文章が好みでした。

ミステリというより恋愛や青春ものに近い本書ですが、不思議な物語を味合った感覚で楽しめました。
スターティング・オーヴァー (メディアワークス文庫)
三秋縋スターティング・オーヴァー についてのレビュー
No.308: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

三日間の幸福の感想

余命わずかになった時、何を感じて何を行うのか?系の物語。老人や病気を扱った作品はいくつか思い浮かぶのですが、若者が自ら寿命を縮めるというのが新しく興味がわきました。ライトノベルのテイストで若い世代向けの青春・恋愛物としても読めますし、テーマを重く突き付けて厳しく文学的にも読める。読者層が幅広い作品でした。とても面白く心に残る作品です。

これ系のテーマは現実で悲観している時ほど、もっと人生を謳歌しようとちょっぴり前向きになる薬要素が生まれます。その刺激も心地よかったですし、主人公が余命の中でやりたい事リストを叶えていくにつれて起こる過去と現実のギャップの真相も心に響きました。

バッドエンドなのかハッピーエンドなのか、受け取り方は人それぞれ。
最後の話の閉じ方がとても素敵でした。タイトルの扱いも見事。

読後に知りましたが、元は2chの掲示板に投下された創作だったのですね。いやーすごいな。
サイトの性質のミステリとはちょっと違うのですが、好みの作品なので☆9で。

▼以下、ネタバレ感想
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三日間の幸福 (メディアワークス文庫)
三秋縋三日間の幸福 についてのレビュー
No.307: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

盤上の敵の感想

個人的な著者の作品イメージは、ほんわか・あったかな日常の謎なのですが、本作はそのイメージを払拭して、かつ、やりきった感じをうける程、悪意に満ちていました。
なので、冒頭に著者コメントで注意書きがあるように、作者買いで安らかな心を得たい方には不向きな作品です。
『盤上の敵』というタイトル通り、チェスをモチーフにしており、登場人物や、その背景、動機などは作品を作る上での駒と感じました。並べた駒(要素)の巧みさを本格ミステリとして楽しむ方、作品内の悪意の感情に気分を害される方、どの視点で見るかで評価が分かれるかなと思います。今でいう『イヤミス』のカテゴリに該当する作品です。当時はイヤミスなんて言葉は無かったので、より話題になったと思われます。

著者コメントにより、イヤミス前程で読めた為、悪意の影響は軽減され、仕掛けの面白さで楽しむ事ができまして、終盤は何度も驚かされました。この話を構築する為に悪意は必要な要素として配置されていると読後に感じた次第です。

▼以下、ネタバレ感想
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盤上の敵 新装版 (講談社文庫)
北村薫盤上の敵 についてのレビュー
No.306: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

リプレイの感想

記憶を保持したまま過去に戻れたら……。人生をもう一度やり直したい、あの時別の行動をしていたらと、やり直しは誰もが一度は思う。
競馬や投資で大金持ちになる事や、恋人を変えて別の家庭を築いたり、膨大な知識や経験で作品を残したりと、率直な感想としては羨ましい限りであります。と、同時に43歳の命日に来ると必ず死んでしまい、それまで築きあげたものが無になる虚無感も物凄く伝わって来ました。
小説で物語で読むという行為は他人の人生を経験する事でもあります。現実的な人の夢を繰り返し体験する主人公の姿が1冊に収まっており、読者が読む時期によって作品から感受する点が異なる事でしょう。

作品の難をいうと、60年代のアメリカが舞台という事で、社会的な内容の理解と共感が得づらかったです。また、この手のテーマは読み慣れている事もあり、想像しうる内容に収まっていて大きな驚きなどのドキドキ感がなかったです。作品をしんみり味わう系の物語でした。

あとは身も蓋もないですが、仕事や恋人など、人生がうまくいく為には、まずお金が大事だという事が強調された印象でした。人・物・金・情報・時間という言葉がありますが、人の繋がりや物ではなく、金と行動が大事なように感じました。読む人によって違う心理学要素かも。

▼以下、ネタバレ感想
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リプレイ (新潮文庫)
ケン・グリムウッドリプレイ についてのレビュー
No.305:
(5pt)

ダンガンロンパ霧切 4の感想

3巻の『密室十二宮』編の続きなので、前作の読書は必要です。

なんだか物凄く駆け足の展開でトリックの問題集というかパズル小説の印象でした。3巻~5巻への繋ぎの印象でして、シリーズ物だからとはいえ事件が単品で完結しないのは個人的に残念です。

とはいえ、こういうコテコテの本格ミステリ模様で楽しめる作品は中々ないので毎回楽しみであります。作中の『枯尾花学園事件』については面白かったです。予め提示された黒の挑戦内容は、凶器:ろうそく、トリック:密室。雰囲気も合っていて短編ボリュームで終わらせるのは勿体ない作品でした。

