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egut さんのレビュー一覧

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レビュー数738

全738件 381~400 20/37ページ

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No.358:
(5pt)

青空の下の密室の感想

本格ミステリ・ディケイド掲載作品という事で読みました。
高校の屋上で見つかった教師の刺殺体。非常階段含め、屋上の出入りが行われていない空間が現場の開けた密室事件。凶器や犯人はどこへ消えたのか?
コテコテ路線の謎解き作品です。年代の為か、登場人物や手がかりの出し方が非常に分かり易いので、今読むと軽くてシンプル。パズル小説に近い感覚でした。

著者のコメント曰く、本書は10代の若い世代を対象とした執筆依頼だったそうです。なるほど。そう考えると路線はとても合っています。
殺人事件があるけれど怖くない。ミステリ読み始めの中高生の層にはマッチしていると思いました。

事件の関係者は先生達で、それに巻き込まれた生徒視点という距離感が個人的に面白く感じました。
また、青空下の密室の謎は許容範囲で好みでした。手掛かりがちょっと唐突過ぎますけどね。

▼以下、ネタバレ感想
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青空の下の密室―着流し探偵事件帖 (富士見ミステリー文庫)
村瀬継弥青空の下の密室 についてのレビュー
No.357:
(7pt)

スマイルメイカーの感想

著者2作目の読書。本書もミステリの手法を使った爽やかなストーリーで読後感が気持ち良い。
手に取った2作がたまたまなのか作風なのか、他の作品も気になり始めた作家さんです。

前半の強盗の話の時点では、感性が合わなくてどうかなという心境でしたが、徐々に話が見えてくると、それも気にならなくなり作品にのまれていました。
大きな仕掛けや驚きはないのですが、各ドライバーの話の繋がりの巧さや人情味豊かなエピソードが良くて、ほっこりさせられます。
展開が分かりやすくて軽いので、物足りなさを感じるかもですが、そこがかえって安心な良さがあります。
殺伐としない温かいミステリをお探しなら本書はオススメですね。

▼以下、ネタバレ感想
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スマイルメイカー (講談社文庫)
横関大スマイルメイカー についてのレビュー
No.356:
(6pt)

月見月理解の探偵殺人1の感想

1巻完結もののライトノベル系ミステリ。もしくは、ミステリっぽいラノベ。

個性的な表紙絵の探偵役が学園に転校してきて、とある事件の犯人を暴くという。この探偵や主人公など、登場するキャラクター達は何かを隠しており、読者にはそれが何か分からない。この分からない謎のモヤモヤがミステリっぽい雰囲気なのですが、全体的に何かを理論的に推理するような話ではない作品。
「探偵殺人」や「ゲーム」から連想する要素を感じず、タイトルと内容が合っていない気がしました。 本書は人狼系で、嘘や隠し事を直感的に見破るような作品です。

あんまり他作と比較するのも良くないのですが、雰囲気が西尾維新作品で、本作の「れーくん」は「いーちゃん」を連想してしまう読書でした。読者に全てを打ち明けない語り手として巧い存在です。

ライトノベル系のミステリは、異能力が存在する世界の設定か判らないままの読書が辛いですね。何系の本か判断に迷いました。
設定が複雑でしたが、読みやすい文章だったので楽しめました。個性的で綺麗にまとまっていた作品。

▼以下、ネタバレ感想
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月見月理解の探偵殺人 (GA文庫)
明月千里月見月理解の探偵殺人1 についてのレビュー
No.355: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

リロ・グラ・シスタの感想

読み終わって振り返れば複数の仕掛け満載のミステリでした。
人物設定やトリックなど、本作の仕掛けの為にとても巧妙に作られている事がわかります。ただ、それが面白いかというと別問題で好みに合わず。
終盤の数ページには驚かされましたが、そこにたどり着くまで読み続けるのが辛く、内容が頭に入らない読書でした。
本作がデビュー作品であるのと、その後の作品で面白いものがある為、初々しさと当時から捻くれたミステリを書いていたんだと感じる読書でした。

