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遮光
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遮光の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.80pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全51件 21~40 2/3ページ
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作者のデビュー作「銃」に続く第二作「遮光」は、非常に似通った兄弟のような小説だ。 『銃』では、死体から銃を持ち帰り、日々銃を持ち歩き、その銃に支配され、常軌を逸してゆく。 『遮光』では、死体から指を切り離して持ち帰り、日々指を持ち歩き、その指に支配され、常軌を逸してゆく。 こう書くと、非常に似通っていることがわかるだろう。 しかし、『銃』は徹底的に孤独であり、なぜ主人公が銃に魅せられてしまうのかが不明瞭だったが、 『遮光』は死んだ恋人の小指であり、それを持ち歩くには恋人を失ったことを認めたくないという明確な理由がある。 そういう意味では、ひとつ、人との繋がりというものをテーマとして導入し、進化したとも言える。 だが、迎える結末は同じ殺人である。 なぜ、同じ着地点へと辿り着いてしまうのか? 『銃』ならわかる。銃自体が人を殺す道具であり、既にそれに魅せられた時点で人を殺してしまいたくなるのが人間というものだ。 しかし『遮光』は恋人の死体から持ち去ってきた小指だ。それが人を殺す理由になり得るだろうか? 主人公の私は、ずっと演じ続けていた。そして典型的な幸福に憧れていた。それを恋人と迎えたかった。 それが、あまりにも唐突な「恋人の死」によって、不条理にも奪われてしまう。 その怒りの感情にずっと「私」は気づかない振りをしていたのだが、あるきっかけによってついに爆発ささせてしまう。 それが殺人へと繋がってしまった。 つまり『遮光』は、不条理と決別し、自分の本物の感情を手に入れたかったのだろう。 指を口にくわえて終わるラストが、恋人との一体感を強く求める「私」の着地点だった。 殺人まで行き着かなければ目覚めなかった生の感情。 果たして「私」は初めから狂っていたのだろうか。それとも恋人の死が彼を狂わせたのだろうか。 私はどちらでもないと思う。主人公は決して狂ってはいなかった。ただただ孤独だったのだ。 『銃』を読んだとき、この作者のテーマは「悪」だと思っていたが、私は間違っていたのかもしれない。 作者が描き出すのは、本物の「孤独」なのだ。 | ||||
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ここまで純文学していると、却って清々しい。どうしても既視感は否めないが、ところどころ、心に残る印象的な一文はあった。 | ||||
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初めて読む作家は、予備知識がないだけに、わくわくすると同時に不安な気分も同時に持つ。この作品は評価は高い。 少し感情が壊れた主人公が日常を生きる、その傍らに瓶の中に入った恋人の分身が非日常性を醸し出す。 物語性はほぼないといってもいい、文体と乾いた空気が伝わればほぼ物語は完成したといっていい。 そういう意味では成功しているのかもしれない。でも、物語性を求める人間にはあまり響かない。 確かに個性的な文体だ、しかし私が小説に求めるものはこの作品にはなかった。 ところどころで思い出したように表出する狂気は、 はたして恋人を失ったことが原因か彼の幼少期などの心の傷に起因するのかいまいちわからなかった。 | ||||
