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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数773件
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んー…これは評価が分かれそうな小説ですね。
特殊な舞台での本格ミステリ。幾人による推理合戦や一筋縄ではいかない結末が非常に面白い。ただ、粗がとても目立ち、共感できない所が多々あります。細かい事を気にせずミステリの謎を楽しむのか、世界観を含めて楽しむのかで好みに影響するかと思います。 物語は、新型ウイルスの影響で肉が食べられなくなった後、自身のクローンを食用肉として認可された世界。食用クローンとして、人間を飼育して加工する施設で働くものを視点としたミステリです。 ドロドロした内容はないのですが、人を飼育したり加工したり食したりという雰囲気に気持ち悪さを感じる人は避けた方がよいでしょう。 個人的には特殊な世界観で、ぶっ壊れた刺激も好むので面白く読めました。登場人物達も倫理観が程よくずれているのもよいです。毎日食用人間の首を切断する加工部の人間と、こっそり育てられた食用人間のチャー坊。どちらも人間であるので牛や豚と違って言葉を話すんですよね。『てめぇは食べるために作られたんだ』といった会話が中々強烈です。 人々の会話は非常に面白い反面、世界観が舞台装置の記号・設定になってしまていると感じました。 人間を加工する部署がある。廃棄物処理センターがある。施設の入り口はここにある。という感じで舞台は説明調なのです。人間が飼育されているので、生生しい声が聞こえたり、匂いがどうだとか、その場の雰囲気がありそうなのですが、五感による空気感が感じられなかったのが残念です。 この工場は人間を加工しており、世界が注目するかなり特殊な工場だと思うのですが、セキュリティが甘々です。人が簡単に侵入できそうだったり、不審者がどうだとか、社員は自由に徘徊するなど、現実的に考えたらいろいろ納得できない所が生まれてしまい、齟齬が生じている気持ちになります。首だけ切り落として出荷って、毛や皮膚や内臓はそのままなの?冷凍じゃなくて常温?とか。細かい場が描かれず、謎解きの為に必要な設定だけが並べられていると思った次第です。 逆に言えば、描かれている事は謎解きの為に散りばめられた伏線だったり、推理合戦の材料だったりするわけなので、冒頭に書いたミステリの謎で楽しむのか、雰囲気も考慮して楽しんでいるかで作品の評価が変わると思う次第なのです。 細かい所はネタバレで。タイトルと表紙の気持ち悪さは好み。 文章は読みやすく強烈な設定が楽しめるので、今後の作品に期待です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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1957年の古典作品。永らく絶版で幻の名作となりましたが、創元推理文庫創刊50周年での復刊希望リクエストの読者投票で選ばれたのを機に新訳で復刊。その2009年の新訳版を読みました。
冒頭に記載されているのでネタバレではないですが、本書は『信頼できない語り手』の作品です。 叔父の遺産を相続し大金を得た事と、氷に足を滑らせて頭を打って断片的な記憶喪失になってしまったのを機に、仕事を辞めて故郷に移住した主人公。記憶障害の影響か、なんだか物はなくなり、住人に違和感もある、何か事件に巻き込まれているのか?いったい何が起きているんだろう……。という作品。 古い作品の為、現代ミステリでは見慣れた設定を多く感じ、これってもしかして、あれではないか?、これかも?と、読者は想像を巡らせると思いますし、その枠を大きく飛び越える事はないかもしれません。が、技の使われ方や場の雰囲気がうまく、ただの既読感で終わらないのが凄いです。 実は正直な所、新訳本での読書であるのに文章が読み辛く感じてましたし、語り手の曖昧さから内容の把握が困難で、中盤まで面白くなかったです。古い本だからハズレだったかなと思ったのですが、途中である仕掛けが発動して驚くとともに、それだけでは終わらず、その先へ継続するストーリー展開に惹き込まれました。 現代では、新しさを感じないと思う所が残念ですが、ネタの複合や使われ方でこう面白く化けるのかと上手さを感じる作品でした。タイトルも逸品で完成度の高さを感じます。 点数は、既読感の仕方なさと読み辛さの好みでこの点数。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これは1作目を読んでからの方が良い作品です。ストーリーの繋がりはないのですが、作風を事前に知る意味でです。