▼以下、ネタバレ感想
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リロ・グラ・シスタ―the little glass sister (カッパ・ノベルス)
詠坂雄二リロ・グラ・シスタ についてのレビュー
No.354: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

ワイルド・ソウルの感想

これは凄いわ。ただただ圧倒されて言葉を失った作品。
「日系ブラジル人」という過去にブラジルへ移民した日本人を耳にした事はあるものの、その内容がこういうものだったのかと詳細を知り、衝撃を受けました。

ページボリュームが多い為、食わず嫌いで手に取っていませんでしたが、評判の良さでやっと読書。
骨太の社会的なテーマが敷かれつつ、個性的な登場人物達のドラマも魅力で退屈しない読書。脇役にあたるような、報道チームや警察側の秋津など、外伝で1冊掛けそうなぐらい印象に残ります。気付いたら惹き込まれて一気読み。上下巻まったく気にならなかったです。

作品として完成されているので後は好みの問題。読んで損はないでしょう。素晴らしかった。

▼以下、ネタバレ感想
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ワイルド・ソウル〈上〉 (新潮文庫)
垣根涼介ワイルド・ソウル についてのレビュー
No.353:
(2pt)

この世で最後のデートをきみとの感想

死にたい人から依頼を受け、最後の1日は幸せになってもらって死を与える者の話。
ホラーレーベルだからかグロく描いていたりするのですが、漫画っぽくて軽い。
各キャラのエピソードも、前向きに見れば死を望む者の懺悔や救済的な話ともとれるのですが、内容に必然的な絡みがなくバラバラ。意味なく狂った人たちの物語。何だか好き勝手に描かれた空想の物語でした。
好みの問題なのかもしれませんが、読み終わって何も残らないのは久々。。。
この世で最後のデートをきみと (JUMP jBOOKS)
坊木椎哉この世で最後のデートをきみと についてのレビュー

No.352:

CUT (単行本)

CUT

菅原和也

No.352:
(7pt)

CUTの感想

首切もの。被害者はなぜ首を切断されたのか。
パターンとしては見慣れたものですが、使い方や真相の隠し方が巧かった。終盤の展開はなるほどなぁと思う。

現実では、捜査や検死が行われれば直ぐに解明してしまいそうな内容。警察が機能していない気がしますが、本書のエピローグ以降に警察によって真相が究明するかもしれないと勝手な想像をする事にします。
とはいえ、本格志向のミステリはやはり面白い。作中の小道具や首切問題、重力密室と称する足を踏み入れたら床が崩れてしまう空間内で起きた殺人の謎。真相が分かればそれらが綺麗に繋がっていた事がわかる。こういうのは好み。
著者3作目の読書。どの本も、猟奇的、アングラ思考、著者の経験からくる夜のお仕事のお話など、持ち味があって面白い。文章も内容に対して軽くて嫌にならない為、見知らぬ世界の雰囲気が楽しめてよい。他の本も追っかけようと思う。

▼以下、ネタバレ感想
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CUT (単行本)
菅原和也CUT についてのレビュー
No.351: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

四段式狂気の感想

個人的には掘り出し物作品。ぐちゃっとしたホラーを読もうと思って手に取ったら、パズル仕掛けのミステリ小説だった。ジャンルはホラーなんですけどね。これは求めるものと結果が違うので好みが分かれそうな作品だなと思いました。個人的には巧みでアリです。

タイトルにある通り4章仕立ての四段式の狂気を描くホラー。第1幕はストーカーの常識が通用しない思考回路の狂気。いやーなんていうかパターンが見える。見え見えなので人によってはここで評価がガクンと下がるかも。が、これは狙ってやっているのか、このあと続く次章で物語が変容しだして、そうきたか。と驚かされる。緩急の刺激が効きました。

ネタバレではないセリフの引用で、『都合のいいように狂った』と例えがでるのですが、この言葉は正に本書の作りに感じます。『狂気』という感性が仕掛けのピースとなっているのが巧い。
なんとなく昭和のおどろおどろしい時代の作品なら本書は名作に成りえた気がするのですが、現代風のテイストになると何故か怖くない軽いホラーになっているのがもどかしい所。
パズル的な仕掛けを味わうホラーでした。

