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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数738件
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文芸+ミステリ。
子供にとっての夏休みというのは、ある一定期間での出会いと別れがあり、青春小説の定番舞台。六甲の別荘にて男の子2人が出会った女の子とのエピソードから始まり、ミステリらしからぬ雰囲気のまま物語が始まります。 著者の本は初めてです。読んでいて、あぁ文章が綺麗だなー。表現が丁寧だなーと、国語の教科書を読んでいる気持ちになり文芸を味わいます。ミステリらしい謎は全く感じない読書でした。 時代は変わり、戦争前の昭和の物語に入ると登場する人物達がカッコよく魅力的。ベルリンで出会った謎の女性とのエピソード。時代を歩んで社を育てた翁の貫録のある行動やセリフ。この過去エピソードがとても楽しかったです。 そうこうするうちに物語は終盤に至り、あれ?これミステリだったの?どういうことだ?・・・あっ!となりました。 Amazonレビューなどでは「だまされた!」と言う表現がありますが、そういうトリック系の話ではなくて、表向きは文芸書。物語の裏側に謎がある系のミステリです。なのでミステリを期待すると退屈です。文芸書を読む感じで物語に浸る感覚で手に取ると良いと思いました。 物語の背景にミステリが存在する作品は好きな方なのですが、本作は、あまり乗り気になれませんでした。 文学にゆったり触れるより、刺激やワクワク感が好みだからかもしません。 あと、倉沢家の登場人物の把握に混乱して感動を弱めた気もします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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横須賀米軍基地の内側と外側が舞台の本格ミステリ。
日本でいながらアメリカの法律が適用される米軍基地の特殊な舞台。 基地の内側で発見された惨殺死体と基地の外側で発見された大量の血痕の関連性の謎から始まる『基地の密室』という問題が新鮮でした。 基地の内側と外側、事件現場はどちらなのか?被害者or犯人はどうやって出入りしたのか? 密室殺人でのテーマが基地の規模で行われている面白さがあり、さらに法律の違いから、基地の内側の米軍と外側の日本警察とで情報共有の制限が生まれ、今ある手がかりで事件を推理するロジカルな面も楽しめます。 本書を読む前は、警察小説のサスペンス的な本なのかと思っていたのですが、上記の密室問題。手がかりを得るための推理考察。最後は関係者を集めての推理披露の解決編。などなど、好きな様式の本格ミステリを味わえました。 また、作品の中に組み込まれているテーマや話題など無駄なく関連していたり、手がかりの散りばめ方が綺麗で読み直すと発見もある。かなり整ってます。 雑誌のランキングからは外れている作品なのですが、見落とされて読まれていないのでは?と思う気がするぐらい、よく出来ている作品だと思います。 好き嫌い分かれそうな要素もありますが、とてもよかったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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さらっとした学園ミステリ。人が死なない作品でもあります。
ミステリとしては謎や手がかりの魅力が弱く伏線と言った要素もないので物足りなさを感じました。 タイトルとなる『退出ゲーム』は即興演劇の頭脳戦。行動やセリフをその場で考え、巧く相手を出し抜いて舞台から退場できれば勝ちと言うもの。新鮮な設定で面白かったのですが、読中に条件が変化して行き、解決へ向けての展開に置いてけぼりにされてしまった印象でした。作品の背景は良かったです。 2話目の『クロスキューブ』は好み。遺品となる6面が白のルービックキューブの謎は、登場人物とともに何故こんなものが?と共感しながらストーリーが進行していったので最後の解決まで楽しめました。 学園物としてはキャラが明るくて可愛らしいです。特にハルチカの千夏が元気よいのが好感でした。 その明るさの影にただの日常の謎ではなく、少しテーマに毒っ気を加えている所も個性的で魅力でした。 |
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読み切った。。。何だかよく判らないままも、最後は不思議なエネルギーをもらって、凄かったぜ!!とテンション上がっちゃうような作品。