デビュー作の『○○○○○○○○殺人事件』では、ネタ本なんだけど、ただのネタだけで終わらず意外にも真面目で本格志向だ!と感心すると同時に、この作風からして2作目はどうするのだろう?と色々思っている所に早速2作目が刊行。『上木らいち』が探偵役の短編集。 援交高校生の名探偵の設定通り、下ネタや過激なネタを活用しているのですが、それが単純なネタだけでなく、その設定を活かしたミステリにしているのが見事。人によってはバカミスの部類になると思うのですが、前作同様に骨格は真面目にミステリをしているのがとても感じるのが良いです。 まぁ、ただホント、人を選ぶ作品ですね。 読後感として、後半の『橙』と『赤』の章は正直好みではありませんでした。『赤』の章に関してはやっている事は凄いのですが、それが面白さに感じられませんでした。『橙』自体も作風が変わってしまい、補足する為だけの存在に思えて可哀想になりました。この2章は他の作品に比べると後付けに感じてしまいました。 それ以外は総じて面白かったです。 『黄』の章の短いながらもしっかりミステリをしている話。『青』の本作ならではの、ぶっ飛んだ仕掛けは脱力ものです。 『上木らいち』自身もキャラが確立していて好感。サバサバしていて性格も良いですし特殊設定の探偵として個性的。読んでいて楽しいです。 この作風、3作目はどうするのだろう。。。と心配と共に期待してしまう気持ちがありますが、 作風が変わったとしても、作者の本格好きはとても感じるので次回作を楽しみにしてます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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素晴らしい作品でした。傑作。
いわゆる美術ミステリのジャンルなのですが、なんでしょう、薀蓄を語る系ではなく、自然と芸術世界の中に読者を連れて行ってくれるような万人向けの作品です。 絵画やクラシック音楽などの芸術作品は、その作品が作られた背景や作者の想いを読み解いていき、ミステリのように謎を明らかにしていく楽しみがありますが、事前に予備知識がないと楽しめない敷居の高さを危惧するところがあります。 ですが、それらは本書には杞憂で、美術を知らない人が読んでも楽しめる事に趣を感じます。 美術の知的好奇心くすぐる話も然ることながら、古書によるルソーとピカソの物語、織絵とティム2人の物語、ティム自身が上司になりすましたハラハラ感など、楽しみ所が豊富で夢中でした。これらが、堅そうな美術ミステリのイメージを払拭してくれます。 あとはなんと言っても美術に対する熱い想いがとても感じられる点。特に後半のピカソがルソーに投げかける言葉には熱いものが込み上げてきました。 さらに本書の素晴らしい所は、物語を読んで『はい、おしまい』ではなく、作中に出てきた絵画を知りたいと読者の未来の行動に影響を起こさせている点。今はネットがありますから作品名を検索してどんな絵画なのか調べてしまう事間違いなしでしょう。 物語を楽しみ、改めて絵画と向き合う。読者は本書と現実世界で再度体験できるわけです。これは凄い。 皆さんのレビューを見て、初めて手に取った作者でした。 よい作品を知り充実した読書でした。おすすめ。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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多くの死傷者を出した爆発事故の最後の1分間について、1章を1秒間として描く物語。