▼以下、ネタバレ感想
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四段式狂気 (TO文庫)
二宮敦人四段式狂気 についてのレビュー
No.350: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

さあ、地獄へ堕ちようの感想

現実的なアングラ世界を盛り込んだ横溝正史ミステリ大賞受賞作。

SM譲の主人公ミチに始まり、類は友を呼ぶのかその近辺に交わる人々も特殊な方ばかり。
皮膚に針を刺したり、割いて血を流したり、吐いたり、ピアスの穴開けより過激な人体改造ものがでてきます。こういう表現作品が苦手な人は本作は避けましょう。個人的には現実にある狂ったアングラ世界を垣間見るという意味では刺激的で面白かったです。

意図せず知ってしまった死体投稿SNSサイト「地獄へ堕ちよう」に数日後、知人が凄惨な姿でUPされていた。
サイトに触れた事をきっかけに、ホラー作品っぽく不気味な世界に足を踏み入れてしまった流れ。どうでもいい現実世界に刺激が舞い降りてきたわけで、そこでサイトの存在を調べるという目標を持った主人公が活動していく様は、生きる意味を見い出した姿に映りました。アングラ世界での青春小説な感じ。

ヤクザ作品のような大人の落ち着きとは違う、若者のやんちゃさ勢いがある非日常世界。
痛々しく勢いのある文章は刺激的で一気読みしやすく好みでした。
ラストの幕切れ方もスパッといい所で切った感じが好き。

▼以下、ネタバレ感想
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さあ、地獄へ堕ちよう (角川文庫)
菅原和也さあ、地獄へ堕ちよう についてのレビュー
No.349: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

暗幕のゲルニカの感想

好みのジャンルなのですが、相性が悪かったみたいです。
率直な感想としては歴史の教科書を読んでいる気分でした。

前作の『楽園のカンヴァス』がとても面白く、美術ミステリが苦手な人へも薦めたくなる本でした。その為、本作も期待していた所もあります。比較するのもなんですが、前作は美術の世界を知らない人でも手を差し伸べて導いてくれるガイド的な物語でしたが、本作は美術やピカソに興味・予備知識がある人が大学の講義で教授に教わっているようなスタンスを受けました。登場人物達に感情が入らず、何というか場の設定を眺めている感覚です。前作と雰囲気も構成も似ているのに大分違う。。。不思議。敷居が高い美術ミステリでした。

扱う作品は「ゲルニカ」。ゲルニカと言えば戦争。戦争がテーマなのでその重苦しさも好みの分かれ所です。
とはいえ、ピカソとドラの話や戦争背景を含めたゲルニカを学ぶという意味では教養作品として分かりやすく楽しめました。前作同様、過去と現在を繰り返す構成や、タイトルとなった「暗幕のゲルニカ」の序盤と最後の扱いはバシッと鮮やかに決まって印象に残りました。
暗幕のゲルニカ
原田マハ暗幕のゲルニカ についてのレビュー
No.348:
(6pt)

ジンクスゲームの感想

世間を震撼させている連続見立て殺人事件の犯人:通称「毒リンゴ」。とある条件で相手を殺す事ができる能力を持つ5人が集められ、いち早く「毒リンゴ」を抹殺した者が、死者を蘇らせる権利を与えられる。

誰が毒リンゴなのか?願いをかなえる為にライバル同士のデスゲーム模様。相手の能力は何なのか?と、駆け引きもあり、そこそこ楽しめました。本書1冊完結型の中で、世界観の導入、事件の顛末、ラストの収束まで綺麗にまとまっていて良かったです。

ミステリの小ネタが多くて楽しめましたが、驚きや理論的な何かに繋がるわけでは無かったのが物足りなかったです。結末は好み。

▼以下、ネタバレ感想
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ジンクスゲーム (GA文庫)
アダチアタルジンクスゲーム についてのレビュー
No.347: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