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ラジオのトーク番組で著者の話しを聞いたのがきっかけ。では一度読んでみようと思い手にしたのがこの「遮光」。 愛知県出身で同郷ということもあり、学生時代の頃は相当逼迫した生活を送って、精神的にもドストエフスキーの作品に 救われたという経験を持つ著者に興味を惹かれたのが始まり。感想としては印象に残った三か所を書き出してみる。 1、「人間は死に続けるのだ、あの時思った。人間は精神のようなものが死んだ後も、その肉体は死に続け、骨が土に 帰ってなくなるまで死は継続するのだと思った」 この表現、死んだら土に還るのだが、それまで死に続けるという考え方はしたことがなかった。 2、「お前はそれからそいつを蹴ってたんだけど、その時も確かにお前は少しも怒ってなかったよ。まるで怒ってる振りしてるっていうか、 芝居してるっていうか、そんな風にしか見えなかったよ」 と著者が大事な場面と強調する10章、太陽の場面で男が言う、「悲しむお前に、人はやさしくするが、次第にうっとうしいものに なってくる、その時お前は悲しみを乗り越えた振りをしてでも明るく振舞いなさい。そうすれば人は受け入れてくれる」 その時、主人公は作り上げた虚像によって周囲が丸く収まる術を身につけた。その振りをする事で。 3、「その小さな箱には、救急箱、という文字が手書きで書かれ、その横に渦を巻いた奇妙な太陽と、中央に赤い十字のマークまで 描かれていた。これは美紀が描いたに違いなかった。それから数か月先に死ぬことになる美紀が、そうとは知らずに これを描いていたのだった」 死んだ人の遺品などを見て生きていた頃の回想をするのは私にも何度か経験がある。特に自分を小さな頃から大切にしてくれた人、 本当に愛した人のことを何かの拍子で思い出すと熱いものが込み上げてくるのも事実だ。このように過去を引きずって生きるか、 総て清算して思い出を断ち切るかは、その人間のこれからの人生に大きな影響を与えることだろう。 以上、私が思いつくままに書いたものですが、こういう生き方を私は否定も肯定もしない。人は小さな子供の頃から育った環境で、 その後大人になってもその影響力は永遠に消えることはないと思うから。 | ||||
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「人間はこの世界に嫌というほどいるのだから、私一人が狂ったとしても、別に大した問題でもないように見えた。」 幼いころの不遇な出来事を乗り越えようと、感情を誤魔化しながら処世をしてきた主人公。 唯一自分の心が開き、素直な感情のまま触れ合える女性に出会ったが、女性はまもなく交通事故で亡くなってしまう。 不遇に不遇を重ねる主人公は、遂に周囲が理解できないような奇行に走る。 何かに自分の存在意義を見出しつつも、結果として不信の目で物事を見てしまう自分自身に自己嫌悪を抱く。 そして物事が失った瞬間、素直な自分の感情に気づき、後悔先に立たずの状況に陥ってしまう主人公のふが いなさに深く同情した。 | ||||
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虚言癖のある男の独白と心理描写が丁寧でよかった。でも、それ以外は雑ですね。主人公以外は雑という意味です。会話はテキトーな感じだし、主人公以外の人物は物語を進めていくための操り人形にすぎません。この人が言う「セックス」は、全然エロくないんですねえ。 でも、嘘ばっかりついてる主人公、こういうひと、身の回りにたくさんいますよ、私もそんなふうです。 いたいところ、つかれたって思いました。 面白かったです。 以上 | ||||
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うーん、どうしても既視感がぬぐえない…。中村氏に影響を与えたであろう作家達の影があまりにも濃い(どなたかが書いていらっしゃるような谷崎や三島では決してない)。影響を受けたというより、表面をなぞっているというのが正しい言い方かもしれません。 この小説は“私”の使い方はとても面白いのですが、文章が洗練されていないためか下手な翻訳を読んでいる気分にさせらてしまいます。どの描写も最初から最後まで工夫がなく、特にこの作品の目指しているものを考えると、心理描写・人物描写の凡庸さは致命的なようにも感じました。 最後もちょっと残念でしたね。あんなに簡単に光を遮らないで、もっとぎりぎりまで描いて欲しかった。妙に説明口調になるのも、全体の顕示的な自己愛を強調してしまっています。「狂」を描くには、作家は一定の距離を保たないといけないと思うのです。寄り添って撫でまわしているようでは人の心は打ちません。 否定的なことばかり書いてしまいましたが、(皮肉なことに)誰しも共感できるような心の暗部をきっちり、もうしつこいほどに描いている小説です。(「文庫解説にかえて」を読む限り、ここに作家の自覚がなさそうなのが残念ですが…。)全体的に読みやすいですし、最近の芥川賞作家の本を読んでみたいな〜なんて方にはおすすめです。 | ||||