試みが非常に面白くて興味がわきました。最後の1分間を深く掘り下げ、爆発事故の被害にあった、ごく普通の一般人の人生の一コマを描いているわけです。 ただ、たった1分間の物語なのに非常に内容が把握し辛かったです。 まず、1秒を描く特性から場の状況を事細かに説明されます。会話文は秒数が掛かるので殆ど使用せず、誰々がどこにいて、何があって、周りはこんな状況でと言った具合の文章。さらに登場人物が60数名もいるので、人物と場面切り替えが頻繁で把握が困難でした。 これだけ多くの無関係の人々が一瞬の爆発事故で被害にあったんだと言う訴えはよく感じましたが、小説の面白さとしては、主要人物は10人以下でもう少し把握しやすかったらよかったのにと思う次第でした。 せめて被害者一覧や現場状況の図は本書冒頭にほしかったです。名前や場所が把握できるだけでも本書は随分楽しめやすくなると思います。 1秒の描写にしてはとても長く感じられるのも違和感でした。最後の5秒ぐらいはテンポが良かったです。 勝手な想像で、もしかしたら個々の行動を正確に追っていくと、被害者の入れ替わりや、事件の黒幕が中にいると言った仕掛けがあるのかもしれません。が、本書にはそれを読み解きたくなる魅力が得られなかったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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セックス×ミステリと言うコンセプトで作られた6作の短編集。
これは商品キャッチとしてはとても強いなと思いながら、どんな話を読めるのかと期待でした。 セックス物で思いつくのは、ハードボイルドの男女の関係や、女スパイ、くノ一等、ミステリと混ざると結構真面目な本が思いつきます。信頼関係を得て情報を得たり、裸の傷を調べたりと、行為に関係した何かによる刺激を期待してしまう所でしたが、本書は記憶のそれらと違い、半分は単純なエロ構成で、それが本当に必要なのか?と、読み進めるにつれて疑問を感じてしまったのが正直な気持ちでした。 官能部分も真面目というか固いというか、いやらしい湿り気ではなく、カラッとしていて妙なちぐはぐを感じた次第。 「おうっ」「ひゃうっ」「じゅん」と言った表現がすごく印象に残ったのですが、エロくて興奮とは違い、不思議な表現で覚めてまったというかクスっときたというか、表現が毎回同じなのは狙っているのかとか、余計な考えが浮かんでしまいました。 なんだか煮え切らない読書でしたが、『カントリーロード』は傑作の部類。 本書のセックス×ミステリ、男女の関係、短編での構成が見事に決まり面白かったです。 あと『見下ろす部屋』は、エロの必要性は感じませんでしたが良かったです。 短編集の短編の並びが、うまく落ち着いていると感じました。 作者らしい作品、表題、後半に真打、ラスト綺麗に終わる。並びが初出順ではなかったので、考えられていると思いました。 表題にもなっている『相互確証破壊』の結末については、思う所をネタバレに書いてみます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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扱うテーマは「生と死」であろうか。自殺願望、孤独、児童養護施設、ホスピス。絶望や希望の内面を描く物語。ミステリにおける事件が起こるわけでもないので、求心力が弱く感じましたが、文面は整然としいて読みやすく読書はあっという間でした。
作品内容の為か、登場する人物達にまったく共感ができなかったです。 正直扱いがアレでしたが、一番共感して、まともだと思えたのはベンツ(あだ名)でした。 なので釈然とせず、作品の意志と共感できない所が多い為、好みに合わずでした。 1年間何があったのか。その話の全容が分かった最後にやっとミステリらしくなって、なるほど。と楽しめた作品です。 テーマのわりに、終わりが爽やかにまとめているのが良かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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特殊な環境の心理模様に定評がある著者の作品ですが、この作品は正直好みに合いませんでした。
