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メタボラ
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メタボラの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.33pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全93件 41~60 3/5ページ
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桐野夏生の何がいいって、 この歳になっても若者の立場に立ってものを書いてくれるところです。 ふつう50を過ぎて、しかも社会的成功者ともなれば、大人・権力者側に立った発言が多くなるもの。 なのに若者の苦しい胸の内を、ここまで的確に代弁してくれるなんて…。 いや、訂正。 若者側に立ってというより、弱者側に立って、ということかも。 桐野さんが成功者になってもこれを続けていられるのは、桐野さんが女性だから、というのがあると思う。 主婦作家とか、女のくせに、みたいなことを昔さんざん言われてきて、辛酸をなめてきて。 女性は人口の半分もいるのに、この国ではマイノリティ、被差別者です(それは労働待遇を見れば明らかなこと)。 でもだからこそ、こういうものが書けるんだと思う。 | ||||
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冒頭いきなり記憶喪失になった主人公が現れる。彼は出会った男に名前をつけられる。彼の過去には何があったのか。解説の評論家の方が書かれてあることがたぶん正論でしょうけど、もう少し一点だけ。 この『メタボラ』という小説は、確かに男性性社会が崩壊していく過程で、アイデンティティーにもがく男性的なポジションと、そのような社会的自我の確立を放棄したところで生きている女性的な人間との邂逅がドラマになったものといえると思います。ただ解体の側面だけじゃなく、桐野さんはこの作品でもうひとつの軸をはっきり描いていると思います。 この小説には主人公がふたり出てきます。記憶喪失になった最初の彼に、新しい「ギンジ」という名前をつけてくれるのは、もう片方の昭光という、一見チャランポランな男です。昭光は異性を喜ばせるという女性的な仕事―ホストクラブ―に従事するのですが、記憶を失い尊厳を失った「つまり父性を喪失した」この小説の中におけるギンジは、美しい沖縄の自然の土地で、まるで母親に名前をつけられた赤ん坊のように、行き着くというより、その女性的なるものに還って行くように見えます。 彼は新しい仲間たちとも出会います。この小説で大きく意味があるのは、男性性の女性化=大きな主体性の崩壊、と同時に、ローカルな意味合いで新たな主体性のリアリティーがまさしく描かれてあることだと僕には思えます。 失墜していく男性性を優しく受容する場所が沖縄であり、そこは行き場をなくした孤児たちが溢れていますが、それを一種のモラトリアムととるか、再生の場所ととるかは、読み方それぞれです。この作品がユニークなのは、女性性の現実側から社会を描くだけじゃなく、沖縄を帰還としての女性的リアリティー=歴史として捕らえたことでしょう。単に取材しただけで、こういう作品を描くことはできないはずで、読み終えたあとは震えがとにかく止まりませんでした。 この小説はかなり構造的に書かれてあるので、中盤辺りだれるかもしれませんが、最後まで読むと感動が得られるようになっています。小説は行き着くところまで崩壊の過程を描いていきます。そこは唯一本土決戦をした、基地がある楽園、沖縄です。 | ||||
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桐野夏生さんの「メタボラ」を読んだ。 初めから、異様な情景が展開され、何故自分がジャングルの中を逃げ回っているのかも分からない主人公が現れる。 自分が誰なのかも分からない主人公はこの先どうなってしまうのだろうかという不安に苛まれるが、やがて懐中電灯を持った男と出遭う。 その男もある所から逃げて来ていた。 やがて、二人は助け合いながら逃げて行くことになる。 二人の奇妙な逃走劇も面白い。 そして、二人は別々の道に分かれて逃走することになる。 主人公は記憶を思い出したいとも思うのだが、その記憶がとんでもないものだったらと思うと思い出したくない気もする。 