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谷崎、三島などの世界観を現代に持ってきたような感じ。現実と向かい合えずに何かに救いを求めたり、急に狂ったようなことを言って自分自身に酔いしれたり、自暴自棄な行動を取ったり、深いところでは共感できてしまうのが怖い。僕は同じようにやりたくはないし、絶対にしないと思うけど、自分の中に渦巻く陰鬱な部分が垣間見えた。 | ||||
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気持ち悪い・・・。 悲しみに打ちひしがれた人間は、狂気になるかもしれない。 世界で唯一自分を理解してくれる人間が無くなったとき、自分の存在をつなぐものが 恋人の指だったのでしょうか。 でも その表現がかなり、怖い。 後味も悪い、最終的にも救われない。 (起承転結で最後HAPPYなんてのは、リアルさでいったらフィクションが多いですしね) 気持ち悪さだけが残る本でした。 「憂鬱〜」は好きな作品でしたが、私にはこれはつらいな。 | ||||
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『遮光』は中村文則氏の小説、第二作品目です。 内容は他の方が書かれていますので、そちらに譲るとして、未読の方が本作に対して『芥川賞落選作』という先入観を持っているのではもったいない、と思いレビューを書きました。 本作は芥川賞候補作としてノミネートされました。しかし各選考委員が総じて、前作『銃』と小説の構造、テーマが類似している、とし、氏の小説家としての志や既視感、内容に関して〜がうまく機能していない、などの評価により敢え無く落選することとなりました。 私は確かに選考委員の方たちの言う通り、テーマや構造が類似していると思いました。 加えて、美紀の死の機能(機能、などいってしまうと美紀に申し訳ないのですが)や、遮光というタイトルがはたしてこの小説にとって一番幸福なタイトルであったのかという疑問もあるでしょう。 (一般的に言って、小説中で最も重要な象徴は他にあったような気がします。私個人はこのタイトルを最悪と思うのではなくむしろ遮光というタイトルを好ましいものと思いますが、あくまで一般的な見解として) しかし、です。類似の構造やテーマを氏が選び取っていることにこそ注目すべきだと思います。 芥川賞の性質(作品中心主義)からして致し方のないことと思いますが、氏にとって生死の問題は非常に大きく、またかねてから抱いてきた心の深淵に沈んだ暗い感情、に並々ならぬこだわりを持っており、それを体現するうえでこの構造、登場人物、が絶対不可欠だったという解釈も可能なのではないでしょうか。 新人賞として作者の引き出しを見てみたいという気分は分かるのですが、うまい小説が色々な形で書ける、という極端なことをいうと、読者に迎合した効率的な作品よりも、何かにこだわって決定的なことを書ききる、ということのほうが、芥川賞にとっては幸福なのではないか、と思いました。 氏はその後も精力的に作品を発表し続けておりますし、確かな引き出しを持っていると確信しています。 主に芥川賞批判のようになってしまいましたが…要するに、この作品は落選こそしたものの素晴らしい作品であることには変わりないので、未読の方はそれに対する先入観をぬぐってぜひ読んでみてくださいということでした。(ちなみに私は選考委員の方たちの作品好きですし、人間も尊敬している部分が大きいです。ただ、中村氏の作品ももっと多くの方に読んでほしいので敢えてこのようなレビューになりました) | ||||
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法に触れる行為は別として、主人公の心理情景を お気軽なテレビドラマを楽しむように、「いるよな、 こんな奴、確かに」と言いたくなる私は、実は この本の部屋の湿度を2倍にするような、まとわりつく 何かから距離を置きたいのである。 それは「リアル感」の比喩といっても差しつかえない。 | ||||