あらすじ通り、ゾンビが存在する世界を演じる物語。 『死体が蘇る……』と訴える精神病を患ってしまった深雪の為に、ホームセンターの閉ざされた空間内でゾンビが存在する世界を演じて、深雪を認めてあげながら徐々に正気を取り戻す治療を試みるお話。 読者に対して序盤から虚構を明かしている為、ゾンビに襲われる!というイベントが起きても緊迫感がありません。 ホームセンターやら演出などは確かにゾンビ映画の定番を活用しており、分かるネタが見つかるとクスっときますが、それでも何か滑稽な演劇を見ているような気分でした。 思わぬ闖入者が混じり虚像劇がうまくいかない展開や、そもそも何故深雪がこのような精神病になっているのかなど、謎やサスペンスの要素はある事はあります。 ただどうも他の著者の作品と比べると、脱出したい、生き残りたい、といった渇望の目的がありません。今回は各人の狙いがバラバラで根幹となる目的がよく分からず、どこにも感情移入ができなかったので面白さが感じられませんでした。 面出しの状態で本屋で並べてあったのですが、、、何か話題になったのか。ただの書店員の好みだったのかと不思議に思う次第。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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傑作。
スタートから最後まで、読書中飽きがなかったのも凄い。 いわゆる巻き込まれ型の作品で、主人公の青柳雅治はただの一般人。目立つ要素もない彼が首相暗殺の犯人にされてしまう。何がどうなっているか状況が分からない気持ちを読者と共有しながらの逃走劇は、スピード感や先が気になる気持ちが相まって止め時が見つからない読書体験でした。 著者特有の軽妙なセリフ回しは健在で活き活きしており、本作では細かな箇所が後々になって伏線として活用されるのが凄い。もう、その箇所が多く、あれもこれも繋がるのかと驚きます。会話や描写以外にも、青柳雅治に関わった人々の些細な行動が影響を及ぼす、人の繋がりの面白さを感じた次第です。 毎回気にする著作特有の悪意の模様については、本作は全然気にならなかったです。結末は人それぞれの好みでしょうが、個人的には爽やかに気持ちよく終わった印象でした。 余談ですが、チュンソフトの「街」や「428」という好きなゲームがありまして、これは街の中の関係ない人々の行動が終盤繋がっていくザッピングシステムのゲームなのですが、その良い感覚を本書で味わえた気分もありました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これは完成度が高い作品。あれこれ言う言葉がなく、読後の余韻が凄かった。
まず作品への没入感が凄かった。これは丁寧な描写と翻訳が巧く、映画を見ているかのように場面をイメージする事ができる要因が大きい。登場人物達も個性的に設定され、混乱する事もない。残酷な要素は読書の刺激を演出している。翻訳物を読んでいるとは思えない感じでスラスラ読めました。 3部構成で作られている本書。構成が実に巧い。部が変わる事に舞台模様がガラリと変わり先が読めない。物語の魅せ方が大変うまくて惹き込まれました。 好みに合わないと言うか個人的なつぶやきとして、 近年の海外ミステリは、女性被害を作品のキャッチによく使われているように感じます。日本と海外の違いだと思いますが、女性を監禁したり暴行したりの描写が海外作品には多く既読感があり、内容自体も然ることながら好みではない。警察についても職権乱用が激しく、特にアルマンは盗人じゃないのかと思える始末です。 さて、本作は先入観なしで読むのが良いです。 あまりにもランキングで紹介された為、販売戦略的なものかと避けていましたが、読んでみたら面白かったので、疑り深いのは良くないと個人的に反省。 海外作品なのに、とても読みやすいのが一番印象に残りました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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本書はとても書くのに苦労した作品なのでしょうか。そう感じました。
ダンガンロンパも本シリーズも好みで、要所要所は面白くて問題ないのですが、繋がりがバラバラでまとまっていないのが苦しいです。 さらには、発売前からキャッチコピーでPRされていた『難攻不落の密室十二宮』のテーマ。 聖闘士星矢模様?十二の密室で盛りだくさん!っと、思いきや、それは予告だけで全部の事件は本書では書かれず、to be continued...って、完結しないのか!事件が別冊に続くって……『十二宮』も無意味で、ただ多く見せて宣伝しただけだったり、、、それはどうかと思いました。 300Pの前半は事件とは関係ないシリーズの物語の橋渡しで後半が事件。と、ぶつ切り感もあり、個々の内容は好きですが、前後作に影響する本作だけでは完結していない作品構成が残念でした。 