文庫版1500ページ。『煙か土か食い物』のように改行がなく、ひたすら文章が襲いかかってくる。それでいて内容は、帯にある『あらゆるジャンルを越境した…』の通り、ミステリをベースにSFやら哲学やらが、ぐちゃぐちゃに絡んできて、もうわけわからない・・・。なんだけど、最後まで読めちゃう文章作りが不思議で面白い。5,6冊ぐらい読んだ気分のボリュームでした。 読書前に本書は現代の奇書みたいな話を知っていたので、その感覚を踏まえて読むと、大分昔に読んだ奇書の1つ『黒死館殺人事件』を思い出しました。あの作品は、いきなり紋章学やら医学やらおかしな推理が始まって内容が把握できなくて、さらに言葉も古いからさっぱり頭に入らず眠くなった記憶がありました。が、本書は現代語なので、ちゃんと読めて分かりながら放り投げられる感覚が得られますので、奇書っぽいものを読みたい人には昔の作品より本書を薦められます。現代の奇書と誰が言ったか分かりませんが、的を射ていると思いました。 さて、表紙に書かれている女の子が探偵ディスコなのかと思いきや、探偵は30代男性のアメリカ人でハードボイルド寄り。手に取った時と最初にページをめくった時とでギャップを食らいましたが、この後の展開のインパクトを思い返すと軽いジャブにもなっていない些細な事。迷子探しの探偵が救出した女の子の梢の中に未来の梢の魂が入りこんで序盤から魂やら未来話やらで哲学やSFが展開して、その後のパインハウスを舞台に探偵達の推理合戦が開始。密室、暗号、見立て、などミステリの定番から星座や神話やらと衒学的に話が飛んでいきます。 話の整合性やらロジックなどは真面目に考えても仕様がない状態なので、探偵達が語る話を受けるがまま脳を刺激される印象で読み進めました。 なんといいますが、話の全貌やネタバレ的な事を仮に語ったとしても、その要所要所では本書を把握する事はできない作品です。 作品に触れて、四方八方に話が発散する中に、自身がどんな所に刺激を受けるかという文学的な作品で、どう表現したらいいか分からないぐらい、作者凄い。と思う次第です。 著者の中に『好き好き大好き超愛してる。』という作品があり、いろんな設定での愛の姿がありましたが、本書もディスコが梢を想う愛が根底に敷かれているように感じましたし、全部包み込んだ外側に作者の気持ちを感じました。 |
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タイトルや表紙の絵柄通り『不思議の国のアリス』をモチーフにしたミステリ。
アリスの世界観が活きていて、会話が噛み合わない独特の雰囲気が健在。 登場キャラクター達の会話の可笑しさにクスっときました。 夢の世界では不思議の国のアリスに登場するキャラクターになっており、その夢は登場人物達と共有されます。 夢と現実世界はリンクしていて、どちらかの世界で殺されると、本当に死んでしまいます。 ※最初の事件は夢の世界でハンプティ・ダンプティが塀から落とされ死亡。ハンプティ・ダンプティになった夢を見ていた人が現実世界で死亡する。 本書は、夢or現実で事件を起こしている犯人は誰なのか? と言う、謎から始まる特殊なミステリです。 現実世界と仮想世界がリンクする物語の定番要素である、誰がどのキャラクターなのか?の割り当てを感じながら読書をしようと思いましたが、会話主体の構成の中、不思議の国のアリスの世界観での噛み合わない会話に混乱してしまい、あまり事件は意識せず世界観に浸る感じで読みました。 最後の展開は好みが分かれる所だと思いますが、アリスの世界観と著者らしさを十分に感じる作品であると思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ほんわかすると言うか、感動的で、よかったなぁ。と、読後しみじみする作品でした。
書籍区分はミステリですが、恋模様や不思議な事がおきる広義のミステリ。中身は恋愛小説に近いです。 登場人物達が基本みんな良い人で、恋の邪魔に感じる所もそれぞれが前向きに行動している結果なだけなので、 何が起きていても基本的に嫌な気持ちにはならず、読んでいて気持ちが良かったです。 序盤は、万年筆の話が面白く、最近はPCや携帯で文字を打つので、ペンで文字を書く機会が減ったな…とか、 作中に出てくる万年筆を調べてみたら凄いオシャレで興味が沸いたりと、楽しみながら読みました。 香恵の初々しい恋模様や、伊吹先生のノートが良きメンターとして活用され成長していく流れなど、とても心地よい作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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日本の高齢化社会、介護問題を改めて突きつけられ、なんとも言えない気持ちになりました。