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最近なぜか、暗い日本文学が敬遠される傾向にある。 明治の文学は暗くても良いが、平成の文学は明るくないとダメらしい。 (私はどうしても納得がいかないのですが) そんな逆風の中で、作者は真正面から暗い小説を書く。 昔の文学の暗さや生真面目さが好きな私にとっては、 ひさしぶりに居心地のいい世界に出会えたという感じです。 たまたまこの作品のモチーフに「遮光」が使われていますが、 これはどの作品にも共通するイメージかもしれない。 明るい場所ではなく、暗い場所を選んで歩く。そんな感じ。 確かに「負の精神」なんですが、そこに怒りは感じないというか、 腐ってはいないというか、この作品の主人公にしても、 端から見れば異常な言動を繰り返していても、 ひたすら自分を受け入れようとしているように思えます。 私も、主人公同様に、外の世界に触れる前の、 ありきたりないろいろなものに染まる前の「自分」を思い出せないし、 もはやそんな「自分」がいたかどうかすらわからない。 でもいたとしたら、この世界では間違いなく「異常」だと思う。 作者にはこれからも暗い小説を書き続けてほしい。 | ||||
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すさまじい小説だった。『遮光』を中心に、初期の中村氏には本当に、逃げや甘えがない。何が何でも、選んだ主題を書ききろうという作者の捨て身の覚悟が、過剰で、ある意味突き抜けた感もある作品のムードと直列して読み手に伝わってくる。主人公は一般的な目で見て決して明るい人間ではなく、嘘ばかり吐いているが、その嘘には、自分なりの理論で、現実を押さえ込み、屈服させようとする、力強い心向きがある。他人と馴れ合って、するするとうまく世の中を渡っていく人間の話など、読んでいてもまったくつまらない。彼の奇行や嘘は「逃げ」ではなく、生きるための「戦略」だと思った。たまらなく哀切なストーリーだが、読者におもねった処理が一片もないこの作品に、私は強く打たれた。今、毎日が辛い人に薦めたい。主人公の、世界への異常な戦闘的態度に、活力がもらえるようなところもあると思う。 | ||||
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最初から最後までつまらなかった。この方の小説が合わないだけかもしれませんが、注文してからずっと楽しみにしていた分、残念です。 | ||||
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とある場所で順番待ちをしている時読んでいたのですが、自分の番号が呼ばれているのに 気がつかないくらい入り込んでいました。 確かに暗いですが、暗い以上に小説として面白いです。 テンポもいいし、読みやすいし(内容の取っ付きやすさではなく)分かりやすい小説だと 思います。 ドラマで見たような「典型さ」を求めて虚言や演技を続けるこの主人公は病的ですし、 気味が悪いのですが、私には最近の若い人の「キャラを作る」というのと、どこか共通す るものも感じました。 自分の感情を素直に出さず他者から見た自分を演出するだけなら、普通の若者と同じで しょう。しかし彼の場合は自分の感情が分からない、というか、感情はあるのに自分で それを認識できてないように思います。 まるでアンドロイドが テレビドラマで人間の感情を学習して行動しているような不気味 さが際立ち、同時に悲しみを感じます。 その原因らしき彼の生い立ちが語られることによって人間を単純化してしまう気もします が、このくだりはやはり哀れを誘います。 ただ彼はもちろんアンドロイドではなく、本当は誰よりも愛を求めている孤独な若者。 その愛を喪失した時、狂気は芽生え、ようやくその愛を認識したとき暴発する…。 これってやっぱり純愛物語にして悲劇と私は読みました。 | ||||
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とある場所で順番待ちをしている時読んでいたのですが、自分の番号が呼ばれているのに 気がつかないくらい入り込んでいました。 確かに暗いですが、暗い以上に小説として面白いです。 テンポもいいし、読みやすいし(内容の取っ付きやすさではなく)分かりやすい小説だと 思います。 ドラマで見たような「典型さ」を求めて虚言や演技を続けるこの主人公は病的ですし、 気味が悪いのですが、私には最近の若い人の「キャラを作る」というのと、どこか共通す るものも感じました。 自分の感情を素直に出さず他者から見た自分を演出するだけなら、普通の若者と同じで しょう。しかし彼の場合は自分の感情が分からない、というか、感情はあるのに自分で それを認識できてないように思います。 まるでアンドロイドが テレビドラマで人間の感情を学習して行動しているような不気味 さが際立ち、同時に悲しみを感じます。 その原因らしき彼の生い立ちが語られることによって人間を単純化してしまう気もします が、このくだりはやはり哀れを誘います。 ただ彼はもちろんアンドロイドではなく、本当は誰よりも愛を求めている孤独な若者。 その愛を喪失した時、狂気は芽生え、ようやくその愛を認識したとき暴発する…。 これってやっぱり純愛物語にして悲劇と私は読みました。 | ||||