事件以外の霧切&五月雨のストーリーについても本書では特出して進展がないので5巻に期待。もし文庫化するなら3~5巻はセットで1冊みたいな内容です。

余談ですが、著者の作品傾向として本シリーズと並行で少年検閲官シリーズが刊行されましたが、本書でのキャラクター×ファンタジー×本格のノウハウをオリジナルの少年検閲官シリーズへ取りこんで両シリーズがうまい相互作用で面白くなっている印象を受けました。

▼以下、ネタバレ感想
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ダンガンロンパ霧切 4 (星海社FICTIONS)
北山猛邦ダンガンロンパ霧切 4 についてのレビュー
No.304: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

オンラインゲームを題材としたミステリ

『超巨大密室』の意味は、オンラインゲームの仮想空間の事。

このタイトルはミステリ読者宛への商業戦略でしょうか?見事に釣られて購入後の読書で困惑。中身違うじゃん!と思い期待が下がりつつもとても面白かったので結果は良かった。サブタイトル化するなど、もっと中身に合ったタイトルが望ましいと思いました。
ネットゲームに特化させたミステリ小説という点で、事件内容、登場人物の設定がとても巧く扱われているのが見事。著者自身もネットゲームを相当楽しんでいると思われます。

読者としてはネットゲーム何それ?という層も当然いますが、そこを補完する仁菜というキャラが読者目線の役割を担っていてうまいです。ネトゲ廃人に紹介してもらい、初アカウントを作り、ギルドに入り、顔の見えない相手との会話に触れていく様がよく描かれています。
ネットゲームに惹き込まれている人の考え方が極端なのですが、かえって分かりやすくて楽しめました。また、あまりに思想ばかりだと読者がポカーンとしますが、それに対して前述の仁菜が、住む世界が違う人なんだと読者目線で溢してくれるので、作品内のネットと現実をうまく区別する役割にもなっています。

ミステリ模様としては、チャットログの会話文章の癖や誤字の頻度から人物を推察したり、ログイン・ログアウトの時刻から生活習慣を求めたり、RMTやらネット特有の方法で捜査をする様が警察小説を思わせて楽しめました。意外な伏線や作品のまとめ方も面白いです。

登場人物が限定的な為、真相を予想できながら読めてしまい驚きを求める人には向かないライトな小説な感じがします。ただ、ゲーム系ミステリが好きな方にはオススメ。
2年前の本ですが、ランキング系の雑誌に取り上げられていないのが勿体ないと感じました。たまたま本屋でタイトルを見つけての衝動買い。まぁ、そういう意味ではこのタイトルでもいいのかと複雑な気持ち。

▼以下、ネタバレ感想
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超巨大密室殺人事件 (角川ホラー文庫)
二宮敦人超巨大密室殺人事件 についてのレビュー
No.303:
(7pt)

KillerX キラー・エックスの感想

雪の山荘もの。シチュエーションは最高です。

同窓会のお知らせが届いた数名が恩師の住まいである深雪荘へ訪れる。久々に再開した恩師は事故で障害となっており、下半身不随の車椅子生活。そして言葉も発せず仮面を着けて過ごす有様だった。天候が荒れる中集まったのはよいが、同窓会の招待状は誰も送っていない事がわかる。何かがおかしいと、疑惑から始まる雪の山荘のクローズド・サークルものです。

思いつくガジェットは満載で、この雰囲気だけでも結構満足でした。
が、あまり評判が良くないのは終盤の真相の釈然としない気持ちでしょうか。雰囲気が真面目なのですが、バカミス作家が描けば失笑トリックな仕掛けが一部あるので、驚いたというよりモヤモヤ晴れない気持ちです。

先生や篤の過剰な行動がちょっとギャグに感じていましたが、2000年ごろはまだオカルトネタが多かったので時代を感じる作品なのかなぁと、思う所があった次第です。
あと2冊、類似本があるので追っかけて読んでみようと思います。こういうコテコテは好み。

▼以下、ネタバレ感想
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Killer X キラー・エックス (光文社文庫)
クイーン兄弟KillerX キラー・エックス についてのレビュー
No.302:
(5pt)

トリックスターズLの感想

推理小説を模った現代の魔術師の物語。シリーズ2作目。
1作目のネタバレを完全に伏せた形で2作目が進行しているのが好感。読んでいてクスっとくる話が満載でした。キャッチコピーの『嵐の山荘』についての緊迫感はほぼなし。意味が違うかな。