やがて、記憶が少しずつ蘇り、自分が自殺未遂をしていたことを思い出す。 何故、25歳という若さで自殺しようと思うようになったのか、その事実が語られる時、それなら自殺しようと思うのも当たり前だと納得する。 そんな酷いことがあったら、誰でも平常心ではいられない。 両親が壊れ、家族が壊れ、自分が壊れていた。 桐野夏生さん得意の人格崩壊が語られていく。 あまりの酷さに、自分も気が滅入ってしまう展開だ。 しかし、主人公は記憶喪失によって得られた新しい人格のお蔭で、元の人格にも打ち勝つ全能感を持ち生きて行く。 結末は、また急展開して、気を揉まされた。 今回の小説も、期待通り大きな人格崩壊が起こったが、あまりの切なさに意気消沈してしまった。 やはり、人格崩壊した結果、新しい世界が開かれて、力強く生きて行くというプラスの展開が僕は好きだ。 この話は、あまりに悲しかった。 しかし、夢中になって一気に読了した。 やはり、桐野夏生さんは凄い。 | ||||
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二人のニートの若者の物語です。 二人の視点で交互に描かれており、その楽観と絶望が交差するロード小説です。 この本で作者が書きたかったことの多くは、ギンジが記憶を取り戻した追想の部分でしょう。 そこのは、凄惨な家族崩壊と格差社会の厳しい現実が描かれており、読む者に激しい痛さを与えます。 その後の選挙の部分は、ややダレた感じがあるものの、それが逆に、ほっとするものを与えてくれます。 本の帯に「未来を奪われたすべての若者たちに捧げる」と言う言葉が書かれていますが、確かに、そうしたしすてむを作り上げてしまった社会の大きな批判なっています。 エンターテイメントとして、一気に読むことも可能ですが、それ以上にメッセージ性の強い力作です。 | ||||
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『メタボラ』という表題についての説明は小説の中ではないのだが、代わりは掃いて捨てるほどいるとばかりに使い捨てにされる若者を「代謝」という言葉で表しているのだろう。 ワーキングプアの問題をこれほど生々しくえぐった文学作品はないという意味で、優れた社会派小説である。 家庭の事情で大学を中退せざるを得なかった若者が、派遣社員として企業に搾取されぬき生きる希望すら失い(この辺の描写が具体的かつリアリティにあふれている)、ネットの集団自殺を図った沖縄で記憶喪失になり、そこでフリーターの男と出会い、新たな希望と絶望を体験する。 ユートピアとして内地からの移住者も多い沖縄のきれいごとではすまない現状も冷徹な視線で描かれている。 ワーキングプアの問題は、企業に都合よく利用されていることが大きく、本人のせいばかりではないのだということがよくわかった。 | ||||
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ジェイク視点とギンジ視点と切り替わるのだが、ジェイクが宮古弁を話す分、わかりやすくて、わかりにくい。この視点切り替えが秀逸なのはリアルワールド。桐野さん得意の登場人物別感情。選挙のところで少しダレるけど、最後にきれいにまとまる。さすが、と思わせられるのは、ギンジが記憶を取り戻し、平凡な家庭から、家庭崩壊、集団自殺未遂まで転落していくところ。まるで、桐野さんにギンジが憑依してきたかのごとく、書き進められている。ここがすごかった。この本を読んでだらけた、自分の日々生活に活をいれられた。桐野作品の中でも秀逸ではないだろうか。 | ||||
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家族離散、雇用難民、偽装請負などの難しい言葉が書評に並びますが、何のことはない、生粋のエンタテイメントでした。上巻初めは、何の話かよくわからず、ページが進みませんでしたが、中盤から主人公と対役の人間味あふれる描写にどんどん引き込まれていきました。特に対役の宮古出身ジェイクが魅力的で、もし映画化したら、誰がどの役にぴったりかと考えるだけでも楽しくなりました。「東京島」と並ぶほど好きです。 | ||||