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中村文則の「遮光」を読了。作者の第二作目です。社会との関係を虚言を通してしか持てなかった男の物語。そしてそのシンボルは亡くなった彼女の肉体。そのシンボルを通じて、虚言を吐くことでバランスを取っている。だから物語は暗い。その暗さは太陽の光を遮った、まさに「遮光」に通じる。光を遮り、暗闇の中で生きている主人公であるが、暗闇の中から這い出そうときっかけを探す。でもそのきっかけがなかなか出来ないし、理解できない。直ぐ止めてしまう。虚言を織り交ぜて誤魔化してしまう。演技してしまう。 どうでしょう、どれかは自分自身に当てはまるのではないでしょうか。人間誰しももっている部分が描かれているから、読んでいて目が離せないし、嫌な気分になることもある。それは本作の主題が人間を捉えているからだと思います。 | ||||
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The小説、という感じです。映像化が難しい、小説でしか表現できないことをこの『遮光』では書かれています。作者はきっと、ドストエフスキーやカミュの影響を受けているのだろうと思います。それは、主人公の『私』の心理描写や行動から推測されます。あるべき自分を演じてしまう『私』。そしてだんだんと壊れていく『私』。そんな『私』と愛する人を失うことの関連はよくわかりませんが、そもそもそんなことは科学的に立証不可能なのですから、それを文章にしてこそ小説なのだろうと思いました。心理描写に垣間見られる作者の感覚が非常に現代的です。それでいて、長く愛される小説になるのではないかと思います。 | ||||
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中村文則さんにハマって一番好きな小説です。 何故この方はいつも過去に闇を抱えた人ばかりを主人公にするのか? 他のレビューでは「ありきたり」なんて言葉も見えましたが、 毎作ですよ?ありきたりの発想ではない気がします。 著者は作品それぞれの闇の背景をわたしたちの普遍的なありきたりさと 沿わせているんじゃないかと思うのです。(意味わからなかったらすみません) 毎回主人公に感情移入できる部分を見つけてはゾッとする、 でもその怖さって誰もが持ち合わせている一面だと思うのです。 その感覚は中村文則さんならではだと思っています。 世間は分かりやすい謎解きミステリーを激押していますね、 わかりやすさは無くても、考えさせてくれるような内容味のある作品こそ、 永く残して欲しいと思います。 | ||||
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粗筋については、先人達が散々書き尽くしているので割愛させていただく。 まずこの小説は、異常な小説ではない。 異常なのは、死んだ恋人の指というメタファーであって、主人公の心理は 誰にでもある、ありきたりのものでしかない。 まず主人公は孤独である。孤独故に、周囲の同情を得ようとする。 だから嘘を吐く。これは誰でも理解できる。 次にそれでも孤独に耐えられなくなり、恋人を作ろうとする。 主人公にとって恋人は本当の他者ではなく、しがみつきたい偶像であり神であるから 必ずしも生きている人間でなくてもいい。たとえば、アニメのキャラクターでもいい。 これも実に一方的でつまらないが、誰でも理解できる。 弱い人間が、必死に偶像に対して助けを求める。まあこんな言い方は良くないかも 知れないけど、男らしくない小説である。 しかし、この小説の面白いところは、それをするのがいい歳した大学生だ、というところだ。 寂しがりの中高生が主人公だったら、普通すぎる。そのところを、立派な大人が必死になって 指の入った瓶を追い掛け回しているのだから、面白い。 しかし、主人公の孤独が孤児だから、というのはあまりにもありきたりで TVドラマ的だ。そこをもうちょっと、ひねって欲しかった。 | ||||
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