その他気になる点として、 主人公の五月雨結の扱いがちょっと酷い。一応探偵で主人公、周りは超人的な探偵の中にいる為、読者が親近感沸きやすい位置にいるはず。そのキャラが本作では完全にアホキャラにされています。事件中にショッピングがどうとか、雰囲気を壊し探偵としてどうなのか?と思う問題発言をしていたり、役立たずキャラ設定が可哀想でした。 シリーズ好きですし、新刊が発売されたのは嬉しいのですが、内容が煮詰まってなく、作るの苦労したのかなと思う次第です。 本書の最後の広告部分に、2015年新プロジェクト『ダンガンロンパ×佐藤友哉』稼働。と、別作家で始まるあたりも、いろいろ危惧する次第でした。 なんだかんだ書いてしまいましたが、シリーズも作家さんも好きなので次回作も楽しみにしてます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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読書前後でイメージがまったく変わりましたが、なかなか気持ち良い読後感でした。
裏表紙のあらすじに『失くしたものは、何か。心を穿つ青春ミステリ』として書かれています。 ミステリっぽく、謎・真相は?・階段島と言った単語を前面に出したPRですが、個人的にこれは出版社側の商業戦略だと思いました。中身は自己や相手を思う心模様を描いた青春小説だと感じます。 記憶がなく突然島に現れた人々が、とりあえず普通に生活する階段島。舞台設定の謎は、現実的なミステリ寄りではなく、ファンタジーでとらえると良いです。 過去と外界を削除した箱庭舞台なので、登場人物達の、その後の考え方や人との関わり方に焦点が合わせやすくなり、詩的な情景や哲学的な感情を味わえます。 なので、何でだろう?という謎を追い掛けるミステリ的な読書ではなく、情景や皆の気持ちを感じる青春小説として読むと、より良い読書になると思います。 ネガティブな主人公にポジティブなヒロイン。ちょっと癖やコンプレックスがある人々など、特徴的な登場人物達による作品作りは、わかり易く巧いですね。なるほどと思いました。 成長を描くというと厳密的には違うのですが、不安定な心やそれの解放や共感など、若い世代に合う作品だと思いました。中々良かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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伊藤博文、山縣有朋など、実在した歴史上の人物を交えた明治+本格ミステリの第2弾。
作者が杉山潤之助の手記を入手して本書にまとめた件りなど、現実感を演出しているのがとても面白い。 作者言葉より、前作が売れず断裁され痛恨の極みなど書かれてますが、負けずにこのシリーズは続けてほしいですね。 首なし、わらべ唄、見立て殺人など定番のミステリ要素を盛り込み、連続殺人が発生。 読書中はバタバタ死んでも雰囲気が軽いから現実味がなかったですし、屋敷内で何人も殺されて事件を防げない月輪&警察に大丈夫かなぁ、と不安も感じる中、残り40ページぐらいで16の謎が提示されます。 残りページが少ない中、解決編はまとまるのかな?と感じた不安は杞憂に終わり、あっと驚く真相で畳み込むのは見事でした。 後味は悪いですが、頭によぎっていた定番を突き抜けた真相は楽しめました。 時代設定が効果的なのと、事件の構図がガラリと変わる様は前作同様面白い。 今後も期待のシリーズです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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絶妙な構成。狙って作っているのか、勢いで書き上げたらこうなったのか。