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ネグレクト、DV、派遣労働、沖縄、記憶喪失、性、自殺。盛りだくさんの内容なのでいろんな切り取り方ができる作品だと思う。わたしは沖縄の戦争を生きた老人の言葉から、「今日本で起きている戦争」を描いていると思った。毎年小さな町1つ分にあたる3万人という人が自殺していくこの国で起きていること。それはまぎれもなく、戦争と同じだ。戦場で敗れていく若者たちを描いた戦記だ、という感じがぴったりくるような気がしました。 | ||||
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記憶喪失の男と,更生施設から逃げ出してきた男. ギンジは名前を与えられ,ジェイクはウソをついて,それぞれが偽りの人生を始めようとする. 同じスタートラインから始まり.やがて離れたり,近づいたりしながら,虚構の人生が交錯する. ギンジの正体と,ジェイクの嘘人生の顛末という2つのテーマを軸にしたストーリーである. ギンジは,記憶がないながらも,知性があり,思慮深く,礼儀正しい青年. 一方のジェイクはあっけらかんとして,底の浅いウソを平然と吐きながらどこか憎めないキャラクター. これだけ対照的な2人の一人称視点を使い分ける筆力がすごい. 表面的な言葉遣いの違いだけでなく, 思考のプロセス,視野の広さといった本質的な違いをきちんと描き分けている. この表現力はさすがである. ただ,全体的にテンポが少々遅い印象を受けた. 新聞での連載小説だったようだが,それも影響しているのだろうか. | ||||
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物語は、記憶を失った主人公がなぜか何の荷物も持たないまま、沖縄の密林で職業訓練所から脱走してきた昭光という男と出会うところから始まります。 主人公に記憶がなく、また何も荷物もない(お金も身分証明も何もない)状態から得体の知れない男とともに新しい生活をスタートするので、先の展開は全く読めず、そういう意味では新鮮に読むことができます。 ただ、全体を通してドキドキハラハラするような展開があるわけではなく、予想外のどんでん返しがあるわけでもありません。 主人公の記憶について多少気になるものの、ついつい読みふけってしまうような話ではなかったため、評価は3にしました。 舞台が沖縄で、昭光が宮古島出身であることから、会話はほとんど沖縄ことばと宮古ことばで書かれており、そのせいで言わんとしていることが若干理解できないことが多々ありました。 「社会から零れ落ちていく若者のリアルと後戻りできない現代の貧困を暴き出す」とあらすじにありますが、それよりも、主人公の成長というか、変化というか、様々な経験を通して変わってゆく主人公の心情が見所だと思います。 同じ主人公なのに、物語と最初と最後では、感じ方・考え方がまるで別人のように違っています。主人公に対する印象も変わります。でもそれがごくごく自然に描かれているところがすごいなと思います。「あ、この出来事で成長したんだな」とかそういう感じではなく、良くも悪くもいつのまにか冷静に、したたかに、逞しく、素直になってゆく様は見事だと思います。 そんな主人公とは対比的な昭光も印象的でした。 | ||||
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社会派小説を読む原動力ってけっこう新聞の三面記事を読むような好奇心だったりする。だから陰惨で救いがないものほど興味惹かれるところもある。でもやはりエンターテイメント的な部分もなければ読者を引き込む事は難しい。この小説はそのバランスが優れている。架空のドラマの甘い口当たりを期待する読者にガツンと投げかけられる現実の重み。個々が整理されたり完成したりしないで常に混沌としていること、またそれがぶつかり合う様などはいつもリアルで息苦しいくらいです。読者の野次馬的好奇心とリアリティのイタ気持ちよさを上手く織り交ぜて物語に引きこむ手管は見事です。 | ||||