ルパンの娘の感想

これは凄く好みの作品。とても楽しい読書でした。☆9+好み1。

泥棒一族の娘が恋人の家族へ挨拶に伺うと……なんと警察一家の息子だった!この恋はどうなるのか!?土台としてのジャンルはラブコメである。家族紹介からとてもユーモアに描かれており、泥棒家族は豪快な父親やら峰不二子のような母親やらとても楽しい。登場人物が多いのにキャラ立ち抜群で分かり易い。雰囲気はユーモア溢れるドタバタ劇で、笑いあり涙ありで楽しませて貰いました。

では、ミステリとしてはどうかというと、殺人事件の被害者が泥棒一族の祖父であると判明し、この捜査の結末に至るまでが見事に決まり、ちゃんとしております。読後感がとても良くて、これは素直に素晴らしい作品だと思った。こういうの好みなのです。

点数については、ミステリとして事件解決の伏線が弱いなとか、驚きが少ないかな……とか、色々思う所もありますが、作品全体に流れる気持ちが良い雰囲気と、人に薦めたくなる本という事で個人的に満点で。

驚きとか推理に重きを置くのではなく、気軽で楽しいミステリをお求めなら、本作は万人にオススメです。

▼以下、ネタバレ感想
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ルパンの娘
横関大ルパンの娘 についてのレビュー
No.346: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

時限病棟の感想

『仮面病棟』とまとめ買いしていたので続けて読書です。

今作は、状況不明な状態で目覚めた男女5名が、爆弾の仕掛けられた場所から脱出すべく、ピエロからのミッションを解いていく所から始まります。登場人物の1人に「リアル脱出ゲーム」経験者がいて、その人のアドバイスを参考に謎を解いていくシーンは、まさに「リアル脱出ゲーム」の小説版といった所でした。

私自身も何度か「リアル脱出ゲーム」に参加しているのもあり、あるあるネタで楽しめました。その雰囲気は十分に伝わってきます。また、前作の感想で現役医者ならではの仕掛けを期待する所があったのですが、本作ではその点は十分に活かされていました。ミッションに必要な医療準備や手術などは現実の脱出ゲームにはない異様な雰囲気を盛り立てており好みです。

真相もよく出来ていて驚かされはしたのですが、点数はそぐわないです。理由としては真実に至る過程が論理的に導かれるのではなく、自滅というか告白というか、勝手に明かされていく所。ワクワクさせておいて答えが勝手に出てきてしまうような感覚が拍子抜け。なんか凄く勿体ない。
著者の作品は『仮面病棟』に続き2作目の読書なのですが、伏線が分かり易く答えが見えてしまうので、ミステリ小説というよりTVのサスペンス系で、常に視聴者を繋げる為に謎と答えとイベントの小ネタを繋いでいくような感じを受けました。名探偵ものみたいに、最後の最後でまとめて真相を明かした方が衝撃的な作品になりそうだけど、前作同様に分かり易くて勿体ない。作風と好みの問題ですね。読みやすいのはよかったです。

▼以下、ネタバレ感想
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時限病棟 (実業之日本社文庫)
知念実希人時限病棟 についてのレビュー
No.345:
(6pt)

放課後デッド×アライブの感想

高校生達が謎の現象に巻き込まれて、理不尽な死が待つデスゲームに参加させられる話。
校内放送にて謎のボスからゲームのお題がでるわけですが、ルールをアレンジした神経衰弱など内容が身近で分かりやすく、読者が混乱しない作りはよかったです。
序盤のゲーム内容や雰囲気としては何だか軽い話だなと思っていたのですが、中盤あたりから戦略や人間関係の心理面がでてきて面白くなりました。
バトルロワイヤルのような相手を出し抜いて殺してやろうというデスゲームではなく、理不尽に巻き込まれた状況で、友達を殺したくない、何か傷つけない方法はないのかと、常に模索する登場人物達の心理面がよかったです。こんな現場に巻き込まれなければ普段は仲のよいクラスメートだったんだとよく伝わりました。
雰囲気は漫画『神様の言う通り』に似ている感じと言えば伝わりやすいかな。結末もよくある落とし所で既視感があり、新鮮な刺激がなかった事が物足りませんでした。真相の目的については、内容に齟齬が多くてちょっとすっきりしない話でした。