ミステリ要素は弱め。ただ、ミステリの形式を借りた社会派小説としては一級品です。 扱われている伏線も社会的なテーマの為に存在していると感じました。 裁判にかけられた犯人の供述から始まる冒頭。 犯人が行なった犯罪は、在宅介護に苦しむ家庭を探し出し、老体を自然死に見せかけて毒殺して周った事。 殺人=罪で悪い事だという人間的な感情がありますが、介護に苦しんだ家庭にとっては地獄の日々が終わり、救われた気持ちも芽生える事から、殺人が必ず悪ではない状況が生まれている問題を読者に投げかけます。 正義の立場である検事をキリスト教徒とし、度々現れる教えの扱いが凄い。 黄金律である、 『人にしてもらいたいと思う事は何でも、あなた方も人にしなさい』 この言葉の意味を本書の介護においてみた時、介護の苦しみを終わらせてほしいという希望を叶えた犯人の行動は正しかったのか?道徳的に考えさせられます。キリスト教徒の検事の葛藤が何とも言えませんでした。 犯人、キリスト教の検事、介護会社の社員、現場の介護スタッフ…。それぞれの視点から描く高齢化社会の問題。お金が無ければ安全地帯である老人ホームの施設に入るのも難しい。また介護者達の時間、金銭的、精神的なストレスなど、今は身に覚えなくても将来自分が高齢になった時、社会や家族はどうなるのか。とても考えさせられました。 誰が犯人なのか?と言ったミステリの下地はありますが、それを考える暇がない程、この本書の掲げているテーマは深いもの。 読後将来について不安を感じる後味は辛いですが、一読の価値はある作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これは面白かったです。
好みはあれど、児童や初心者も、ある程度のミステリ好きも楽しめそうな万人向けな作品だと思いました。 個性的で好みなので加点。 白雪姫をモチーフに、なんでも答える「魔法の鏡」が存在するファンタジーミステリ。 『鏡や鏡!真相を教えてちょうだいな』 と、鏡に聞けば、事件はどうで、動機はこうでと、絶対的な真実を教えてくれます。 まず、解答が先に提示されてしまう可笑しさがあります。 それでミステリとして楽しいのか?と言う点については、本作は工夫が凝らされていて、鏡を持つ女子中学生のママエの探偵業の設定が活きています。 依頼人から悩みを相談され、鏡で答えを聞いて、答えだけ依頼人に告げると、何でそんな事知っているの?実はグルだったの?と、真相は正しいのに、話の道筋が無い事で疑惑が生まれる悩みを抱えます。ここからミステリの面白さが生まれ、何故その真相に行き着いたかを導き出す所が、それまでの些細な出来事に深みが生まれ驚かされます。 よくあるミステリの、『事件発生→推理→真相』で真相がすごいと印象を受ける感想とは違い、『発生→真相→推理』の順序だてで、最後の推理に注目が集まり、過程や伏線に驚きを得るのが刺激的でした。 本書は、2部構成で上記の雰囲気が第1部。 読者が舞台の概要や登場人物達を把握した所で、悪い名探偵に鏡の存在がバレ、あらすじ通り命を狙われてしまいます。 第2部は、非現実の超アイテムの魔法の鏡と、超頭脳の悪役名探偵の事件模様に変わります。 漫画のデスノートをイメージすると伝わりやすいかもしれないですが、これがまた発想外で面白い。 入り込み易い周知の白雪姫のモチーフ。ミステリ要素、何でも知る事ができる鏡のアイテムなど、個性的な設定。 現実的な深みを求める人には合わないかも知れないですが、軽い雰囲気も好感触で読んでいて凄く楽しかったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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前作の『黄昏に眠る秋』に続く冬の2作目。シリーズ作品となっていますが、前後の関係性は殆どないので、今作から読んでも問題ないです。
冬の灯台、観光客がいない時期のひっそりとしたエーランド島。派手さがない情景や雰囲気と島の人々の模様を描く静かなミステリ。幽霊やら、日本のこっくりさんのような要素もでてきてオカルト色が強いです。とはいえ、ホラーや恐怖の派手さもなく、幽霊要素は雰囲気の1つに取り込まれている感じです。 私自身の記録の為にも感想を残しておきたい所なのですが、特徴的な派手さがないこの手の作品はどうやって感想を書いたら良いか悩む次第。 ここがいい、あれがいい。と言うのではなく全体的な雰囲気が神秘的で、読後良かったなと思う作品です。 静かな冬の空気感を味わう文学ミステリ。 いろいろな賞を受賞している本作ですが、日本の受賞作品で感じる、仕掛けや論理や推理展開とは違った評価が、海外ミステリで行なわれているんだと感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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キャラ立ちや設定がよくて事件も把握しやすい。読みやすい海外ミステリでした。