魔術師の物語としては面白く、世界に6人しかいない魔術師のうちの2人が行う魔術実験を軸とした物語の面白さ。佐杏先生のマイペースっぷりのブレないキャラクター像や、行動に違和感があればそれがちゃんと伏線となって話が繋がる構成は良かったです。
登場人物については1作目も感じたのですが、佐杏先生+主人公周+重要なキャラが目立つ形で特徴的に描かれてしまい、それ以外が空気になってしまっているのが分かり易くもありちょっと残念でもありました。

ミステリ要素は少量。シリーズものとしての内容でした。

▼以下、ネタバレ感想
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トリックスターズL (電撃文庫 (1174))
久住四季トリックスターズL についてのレビュー
No.301:
(6pt)

夏を殺す少女の感想

たまたま読む本が引いてしまっているのか、海外ミステリでは、誘拐、監禁、虐待の重いテーマに出会う事が多い。本書もその1つで気持ちが晴れずちょっと憂鬱。

2つの事件パートが最後に交わるのはよくある構成なのですが、視点が変わる事によって人物の役柄が不確かになるのが面白い。少女は被害者なのか加害者なのか。殺された人物は本当に被害者なのか。実は加害者ではないのか。女性弁護士は主人公なのか何かの被害者なのか。各人は別の役割なのか?ページが進む事で徐々に本書の背景に渦巻いている恐ろしい姿を感じる面白さがありました。

さて、本書は大分読みやすい本でした。最初に手に取って登場人物表を見た感じでは、馴染みのないオーストリア名な為、男女も区別できなくてチンプンカンプンでした。ただ、実際読んでみると誰が誰だか把握しやすいのでそこは巧いなと思います。上質なサスペンス映画を見ている気持ちでした。まぁ、ただやはり個人的にはかなり心境が重い本でした。その重さを少しでも軽くする為にラストはちょっと晴れやかにしたのかなと思いました。
夏を殺す少女 (創元推理文庫)
アンドレアス・グルーバー夏を殺す少女 についてのレビュー
No.300:
(7pt)

バビロン 1 ―女―の感想

好きな作家さんなので点数は好み補正。
シリーズ化を検討しているらしく、本作に"1"がナンバリングされていますが、本作だけでも楽しめます。

過去作を読んでいるうえで本作に触れた印象は、現実的で少し落ち着いている作品に感じました。
今までは読者が想像しない世界観を変わった方法で描き驚かせてくれたのですが、それが本作ではなかったのです。地道な捜査をコツコツ行う警察小説を読んでいるようで、野﨑まど作品なのかな?という印象です。
違う出版社なので、新レーベルの意向なのかもしれません。

ただ、後半は作者らしさが出ました。取り調べ辺りから、不気味な何かに触れてしまった感じがとても出てきてワクワクしました。

この設定のまま次作がどうなるのか気になる所ではありますが、正直な気持ちとしてこのシリーズ作品を描くなら別の物語を読みたいなと思った次第でした。

▼以下、ネタバレ感想
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バビロン 1 ―女― (講談社タイガ)
野﨑まどバビロン 1 ―女― についてのレビュー
No.299:
(3pt)

ホテル1222の感想

吹雪の中、列車事故が発生。近くのホテルに避難したものの、そこで殺人事件が発生する。外はマイナス20度の猛吹雪。作者のクリスティに捧げる意気込みや、シチュエーションが最高!と思って購入したのですが、個人的には期待外れの内容でした。

実際読んでみると乗客の数は200名超え。1人、2人と被害者が増える中、登場人物の発言で『そして誰もいなくなったを思い出した。』とクリスティとの結び付けの表現があるのですが、いやいやいや、先長っ!と、ツッコミ入れてしまう心境です。

ミステリとしてもクリスティ的なサスペンスとしても惹き込まれる要素が自分にはありませんでした。また、実は本書がシリーズの8作目だった事に若干困惑。主人公の同性愛の設定がシリーズ序盤で社会へのメッセージとなっていた事や、途中で現れる知人など、本書から読むと設定がわからず混乱してしまいました。

さて、舞台となるホテル『フィンセ1222』は実在するホテルでした。読後知りましたが、読む場合は最初に見ておくと良いです。
『連絡通路が車両でできている』事や、200数名の乗客が猛吹雪の中到着できる線路近くのホテルなど、どんな感じなのか、あまりイメージが掴めなかったのですが、実在するホテルの外観を見て合点しました。
フィンセはスターウォーズEP5の撮影場所になっていたりと、知る人は知っている有名スポットな模様です。

勝手に期待してしまった事もあり、ミステリとしては好みに合わない本でしたが、ノルウェーの気候や人柄、観光スポットを知るうえでは楽しめた本でした。
ホテル1222 (創元推理文庫)
アンネ・ホルトホテル1222 についてのレビュー