▼以下、ネタバレ感想
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放課後デッド×アライブ (角川ホラー文庫)
藤ダリオ放課後デッド×アライブ についてのレビュー
No.344:
(6pt)

うさぎ強盗には死んでもらうの感想

角川カクヨムWeb小説コンテストのミステリー部門大賞作品。
この大賞で注目というより、京大ミス研の学生が獲った所で気になった作品。web小説じゃ軽いだろうな…でも京大ミス研ならしっかりしてそうな安心感アリ。WEBでも読めますが、ちゃんと編集が入って整っているだろう文庫で読書です。

とある場所で、殺し屋、泥棒、人身売買関係者、など、癖のあるキャラクターのエピソードが交差し、ミステリーらしい驚きの背景や繋がりを感じる作品でした。表紙通り、雰囲気がアニメっぽいのでその辺りが大丈夫な人向け。

ネタバレではないと先に伝えたうえで、ちょっと思うところとしては、様々なエピソードが繋がって、実はこうだったのかとか、読後に再読して新しい発見があるのはよいのですが、それらが仕掛けとして狙った感じはしませんでした。読者をうまく誘導して驚かせるというより、話がバラバラで理解ができないまま進み、あとで解説を受けて納得するような印象。「やられた!」ではなくて「そういう事だったんだ」という感覚。散らばった話をまとめる難しさを感じました。

うさぎ強盗が12歳の設定って必要だったのかな。16ぐらいの方がなんか合ってました。強すぎ。キャラクターは一之瀬が好みです。と、なんだかんだ書きながら、2度読みもして楽しませてもらった作品でした。


▼以下、ネタバレ感想
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うさぎ強盗には死んでもらう (角川スニーカー文庫)
橘ユマうさぎ強盗には死んでもらう についてのレビュー
No.343: 5人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

孤狼の血の感想

濃い作品を読みました。とても惹き込まれて面白かったです。

警察小説は苦手で敬遠がちなのですが、推理作家協会賞受賞作品という事で手に取りました。著者作品を初読書。

これは警察小説というよりヤクザもの。そのヤクザと繋がっている警官が上司である新人の視点で描かれる物語。
状況が何も分からない新人視点というのは読者と気持ちがリンクしており、世界観に入りやすくて良いです。上司との対面、ヤクザとの対面、序盤は新人日岡とともに読者も非常識な世界へ足を運んでいくわけです。正義感溢れる日岡は、上司のヤクザとの繋がりや違法捜査を目の当たりにしながら、悩み葛藤するわけで、読書中は同じ心境でした。読み進めていくにつれ、徐々にヤクザや上司に魅了されていくのですが、これはそれぞれのキャラクターがとても良いからですね。正義と悪のキャラが分かりやすいので、ヤクザも上司もなんとかしてくれる頼れる安心感と期待が感じられて好んでいきます。
人情的にも面白いですが、本筋は殺人事件解決の捜査と、関わるヤクザ抗争の一発触発のハラハラ感。これも面白い。まぁ、個人的にはヤクザ抗争はトントン拍子で収束した感がありましたし、期待するミステリっぽくはなかったので最近の推理作家協会賞はエンタメ系かなと思いました。ただ、読後感の良い主人公の物語という事で、とても楽しめました。

▼以下、ネタバレ感想
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孤狼の血 (角川文庫)
柚月裕子孤狼の血 についてのレビュー
No.342: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(9pt)

全滅系CCの本格モノ。十角館のオマージュにも感じる

帯コピーが "21世紀の『そして誰もいなくなった』"。
また釣られるかなぁという軽い気持ちで手に取りましたが、読後は帯に偽りなしで大満足!