窓際族のように警察内の地下室に新設された部署へ追いやられてしまう主人公のカール。 未解決となった事件を再調査すると言った名目の部署ですが、1度は警察が組織で調べた事件であるのに、それを1人で再調査という無理難題、閑職もいい所。そんな中、アサドと名乗る1人の部下が得られるのですが、この変人がいいキャラしていて、日本の小説でよくある、警察+変人(探偵)のタッグのような感覚が馴染みやすく楽しめました。 作りが巧いのが、人物構成と同時平行して展開される、未解決事件の猟奇性。 現在→未解決事件の過去→現在→未解決事件の過去・・・ と交互に展開される話の中で、サブタイトルにある監禁された状況の緊迫感が与えられます。 緩急つけた話の構成は、最後まで読ませるリーダビリティがありました。 主人公カールの家族は?アサド何者だよ。今後の特捜部Qの活躍は? など、シリーズの次作を期待させる内容としても十分で、面白い本に出会えました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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2作目も満足。シリーズが楽しみになりました。
前作ファンの期待に答えるロジカルな推理が健在。前作は1本の傘。今作はモップとバケツの手がかりから真相を導き出していく思考錯誤は楽しいです。 警察が高校生に事件捜査を頼ったり、アニメオタクな探偵など、読者を選ぶ要素がありますが、私は金田一少年の事件簿系統の学園かつ本格物はとても好物なのでハマります。 11人の容疑者から犯人を特定していく流れについても、前作同様に推理の過程が丁寧。 ○○だから、数人一気に除外という荒削りな消去法はなく、1人1人丁寧に論理的に除外されていきます。 犯人が絞り込まれていく過程は読んでいて大興奮でした。 ただ正直な所、事件やトリックなど特出して印象に残るものではありませんでした。また、分単位で事件を検証する所に、そんなに正確な時間をみんな意識して行動しないよなぁ、と感じたり、本当にこれが唯一の解なのか?と思えたりとするのですが、 そんな細かい事は気にせず、なんか推理している様子が単純に楽しいと思える作品なのが好みです。 2作目だから水車館をもじった水族館についても、言葉だけではなく、ちゃんと水族館ならではの事件・動機であり、とても考えられていて面白かったです。 また、製本の見返しや、しおりひもも水族館ぽく青に染めてあり、色々とこだわりを感じました。 次回作も楽しみです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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海外物は異常な登場人物やバイオレンスなど、日本にはない刺激的な要素でスリルやサスペンスといった作品に出会う事が多いのですが、本書はそれらとは違う作品です。
非常に刺激がない。 秋から冬にかけての哀愁漂うシンミリした雰囲気。 メインの登場人物は老人でスピード感がでるアクションはなし。 ここら辺の感覚から好みに合わなかったり退屈に感じてしまうかもしれません。 単に私が中盤までページの進みが遅かっただけですが。。。 が、読み終わってみればミステリ文学といいますか、 作品に張られている伏線がミステリとしての面白さを感じ、 舞台のエーランド島の空気感やそこに住む人々の模様を味わえるよい作品でした。 読む前のオススメですが、 本書の舞台となる、『エーランド島』をGoogleの画像や地図検索で視覚的に見ておくと、より作品に入り込めます。 何かの手がかりというわけではないのでご安心を。 石灰岩の荒地や平野の何か物寂しい感じを一層引き立てると思います。 20年前に子供が行方不明になって悲壮感漂いながら暮らしていた母ユリア。 介護施設で暮らす80歳近いユリアの父 イェルロフ。 人生の終盤で、季節でいうところ冬の一歩手前と言うところ。 今頃になって何者かから子供の靴が届く。 子供は生きているのか?行方不明になった時、何が起きたのか? 現在と過去を繰り返すよくある構成の中で、読者は物語の真相を知っていきます。 読者は過去も見れるので、登場人物達より多い情報量で話を把握して行くわけですが、 ここがなんというか魅せ方が巧かったです。 途中まで面白さが分からなく読書が大変だった為、好みの点数はそんなに高くないです。 2作目以降は同じ舞台や登場人物で内容把握が容易らしいので、より楽しめそう。 続けて読んでみようと思います。 |
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デス・ゲームものは多種多様に昔から存在していますが、本作は現代風に世に出した作品。という印象を強く受けます。