文章構造に味がある怪作ミステリ。 本屋の新刊コーナーで表紙と帯を読んで衝動買いした本書でしたが、現代ミステリではなく、実は1945年発表の古い作品である事に驚きます。今でも普通に楽しめます。 語り手による事件の再構成で進むストーリーは時系列がバラバラ。あの時こうだった。そう言えばもっと前はこうだったっけ。と言った具合。 違和感のある構成は叙述トリックでも仕掛けているのか?と思いたくなるのですが、読んで行くうちに、あっこれ、話が整っていないだけかも。。と感じる始末。 ですが、この構成が絶妙な混乱と錯覚を生み出して、スリラー小説がミステリになってしまっているのが面白い。 200P台でサクッと読める古典ミステリ。読後、全体像がわかると、あれもこれもと必要な設定要素である事がわかり、伏線やミスリードが狙って書いているわけではなくて、そういえば普通に書いてあったな……。ほんと普通に、、、構成が奇妙過ぎて見逃した。と、独特の文体にやられました。 話は読みやすく、舞台も小規模の山中の出来事であり、把握しやすいように地図の挿絵が含まれていて丁寧な作りです。 ストーリーや仕掛けではなく、文章に価値がある作品。 好みは人それぞれですが、他にない個性的な一品を感じる意味として手に取るのはアリでしょう。なかなか面白い作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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サイロ内の浮遊死体。ビルの屋上での開放的な密室。冒頭の昔話「空を飛ぶ娘」。双子の姉妹。古き良きミステリの要素を感じさせつつも現代的な作品。
中盤までよくある事件の普通の警察小説として読んでいたら、終盤の怒涛のまとめで社会的テーマ性や登場人物達のドラマや事件の真相などが明かされて綺麗にまとまる。着地が巧くて読後素直に凄いと思いました。 シリーズ三作目を最初に読んだからか、登場人物の姫野広海(ひめのひろみ)刑事が男なのか女なのかわからず、何か仕掛けてくるのかと余計な事で悩んでしまいました。シリーズ最初から登場しているんですね。キャラクターがよかったです。 著者本初読書でしたが、島田荘司を思わせる奇想の基点から現実的に落とし込む謎にプラスして、爽やかな刑事達のチームワークが気持ち良い。好みの作風で他の本も気になる作家さんに出会えました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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1つの密室、1つの死体、限られた登場人物。
定番のミステリ構成の中、推理の基点や条件式を変えると、犯人やトリックが様変わりする多重解決作品。 本書はさらにSF的な要素を加え、間違った解決を行うと違う平衡世界へ飛ばされ、状況が少し変えられてしまう。こんな世界で推理は成り立つのか。 正直な所、複雑さが目立って楽しめなかったです。 後述するこのパラレルワールドならではの仕掛けには、ちょっと面白い。と思える点も確かに存在するのですが、推理する点も物語も変化してしまっては楽しみ所がなく、毎回違った状況設定を読むだけの気持ちになってしまいました。 『七回死んだ男』『STEINS;GATE』『ディスコ探偵水曜日』あたりの平衡世界や多重解決ものは好きな分類なのですが、本書とは相性が悪かった模様です。。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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事件現場の虫の生態から事件を捜査していく法医昆虫学捜査官シリーズの第3弾。
本作では水死体を扱っており、過去作とは違う水に関連した虫の展開で、新たな場を作ったと感じました。虫に関しての薀蓄と、登場するキャラクター達のやりとりは今回も楽しませて頂きました。 点数が低い気持ちとしては、今回は虫に関する刺激が弱め。事件発生の序盤と終盤の解決は虫に関する話でシリーズとして特徴的なのですが、中盤の事件捜査については虫があまり関係していなくて、普通の警察小説を読んでいる気分でした。 虫についての表現も大分落ち着いて淡泊になってます。 1作目では、ウジの表現をウニョウニョと気持ち悪く描いていて、その気持ち悪い虫の話の土台があってこそ、明るいキャラの赤堀が輝いていたり、皆が嫌がる虫から事件が解決する気持ちよさがあったりしたのですが、今作では虫の気持ち悪さがサッパリなくなっているので、なんというかギャップの面白さや個性的な要素が弱まり、よくある警察小説に感じてしまった気持ちでした。 気持ち悪いのが苦手な読者もいますし、今作ぐらいの表現ならTVドラマ向けだなと感じたりと思うところですが、個人的には何か物足りなさを感じました。 とはいえ、虫の捜査や登場キャラの楽しさは安定なので次作も期待です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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相変わらず伊坂幸太郎作品らしいと感じる、ちょっと外れた登場人物達。そして音楽に絡んだキザなセリフや軽妙なテンポは読んでいて楽しかったです。小説ならではと感じます。