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2人の訳ありニートの過去と現在を交錯させながら進んでいくロード小説。 主人公が男のためか、同時期の他作品と違う位置づけにしたかったのか、桐野夏生らしいエログロは少ない。 あまり考えたくはないんだけど、他作品のように「エログロを呑み込んで更に逞しくなっていく女性」的な生命力は感じず、男って「死に向けて行進する存在」と桐野さんが定義づけているようで怖いです。 なにかのインタヴューで彼女が語っていたように、ちょうど派遣地獄的な社会問題がクローズアップされた時期に発刊されたので、そういう括りでこの作品が話題になった側ところがあるのですが、社会問題を取り上げて話題作りしたというよりも、現在的な男性性の文脈を探していたらそこに行きついたという感じで、嫌味は全くありません。 エログロジェットコースター的な盛り上がりが上滑りする時期(東京島とか)から、引き算をしながら作品を成立させることに成功していると思います。新たな変容の可能性すかね。 しかし、いつもながら、読後に読む前よりも違ってる自分に気付かせる小説が書ける桐野さんはすごいな〜と思わされます。 現在そういう書き手はいないでしょう。 | ||||
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最近、桐野夏生ファンになった私は、ついに文庫をすべて読み終えてしまい、このぶ厚く重い『メタボラ』を読むことになった。 カッコに標準語の意味を書いていてほしかったと本気で思ったくらい、「オゴエッ(うわっ)」「ズミズミ(とてもとても)」「ゆんたく(おしゃべり)部屋」「フラー(馬鹿)」といった、連発する聞いたこともない言葉がたくさん出てきて、最初は非常に戸惑った。でもそれだけ、沖縄、離島の宮古島が独自の文化を持った地域ということを感じることができた。 記憶喪失の無一文で、ひたむきに生きようとするギンジ、そして宮古島の青い空と美しい海に囲まれ、経済的に恵まれた環境で育ったアキンツ。対照的な2人の生き方や考え方は異なるが、2人が抱える葛藤(ギンジは家族に手をあげる父親、そこから子どもを捨てて逃げてしまった母親、新しい人生のスタートを切った順応性の高い妹:アキンツは好きなのに振り向いてくれない元同級生の愛、愛のことをデリヘル嬢にしても平気なギンジへの憎悪、自分を大切にしてくれないギンジにいつまでも執着している愛、そしてそんな愛に囚われている自分など)、共感できる部分はたくさん描かれていた。 桐野作品を読んできて、読後、初めて涙が流れた作品だった。ピュアで素朴なアキンツが好きだったし、「磯村ギンジ」として新たな人生を切り開いたギンジにも今度こそ幸せな生き方をしてほしかったので、このラストは本当に悲しかった。 | ||||
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最近は桐野夏生さんばかり読んでいる。「メタボラ」以外の数作品を読んだだけでも、桐野作品の女性陣は強かさを持っているのだなと分かる。 桐野さんの小説を読んで他の作家と違うと思う点は、私の読書傾向からもよるのであろうが、登場人物が易々と「いい人」に流れていかないという点である。どこまでいっても、人間臭い毒の持続を失わない。それが、読んでいてもアクセントにはなりこそすれ邪魔にはならないのが、やはり作家としての技量なのかなあと思ったりもする。というか桐野作品の場合、毒が要でもあるのだろうけれども。 さて、「メタボラ」。主な舞台が沖縄で、主人公的と言える人物は二人。 沖縄というと、優しげな人ばかりというある種の偏見があったりするのだが、そこは心配ご無用桐野作品、という感じでもある。例えば、主人公間であってもすぐにお金を貸さない。例えば、不細工より美人へ移る情のほうが大きい。など、作品世界を構成する価値観というものにも細やかな神経が配られていると言ってよい。そういうところから受ける刺激が、病みつきになる一つの原因であろう。 ……また話しがずれ込んだ。「メタボラ」、読み終わってから私は泣いた。レビューによっては、希望が見えたと書いている方もおられたが、私はどうしてもラストで逼迫を感じられて仕方なかった。長編だからこそなのか、長く関わった主人公たちがやけに心に残った。短編小説とはまた違った、桐野さん独特の疾走感で後半は本当に夢中で読んだ。 | ||||
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結構いいテンポで読み進めることができて面白かったです。 桐野さんにしては性的描写って全然なかったです。 印象に残ったところ。 後半でとある工場にて働く中国人労働者。同じ場所で働く日本人は休憩しているのに、彼らは休まない。 自らすすんで残業をこなす。創意工夫して仕事の能力を磨きあげている。 時給が日本人よりも低く設定されているということもあるが、 彼らには日本で稼いで家族を養うという使命、つまり劣悪な労働環境の中でも、 頑張っていけるだけのストーリーを持っている。 同じところにいる日本人労働者との一番の違いはそこなんだろう。 一昔前だと日本でも「金の卵」という言葉があったように、 労働にストーリーがあったように思います。 日本という国が成長して成熟したという事なのかもしれません。 | ||||