それぞれ固有の能力を持つ、16人の魔法少女が生き残りをかけて、ルールに則した戦略を立てたり殺し合いを行う娯楽作品です。 本作を読むにあたって類似の作品が思い浮かぶ事だと思います。 例えば、『バトル・ロワイヤル』や『インシテミル』では、それぞれの異なる道具を得られ、生き残りをかける。山田風太郎の『忍法帖』なら忍術。少年漫画では多いですが、能力バトルものは、時代に合わせたエンタメ作品として世にでてます。 本作は2011年度のアニメ、魔法少女まどか☆マギカの影響も多分に感じましたが、それは時代に合わせてアニメ・ライトノベル読者層に買われる事を狙った商業本としてアリだと思います。 ネタばれではない話で。 変身したら魔法少女ですが、変身前は普通の子供だったり、男だったというアバターのゲーム要素や、この手のデス・ゲームをライトノベルに落とし込んだ商品としては、売れる客層を考えらている、よくできた作品だと思いました。16人のバトルに対して300ページ台のコンパクトな作品にまとまっているのも読みやすくて良かったです。 登場人物紹介で、読者に対してだけ各人の能力が明かされている試みが面白いと思いました。 事前に把握できているので、能力の混乱や置いてけぼり感はまったくなく、能力の相性バトルが楽しめます。最後まで誰が生き残るだろう?というパズル小説のような楽しみがありました。 欲を言うと、ミステリ読みなので、その視点で考えると、意外な展開や驚きの仕掛けが無かったのが物足りなかったです。魔法やアバターを活用した、本作ならではの仕掛けが欲しかった次第であります。 適当発言ですが、実は敵だと思っていた相手の本体が仲の良い友人や兄弟だったり、複アカで2人の魔法少女が同一人物だったり、とか。。そんな感じの、デスゲーム以外に、何かしら本作の設定だからこそできる驚きの真相が欲しかったと思いました。 そういう本ではないのは承知ですが、そんな事を思った次第です。 単純な萌え娯楽小説かと思いきや、意外とダーク。みんな一人ぼっちで何か心に抱えている様子など世界感に合っていて良かったです。 |
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終盤まで何の本だか分からず、どこに落ち着くのかと思いながらの読書でした。
表紙からライトノベルの体裁ではありますが、軽くなく、一般書のような印象でテーマは重かったです。 小学校内で起きたとある事故。 クラスメートのN君は死に、主人公の僕は全身麻痺で瞼も指も何一つ体を動かす事ができない。 脳波から意識が正常なのは分かっているので、お見舞いで足を運ぶ母親や友人が語りかけてくる日々。 事件からたびたび訪れる、クラスメートだった菜々子さんもその一人。 3年経った今、菜々子さんは、身動きできない僕に、あれは、事故ではなく事件だったと語り出す。 まず、面白いと思うのはシチュエーションです。 全身麻痺の僕に、一方的に語られる事故の概要や思考の流れを話します。 僕は、語られてくる話に、正しいとも、違うとも、質問など、反応ができない。 ミステリ本で、読者が一方的に探偵の真相解説を読まされている印象と重なりました。 その時に起きる疑問、そうだっけ?そんな事あったかな。と、合間に起きる思考を主人公の僕が回想する構成です。 また、探偵は何故推理してそれを披露するのか?そんなテーマも感じた次第です。 事故で終結した出来事を掘り返し、別に犯人がいようがいまいが、何とも思っていない場の状況で何故語るのか。 ライトノベルで見られる、思考回路がちょっと捻くれたキャラクター達の心理が面白い所でした。 語り手と受け手の心理模様。何故語るのか。 ここら辺が私の面白かったポイントです。 好みに合わなかったのは、イジメ問題などの人間関係、小学校内のコミュニティでの陰鬱な所を強く読まされた所。 あまり心地よいものではなく、全体的に暗い感じなのが合わなかったです。 |
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傑作。読後にズッシリとした余韻を得た作品は久々です。
『江戸川乱歩賞』『少年犯罪』どちらも個人的に肌に合わない作品が多くて敬遠してましたが、乱歩賞の中で数少ない好きな作品の『13階段』の高野和明が解説を書いていたのを知ったのと、評判の良さから手に取った所、とんでもない食わず嫌い本だったと思い知りました。 少年法により加害者の情報は保護される。被害者は事件で家庭が壊さたのに更にマスコミや大衆にさらされ精神的な苦痛も味わう。法による理不尽さを痛感しました。 そりゃ、加害者を見つけて殺したいとも思う気持ちもわかる。夫、桧山の暗澹たる心模様を感じながらのスタートで、冒頭の電車内で、はしゃぐ少年達を見る視線から『被害者』という存在を強く感じた次第です。 加害者の1人が何者かに殺された所から物語が展開していくのですが、その広がり方が凄かった。 『事件』と言う点の周りに存在する『被害者』『加害者』それぞれが事件後、どんな事を思い、過ごしているのか、何故その事件が起きて加害者になったのか。 少年犯罪の更生とはなんなのか。波紋が広がり全容が見えた読後、色々と感じ、得られるものがある体験となります。おすすめ。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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何度も繰り返される世界でのタイムリープは好きなんですけど、本書は合わなかったです。