個人的に苦手な、著者作品に入り込む悪意の模様については、本作の世界が殺し屋達の物語なので、そういうものだと嫌な気持ちにならずに読めたのが良かったです。 ザ・一般人代表といった鈴木の巻き込まれ型作品で、様々な殺し屋達の視点と共に物語が進み、どこに着地するのかわからない楽しさがありました。 が、一方、読み終わってみると、何も解決していないような、何かが心にグッと残るでもなく、一時の夢のように通り過ぎてしまった不思議な余韻を感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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久々に強烈なの来た!面白い。と思ったら、世間の評判がよろしくなくて温度差を感じた1冊(汗)
壊れっぷりが凄く良くて、刺激や毒のある構成が好みでした。 世の中、期待するものと内容の差が激しくてがっかりしている印象なので、どんな本なのか少しガイドします。 ネタバレを避けると要点は下記2つ。 ・超コテコテな孤島のミステリが舞台 ・事件シーンはスプラッター色が強い(グロい) あらすじにある『本格ミステリ』に期待してやってくるものを強烈な刺激で返り討ちにする作品です。 著者の本は本書が初めてなのですが、作品傾向でグロさが1つのウリでもある模様なので、そこが苦手な人は嫌な気持ちになる事でしょう。 グロいのも刺激、そして緊張感の中でミステリがあるなら好みかも。という人にはアリかもしれません。 本書で特徴的な演出の1つは『透明標本』。ネットで物を見てなんとも言えない気持ち。 骨格を染色した標本で、その神秘的というか背徳的な芸術を感じます。 その透明標本の博物館がある孤島が舞台。 見学会に集まった男女9名。 迎えのボートは明日の朝。 閉じ込められた孤島の屋敷内で、首だけ発見された殺人事件が発生する。 誰がどうやって?胴体はどこ?疑心暗鬼にかられる中、偶然メンバーの中に名探偵がいる事がわかり、事件の捜査を名探偵に"させる"。 うん。させるんです。人間臭さや人の醜い所を描きます。「名探偵解いてよ。」と人任せな流れ。後々効いてきます。 館の雰囲気も新鮮。透明標本に覆われ、室内は赤く染めれられている。 この不気味な空気感がとても読みやすく感じるので、嫌なんだけどなんか不思議な雰囲気を描くのは著者の持ち味なのかもしれません。 どういう展開になるのかはネタバレなので言えませんが、 冒頭に書いた通り、本格ミステリを期待した人をホラー色で蹴散らす狂騒っぷり。 でもちゃんと伏線があり、ミステリとして筋が通る話なので、面白く楽しめました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これは圧巻の作品でした。
なんというか、読む前の先入観と読後の印象は大分違いますね。 単純にあらすじからの印象での『ホラー』では括れないですし、SFでもミステリでもアリです。 ファンタジー過ぎた『新世界より』は好みに合わずでしたが、『クリムゾンの迷宮』『黒い家』は好みなので、現実からホンの少しずれたリアルな世界での気持ち悪さは自分と相性が良いです。 『新世界より』は、こういう作品が存在した後で生まれた作品なので、別系統のファンタジー色が強いものが描かれる事になったのかと改めて感じました。 本作もありえそうなバランスが見事なのと、この舞台を構築している知識量が半端ない。 それが薀蓄だらけの衒学小説にならずに意味を持っているのが本当に凄かった。 作者が参考文献を載せなかったのは、本書の密度を担う為の文献数が多いのと、先入観を読者に与えない拘りだと思いました。 優れた作品に出会うと、凄いとしか言えず感想が書けない。本作はそんな作品の1つでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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