『そして誰もいなくなった』、『十角館の殺人』といったクローズドサークル(CC)物。事件中と事件後の2つの時間軸をずらした物語が交互に進んで行きます。
もう出尽くしたと思われたCCの舞台設定は、80年代のSF空想世界を新しく構築。懐古主義な読者も楽しめる。これはとてもよいです。

ネタバレではない導入部からですが、事件後パートで提示される、現場は明らかに他殺なのに犯人不明の関係者全滅型というのがそそります。全員死んでる現場で何が起きたのか。もうこの設定だけでワクワクでした。
実際な所『十角館の殺人』が好き過ぎる気持ちが伝わるオマージュ作品な感覚を得ました。なので、この手の本が好きな人へはオススメ。

私個人が十角館からミステリにハマった口なので、それ系の再来を思わせる、読みたい本が読めた充実感でいっぱいでした。楽しかった。

▼以下、ネタバレ感想
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ジェリーフィッシュは凍らない (創元推理文庫)
市川憂人ジェリーフィッシュは凍らない についてのレビュー
No.341: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

シャドー81の感想

本書購入後、本の厚みと登場人物一覧の名前が頭に入らずで、しばらく積読状態でした。
ただ、読み始めてみると人物の登場の仕方が区分けされていて把握しやすい。色々と杞憂でしたね。

犯人視点を含む倒叙ミステリで、序盤は何を計画しているのか読めない『犯行の準備』が見どころ。特殊な船を購入したり、マネキンを用意したりと、謎に満ちたワクワク感が楽しかったです。あらすじにあるハイジャックシーンだけを描くのではなく、その犯行の準備や苦労をしっかり描く本は中々珍しいかも。登場人物紹介や舞台背景のベトナム戦争や政治的内容を描いているにも関わらず、さらっと読めてしまうのも○。

ハイジャックや戦争という単語内容に対して殺伐とした雰囲気がないのが凄い。中身は爽やかです。終わり方も綺麗に閉じて巧い。
良書を読んだって気分になり満足でした。

▼以下、ネタバレ感想
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シャドー81 (ハヤカワ文庫NV)
ルシアン・ネイハムシャドー81 についてのレビュー
No.340:
(6pt)

恋する寄生虫の感想

今作も不思議な世界観で楽しめました。
他人から見たら不幸の男女の恋愛模様で毎回安心して楽しめます。本作は非ミステリの恋愛小説でした。

今回は過去作に比べて説明や解説が多い印象でした。個人的に著者の本は登場人物達の心情や周りの情景を味わう感覚が好きなのですが、本作は寄生虫やコンピューターといった現実世界に存在する内容の解説が多く、雰囲気を味わうというより学習するような読書でした。ここは好みに合わずでした。

説明がしっかりしていたので、要素要素が最後に繋がるのかな?と思わせておいて活用がよくわからず。例えば、主人公高坂が引きこもってコンピューターウィルスを自作して、それらの系統はこんなのがあると詳しく書きますが、ただの自己紹介で終わってしまうなど。クリスマスシーンもラストに何か効果的に使うのかと思ってしまってました。そういう本では無かったという事で。

さて、ラストの締めくくり方は定番ですね。こういう所は安定して楽しめました。

▼以下、ネタバレ感想
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恋する寄生虫 (メディアワークス文庫)
三秋縋恋する寄生虫 についてのレビュー
No.339:
(2pt)

侵蝕 壊される家族の記録の感想

書店で衝動買いした1冊。帯コピーに「ラストは思わず泣ける!」とあったのですが、釣られてしまった事に泣けてきました。最近の帯は信用できないと強く思った1冊。

本書の趣旨は『一家まるごと洗脳』ですね。その過程は大変よく描かれていて楽しめました。参考文献にもその事が明記されています。気付いたら侵食されたいた様がハッとさせられます。ホラーレーベルなのでその手の本をお探しならアリでしょう。

個人的好みとしては、まったく琴線に触れずでした。被害者の家族が平和ボケで、お花畑過ぎて合いません。子供が貧しく見えようと、相手の家族が何か抱えてようと、さっさと追い返そうよと思いながらの読書でした。

ラストは帯にある通り、うまく話をまとめた感があるのですが、ホラーレーベルならもっとドロっとした結末でやり切って欲しかった気持ちもあります。
ミステリ的な仕掛けもあるのですが個人的には合わずでした。

▼以下、ネタバレ感想
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寄居虫女 (単行本)