あらすじとタイトルから感じる期待とのズレが大きかったのかもしれません。 驚きのネタがいくつかありますが、本書に限っては、最初に明かしてしまってからの方が、登場人物達のセリフや行動が把握できて読みやすかったのではと思いました。 謎が謎のまま進行するのに対して、先が気になる魅力がありませんでした。先に設定を伝えてから読んだ方が、そういう本だと分かって楽しめそうです。 ただ、強烈に印象に残りました。 この手が好きな人が一度は考えそうなネタを商業紙でやっている本は、あまり知りません。独特で記憶に残る1冊ではあります。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ゴミの山からビニール袋などを漁り、売って生活する子供たち。場所の縄張りなど、普段感じた事がない価値観の違いをミステリを通して触れる事ができる読書でした。
ストリートチルドレンが街中で拳銃で殺されようが気にも留めないと警察が発言するシーンは気持ちに響く物がありました。そんな一般の人からは煙たがれ見向きもされない子供が、殺され、顔を赤く塗られる見立てが何故行われたのか。と言った謎が生まれます。 ただ、本書は謎解きよりも、貧困や人権問題などの影の部分を、詩的な文体で読めるのが魅力でした。 晴れているのに傘をさしているのは観光客だ。と言うのが印象的。小雨でも年中湿度が高い所では晴れの扱い。感覚の違いでハッとさせられるシーンが多かったです。 |
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これは掘り出し物のミステリでした。
タイトルから歴史小説を感じさせており、2013年度の各ミステリのランキングでは圏外で、失礼ながら注目度はなかったと感じる本書。ランキングについては締め切りぎりぎりの出版だったので、10月ではなく、11月に出版していれば来年度ランキング30以内には名前が載っただろうなと感じる次第です。 完全にスルーしていたのですが、口コミでの評判の良さを知って手にとった所、なかなかの掘り出し物でした。 あらすじにある、本格推理小説の名の通りです。 期待度が低かったのに対して、この手法をこの本でやってきたのかと驚いたので、見慣れた仕掛けも使い方次第だと改めて感じた作品でした。 伊藤博文しかり、津田うめなど、実在の人物もよい塩梅に登場しており、歴史ミステリが苦手でも気にする必要なく、当時の雰囲気を味わった気持ちになる楽しい作品でした。 読み終わってから感じる人が多いと思いますが、構成が絶妙です。良かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ホラー小説としての受賞作品ですが、中身はSFミステリ。
自身のコピーが知らない所で発生し、日常を活動されるというのはホラーとしての恐怖は存在しますが、いったい何故?何が起きているのか?と言った真実を知りたい欲求が恐怖より強く思ったのでミステリと感じます。 ミステリには双子ものがありますが、容姿だけでなく思考回路まで完全にコピーされたドッペルゲンガーが扱われるという新感覚な物語。 人間のクローンを扱ったSFミステリとして、西澤保彦『複製症候群』を当初思い浮かべながら読みました。複製症候群の方はコピーされた方はその存在がそのまま残り続け、本体との差が生まれていくのですが、本作の『バイロケーション』は、出現したコピーが一定期間で消失し、また出現する時はその時の本体の容姿・記憶を新たにコピーされて出現するという設定が一品です。 また、設定だけでなく、手がかりや違和感の小出しがうまく、早く真相が知りたいという欲求が強い読書でした。 著者の本は以前『リライト』を読んだのですが、読者の気持ちを考えられているような作りが良いです。 伏線や設定も良く考えられていて、とても印象に残る作品でした。面白かったです。 好みの話なので☆8+1で。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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