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『桐野夏生が新境地に挑んだ最新長編小説』 と言う紹介文を読んで楽しみに手に取った1冊だったけれど… 桐野作品は全て読破しているけれど個人的にこの作品は苦手な部類です。 沖縄を拠点に置き数々の方言・記憶喪失・ネット自殺・ボランティアetc 様々な要素が溢れているけれど、それらがまとまっていない感じ。 読後感もなんだか今ひとつかな… やっぱり桐野作品は女性を中心に描いて欲しい。 | ||||
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心の闇を描き続ける著者が、自殺を試みるまで心に深い挫折感、絶望感を負った若者を描く。「リアルワールド」では、自殺する少女を描いたが、あまり内面にまで迫れていなかったと思う。本作では、努力してもどうにもならない状況に追い込まれた(それは今では特異な状況ではなくなっているのだが)若者像を描くことに成功している。 但し、結末がどうにも納得できない。(以下ネタバレ注意。)どうしてギンジはジェイクをすぐ病院に連れて行かずに、海に出て、ジェイクを死なせてしまうのか。最後は、まるで真夜中のカウボーイのような、ロードムービーみたいになっているけど、何故助けないのか。ギンジが警察と係わるのを避けたのだとしか思えず、救いのない闇と作者の毒を感じた。 | ||||
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物語の序盤から中盤は、息つく暇も与えないほどの力量で読ませてくれるものの、 終盤に差し掛かってからは「え、あと○○ページしかないのに、どうやってこの状況をまとめるんだろう?」という不安のほうが先にきてしまった。 で、終わってみたら、なんだこれ?という感じ。 まさに「置いてけぼり」という感じがぴったり来る読後感。 なんじゃこりゃー。 | ||||
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さすがキリノ! 「東京島」からさかのぼってこの本にたどり着きました、あばーなんとなんとすばらしい快作ばーよ。壊れゆく家族の肖像、ネオ蟹工船ともいわれる派遣仕事の救いのなさ、ネット自殺、ホストクラブの世界、癒しの楽園と裏腹な沖縄の真実・・・現代の日本の問題点について詳細なレポートを何十部も読んだような充実感があります。しかもそれぞれのエピソードは重層的に渦巻いて、章ごとに語り手が変わっても、一つ一つの小道具の位置から光の加減まで変わらない緻密に計算され尽くした世界を堪能いたしました。これこそキリノワールド!。最後に慈叡狗ことアキンツが冷たくなっていくシーン・・「真夜中のカウボーイ」をちょっと思い出しました。 星が5つまでしかあげられないのがくやしいくらいです。 | ||||
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一晩で読みきってしまうほど面白かったけれど 読み終えて感じたのは虚無感みたいなものだけだった。 ラストが、本当にあそこで終わっていいの?という感じ。 ただひたすら鬱にさせられただけで、むしろ不快感が沸いてきた。 桐野さんは、作中の人物に愛情を持っているんだろうか? ただ時事的なネタをのせるためだけのコマのようにでなく 主人公に愛情を持って、少しでも希望を抱けるようなラストにしてほしかった。 こんなひどい時代だから甘いことは書けないというのは分かる。 しかし、偽装請負や沖縄など、色々な時事問題を取り上げるのなら 中途半端にたくさん盛り込むだけで、 何の解決策も見出させないまま、どんどん次へ次へ、というのは、 要するにただ話題のネタを扱って、注目させればいいと思っているだけのように 感じてしまうのだ。非常にマスコミ的というか。 ただの娯楽作品として読むとしても、あの終わり方は納得がいかないし。 個人的には、非常に消化不良な作品だったと思う。 | ||||
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